冬寒い、夏暑いという住まいの過ごしにくさの原因は主に断熱不足。最近の住宅は断熱性が向上していますが、古い住宅は断熱が行き届いていなかったり、無断熱の場合も多いのです。
どうしたら断熱不足を解消し、冬暖かく、夏涼しい家にできるのか、断熱リフォームの方法と費用相場を紹介しましょう。
記事の目次
断熱リフォームにかかる費用相場
断熱リフォームと一口にいってもさまざまな方法があります。
予算に応じて方法を選ぶことが可能なので、どのような方法があるのかを知っておきましょう。
築年数によって必要な断熱が異なる
住宅の断熱は省エネ基準に沿って行われることが多いのですが、そもそも省エネ基準ができたのは1980年、その後3回の改正を経て、今に至っています。
ただし省エネ基準は義務ではないので、必ずしも基準どおりに行われているとは限りません。
とはいえ、築年数が新しくなるほど断熱性が向上しているのは確か。
築年数やその家の断熱状態によって、必要な断熱工事が異なってきます。
また、予算によっても最低限、ここだけはやっておきたいという断熱箇所があります。
断熱箇所ごとにリフォーム費用の目安を見ていきましょう。
窓の断熱リフォーム費用相場(カバー工法でサッシ交換)
手軽にできて効果の高いのが、窓の断熱です。
関東以西で窓を断熱するようになったのは、主に1999年に省エネ基準が改正されてから。
基準は義務ではありませんが、省エネ基準に沿って家を建てるときは複層ガラスが用いられるようになりました。
したがって築20年超の家では、ほぼ単板ガラスを使用していると思われます。
アルミサッシも単板ガラスもともに断熱性が低い素材ですので、暖房時に窓から多くの熱が奪われています。
窓の断熱性を上げる方法としては、単板ガラスを複層ガラスに変えるか、内窓を設ける方法があります。
複層ガラスは2枚または3枚のガラスの間の空気層が、断熱効果を発揮し、結露も防止できます。
内窓は既存の窓の内側にもう1枚サッシを設けて二重窓にするもので、やはり2枚のガラスの間の空気層が断熱効果を発揮し、結露も防止できます。
単板ガラス用サッシを複層ガラス用サッシに変えるには、カバー工法がよく行われます。
外壁を解体することなく、単板ガラス用サッシを複層ガラス用サッシに交換できる方法です。
カバー工法によるサッシ交換の一般的な費用相場は、材料・工事費込みで、腰高窓が約17万円~27万円、掃き出し窓が約34万円~41万円です。
より断熱性の高いLow-E複層ガラスを用いると、腰高窓が約18万~28万円、掃き出し窓が約36万~43万円となります。
サイズ | 一般複層ガラス | Low-E複層ガラス |
---|---|---|
腰高窓 | 約17万~27万円 | 約18万~28万円 |
掃き出し窓 | 約34万~41万円 | 約36万~43万円 |
窓の断熱リフォーム費用相場(内窓)
一方、内窓は既存のサッシの解体撤去費用がかからず、新規の設置費用のみなので工事費が安くなります。
内窓の一般的な設置費用の相場は材料、工事費込みで、腰高窓が単板ガラスの場合約7万5000~9万円、複層ガラスを用いると約8万5000~10万円、Low-E複層ガラス約9万5000~11万円ほどです。
掃き出し窓が単板ガラスで約17万5000~20万円、複層ガラスで約20万5000~23万円、Low-E複層ガラス約22万5000~25万円となります。
サイズ | 単板ガラス(3mm) | 一般複層ガラス | Low-E複層ガラス |
---|---|---|---|
腰高窓 | 約 7万5000~9万円 | 約 8万5000~10万円 | 約9万5000~11万円 |
掃き出し窓 | 約17万5000~20万円 | 約20万5000~23万円 | 約22万5000~25万円 |
窓8カ所に内窓を取り付けた場合のリフォーム費用は以下になります。
掃き出し窓2カ所、腰高窓6カ所として、掃き出し窓が約35万~40万円、腰高窓が約45万~54万円で、合計約80万~94万円となります(単板ガラスの場合)。
掃き出し窓2カ所 | 約35万~40万円 |
---|---|
腰高窓6カ所 | 約45万~54万円 |
合計 | 約80万~94万円 |
窓の断熱効果をあげるには? DIYからリフォームまでを徹底解説
床の断熱リフォーム費用相場
住まいの断熱は本来、外気に通じる床、壁、天井(または屋根)を断熱材でくるみ、かつ窓を複層ガラスなどで断熱し、魔法瓶のような構造にします。
築年数等によって、今の家が断熱不足だったり、無断熱だったりする場合は、快適な住まいにするには断熱工事を行ったほうがよいでしょう。
ただ、床・壁・天井(屋根)全てを断熱するとなると、大がかりな工事になり費用も多くかかってしまいます。
そこで、予算に応じて部分断熱をする方法があります。
床の断熱は、床材の下に装填(そうてん)します。
床断熱を行うことで、床下からの冷気が直接、室内に伝わらず、気密性も増すので隙間風が入らず、暖かくなります。
床下にもぐりこめる場合は、床の解体等は不要です。
床の張り替えを同時に行う場合は、床の解体撤去、再仕上げ工事を伴います。
床の張り替えと同時に床断熱を行う場合のリフォーム費用の目安は、
解体撤去、床組、仕上げ工事を含んで約80万~120万円です(施工面積約60m2の場合)。
床の解体を伴わなければ、約20万~30万円です。
床の張り替えと同時に行う場合(施工面積約60m2の場合) | 約80万~120万円(解体撤去、床組、仕上げ工事を含む) |
---|---|
床の解体を伴わない場合 | 約20万~30万円 |
天井の断熱リフォーム費用相場
天井は解体しないで、断熱材を天井裏に敷き込めるケースが多いです。
天井を断熱すると、暖房した熱が天井から逃げていくのを抑える効果があります。
また、夏場の熱気を部屋に伝えにくくする効果も。
天井の断熱リフォーム費用は、天井の解体を伴わない場合、材料、工事費込みで約7万円~20万円(施工面積約60m2の場合)です。
天井の解体を伴わない場合(施工面積約60m2の場合) | 約7万~20万円(材料、工事費込み) |
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壁の断熱リフォーム費用相場
床、天井ときて、壁を断熱すれば、全ての構造部を断熱したことになります。
しかし壁は、解体して断熱材を装填した上で、内装の再仕上げを行わなければならず、工事が大がかりとなります。
一般的な断熱リフォーム費用の相場は、壁の解体撤去費用、再仕上げ費用を含めて、約100万~150万円
(延床面積約120m2の家の場合)かかります。
延床面積約120m2の家の場合 | 約100万~150万円(壁の解体撤去費用、再仕上げ費用を含む) |
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家全体を断熱するリフォーム費用相場
では、家全体を断熱した場合のリフォーム費用を見ます。
家全体を断熱する際は、多くの場合、家全体の内装を変える、間取りも含めて大規模リフォームを行うなど、他のリフォームを行う際に併せて行うケースが多いようです。
というのも断熱工事は、前述のように、壁の中などに行うものなので、壁の場合はいったん壁を解体し、断熱材を装填して再仕上げ、床の場合も床の張り替えとともに行うことが多くなります。
したがって、内装工事や間取り変更などを含む大規模リフォーム時に、ついでに断熱も行うことが多いのです。
ちなみに耐震補強も同様に大規模リフォーム時に行うことが多いようです。
家全体の断熱リフォームだけを抜き出した場合の費用相場は、ここまでの費用を合わせて以下のとおりです。
天井断熱 | 約7万~20万円 |
---|---|
床断熱(床解体・張り替え含む) | 約80万~120万円 |
壁断熱(壁解体・再仕上げ含む) | 約100万~150万円 |
窓断熱(内窓設置8カ所) | 約80万~94万円 |
合計 | 約267万~384万円 |
断熱リフォームにかかる工期と見積もり
断熱リフォームを窓や床だけなど部分的に行う場合の工期の目安と、リフォーム費用の見積もり例を見てみましょう。
窓の断熱リフォームの工期と見積もり
内窓設置の場合、まず現場調査で採寸をおこない、正確なサイズで内窓を製造します。
その間の期間を別にすれば、設置工事そのものは短期間で済みます。
全窓8カ所としても2日~3日程度見ておけばよいでしょう。
内窓設置箇所 | サイズ | 単価(材・工) | 金額(材・工) |
---|---|---|---|
1階洋室×3 | W1650mm×H1100mm | 7万5000円 | 22万5000円 |
1階LDK | W2730mm×H2000mm | 22万円 | 22万円 |
2階洋室×1 | W1650mm×H2000mm | 13万5000円 | 13万5000円 |
2階洋室×3 | W1650mm×H1100mm | 7万5000円 | 22万5000円 |
小計 | 80万5000円 | ||
諸経費 | 84万500円 | ||
合計 | 88万9500円 |
床の断熱リフォームの工期と見積もり
床の断熱リフォームは、床の張り替えを含む場合と、そうでない場合で、工期も費用もかなり異なります。
床の張り替えを含む場合は、1階床面積を約60m2として、工期は2~3週間程度。
床を解体せず、床下にもぐりこんで断熱工事を行う場合は、1週間程度です。
名称 | 仕様 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|---|
解体・撤去 | 既存幅木・床材 | 60 | m2 | 3500円 | 21万円 |
床下地張り | 構造用合板厚さ12mm | 60 | m2 | 1900円 | 11万4000円 |
フローリング | 複合フローリング | 60 | m2 | 5500円 | 33万円 |
床張り手間 | 60 | m2 | 2700円 | 16万2000円 | |
床断熱工事 | ポリスチレンフォーム | 60 | m2 | 2000円 | 12万円 |
小計 | 93万6000円 | ||||
諸経費 | 9万3600円 | ||||
合計 | 102万9600円 |
壁の断熱リフォームの工期と見積もり
各階の屋内外周部全部の工事となります。
壁工事のみだと工期は1~2週間程度で、仕上げまでできます。
一般には、耐震補強や間取り変更なども含めて、大規模工事時に壁断熱まで行うケースが多いようです。
大規模工事になれば、1~2カ月は見ておかなければいけません。
名称 | 仕様 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|---|
解体・撤去 | 既存壁 | 140 | m2 | 1580円 | 22万1200円 |
新規壁工事 | 石膏ボード(材・工) | 140 | m2 | 1620円 | 22万6800円 |
断熱工事 | グラスウール(材・工) | 130 | m2 | 1620円 | 22万6800円 |
ビニールクロス張り | 材・工 | 140 | m2 | 1620円 | 22万6800円 |
小計 | 90万1600円 | ||||
諸経費 | 9万160円 | ||||
合計 | 91万760円 |
天井の断熱リフォームの工期と見積もり
天井の断熱は2階建ての場合は2階のみ行います。
天井の解体工事がないとして、天井裏に断熱材を施工するだけなら、工期は2~3日です。
名称 | 仕様 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|---|
天井断熱工事 | グラスウール | 60 | m2 | 1620円 | 9万7200円 |
小計 | 9万7200円 | ||||
諸経費 | 9720円 | ||||
合計 | 10万6920円 |
断熱リフォームでどんな効果があるか
住まいを断熱すると、住み心地に大きく影響します。
外気温の影響を受けにくくなることから、冬暖かく、夏涼しい家になります。
冬は暖かく過ごせる
高いレベルで断熱をした冬の住まいは、冷気が中に入ることを抑え、暖房した熱が外に逃げていくのを抑えます。
その結果、暖房効果が大きくなり、家中どこにいても暖かく過ごせます。
部屋から廊下に出たときの温度差も少なくなるので、ヒートショックの影響を受けにくく、健康的に過ごせる住まいになります。
また、部屋の中でも床や壁の表面温度が高くなるので、低温で暖房していても暖かく感じられます。
夏は涼しく過ごせる
夏は外の熱気が屋内に伝わりにくく、冬の場合と逆に、天井や壁の表面温度が下がり、冷房の効きがよく、涼しく感じられます。
このため冷房の温度設定を下げすぎることなく、快適に過ごせます。
夏冬ともに開口部から熱が伝わる割合が高く、断熱のポイントは窓ということがよく分かりますが、
夏場はとくに開口部から熱が入る割合が高いのが特徴です。
断熱リフォームで電気代が最大8万円安くなる
断熱リフォームで住まいの断熱性を向上させると、冷暖房の効きがよくなり、節約効果があります。
下図のように、古い無断熱の状態から現行の省エネ基準のレベルに断熱すると、エネルギー削減率は約5割。
電気代にして約8万1000円もおトクになります。
一定の仮定を置いた試算。地域により年間暖冷房費は異なる
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断熱リフォームを安く抑える方法
断熱リフォームの方法は、予算に合わせて選べるので、リフォーム会社に相談しながら進めましょう。
解体工事を少なくする
リフォーム費用は解体工事を伴うかどうかで変わります。
例えば、床断熱は床を解体しないで床下に潜り込んでやってもらえるかどうか聞いてみましょう。
また、天井断熱は解体を伴わないことが多いので、予算が少ない場合は、天井断熱だけを行ってもよいでしょう。
サッシ交換より内窓が安い
サッシ交換は工事費が高くなりますが、内窓なら既存のサッシに手をつけずに済みます。
その分、工事費は安くなりますし、断熱効果は複層ガラスと同様にあります。
ただ、窓が二重になるので、ふだんの開閉の手間は増えます。
それも考慮に入れて、検討しましょう。
断熱リフォームで減税
断熱リフォームを行うと、所得税や固定資産税の減税になります。
おトクな制度に注目しましょう。
所得税と固定資産税が減税に
断熱リフォームを中心とする省エネリフォームは減税の対象です。
一定の要件を満たす断熱リフォームを行うと、所得税が最大で62.5万円(太陽光発電を搭載すると67.5 万円)控除されます。
対象となる省エネリフォームの工事費限度額は250万円(控除率10%)ですが、それを超えた分および省エネリフォームと併せて行うそのほかのリフォーム(控除率5%)も合わせて1000万円まで控除対象となります。
省エネリフォームの控除対象工事は、全ての居室の窓の断熱リフォームまたは窓断熱と併せて行う床、天井、壁の断熱、太陽光発電設備搭載です。
所得税控除の適用期限は2023年12月31日です。
また、固定資産税は、翌年分の納付額から家屋の120m2相当分まで3分の1が減額されます。
固定資産税減額の適用期限は2024 年3月31日です。
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断熱リフォームの注意点
床・壁・天井(または屋根)の断熱リフォームは、施工精度が要求される工事です。
リフォーム会社は実績の豊富な会社を選びましょう。
断熱工事は隙間が大敵
断熱は気密性がとても大事で、床や壁などに断熱材を装填する場合、隙間が生じると、断熱効果が激減します。
非常に精度が必要とされる工事なので、手慣れた職人さんにやってもらうのが大切です。
必ず実績のあるリフォーム会社に依頼
リフォーム会社は設備工事が得意なところや新築も併行してやっている建築経験が豊富なところなど、得意分野に違いがあります。
施工事例をチェックすることで、どのような工事を得意としているのかが分かります。
断熱は大規模リフォーム時に行われることが多いので、断熱や耐震を含むリフォームの実績が多い会社を選ぶと安心です。
まとめ
住宅の断熱は省エネ基準によるため、築年数やその家の断熱状態によって、必要な断熱リフォームが異なります。
窓・天井(屋根)・壁・床など外気に接している部分の断熱が足りていない箇所は、優先的にリフォームしましょう。
断熱リフォームは解体をともなうかどうかで費用が大きく変わります。
構成・文/林直樹 イラスト/長岡伸行 監修/甚五郎設計企画(柏崎文昭)
※文中の費用相場は著者および監修者による試算に基づきます