クロス(壁紙)の張り替えの費用相場。クロス選びのポイントは?DIYで張り替えはできる?

リフォームやリノベーションでクロス(壁紙)を張り替えると、費用はどれくらいかかるのでしょうか?知っておきたい空間別のクロスの選び方、コストを安くするポイントも紹介。一級建築士、インテリアコーディネーターの中西八枝佳さんに話を聞きました。

クロスの張り替えのイメージ

(画像/PIXTA)

記事の目次

クロスの張り替えのタイミングと効果

クロス(壁紙)の張り替えのタイミングはいつ?

新築で購入したマンションや一戸建てや、リフォーム済みの中古マンション、中古一戸建て。住み始めたころには真新しかったクロスも、年月が経つにつれて汚れや傷がついたり、窓からの紫外線に当たって変色してきたりします。クロスの多少の汚れや傷は、そこで暮らす人が気にならない場合は生活する上で大きな問題にはなりません。入居してからずっとそのまま、というケースも多いのだとか。

「長い方だと10年以上、なかには20年くらいそのままで、水回り設備などのリフォームをするタイミングで一緒に張り替える方も見られます」(中西さん、以下同)

クロスの張り替えは気軽にできる部屋のイメージチェンジ

汚れや変色していたクロスを張り替えることで、部屋の中は新築時のような美しさを取り戻します。また、後述しますが、最近は調湿性能や消臭性能などさまざまな機能をもつクロスがあるため、部屋の機能がアップするメリットもあります。

「部屋がきれいになること、機能面が向上することも大切ですが、クロスを張り替えることでの気持ちへの影響はとても大きいです。お部屋をもっとすてきにしたい、気分を変えたい、という理由でクロスの張り替えを希望される方が多くいらっしゃいます」

キッチンや浴室など住宅設備の交換や、大がかりな間取り変更に比べると、比較的手軽にできるのがクロスの張り替えです。家の中すべての張り替えが予算的に難しい場合は、「部屋の一面だけ色を変える」「汚れやすいトイレやキッチンの壁だけ張り替える」など、部分的なリフォームでも部屋のイメージチェンジを楽しめます。

「オープンタイプのキッチンなら、リビングから目に入りやすい背面の壁を張り替えるとLDKの雰囲気が変わります。施工面積が小さければ、工事期間が短いですし、既存の壁の上から張る方法であれば手間と費用を抑えることもできます」

アクセントクロスの色の選び方と失敗しないためのポイントとは? 成功事例とともに人気の色や使い方を紹介

壁の一面だけクロスを張り替えたダイニングキッチンのイラスト

クロスを一面だけ張り替えるリフォームでも部屋の印象は大きく変わります(イラスト/上坂じゅりこ)

クロスの種類は主に6種類

クロスは素材によって大きく6つの種類があります。それぞれの特徴について解説しましょう。

ビニル系のクロス

日本国内の多くの住宅で使用されているクロスの主流。塩化ビニル樹脂などを主な原料としたビニルシートに、紙などが裏打ちされています。価格が安いため家づくりやリフォームの際のコストを抑えやすいうえ、耐久性や耐水性にも優れています。カラーバリエーションやプリントによる模様も豊富。漆喰(しっくい)を塗ったように見える凹凸の加工がされたものもあります。

オレフィンクロス

ポリエチレンやポリプロピレンといった合成樹脂を主な素材に作られたクロス。ビニル系のクロスと同様に耐久性や耐水性に優れていますが、価格はビニルクロスよりも高め。焼却した際に有毒ガスがほとんど発生しない点も特徴です。

無機質系のクロス

漆喰や珪藻土(けいそうど)、ガラスなどを主な素材として作られたクロス。漆喰や珪藻土そのものを塗るよりもコストを抑えることができます。塗り壁のような質感が人気です。

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紙系のクロス

和紙のほか、欧米でよく使われる輸入紙のクロス。和紙は落ち着いた雰囲気で和室のほか、和モダンのデザインの部屋とよく合います。輸入紙は日本製のクロスにはない模様や色合いのものが多く、こだわりの空間に仕上げたい人に人気です。

繊維系のクロス

自然素材の綿や麻、化学繊維のレーヨンなどが使われています。高級感や重厚感があり、水にぬれても破れにくい特徴があります。繊維に埃がからみやすいのが難点ですが、クロスによっては軽く掃除機をかけることできれいにすることができます。

木質系のクロス

天然木を薄くシート加工した突き板シート(銘木シート)とコルクを薄く加工したコルクシートがあります。ぬくもりのある質感が魅力ですが、ほかのクロスよりも価格は高めになります。壁の下部の腰壁部分に使うと木材で仕上げる場合よりもコストを抑えられます。

クロスはさまざまな機能を知って選ぶ

最近のクロスは、見た目の美しさだけでなく機能性も充実。おすすめの機能は、部屋の用途やライフスタイル、家族構成などによってさまざまです。リフォームでクロスを選ぶときには、どんな機能があるかもカタログで確認しましょう。

「お部屋をきれいにしたいからクロスの張り替えをするわけですから、汚れ防止機能のあるクロスを上手に使うといいですね。ペットを飼っているご家庭なら、汚れだけでなく傷もつきにくいペット対応の耐久性にすぐれた壁紙を選ぶといいでしょう」

では、機能性クロスの主なタイプをご紹介します。

調湿機能

空気中の湿気を吸収し放出する「吸放湿性」や、空気中の水分が壁紙を通過する「通気性」があるクロスには、調湿性能が期待できます。壁紙だけでは部屋の湿度調節をするところまでの威力はありませんから、吸放湿性の高い下地と併せたり、加湿器や除湿器を併用したりなど、合わせ技で室内環境の向上を目指すといいでしょう。紙や繊維、珪藻土などを使った天然素材のクロスから選ぶのが一般的です。

消臭機能

クロスの表面に練り込まれた消臭剤が、ホルムアルデヒドやペット臭、タバコ臭などさまざまなニオイ原因物質に反応し吸着・分解。気になるニオイに対応します。時間の経過とともに消臭効果は弱くなっていくのが一般的。

汚れ防止機能

表面に汚れ防止性能を目的とするフィルムが貼り合わせられたクロス。汚れを拭き取りやすいため、小さな子どものいる世帯や、人が多く通る玄関などの施工に向いています。油汚れに強いタイプや水汚れに強いタイプなど、さまざまなタイプがあります。

抗ウイルス・抗菌機能

表面コート層に抗ウイルス剤などが入ったクロス。壁の表面についたウイルスを破壊し有機成分を分解。抗菌機能は、壁表面で細菌の増殖を抑えます。家族の集まるリビングや、トイレ、室内にウイルスが持ち込まれる玄関などへの施工が向いています。

ペット対応

表面をフィルム加工することで、一般的なビニルクロスよりも犬や猫の引っかき傷に強いペット対応のクロス。消臭や抗菌機能も組み合わせたクロスなど、ペットとの暮らしがより快適になるよう配慮されています。

汚れ防止機能があるクロスをさわる子どもとペットのイラスト

汚れ防止機能があるクロスは、汚れを拭き取りやすく、キレイが長持ちします(イラスト/上坂じゅりこ)

クロス張り替えのメリットは?

前述のとおり、クロスを張り替えることで部屋はキレイに、気持ちも新しくなります。では、漆喰などの塗り壁ではなく、クロス張りの壁だからこそのメリットには何があるのでしょうか。

塗り壁に比べると工期が短い

「クロスの張り替えは、施工面積や施工方法、職人さんの人数などによって工期は違ってきます。簡単な工事で施工面積が大きくない場合など、半日くらいでできてしまう場合もありますが、下地処理や乾燥に時間がかかるケースもあります。また、壁に照明器具が付いていると場合によっては電気工事も必要になります。とはいえ、広い面積の場合は漆喰や珪藻土などで壁を塗り替える場合に比べると、工期は短くてすみます」

張り替え工事の流れ(例)

室内の家具や照明器具などを移動・取り外し、清掃・養生

既存のクロスを剥がす

下地処理(パテを塗る、サンダーをかけて凹凸をなくす、下地処理剤のシーラーを塗布)

クロスにのり付け

壁に張るのに適した状態になるまでクロスを養生

新規のクロスを張る

塗り壁に比べるとコストが抑えられる

クロスの張り替えには、クロスそのものの材料費のほか、人件費などもかかります。塗り壁に使う漆喰や珪藻土は、ビニルクロスなどよく使われるクロスに比べると価格が高く、工期も長くなるため人件費が高くなります。輸入の紙や布などグレードが高いクロスを使う場合を除けば、クロスを張り替える方が、塗り壁よりもコストを抑えることができます。

クロス張り替えのデメリット・注意点は?

クロスを張り替えることによるデメリットは無いと言っていいでしょう。ただし、リフォーム前に気がつかなかったために、仕上がりに不満が出るケースはあります。その注意点についてご紹介します。

張り替えなかった部屋の古さが目立つ

長年使っているクロスは年月とともに少しずつ汚れていますが、毎日暮らしていると見慣れてしまっていてその古さに気がつきません。ですから、新しいクロスに張り替えると、部屋がこれまでよりも明るく感じたり、新築時に戻ったように感じたりします。家全体の壁を張り替える場合は問題ないのですが、注意したいのは一部の部屋だけを張り替えた部分リフォームの場合。クロスを新しくした部屋にいて、ふと、張り替えをしなかった部屋の壁が目に入ると、これまでは気が付かなかった汚れや変色、傷などが気になり始めてしまいます。予算に限りはあると思いますが、クロスを張り替える部屋から視界に入る壁などは、まとめて張り替えるのがおすすめです。

張り替えた部屋の家具や壁付けの家電、コンセントプレートの古さが目立つ

クロスが新しくなったことで、その部屋に置かれている家具や家電の古さが目立ってしまうこともあります。

「新しくした壁とのギャップが特に目立つのはコンセントプレートです。白い壁を好む方が多いのですが、白すぎるクロスを選ぶと、照明スイッチやコンセントのプレートの黄ばみが目立ってしまうのです。張り替えが終わってから、『コンセントプレートにこんな色、付いていたっけ?』と戸惑うことも。少し色の入った壁紙を選んだり、コンセントやスイッチのプレートも新しくしたりするといいですね」

なお、マンションの場合、インターホンの受信機は共用設備ですから居住者が自由に付け替えることはできません。受信機の古さが気になるなら、真っ白な壁紙は避けるといいでしょう。

クロスを新しくすることで、スイッチやコンセントのプレートの古さが目立つことも(イラスト/上坂じゅりこ)

クロスを新しくすることで、スイッチやコンセントのプレートの古さが目立つことも(イラスト/上坂じゅりこ)

6畳の部屋のクロスの張り替え費用の相場は?

クロスの張り替えにかかる費用は、さまざまな条件で違ってきます。ここでは一般的なグレードの壁紙を使った場合の費用の目安や、張り替え費用を左右するポイントなどについて解説します。

6畳の部屋。クロスの張り替え費用の目安は?

リフォームにかかる費用の目安は、使う材料や設備のグレード、施工面積、施工方法、同時にどのような工事を行うかなど、さまざまな要素で異なります。部屋のクロスの張り替えも同じ。とはいえ、数万円でできるものなのか、数十万円かかるのかなど、おおよその目安は知っておきたいでしょう。

6畳の部屋のクロスの張り替えは、いくらくらいかかるものなのでしょうか。

「6畳の部屋の場合、ドアや窓の大きさにもよりますが、約0.9m 幅のクロスが38m程必要になります。一般的に使われる壁紙は1m当たり1000円が目安。施工費や諸経費を合計すると、おおよそ10万円以下くらいが費用の相場と言えます」

材料費+施工費+諸経費が基本的な費用

クロスの張り替えには、材料費(壁紙代)に、施工費(職人さんの人件費)と諸経費が加算されます。人件費はどれくらい必要で、諸経費には何が含まれるのでしょうか。

「腕の良い職人さんの場合、人件費は高くなります。無地のビニルクロスのように柄合わせの必要がなく、伸縮性があるクロスは張りやすいのですが、張るのが難しいクロスを選び、腕の良い職人さんが施工してくれる場合は人件費が高くなります。

諸経費は、クロスを張る作業以外の工事内容や工事期間、工事範囲などの状況によって異なります。諸経費には職人さんの移動交通費、駐車場が用意できない場合は近隣に借りる駐車場代がかかります。マンションによっては、搬入や搬出の際に廊下やエレベーターなど共用部分を傷つけないよう養生が必要。そのほか、廃材の処理費用、依頼先によっては現場監理費などがかかる場合もあります」

諸経費の項目は依頼するリフォーム会社や地域によっても相場が異なります。

クロスの価格の相場は?

クロスの価格は素材やデザイン、機能などによって差があります。

「賃貸住宅などでよく見かける量産タイプのクロスは1m当たり800円程度です。一般的な壁紙は1m当たり1000円程度。輸入物のクロスはm単位ではなく20m単位などのロールで購入します。ロットによって色が少し違うことがあるので、追加で取り寄せることにならないよう多めに注文するのが一般的。その分、割高になってしまいます」

クロスは何m必要?施工面積+余裕分で計算される

張り替えにかかる材料費は、「クロスのm単価×施工に必要な長さ」+余裕分。

「施工面積は6畳、10畳、14畳といった部屋の広さではなく、クロスを張り替える壁の面積です。施工面積に対して幅約90cmのクロスが何m必要か。さらに、施工に必要な余裕分も考慮します。クロスを張る際には上下を長めにカットした状態で施工するため、柄のないものだと必要なm数×1.1倍。柄のあるクロスは、柄合わせをするためクロスは多めに必要で、m数×1.2倍程度が目安です」

規模の大きなリフォームの場合、価格は材工一式で見積もられることがある

クロスの張り替えだけを行うのか、住まい全体をリフォーム、リノベーションする際にその一部として張り替えるのかによっても、費用の考え方は違ってきます。

「張り替えがリフォーム全体の一部分であれば、人件費や廃材の処理費、駐車場代や交通費などはまとめて算出されます。一般的な手ごろな価格のクロスで施工する場合、m2単価は材工一式1800円〜が目安です。ただし、費用の算出方法はリフォーム会社によって異なります。材工一式での価格は高くても諸経費を抑えている会社もありますから、全体的な見積もりを確認することが大切です」

クロスの張り替えについて『材工一式』『材工込』『材工共』として材料費と施工費をまとめた金額の見積書だった場合は、材料費や施工費などの内訳で出してもらえるよう依頼してみましょう。

費用が高くなるのはどんなケース?

6畳の部屋の場合の張り替え費用の目安や、必要なクロスの長さの考え方について紹介しましたが、実際には工事の内容によってケースバイケースです。

「例えば、施工面積が小さな張り替えの場合でも、既存のクロスをはがし、下地処理をしたあと、乾燥を待つ時間がかかります。材料費は安くなっても、職人さんの人件費は大きな施工面積の場合と変わらず、トータルで割高になることもあります」

そのほか、家具の移動やエアコンの取り外しが必要な場合、施主が自分で移動や撤去を行うのか、リフォーム会社に依頼するかによっても費用は上下します。

「コンセントの移動や増設、照明器具の移設や交換は電気工事士の資格をもつ人が行う必要があり、クロスの張り替えの際に併せて行うなら職人さんとは別に電気工事士の人件費なども必要になります。そのほか、施工場所がトイレの場合も、張り替える際に便器の着脱が必要になると、設備会社の人件費や施工費が発生します」

クロスの張り替えのコストを抑えるには?

選ぶ材料や施工面積、工事内容によってコストが変わるクロスの張り替え。予算内で満足できるリフォームにするため、コストを抑えるポイントを知っておきましょう。

クロスのグレードを見直す

広い範囲でクロスの張り替えをする場合、少しの単価の差が総費用に影響します。無地のシンプルな一般的なクロスを使用することでコストダウンにつなげることができます。内装にこだわりたい部屋だけはグレードの高いものを選んでみるなど、メリハリのある選び方にするのもいいでしょう。

将来予定しているリフォームがあるならまとめて施工する

クロスを張り替えたあと、それほど年数がたたないうちに水回り設備の交換や間取り変更などのリフォームをすると、せっかく張り替えたクロスを張り直したり、壁を撤去したりということになります。短期間で複数回の張り替え費用が発生するのはもったいないですから、別のリフォームも予定しているなら、まとめて実施してしまう方が材料費や施工費、人件費などさまざまな費用が割安になります。

マンションの場合、定期的に行われる大規模修繕工事で専有部分の給排水管の交換が行われるケースがあります。その際、壁を解体して給排水管を交換し、壁紙を張り直すことになります。近々、大規模修繕工事が予定されているなら、どんな工事内容になりそうか管理組合に確認しておくのがおすすめです。

複数の会社に見積もりをとる

クロスの張り替えに限らず、リフォームでは複数の会社に見積もりをとる相見積もりをすることが大切です。同じクロスを指定しても、リフォーム会社によって諸経費の計算方法や人件費が異なり、総額に差が出ます。コストダウンにはならないかもしれませんが、比較することで割高な費用になることは防げます。

DIYはできる?

クロスの張り替えを自分でやってみたい、という人も多いでしょう。張り替える作業そのものが楽しかったり、コストダウンにもつながったり、DIYにはメリットが多くあります。でも、失敗してしまうリスクも。DIYはどんな人に向いているのでしょうか。また、DIYにチャレンジするならどんなことに気をつければいいのでしょう。中西さんにアドバイスをいただきました。

DIYそのものを楽しめる人におすすめ

クロスの張り替えは、専門的な技術がなくても失敗なくできるものなのでしょうか。

「下地や建物の構造にもよりますが、木造の住宅の場合は木材が湿気を吸うことでわずかですが膨張したり、湿気を吐き出すことで収縮したりします。そのように壁が動くため、クロスを張ってから継ぎ目が割れてくることはあります。クロスの伸び縮みも考慮して施工するのが職人さんのスキル。職人並みの仕上がりを望むのではなく、少しくらいヨレたり、隙間ができたりしてもいい、自分で張り替えるのを楽しみたいという人ならDIYは向いていると思います」

チャレンジするならDIYに向いているクロスを選ぶ

張り替えは、既存のクロスを剥がしたり、下地処理をしたりという手間が大変。クロスの裏にのり付けをするのにもスペースが必要です。

「もっと気軽にクロスを変えるなら、賃貸住宅でも使える、はがせるタイプの壁紙を選ぶといいでしょう。既存の壁紙の上から張ることができますし、粘着力が弱いので張り直したり、張り替えるのも簡単です」

一般的なクロスの裏側はのり付けされていない粘着力のない状態で販売されており、壁に張るためには施工現場でのり付けをするため、手間がかかりますし、作業スペースの確保も必要です。クロスの販売会社の中には、購入したクロスへののり付けを代行し、施工時まで乾かないよう処理をして納品する有料オプションがあるところも。クロスの選択肢が増えるので、利用してみるのもいいでしょう。

最初は面積の小さな壁でチャレンジ

糊付けされたクロスはずっしりと重く、高いところに張るためには脚立が必要。初めてのクロス張り替えは、上手にできるかわかりません。まずは、シールタイプの壁紙を面積の小さな壁に張ってみるところから始めましょう。

「コンセントや照明スイッチのプレートなど、クロス以外のものがない場所でチャレンジしてみて、自分がDIY に向いているかどうか確認するのがおすすめです」

キッチンの壁にクロスを張っているイラスト

DIY初心者なら小さな面積でクロスを張ってみることからチャレンジ(イラスト/上坂じゅりこ)

部屋別にプロがアドバイス。どんな壁紙を選べばいい?

部屋や場所によって、おすすめのクロスや張り替えの注意ポイントがあります。リフォーム会社との打ち合わせやDIYにチャレンジする前の参考にしてください。

リビングはドアや床との色のバランスに注意

リビングは家族が集まり、長い時間を過ごす場所。友人が遊びに来ることもあるでしょう。それだけに、リビングのクロスは色や柄選びにこだわる人も多いはず。

「リビングのカラーコーディネートで気をつけたいのは、リフォームで変更する部分としない部分の色の調和です。床やドアは長持ちするのでそのまま使い、クロスだけを変更することが多いかと思います。クロスだけを好みで選んでしまうと、床やドアなど既存の部分と合わなくなることがあります。変更しない部分の色を確認して、そこにどんな色や柄のクロスを加えればいいかを考えましょう」

床リフォームの工法と費用相場。無垢材・複合フローリング・カーペット・タイル・畳を張り替え

リビングのクロスの選び方に迷っている夫婦のイラスト

変更しないドアや床とのバランスを考えてクロスの色を選びましょう(イラスト/上坂じゅりこ)

キッチンは準不燃以上の仕様になるよう注意

キッチンのクロス選びは「消臭機能があって、油汚れや水汚れにも強い機能性クロスがいい」「汚れが目立たないレンガ調の柄にしたい」「オープンキッチンだから明るくおしゃれなクロスにしたい」など、イメージを広げるほど楽しくなります。

ただし注意したいのは、キッチンは建築基準法上の火気使用室となること。 「キッチンは、どのクロスでもいいというわけではなく、準不燃以上の仕様となるようにしなくてはいけません。また、オープンキッチンの場合は、キッチンスペースだけでなくリビング・ダイニングのクロスにも影響します」

国土交通省から防火性能があると認定された防火壁装材料には認定番号が発行され、見本帳やカタログなどに表示されています。不燃の防火性能を有するものには「NM」、不燃は「QM」、難燃は「RM」が4ケタの番号の頭に付けられています。キッチンの場合、不燃、または準不燃の仕様が必要です。ただし、クロスの防火性能は、組み合わせる下地の種類や施工方法で異なるため、詳細はリフォーム会社に確認してもらうようにしましょう。

ガスコンロではなくIHクッキングヒーターの場合でもコンロまわりに不燃材を採用することが火災予防条例で決められています。

DIYでキッチンのクロスを張り替える場合はクロス選びに注意が必要です。

防火認定番号
不燃   NM - ○○○○
準不燃  QM - ○○○○
難燃   RM - ○○○○
※〇〇〇〇は防火壁装材料に発行される認定番号

キッチンをタイルでおしゃれな空間に!キッチンタイルの選び方や張り方を紹介

トイレ、洗面室は消臭機能や汚れ防止機能で快適に

ニオイや汚れの気になるトイレは消臭機能、汚れ防止機能があるクロスが、水が跳ねやすい洗面室も汚れ防止機能のクロスがおすすめ。掃除がラクになり、クロスがキレイな状態を長く保ちやすくなります。

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子ども部屋は10年後も考える

小さな子どもの部屋には、つい今の年齢に合わせて子どもの喜びそうな柄もののクロスを選びたくなりがち。かわいらしい動物や乗り物がプリントされたクロスは、子どももきっと喜ぶでしょう。もちろん、子ども部屋が楽しく、かわいらしくなるのは良いのですが、10年後のこともイメージしておきたいもの。

「子どもはあっという間に大きくなります。今、8歳の子どもも10年後には18歳。数年後にはシンプルなクロスを好むようになるかもしれません。10年後、上から張るタイプのクロスを利用して模様替えをするのも方法ですし、10年後もそのまま使えそうなものを選ぶのも手ですね」

子ども好みのクロスに張り替えた子ども部屋のイラスト

子ども部屋にぴったりなデザインのクロスも多い。子どもの成長も考えて飽きのこないクロスを選びたい(イラスト/上坂じゅりこ)

ウォークインクローゼットには調湿機能のあるクロス

結露やカビが心配なクローゼットやウォークインクローゼット。少しでも結露やカビの発生リスクを抑えるために、調湿機能のあるクロスを選ぶのもいいでしょう。

「吸水性ポリマーが配合された吸放湿性能のあるクロスは、一般のビニルクロスより湿度を調節してくれます。収納スペース内の湿度が気になるようなら、選択肢の一つに入れてみてください」

部屋をウォークインクローゼットにリフォーム・改造。費用、間取り、収納方法は? 実例も紹介!

調湿機能のあるクロスに張り替えたウォークインクローゼットのイラスト

調湿機能のあるクロスはトイレや洗面室のほか、クローゼットの中にもおすすめ(イラスト/上坂じゅりこ)

玄関からリビングやトイレへのクロスには統一感を

部屋ごとに機能性やカラーコーディネートを考えてクロスを選ぶのも楽しいのですが、空間のつながりを意識したクロス選びも大切。

「私が施主の方にご提案する際に気をつけているのは、家全体のつながりです。特にお客様が来たときに見られる、玄関、廊下、リビング、トイレにそれぞれ趣きが違うクロスを張るとチグハグな印象になってしまいます。家全体のつながりを意識して、最低限、玄関、廊下、リビングのクロスは統一感のあるものを選ぶといいですね」

クロスの色選びで失敗しない、ショールームやサンプルの活用

今とは違うクロスに張り替える場合、難しいのがサンプルでの色や柄選びです。

「張る面積が大きくなると、サンプルよりも色が薄く、明るく感じられます。クロスを選ぶ際には、ショールームへ行って面積の大きなサンプルで確認するのがおすすめ。または、A4サイズくらいのサンプルをもらえるのですが、1枚ではなく2枚もらってください。壁に2枚のサンプルを並べて張ってみるだけでも張り替え後の部屋のイメージがつかみやすくなりますし、実際に張り替えたい壁に張ることで、部屋の照明でどのように壁紙が見えるかも確認できるのでおすすめです」

クロスを張り替えるリフォームやリノベーションは、部屋の印象をリフレッシュできる楽しさが味わえます。さらに、調湿機能や消臭機能のあるクロスを選べば、空間の快適性はさらにアップします。部屋ごとのクロス選びのポイントを参考に、クロスの張り替えを検討してみましょう。

壁紙リフォームのポイントは? 選び方やコーディネートのコツを紹介

取材協力/中西 八枝佳さん

構成・取材・文/田方みき 
イラスト/上坂じゅりこ

取材協力/中西 八枝佳さん
RA-CREA代表。一級建築士、インテリアコーディネーター。住宅メーカー、インテリアデザイン事務所勤務を経て独立。個人の住宅のインテリアコーディネートを手がける。照明コンサルタント、アートライフスタイリストなどの資格も保有。著書に『居心地の良い部屋の作り方20+10』『後悔しない家具選び』(RA-CREAブックス)がある。
執筆・取材/田方 みき
広告制作プロダクション勤務後、フリーランスのコピーライターに。現在は主に、住宅ローンや税金など住宅にかかわるお金や、住まいづくりのノウハウについての取材、記事制作・書籍編集にたずさわる。