リフォーム、リノベで減築する費用。メリットは?固定資産税は安くなる?建築確認申請は必要?施工事例も紹介!

最近、家をリフォームやリノベーションをする例で、増築ではなく「減築」という言葉を聞くことが増えてきました。減築とはどのようなもので、どんなときに行われるのでしょうか?住宅の減築ではどのようなメリットがあるのでしょうか。リフォームやリノベーションで減築をする際に知っておきたいポイントを一級建築士の佐川旭さんに聞きました。

減築リフォームをした一戸建ての実例写真

(画像提供/リフォーム工房

記事の目次

減築とはどんなリフォーム?

減築とは建物のリフォームで床面積を減らすこと

建物のリフォーム・改修やリノベーションをするときに、床面積を減らすのが「減築」です。子どもが独立して家を出ていったから間仕切りを撤去して部屋数を減らす、というリフォームは含まれません。広い家から狭い家への引越しも違います。あくまでも、リフォームやリノベーションで建物の一部の床面積を減らしたり、2階を撤去したりするのが減築です。

家を建てたり買ったりしたころから年月がたち、子どもたちが独立して家を出ていくと、使わなくなる部屋が出てきます。「子ども部屋があった2階には、もう何年も上がっていません」、という高齢者も多くいます。広すぎる家で暮らすのをやめて、コンパクトなマンションや戸建てに住み替えたり、小さな家に建て替えたりという例もありますが、減築は既存の建物を活かしながら、より住みよい形に変えていくリフォームです。

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減築の主なパターンは6つ

減築にはさまざまなパターンがあります。国土交通省・国土交通政策研究所の「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究」(2011年)では、減築を下の6つのパターンにまとめています。

・元の家が平屋の場合
平屋の一部を除去

・元の家が2階建ての場合
1階と2階の一部を同時に除去
2階の一部を除去
2階全部を除去
1階の一部を除去
2階の床の一部を除去して吹き抜けに

平屋の一部を除去

平屋というともともとコンパクトなイメージですが、敷地に余裕のある地方の住宅では、建築面積が50坪、80坪といった広い平屋が見られます。一緒に暮らす家族の人数が減り、広さをもて余している場合の減築が考えられます。

平屋の減築のイメージ

広すぎる平屋の一部を減らす減築(イラスト/森越ハム)

1階と2階の一部を同時に除去

1階と2階の床面積が同じ総2階の2階建てなどで、1階も2階も床面積を減らすパターン。家全体がコンパクトになります。

1階と2階の一部を同時に減らす減築のイメージ

1階と2階の一部を同時に減らす減築(イラスト/森越ハム)

2階の一部を除去

1階はそのままで、2階の一部を減らすパターンの減築。2階に使用しない部屋があるなどの場合に行われます。減らした場所にベランダを設けるケースもあります。

2階建ての一部を減らす減築のイメージ

2階に使っていない部屋がある場合などに、2階の一部を減築(イラスト/森越ハム)

2階全部を除去

2階建ての家を平屋にするパターン。1階にLDKや浴室、トイレ、寝室などがあり、2階がなくても暮らしが完結している家で、2階を使用していない場合に行われる減築です。

2階全部を除去する減築のイメージ

2階建ての2階部分を全てなくして平屋にする減築(イラスト/森越ハム)

1階の一部を除去

もともと2階よりも1階の床面積が大きな家で、1階の一部のみを撤去するパターン。敷地の広がった部分を駐車場にするなどの有効活用も可能です。

1階の一部を減らす減築のイメージ

2階よりも広い1階の一部を減らす減築(イラスト/森越ハム)

2階の床の一部を除去して吹き抜けに

2階の床、つまり1階の天井部分を撤去することで、その部分が吹き抜けになり、床面積が減ることになります。これも減築となります。

吹き抜けをつくることで減築になるイメージ

2階の床(1階の天井)を撤去して吹き抜けにし、床面積を減らす減築(イラスト/森越ハム)

リフォームで減築するとどんなメリットがある?

お金をかけてリフォームをするのに、家が小さくなるなんて、なんだか損!という気もしますが、一級建築士の佐川旭さんは、「リフォームで減築をするケースは、これから多くなっていくと思います」と言います。では、どのようなメリットがあって、減築という選択肢が増えていきそうなのでしょうか。減築によるメリットを紹介していきましょう。

外壁などのメンテナンス費用が減らせる

「減築で得られる最も大きなメリットは、今後かかる外壁などのメンテナンス費用が減らせることでしょう」(佐川さん、以下同)

長く快適に暮らすために、家には定期的なメンテナンスが必要。壁紙や床材の張り替えは、美しさを保つためのものですから、見た目が気にならなければ長期間そのままでも問題はありません。しかし、外壁や屋根は塗装や張り替え、葺(ふ)き替えをせずに放置しておくと、劣化した部分から雨水が浸入し、建物の劣化につながってしまいます。こまめなメンテナンスを心がけたい部分です。ただし、悩みはその費用。外壁材や屋根材のグレードや施工面積によって異なりますが、10数年〜20数年に一度は、百万円単位でメンテナンス費用がかかリます。

しかし、減築をすれば、外壁面積は小さくなります。2階部分や平屋の減築では屋根も小さくなります。特に2階建てを平屋に減築した場合、2階部分の外壁塗装の際に組む足場代がかからなくなります。今後かかるメンテナンス費用を抑えることができるのです。

外壁や屋根の塗装をするイメージ

外壁や屋根の定期的な塗り替えなどメンテナンスが必要な面積が減り、コストが抑えられる(画像/PIXTA)

耐震性をアップすることができる

住宅は2階建てよりも平屋の方が、重たい家より軽い家の方が耐震性が高くなります。また、1階と2階の床面積が大きく違うなど、バランスの悪い家よりも、1階と2階の床面積が同じ総2階の家の方が安定しています。減築によって住宅の形を修正し、全体を軽くすることで、地震の際の揺れの影響を抑えることができます。

1階と2階の床面積が同じ総2階の家

1階と2階の床面積が同じ総2階の家は地震の際の安定感が高い(画像/PIXTA)

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光熱費が減らせる

「冷暖房にかかる費用は家が狭い方が少なくなります」

料理や入浴、洗濯などにかかる光熱費は、家の広さとは関係ありませんが、冷暖房費は広い家よりも狭い家の方がかかりません。1階部分しか使用していなかった2階建ての家を平屋にした場合も、断熱をしっかり施工することで熱環境(あたたかさ、涼しさ)が良くなることが期待できます。

家がコンパクトになることで、冷房や暖房にかかる光熱費が減らせるイメージ

家がコンパクトになることで、冷房や暖房にかかる光熱費が減らせる ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

家事が楽になる

「2階にあるかつての子ども部屋など、使わない部屋も月に1度くらいは掃除をするでしょう?そのために、2階まで掃除機を持って上がる手間がありましたが、2階を撤去する減築をすると、掃除をする手間はなくなります」

そのほか、広すぎて食事をするスペースがキッチンと離れていたり、キッチンと浴室、ユーティリティが離れていて、料理と水回りの掃除、洗濯などの家事が同時進行しにくい間取りの場合、1階をコンパクトにする減築のついでに間取りも変更すれば、家事効率はアップします。

床面積が小さくなって家事が楽になるイメージ

床面積が小さくなれば掃除をする場所も狭くなって家事が楽に ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

採光や通風が良くなる

「減築で建物の形が変わったり、庭が広くなったりすることで、風通しや採光が良くなるケースがあります」

減築で周囲の建物との距離ができることで新しい風の通り道ができたり、太陽の光が室内に入りやすくなったりします。また、2階の減築で1階部分に屋根を設けるなら、トップライト(天窓)をつくることも可能。1階の採光をアップすることができます。減築をする際には、採光や通風がどう変わるかも、リフォーム会社と相談しながらプランを決めると、より快適な暮らしが手に入ります。

減築で吹き抜けにしてトップライトをつくることで玄関の採光がアップするイメージ

2階の床を撤去して吹き抜けにする減築でトップライトをつくることができれば、採光がアップする ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

空間の利用率が上がる

「家がコンパクトになると、あちこち歩き回らずに部屋から部屋への移動や家事ができるようになります。すると、部屋を無駄なく使うようになります」

住宅には冷暖房費やメンテナンス費用、固定資産税などランニングコストがかかるもの。空間の利用率が向上して、無駄なく使えるようになるのはうれしいことですね。

家族がリビングに集まりやすい家のイメージ

無駄な部屋がないことで家族がリビングに集まりやすいなどのメリットも ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

階段がなくなると上り下りがなく安全性が向上

階段での上り下りの事故は高齢者世帯だけでなく、子どものいる家庭でも起きています。2020年に消費者庁が行った調査※では、14歳以下の子どもがいる3109人のうち、24%が家の中で子どもが事故またはケガをしそうになった、危ない思いをしたなどの経験をしています。事故などが起こった場所で多かったのは、キッチン、リビングに次いで、3位が階段です。高齢者だけでなく、子どもも階段には注意が必要です。(※消費者庁「家の中での 14 歳以下の子どもの事故又はヒヤリ・ハット」に関する調査(2020年))

2階を撤去することで、階段の上り下りがなくなり、「階段から落ちる」「階段を上るときにつまずいて転ぶ」など、階段での事故の心配がなくなります。

平屋への減築で階段からの落下事故の心配がなくなるイメージ

平屋への減築で階段からの落下事故の心配がなくなる ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

無防備な部屋がなくなり防犯性がアップ

昼間は人の気配がせず夜になっても暗いままの部屋は、家の外からでも普段使われていないことがわかります。このような部屋は空き巣にとって好都合。留守だと思って侵入したときに、万が一、家の中に人がいたとしても気づかれにくく、逃げやすいからです。

減築をすることで未使用の部屋をなくすことは、家の防犯性が高まり安全性も向上します。

空き巣に入られそうな家のイメージ

使用していない部屋は空き巣に狙われやすい。減築で無防備な部屋をなくすことで防犯性が高まる ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

大きく減築することで固定資産税が減る

住宅にかかる固定資産税は、床面積によって異なります。減築で床面積を減らすことで、固定資産税額は安くなります。

固定資産税額が減るイメージ

床面積が減るため、その分、固定資産税額が減ることになる(画像/PIXTA)

家族の思い出が残せる

減築を考えるのは、小さかった子どもが独立したり、同居していた親を見送ったりで、その家で暮らす人数が減ったころ。家を取得してから今までの長い年月の中で、家族の思い出もたくさん生まれたはずです。家を壊して建て替えたり、住み替えたりすれば、新しい住まいで暮らすことはできますが、思い出の空間は消えてしまいます。
「減築なら、これまで子どもと過ごした同じ家で暮らすことができ、家族の思い出の場所が残せます」

子どもが考える実家のリフォーム。どこを工事する?費用相場や贈与税、住宅ローンでの注意点は? 

家族の思い出を残せる減築のイメージ

今の家に残る家族の思い出を残せるのも減築のメリット ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

減築リフォームにはどんな費用がかかる?

解体費用以外にも、新たにつくる外壁や屋根の費用などがかかる

  • 解体費用
  • 解体で発生した廃材の処分費用
  • 解体、リフォーム工事に使用する足場代
  • 建物の状況によっては既存の基礎や躯体(くたい)の補修費用
  • 減築をした部分に新たにつくる外壁や窓、屋根の費用
  • 内装工事にかかる費用
  • 仮住まい費用
  • 引越し費用(2回分)
  • 不要になった家具の処分費用

また、減築リフォームの際に、減築だけでなく、スケルトン(骨組)にして建物全体の間取り変更をしたり、住宅設備の交換、外壁や屋根の補修や張り替え、塗り替えなども同時に行ったりする場合は、工事内容はさらに増えることになります。

減築にかかる費用の目安は?

減築にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。

「工事施工面積や住宅の構造、建物の立地などによって工事費は異なります。工事施工面積は大きい方が、また、住宅の構造は木造よりも鉄筋コンクリート造の方が費用は高くなります。さらに、住宅密集地や狭い道路沿いに立地している場合、廃材を搬出したり建築資材を搬入するための大きな車両を入れられず、小さな車両で何度も出入りすることになればそれだけ費用がかさみます。そのため、費用はケースバイケース。あくまでも目安とするなら、一般的な木造住宅で工事施工面積1m2当たり、15万〜25万円くらいといえるでしょう」

なお、近年の傾向として注意しておきたいのは解体費用の値上がり。 「人手不足や、廃材処理にかかる費用が影響して、解体費用が上がっています。例えば一般的な木造2階建てで2年前なら180万〜200万円程度で解体できた家が、最近では250万〜280万円前後かかったりしています」

リフォーム会社から見積もりを取るイメージ

減築にかかる費用はケースバイケース。まずは見積もりをとることが大切 ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

減築リフォームで住宅ローンは利用できる?

減築リフォームの資金は住宅ローンから借りることができる

減築リフォームにかかる費用の調達方法は、自己資金のほか、ローンを利用する方法があります。多くの金融機関では住宅の取得やリフォーム費用の資金融資として、住宅ローンのほか、リフォームローンというローンを取り扱っています。それぞれの特徴を知って、自分にとって有利な選択をする必要があります。

例えば、金利は一般的にはリフォームローンよりも住宅ローンの方が低くて有利ですが、住宅ローンは抵当権設定の必要があるため諸費用はリフォームローンの方が少なくてすみます。おおまかに言えば、返済期間を長くするなら、低金利で借りられる金額の上限が多い住宅ローン、短期で完済する予定なら金利は高めでも諸費用が少ないリフォームローンが向いています。どちらが有利かは、多くの金融機関のホームページにあるローンシミュレーションで試算してみるか、さらに詳細を確認したい場合は銀行などの融資窓口で相談して試算をしてもらうのがおすすめです。

住宅ローンとリフォームローンの特徴(2023年3月6日/メガバンクの一例)
  住宅ローン リフォームローン
金利 低い(変動金利0.475 %、固定10年1.08%、全期間固定(31~35年)1.79%) 高い(変動金利2.875%(優遇金利1.99%))
抵当権設定 必要 不要
借入限度額 多い(1億円) 少ない(1000万円)
諸費用 多い 少ない
選べる返済期間 長い(最長35年) 短い(最長15年)
融資の審査にかかる期間 長い 短い
表は一例。金融機関によって融資条件は異なる(表作成/SUUMO編集部)

住宅の資金のイメージ

リフォームのための資金は住宅ローンを利用できる(画像/PIXTA)

減築リフォームで減税制度はある?

減築リフォームでも住宅ローン控除が受けられる

返済期間10年以上などの条件をクリアしていれば、ローンを利用して減築リフォームをした場合は、住宅ローン控除の対象になります。リフォームの場合、入居した年から10年間、年末のローン残高の0.7%が所得税から控除される制度。所得税から控除しきれなかった分は住民税から一部控除される仕組みです。この制度を利用するためには、リフォーム工事を行って、入居した翌年に確定申告をする必要があります。会社員の場合は、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きが行われます。

ローンを利用してリフォームをした場合、所得税を納めている世帯ならぜひ活用したい制度です。なお、住宅ローン控除を利用するためには、主に下のような要件を満たす必要があります。

  • 対象となるリフォーム工事費用から補助金などの額を控除した後の金額が100万円超であること
  • 店舗や事務所などの併用住宅の場合、居住部分の工事費がリフォーム工事全体の費用の2分の1以上であること
  • 住宅の引き渡し、または工事の完了から6カ月以内に自ら居住すること
  • リフォーム工事後の床面積が50m2以上
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上
  • その年の合計所得金額が2000万円以下
  • 2025年12月31日までの入居であること

 

【FP監修】リフォームローンの種類や金利と選び方。審査、住宅ローンとの違いなどを解説 

耐震リフォームで固定資産税の減額や所得税の控除が受けられる

住まいの耐震性を高めることが目的で減築リフォームをするケースもあります。現行の耐震基準に合わせるリフォームを同時に行うなら、知っておきたいのが固定資産税や所得税が節税できる制度です。

・固定資産税の減額
現行の耐震基準に適合する耐震リフォームであること、リフォーム工事費用が50万円超であることなどの要件を満たすと、耐震リフォーム完了の翌年分の住宅にかかる固定資産税が、床面積120m2相当分までが工事完了年の翌年度分1年間、2分の1に減額されます。ただし、1982年1月1日以前からある住宅であることが要件です。制度期間は2026年3月31日までです。

・所得税の控除
現行の耐震基準に適合する耐震リフォームであること、自ら居住する住宅であることなどの要件を満たすと、最大控除額62.5万円の所得税控除が受けられます(控除は納めた所得税が上限)。ただし、1981年5月31日以前に建築された住宅であることが要件です。制度期間は2025年12月31日までです。

そのほか、バリアフリー工事や断熱工事も減税制度があります。工事内容によって併用できる制度、できない制度がありますから、詳しくは税務署や市区町村の窓口でご確認ください。

【最新版】リフォームで使える補助金と減税制度。対象のリフォーム・リノベーション、補助金額や申請方法・期限は?

住宅ローン控除のイメージ

要件をクリアしていれば、住宅ローン控除などの減税制度が利用できる ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

減築リフォームで利用できる補助金制度はある?

耐震リフォームを同時に行う場合は補助金が出ることも

減築リフォームと同時に行う耐震リフォームは、住宅のある自治体に補助金制度があれば、補助金をもらえる場合があります。自治体によって異なりますが、多くの場合、旧耐震基準の家は耐震診断が無料、または耐震診断・耐震リフォームに補助金が出る、といった補助金制度が設けられています。まずは、住宅のある自治体に補助金や助成金の制度があるかを確認しましょう。制度を利用するためには、耐震診断を受ける前に申請が必要。着工後の申請や耐震診断をせずに行う工事は制度の対象外になるのが一般的です。

そのほか、バリアフリー工事や断熱工事の補助金制度もありますから、補助金や助成金制度の利用を検討するなら、リフォームの経験豊富な会社に早めに相談しましょう。

耐震リフォームのイメージ

減築をするリフォームの際に、耐震リフォームも行うことで補助金制度の対象になることも※写真はイメージ(画像/PIXTA)

減築リフォームでは建築確認申請や登記の変更は必要?費用は?

減築のみの場合は建築確認申請は不要。ただし例外がある

一般的な木造2階建て住宅の場合は、減築リフォームでの建築確認申請は不要です。

しかし、減築リフォームでも例外があります。

建築確認申請が必要になるのは「2号建築物(3階建て以上の木造住宅など)」「3号建築物(2階建て以上の鉄骨住宅など)」で、主要構造物の「大規模な修繕や模様替え」を行う場合。模様替えとは、モルタルの外壁を剥がし、サイディングの外壁を張るなど既存の材料と異なる材料を使用して行う工事のこと。

「主要構造物には屋根や外壁が含まれているため、減築の場合でも、外壁や屋根の半分以上の模様替えや修繕をすると、建築確認申請が必要になります」

建築確認申請が必要な場合は誰が申請する?費用は?

減築リフォームで、もしも建築確認が必要になった場合、申請は施主が自分で行うことも可能ですが、申請についての知識がない場合は、現実的ではありません。

「建築会社、リフォーム会社に任せるのが一般的。建築確認申請を自分でする施主はほとんどいないでしょう。建築確認申請にかかる費用は、施工面積や建物の構造、申請先によって異なります。今は、民間の審査機関に依頼するのが一般的で、その場合、諸経費や図面作成料も含めて、建築確認申請費用は20万〜40万円程度が目安です」

減築リフォームは登記が必要

一般的に、内装や間取りの変更、住宅設備の交換などを行うリフォームやリノベーションでは、登記は不要です。しかし、減築リフォームは工事完了後に床面積が変わってしまうため、登記が必要になります。

必要な登記の種類は「建物表題変更登記」。これは、増築や減築などで建物の現況が変化した場合に、登記されている内容と合致させるための手続きです。専門家に任せる場合は土地家屋調査士に依頼しますが、自分で行うこともできます。

なお、建物表題変更登記は申請義務があるため、建物の減築から1カ月以内に登記を行う必要があります。

減築をするなら知っておきたいリフォーム会社選びのポイント

ライフスタイルの変化に寄り添ってくれる会社を探そう

夫婦2人の暮らしになった、1人で暮らすことになったなど、ライフスタイルの変化に合う自分サイズの家にするのが減築。家を購入したり、注文住宅を建てたりするときとは、施工会社に求めるものが異なるかもしれません。どんな視点で、リフォーム会社を探せばいいのでしょう。

「リフォーム会社を選ぶ際、経験値や提案力、コストなどから判断することはもちろん重要です。しかし、それよりも、ライフスタイルの変化や、シンプルな暮らしをしたい気持ちに寄り添える会社かどうか、という点が大切ではないでしょうか。工事をするのは家族の思い出がある場所。これまでの暮らしや、今後どう暮らしていきたいのか、などを担当者と話す中で、『家族の思い出を飾るギャラリーコーナーをつくるのはどうでしょう』など、施主の思いを大切にする提案などがあれば、リフォーム会社と施主との関係が近づくことで信頼関係も生まれやすくなるかもしれません。建築というのは、信頼関係があるといいものができるんです。リフォーム会社を探す際には、会社を訪ねてみて、これまでどんな家を建て施主の思いを形にしてきたのか、どんな思いでリフォームしてきたのかなどを詳しく話してもらうといいですね。リフォームや新築をした友達の紹介でもいいでしょう。信頼できる何かを感じられるリフォーム会社を、自分で見つけることが大切です」

リフォーム会社との信頼関係が生まれたイメージ

リフォーム会社と施主に信頼関係が築ければリフォームも良い結果につながる ※写真はイメージ(画像/PIXTA)

減築リフォームをした成功実例を紹介!

減築にはさまざまなパターンがありますが、ここでは、減築をすることで耐震性への不安を解決した実例を紹介します。

1・2階を減築して耐震性への不安を解消。床面積は減っても以前よりも広く感じる家に

減築リフォームを行ったのは中古で購入した築33年の戸建て。建物の一部が傾いており耐震性に不安があったそう。複数の会社に相談したものの、耐震工事が技術的に難しいといわれる中、唯一、予算内での耐震補強ができると回答してくれた会社に依頼した。

傾いていた部分を減築し、耐震補強を実施。LDKは1階から2階に移動したほか、玄関や水回り、階段などを動かす大規模な間取り変更を行うことで、無駄なくすっきりと暮らせる住まいへと一新。1階の減築部分は庭+テラスを設けて敷地を活用。2階の減築した部分にはバルコニーを設け、プチトマトを育てたり、趣味の天体観測を楽しんでいるそう。減築で床面積が狭くなったのにもかかわらず、住空間は以前よりも広く感じられるようになったとか。暮らしやすさも、地震に対する安心感も手に入れることができたリフォームの成功例です。

減築リフォームをした実例のLDK

2つの居室があった2階は間仕切りを取り払い、天井を上げて開放感たっぷりのLDKに。4方向にある窓から入る光と風、抜群の眺望が楽しめる (画像提供/リフォーム工房)

減築リフォームをした実例のキッチン

2階に移動したキッチンは4.5畳のゆとりあるスペース。対面式キッチンは、料理や後片付けをしながらLDにいる子どもの様子を見守ることができる(画像提供/リフォーム工房)

リフォーム前の間取り

リフォーム前の間取り。LDKは1階にある(画像提供/リフォーム工房)

リフォーム後の間取り

リフォーム後の間取り。LDKは2階に移動。玄関や水回りの位置や玄関の向きが変更になった。1階の減築部分はテラスに、2階の減築部分はバルコニーが設けられている(画像提供/リフォーム工房)

【DATA】
リフォーム費用:1567万円
工期:2.5カ月
間取り:[ Before ] 3LDK+S → [ After ] 3LDK+S:納戸
リフォーム面積:92.80m2
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、子ども部屋、浴室、洗面所、トイレ、階段、収納、玄関、外壁・屋根、バルコニー他
築年数:33年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:リフォーム工房
※リフォーム内容は契約時のもの。費用は概算。建物の状態や契約時期によって費用は変動します。掲載した費用、工事内容などはあくまでも参考としてください。

まとめ

家を建てたり買ったりしてからも変化していく暮らしのサイズ。家が広すぎると感じるようになったら、減築リフォームという選択もあります。減築には、建物のメンテナンス費用や光熱費を抑えられる、掃除が楽になる、固定資産税が安くなるなどメリットもいっぱい。お得な減税制度や補助金制度もチェックして、減築リフォームを検討してみましょう。

取材協力/佐川旭さん

構成・取材・文/田方みき  

イラスト/森越ハム

取材協力・監修/佐川旭さん
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がけている
執筆・取材/田方 みき
広告制作プロダクション勤務後、フリーランスのコピーライターに。現在は主に、住宅ローンや税金など住宅にかかわるお金や、住まいづくりのノウハウについての取材、記事制作・書籍編集にたずさわる。