予算1000万円で全面リフォームやリノベーションはできる!? リフォーム体験談や施工事例、費用相場を解説

予算1000万円でどこまでリフォームできるのでしょうか。全面リフォームやリノベーション、スケルトンリフォームは可能? 決して安くない金額だけに、どんなリフォーム工事ができるのか、気になるところです。そこで一戸建てとマンション別にリフォームの工事内容別の費用相場や、1000万円で全面リフォームやリノベーションが可能か、一級建築士の柏崎文昭さんに教えてもらいました。さらに予算1000万円前後のリフォーム事例や、貴重な体験者の生声も紹介します。ぜひ参考にしてください。

LDKのリフォーム

約1000万円でリフォームした施工事例(写真提供/アクアラボ

記事の目次

予算1000万円でリノベーションやスケルトンリフォームは可能!? 

予算1000万円でリノベーションやスケルトンリフォームは可能なのでしょうか。早速確認していきましょう。

予算1000万円でできるリフォーム内容は!?

既存の内装や外装を剥がして、一戸建てなら基礎と柱と梁(はり)など骨組みだけ、マンションなら躯体だけにして、一から作り直す「スケルトンリフォーム」を考えている場合、予算1000万円では難しいでしょう。

しかし、求める仕様や築年数など物件の状況によりますが、予算が1000万円あれば、内装や設備を新しくしたり、暮らしやすい間取りに変えることはできます。もちろん、あれこれ欲張っているとあっという間に予算をオーバーしてしまいます。また後述しますが、予算が1000万円にもなると、消費税やリフォーム会社に支払う手数料も大きな金額になります。必ずリフォーム会社に見積もりをもらって、検討するようにしましょう。

まずは、予算1000万円でどんなリフォームがかなえられるのか、施工事例を1つ紹介しましょう。なお、費用の金額は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合がありますので、注意してください。

【マンション】念願だった対面キッチンへ。家族数に合わせて間取りも変更

築42年の自宅マンション。以前、管理組合による配管の一斉工事が行われたことで、梁(はり)や壁にふかし部分ができ、室内の凹凸が増えたことが施主は気になっていたそうです。また、北側の部屋にカビが発生することや、掃除しづらい水まわりも悩みのタネでした。そこで、キッチンの水栓が破損したのをきっかけに、住まい全体をリフォームすることを決意しました。

まずLDKは、配管一斉工事によって生じた露出配管などの凸凹をスッキリおさめて、キッチンを対面式へ変更。また廊下部分を取り込んで開放的な空間にするとともに、床はカーペットからフローリングへと張り替えました。

また、以前の浴室はタイル張りで、目地や配管部分の掃除がしづらかったのですが、掃除がスムーズなシステムバスに入れ替えました。カビの発生が気になっていた北側の和室と洋室は1つの洋室にまとめるとともに、内窓を備えることで結露を防ぎ、カビの発生を抑えました。

その他、家事動線や収納も見直され、将来の定年後も見据えた暮らしやすい住まいに。家の隅々までお気に入りの空間になったと、施主は大いに喜んでいました。

LDKのリフォーム

既存のキッチンの壁を撤去し、廊下もなくしてLDKを拡張。キッチンは壁付からバルコニー越しに景色が楽しめる対面式キッチンに変更しました(写真提供/JS Reform(日本総合住生活))

和室のリフォーム

リビングの横にあった和室は内装を一新。耐久性に優れた和紙畳に交換し、建具の高さもギリギリまで高くして、和モダンな空間に作り替えられました(写真提供/JS Reform(日本総合住生活))

WICのリフォーム

以前は納戸と和室の押し入れだったスペースは1つの大容量のウォークインクロゼットへと変更。玄関ホールを挟んで向かい側に大きなシューズインクロゼットも設置されました(写真提供/JS Reform(日本総合住生活))
【リフォーム前】

リノベーション前

【リフォーム後】

リノベーション後

【DATA】
リフォーム費用:960万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、和室、洋室、収納、洗面所、浴室、トイレ、廊下、玄関
住宅種別:マンション
築年数:42年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)

※表示されているリフォーム費用は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

築40年以上の一戸建てをスケルトンリフォームするには最低1300万円以上は必要

先述したように、予算1000万円でスケルトンリフォームは難しいでしょう。とはいえ、基礎や柱、梁(はり)などの構造(躯体)部分を残して改修するスケルトンリフォームは、一戸建てなら根本的な耐震工事や断熱工事を行うことができます。また、躯体を変更できないマンションでも一部の工法を除き、水まわり設備の位置の移動に制限はあるものの、間取りを変更することができます。

では、スケルトンリフォームするには費用はどれくらい必要なのでしょうか。築年数や広さなどにもよりますが、70m2・3LDKのマンションで、躯体のみを残して(スケルトンにして)設備や天井・壁・床等を新調した場合の費用の目安は下記の通りです。

リフォーム工事の内容 費用の目安
70m2・3LDKのマンションをスケルトンリフォームする
(すべての設備等を解体・撤去し、設備と内装を一新)
約1300万円〜

あくまで「上記条件でスケルトンリフォームをするなら最低限1300万円は見ておいたほうが良い」ということです。繰り返しになりますが、工事をする物件の状況により費用は変わりますし、求める設備や床材等の仕様が高いほど、費用は膨らみます。

そのため、予算の上限を決めた上で、リフォーム会社に現地確認してもらったり、打ち合わせを繰り返して、ベストなプランと見積もりを作ってもらうようにしましょう。

スケルトンリフォームとは?マンションと一戸建ての費用相場は? メリット・デメリットと補助金や減税制度、後悔しないための対策を解説。施工事例も紹介!

資材価格や人件費の上昇により1000万円で全面リフォームは難しい時代に

また、最近は資材の価格や人件費が上昇しています。そのため、これまでよりもリフォーム費用が膨らみがちです。

最近自宅マンションをリフォームしたMさんは「十数年前にも一度リフォームしたのですが、そのときより消費税率も上がり、設備も建材も値上げされていて、同じグレードの設備で検討していたら予算内でおさめることが難しくなりました」と振り返ります。「予算内におさめるため、設備のグレードを少し落としたり、まだ使える設備はそのまま使うことにしました」。

リフォーム会社の施工事例を見て「これなら1000万円で収まりそうだ」と安易に判断せず、必ずリフォーム会社に見積もりをもらってから工事内容を検討するようにしましょう。

工事部位別のリフォーム・リノベーション費用相場

では、予算1000万円でどんなリフォームが可能なのでしょうか。下記に部位別のリフォーム費用を紹介しますので、予算内でどんなリフォームをするか、検討する際の参考にしてください。

【マンション/一戸建て】水まわり設備のリフォーム費用相場

キッチン・浴室・トイレ・洗面所という水まわり設備を交換する場合、リフォーム費用の目安は下記の通りです。

■水まわり設備を交換するリフォーム費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
キッチンの交換 壁付キッチンの位置は変えず、食器洗い乾燥機やオーブン付きキッチンに交換 約100万円〜150万円
トイレの交換 古い洋式トイレを、多機能な温水洗浄便座付きトイレに交換 約30万円〜60万円
お風呂(浴室)の交換 浴室サイズ(1616※)は変えずに、最新システムバスに交換
※1616は浴室の内寸が1600mm×1600mmを示す
約100万円〜170万円
洗面化粧台の交換 幅750mmで、手洗い洗濯も可能な大きなボウルのある、収納の多い洗面化粧台に交換 約40万円〜60万円

設備のグレードや仕様、サイズ等の選び方によりますが、水まわり設備4点を一新すると費用の目安は270万円〜440万円です。

また、キッチンの場合、壁付から対面式キッチンへ位置も変えたいという人もいるでしょう。その場合の費用の目安は下記の通りです。

■壁付けキッチンから対面式キッチンにリフォームする場合の費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
壁付キッチンを対面式キッチンに交換 食器洗い乾燥機やオーブン付きの対面式キッチンに交換 約150万円~250万円

キッチンを壁付から対面式キッチンへ交換し、浴室・トイレ・洗面所の設備を入れ替えるリフォームの場合、リフォーム費用の目安は320万円〜540万円となります。

対面キッチンにリフォームするメリット・デメリットは? 種類や費用相場、カウンター、収納アイデア、リフォーム実例と注意点も解説 

【マンション/一戸建て】リビングやキッチンなど間取り変更のリフォーム費用相場

続いて、間取り変更の費用の目安を見てみましょう。間取り変更の費用は、施工面積や使用する資材等によって変わりますが、ここでは比較的多い「リビングの隣の和室をリビングに取り込む」施工例の費用の目安を紹介します。

■リビングに隣接する和室をリビングに取り込み3LDKから2LDKに間取り変更
リフォーム工事の内容 費用の目安
3LDKから2LDKに間取り変更 リビングダイニングに隣接する和室と、クローズドのキッチンを取り込んで大きなLDK(30m2)にする 約250万円〜350万円

【マンション/一戸建て】壁や床などの内装リフォームの費用相場

天井や壁のクロス交換のリフォーム費用は、基本的に施工する面積に比例します。

例えば3LDK(延床面積70m2)のマンションで、天井と壁をすべて張り替えた場合、リフォーム費用の目安は下記の通りです。

■3LDK(延床面積70m2)の天井と壁をすべて張り替えた場合のリフォーム費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
天井・壁クロスの張り替え すべての天井・壁のクロスを、汚れが付きにくい防汚機能のあるビニールクロスに張り替える 約60万円(施工面積210m2=70m2・3LDK相当)

内装リフォームの費用相場と補助金、期間・流れは?業者orDIY?予算500万円以内のリフォーム実例も公開! 

また床のフローリングを張り替える場合、「張り替える面積(施工面積)」と「床材の種類」がリフォーム費用を左右します。

施工面積が広いほど、リフォーム費用は高くなります。また、フローリングには大きく分けて、「複合フローリング」と「無垢(むく)フローリング」の2種類があり、価格も異なります。一般的に無垢フローリング材のほうが高価ですが、複合フローリング材のほうが高い場合もあります。

複合フローリングから、新しい複合フローリングに張り替える場合の、10m2費用の目安は下記の通りです。

■床材を複合フローリングから、新しい複合フローリングに張り替える場合
リフォーム工事の内容 費用の目安
床の張り替え 複合フローリングから、新しい複合フローリングに張り替える 約9万円〜14万円(施工面積10m2

床・フローリングリフォームの費用相場。床材・面積・工法で費用は決まる! 

【マンション】断熱リフォームの費用相場

マンションの断熱性能を高める際、住戸の上下階、および左右にも住戸がある場合、基本的に壁や天井、床に断熱材を入れる必要はありません。バルコニーや廊下に面した窓が1枚ガラスのアルミサッシの窓であれば、そこに内窓を設置するだけでも断熱性能は向上します。内窓の設置費用は、大きさにより異なりますが、6万円〜7万円/1窓が目安です。

もし最上階の住戸や角部屋など、上下左右に隣戸がない場合、他の住戸等が接していない天井や床、壁に施されている既存の断熱材に、新たな断熱材を上乗せする方法もあります。天井や床材、壁材は一度剥がしてから、断熱材を上乗せして、新たに天井材等を張り直します。新たに採用する天井材等によりますが、費用の目安は10万円〜/10m2です。

内窓の設置

内窓を備えて二重窓にするだけでも断熱性能はかなり高まります。

【一戸建て】耐震や断熱リフォームの費用相場

耐震(耐震補強)リフォームの費用の目安は、150万円〜200万円です。ただし、家の状態によって必要になる工事内容が異なります。また一般的に築年数が古いほど費用は高くなります。まずは耐震診断をした上で、リフォーム会社に見積もりをもらって検討しましょう。

耐震(耐震補強)リフォームを行う場合、必要な部分の壁を取り壊します。ですから断熱リフォームや間取り変更と別々にやるより、一緒に行ったほうが二度手間にならず、費用を抑えやすくなります。もし自宅の耐震性能が気になったら、合わせて断熱リフォームや間取り変更も検討するとよいでしょう。

3階建ての一戸建てをリフォームした体験者のKさんは、3階の天井に断熱材を入れました。「以前は灼熱地獄と言いたくなるくらい、夏は暑かったのですが、おかげで夏でも3階の部屋で寝起きできるようになりました」。

断熱リフォームの方法と費用相場。床・壁・天井など部位ごとに解説! 

【一戸建て】外壁・屋根のリフォームの費用相場

外壁と屋根のリフォーム工事は、たいていはどちらも足場を組んで行います(屋根のリフォームは、屋根の傾斜具合によって足場が不要な場合もあります)。そのため別々に工事するよりも、一緒に行ったほうが工事費用を抑えることができます。どちらかの劣化が気になったら、外壁や屋根を同時に工事することを検討しましょう。

まず外壁のリフォーム費用の目安を見てみましょう。ここでは延床面積120m2程度の木造総2階建てで、サイディングを用いた外壁の場合の費用の目安を提示します。また足場の費用も含みます。

■一戸建ての外壁(サイディング)のリフォームの費用相場
リフォーム方法 費用の目安
塗装 約80万円〜120万円
重ね張り(カバー工法) 約180万円〜350万円
張り替え 約240万円〜600万円

サイディングはもともと表面が塗膜で覆われています。しかし経年によって塗膜が劣化すると、見た目が悪くなるほか、雨水が染み込む原因にもなります。

塗装時期の目安は新築なら築10年~15年目ぐらいです。その後10年~15年ごとに塗り替える必要があります。

何度か塗装しても劣化が隠せなくなったら、重ね張り(カバー工法)か、張り替えを検討しましょう。リフォーム費用は重ね張り(カバー工法)のほうが抑えられます。ただし、既存のサイディングの状態によっては張り替えなければならなかったり、重ねて張るサイディングの選択肢が主にガルバリウム鋼板などの金属系に限られるといった条件があるので、リフォーム会社と相談しながら判断しましょう。

一方、屋根のリフォーム費用の目安は下記の通りです。ここでは延床面積120m2程度の木造総2階建ての場合で算出しています。また足場の費用も含みます。

■一戸建ての屋根のリフォームの費用相場
リフォーム方法 費用の目安
塗装 約60万円〜70万円
重ね葺き(カバー工法) 約100万円〜200万円
葺き替え 約150万円〜300万円

塗り替えは、化粧スレート(彩色スレート)やセメント瓦、鋼板(トタン屋根やガルバリウム鋼板等)で行います。ただし、粘土瓦や陶器瓦は塗り替えを行いません。

塗り替え時期の目安は、屋根の点検をかねる意味でも10年を目安に塗り替えると考えるとよいでしょう。

重ね葺き(カバー工法)は、既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねる方法です。そのため、既存の屋根材が化粧スレートや鋼板といった平らな屋根材でないと行うことができません。塗り替えでは対応できないほど屋根材が傷んだときに行います。

あまりに劣化が進んでいて、すでに雨漏りをしている場合は、雨漏り箇所を見つけて部分的な修理で対応しますが、全体的に劣化している場合は重ね葺き(カバー工法)でも対応できないので、葺き替えを選ぶことになります。

葺き替えは、化粧スレートなら築20年超、瓦なら築50年超というように、基本的には古い家で行われる屋根リフォームです。屋根材を撤去し、下地からやり直すので、最も費用がかかります。

既存の屋根の状態や、屋根材によって選ぶべき方法が変わりますので、必ずリフォーム会社に見てもらい、見積書をもらって検討するようにしましょう。

屋根の葺き替えリフォームとは?費用相場と工事期間。葺き替えの時期の目安、実例、補助金も紹介!

【一戸建て】増築/減築のリフォーム費用相場

ライフステージの変化に合わせて、一戸建ての増築や減築をするにはいくら費用が必要なのでしょうか。

まず増築ですが、立地条件や既存の一戸建ての状態や構造等により費用は変わるため、基本的にはリフォーム会社に現地を見てもらい、見積もりを出してもらうようにしましょう。その際、木造軸組工法なら約110万円〜/坪の費用は心づもりしておくとよいでしょう。基本的に施工面積に比例して費用は高くなります。もちろん求める仕様に応じて費用は変わります。

一方の減築ですが、こちらは施工面積に比例するということがなく、まさにケースバイケース。既存の柱や梁のあり方によっても減築方法は変わりますし、減築によって塞がなければならない面積や、そのために必要になる資材などによっても費用が異なります。こちらもリフォーム会社に現地を見てもらい、見積もりを出してもらってから判断しましょう。

減築リフォーム

減築の費用はケースバイケース。必ずリフォーム会社に現地を見てもらい、見積もりをもらって判断しましょう。

リフォーム、リノベーションで減築をする費用、メリットは?固定資産税は安くなる?建築確認申請は必要?施工事例も紹介! 

1000万円前後の全面リフォーム・リノベーションの施工事例(マンション)

約1000万円でどんなリフォームが可能なのでしょうか。先述したように、1000万円でスケルトンリフォームは難しいですが、古い設備を交換したり、内装を一新することはできます。 まずはマンションの全面リフォーム・リノベーションの施工事例をみてみましょう。

【マンション】同じ部屋数でも、デザインと暮らしやすさを両立する新しい住まいへ

住み慣れた築38年の自宅マンションをリノベーションすることにした施主。以前はキッチンが独立していて、和室もリビングダイニングとドアで隔てられるなど、間取りが細かく分けられていて風通しが悪かったそう。また収納もバラバラに配置されていたため、行ったり来たりしなければならないなど、動線にも不満を抱えていました。

そこで、まずは可能な限り仕切りをなくして開放的な住まいにすることに。LDKはキッチンと和室を取り込んで、バルコニーから光が届く明るい空間に変更。キッチンはリビングダイニングに向いた対面式に変えました。

またリビングの隣に内窓で繋がる寝室を設置。さらに隣に大容量のウォークインクロゼットを備え、生活動線をスッキリさせました。そのほか廊下の幅も広げ、段差も解消し、古くなった給排水管も更新。「次の25年も安心して快適に過ごしたい」と考えていた施主の思い通りの、新しい住まいへと生まれ変わりました。

LDKのリフォーム

リビングにはコンパクトな畳スペースが用意されました。ソファーでのんびりしたり、畳にごろんと横になったりと、その時々の気分でリラックスできます(写真提供/アクアラボ)

寝室のリフォーム

リビング横の寝室。ベッドヘッドにアクセントクロスを張ることで、リビングから見える内窓に模様が映り込むようにするなど、遊び心も加えられています(写真提供/アクアラボ)

シューズクロゼットのリフォーム

大容量ウォークインクロゼットとは別に、トイレの位置を見直すことで玄関脇に大きなシューズクロゼットも新設されました。おかげでいつも玄関がスッキリとしています(写真提供/アクアラボ)
【リフォーム前】

リノベーション前

【リフォーム後】

リノベーション後

【DATA】
リフォーム費用:1035万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、寝室、浴室・バス、洗面室、トイレ、収納、廊下、玄関、その他
リフォーム面積:約71m2
住宅種別:マンション
築年数:38年
設計・施工:アクアラボ

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

【マンション】高台にある環境を活かして3LDKをリラックスできる2LDKへ

築22年の自宅マンションをリフォームすることにした施主。1階ですが、高台にあるため眺めのよいところが気に入っていました。一方で細かく分かれていた間取りは、リビングが手狭で、和室の使い勝手も悪く、さらに北側の洋室は湿気がたまりやすかったそうです。

まずは和室を取り払い、リビングダイニングを拡大。壁に囲まれて閉鎖的で、作業スペースも狭かったキッチンも、広くてオープンな対面式にすることで、開放的なLDKへと変更しました。また、以前はリビングの中央にあった、ダクトを通す大きな梁を部屋の端に移して見た目をスッキリとさせました。

さらに北側の洋室の湿気と収納問題を解消するため、洋室とリビングを繋ぐウォークインクロゼットを新設。両側から使えるので動線がよくなっただけでなく、全体に風が通るようになりました。

お気に入りの庭が、まるでリビングと一体になったような新しい住まいに、施主も「広くなったおかげで、庭の木々がよく映えます」と大満足。旅行に行かなくても家でリラックスできると言うほど、この家が好きになったそうです。

LDKのリフォーム

リビングが開放的になったことで、お気に入りの庭と一体化した感じがすると施主。以前よりもここで過ごす時間が楽しめるようになったそうです(写真提供/JS Reform(日本総合住生活))

洋室のリフォーム

断熱工事に加え、天井に調湿機能のある素材を用いて湿気対策が施されました。収納も、扉を開けると一目で中が分かるように、大容量かつ使いやすいクロゼットに変更(写真提供/JS Reform(日本総合住生活))

玄関のリフォーム

廊下の幅を広げて、ゆとりのある玄関スペースに。以前からあった玄関の収納は、新しくなった空間に合わせるため、表面の一部が加工されています。また洋室との間の内窓にはステンドグラスが新たに採用されました(写真提供/JS Reform(日本総合住生活))
【リフォーム前】

リノベーション前

【リフォーム後】

リノベーション後

【DATA】
リフォーム費用:973万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洗面化粧台、バスルーム、トイレ、洋室、収納、廊下、玄関
リフォーム面積:75.1m2
住宅種別:マンション
築年数:22年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

1000万円前後のリフォーム・リノベーションの施工事例(一戸建て)

続いて予算1000万円前後でかなえた一戸建てのリフォーム・リノベーションの施工事例を見てみましょう。

【一戸建て】1階部分を家族が集える広い1LDKに変更し、トイレはバリアフリー化

家族や親戚仲がよい施主。大人数で集まった時にくつろげるように、2階建ての住まいの、1階部分の間取りを大きく変えることにしました。まずリビングの隣にあった和室と、廊下を取り込んでLDKを拡大。構造上重要な柱はそのまま残して壁と柱を取り払い、天井梁で補強しました。

廊下を取り込んだことで階段がリビングインになりましたが、空調の効率を考え、上り口には引き戸を備えました。また床暖房や内窓を採用して、冬も快適な空間に。リビングの壁一面に新設された収納は、必要なところだけを開けられるので、大容量の収納スペースなのに、扉を閉めていれば見た目をスッキリさせることができます。

トイレは、従来の手洗いスペースも組み込んで、スペースを拡大してバリアフリー化。車イスを利用する施主の母親が訪れたときや、自分たちの将来のためにも備えました。代わりに、従来は階段横にあった収納スペースは洗面スペースへ変更。リビングの一角にあるので、訪れた人が気軽に使うことができます。こうして家族みんなが集まってくつろげる新しい住まいが完成しました。

LDKのリフォーム

リビングの壁に大容量の造作収納を設置。施主の念願だったお仏壇置き場も用意されました(写真提供/朝日住宅リフォーム)

トイレのリフォーム

広くなったトイレ。ドアは床にレールがない天吊り型の引き戸に変更したので、段差につまづく心配もありません(写真提供/朝日住宅リフォーム)

洗面化粧台のリフォーム

2階にある家族用とは別に、1階にも洗面台を設置。来客がキッチンや2階へ行かずとも、気軽に使えます(写真提供/朝日住宅リフォーム)
【リフォーム前】

リノベーション前

【リフォーム後】

リノベーション後

【DATA】
リフォーム費用:988万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、浴室・バス、洗面室、トイレ、洋室、玄関、収納、その他
リフォーム面積:63m2
住宅種別:一戸建て
築年数:19年
設計・施工:朝日住宅リフォーム

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

【一戸建て】1階部分を仕切らず一体化。断熱も施し体も心もポカポカに

中古で購入して、3年間暮らした築15年の一戸建て。施主は、とにかく寒かったと振り返ります。また近くの飛行場からの騒音も気になっていましたし、細かく分断された間取りも生活に合わないと感じていました。築15年は、水まわりをはじめちょうど傷みはじめるタイミングだなと思い、1階部分をリフォームすることにしました。

間取りは、従来の玄関ホールと和室、ダイニングキッチン等を1つの空間に変更。従来は和室にいる子どもたちがキッチンにいる母親に声をかけても聞こえなかったのですが、今ではそうしたことがなくなりました。また窓に内窓を備え、リビング下に断熱材を入れるなど断熱工事も施されたため、真冬でもエアコンだけで十分暖かく過ごせる空間に。また内窓の設置によって騒音問題も解消されました。

その他にも、子どもたちが勉強している様子をキッチンから見守ることができるようになり、生活スタイルに合わせて適材適所に収納を配置。暮らしやすく、快適な住まいにリフォームすることができました。

LDKのリフォーム

床には足に柔らかく、心地よい無垢のヒノキ材を採用。玄関との仕切りには大きなガラスの入った引き戸が備えられました。開放感があり、玄関からも光が差す空間に(写真提供/優建築工房)

洗面化粧台のリフォーム

玄関からすぐの場所に手洗いコーナーを新設。外から帰ってきた子どもたちに手洗いとうがいの習慣がつく動線です(写真提供/優建築工房)

キッチンのリフォーム

キッチンからのぞける位置に子どもたちのスタディスペースを設置し、キッチンの前にもカウンターを備えました。大きく間取りを変えましたが、構造上抜けない柱や筋交いは塗装してインテリアのアクセントに(写真提供/優建築工房)
【リフォーム前】

リノベーション前

【リフォーム後】

リノベーション後

【DATA】
リフォーム費用:930万円
リフォーム部位:リビング、ダイニング・キッチン、玄関、洗面所、トイレ、浴室、外壁、その他
リフォーム面積:55.48m2
住宅種別:一戸建て
築年数:15年
設計・施工:優建築工房

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

予算1000万円におさめるためのポイント

上記で見てきたように、リフォームに1000万円使うことができれば、住まいを十分快適にすることができます。とはいっても油断していると、あっという間に予算をオーバーしてしまいかねません。

大切な予算1000万円を賢く使って、快適な住まいを実現するポイントを下記で紹介しましょう。

「消費税」や「諸経費」が発生することを忘れずに

リフォーム工事には消費税10%がかかります。単純に1000万円の工事をすれば、消費税は100万円。工事費と合わせて1100万円必要になります。

また、工事費用とは別に、たいていは工事費全体に対して数パーセントの諸経費が必要になります。諸経費とは、資材の運搬費用や消耗品、事務処理費用、現場管理費など諸々の費用のこと。リフォーム会社によって「諸経費」に何を含むかなど考え方に違いがあり、そのため金額も異なります。一般的に総費用の5%〜15%の金額が諸経費として請求されます。

例えば工事費が1000万円で諸経費の割合が10%なら、100万円の諸経費が工事費や消費税とは別に必要になります。

自宅マンションをリフォームしたMさんは「うちのマンションは工事車両をとめられるスペースがなかったため工事中の駐車場代が実費で請求されるなど、工事以外の費用が思っていた以上にかかりました」と振り返ります。また「見積もりを数社に依頼したのですが、諸経費の割合は各社バラバラでした」。

ただし、Mさんは「諸経費の割合だけ見れば、私の選んだ依頼先は他社より高かったです。しかし、消費税や諸費用を含んだ総支払額は依頼先が最も安かったんです。それに、要望をすべてかなえたプランを提案してくれましたし、私の苦手なデザイン面でのアドバイス、例えば造作収納や建具デザインの提案なども積極的に行ってくれたので、安心感がありました」。

とはいえ消費税と諸経費がどちらも10%なら、工事費1000万円とは別に200万円が必要になります。中古車を1台買えるほどの金額を、予算内におさめるか、予算とは別に用意するか、あらかじめ考えておきましょう。

仮住まいや、家具・家電の買い換えに必要な出費も「リフォーム費用」

予算1000万円でリフォームとなると、間取りの変更や水まわり設備の入れ変えを行うでしょうが、当然こうした工事は時間がかかりますから、その間自宅で過ごすことが難しくなります。場合によっては、賃貸住宅やホテル等での仮住まいが必要になります。

一戸建ての自宅をリフォームしたSさんの場合、仮住まいと家具・家電等の買い換え費用は合わせて約220万円でした。「工期は約3カ月。その間は賃貸住宅で暮らしました。家賃のほかに敷金・礼金や駐車場代、2回分の引越し費用を合わせて、だいたい120万円くらいでした」。

「また自宅マンションのリフォーム工事に約5カ月かかったMさんの場合「仮住まいと家具・家電等の買い換え費用を合わせて約400万円です。仮住まい費用は礼金や仲介手数料がいらないURを借りることで抑えることができましたが、新しい家に合わせて購入したダイニングセットやカーテン、家電類は近年の物価高もあって想定以上にかかりました」。

数カ月の仮住まいであっても賃貸住宅を借りるときに発生する敷金、礼金、保証料、火災保険料や引越し費用は通常の住み替えと同様にかかります。

特に仮住まい費用は、工期や家族構成、居住地域によって異なるので、リフォームを検討したら早めにいくらくらいかかりそうか、調べておいたほうがよいでしょう。

リフォームローンや補助金制度の利用を検討する

1000万円という予算となると、リフォームローンの利用を検討する人も多いでしょう。銀行や信用金庫、ネットバンキング、信販系などさまざまな金融機関が取り扱っていますが、融資額や金利などは各社によって異なりますから、早めにホームページ等で比較検討しておくと安心です。

また、住宅の性能を高めるリフォームに対して国や自治体が補助金制度を用意している場合があります。

一戸建ての自宅をリフォームしたSさんも国の補助金制度を活用したそう。「また自治体のLED照明に対する補助金制度も利用しました。さらに、依頼したリフォーム会社のキャンペーンで30万円分の照明を付けることもできました」。

そのほか、自宅マンションをリフォームしたMさんも節水型トイレや節湯水栓の導入により国からの補助金が20万円ほどもらえたそうです。

まずは、どんな補助金制度が使えるのか、あらかじめ調べておきましょう。

【FP監修】リフォームローンの種類や金利と選び方。審査、住宅ローンとの違いなどを解説 

まとめ

見てきたように、予算1000万円でスケルトンリフォームをすることは難しいものの、暮らしを快適にするための大がかりなリフォームを行うことができます。

その際に気をつけたいのは、まず予算が1000万円ともなると、消費税や諸経費が無視できない金額になることです。また仮住まいや、家具・家電の買い換え費用も見落とせません。そのため、リフォームを検討したら、工事費以外にいくらかかるのか、家族で検討するようにしましょう。

何しろ多くの人にとって「1000万円」は、人生の中で「自宅の購入」に次ぐ出費のはず。勢いだけで何とかなる出費ではありません。大切な1000万円を有効に活用するためにも、工事費以外の出費も念頭に置いた、無理のない資金計画を立てるようにしましょう。

また1000万円を有効に使うためにも、10年後のライフスタイルまで見据えたリフォームを行うことが重要になります。「子どもの独立後の夫婦2人生活」は言うまでもなく、親の介護が必要になったら同居するのか、それとも地元へ帰るのかだけでも、間取りは変わります。

一戸建ての自宅をリフォームしたSさんの目標も「向こう10年、わが家のライフスタイルに合った家にすること」でした。「リフォーム前の家の間取りは、子どもたちの成長で変化したライフスタイルや、10代になった子どもたちの習い事や趣味に合わなくなっていました。そこで、家族それぞれのライフスタイルに、すべて合った住まいへリフォームすることにしたのです」。

もちろん10年先も快適に暮らせる間取りや仕様にするためには、考えたり選んだりしなければならないことがたくさんあります。しかし大切な1000万円という財産を使うのですから、悔いが残らないようリフォームするようにしてください。

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300万円でマンションの全面フルリフォームは可能? 予算内でリフォームするポイントを紹介

監修/一級建築士 柏崎文昭(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/籠島康弘 イラスト/田中英樹