マンションのキッチンリフォーム費用相場と注意点【リフォーム施工事例付き】

マンションのキッチンリフォームは、壁付けか対面か、位置はそのままか移動するのかなど、設備選びや工事内容によってリフォーム費用は左右されます。また、マンションの場合は一戸建てにはない制約・制限もあるため注意が必要です。今回はマンションのキッチンリフォームについて、費用相場から注意点まで、BWスタジオの建築ディレクター・竹内正継さんに伺いました。実際のマンションのキッチンリフォーム施工事例も紹介するので、チェックしてみましょう。

記事の目次

【費用付き】マンションのキッチンリフォーム施工事例8選

まずは、マンションでキッチンリフォームを行った事例から、リフォームの内容やかかった費用を見ていきましょう。

※リフォーム費用は総額ではなく、キッチンのみの工事とした場合の概算

【実例1】LDKはスケルトンまで解体し、キッチンを明るい場所へ移動

明るく開放的な対面I型キッチン

明るく開放的な対面I型キッチン(画像提供/BWスタジオ
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

元々ゆとりのあった3LDKの間取りをさらにゆとりのある2LDKに変更し、リフォームでは老朽化が気になっていた設備機器や配管も一新しました。閉塞感が気になっていたキッチンは移動させて開放的な対面のI型キッチンに。グレーを基調としたリビング・ダイニングと合わせて、キッチンのカウンターやレンジフードの壁には、艶やかなグレーのタイルをセレクトしています。

【キッチンのリフォーム費用】 約200万円

【実例2】対面I型キッチンの向きを変え、閉そく感や動線の悪さを解消

ダイニングと横並びの位置に変更した対面キッチン

回り込む動線が不便だったI型の対面キッチンをダイニングと横並びの位置に(画像提供/アクアラボ
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

築24年の中古マンションの購入を機にリフォーム。ダイニングと横並びになるように既存のI型対面キッチンの向きを90度変えたことで、料理の配膳や後片付けがスムーズに行える動線を確保しました。システムキッチンにはタッチレス水栓を採用し、腰壁にはニッチもつくりました。背面の角の空間にはパントリーも設けています。

【キッチンのリフォーム費用】 約200万円

【実例3】既存の壁付けI型キッチンを活かしながら、壁を撤去して独立していたキッチンをオープンに

キッチンの位置はそのまま、壁を撤去して開放的な空間に

キッチンの位置はそのまま、壁を撤去して開放的な空間に(画像提供/アクアラボ
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

細かく仕切られて閉塞感のあったLDKは隣接していた部屋の壁を取り払い、広々としたリビング・ダイニングを創出。独立していたキッチンも壁を撤去した上でカウンターを新設し、オープンなLDKになりました。既存の壁付けI型のキッチンを活かすことで、コストカットも実現。空間がオープンになったことで、家族みんなが家事に参加しやすいキッチンになったそうです。

【キッチンのリフォーム費用】 約35万円

【実例4】大きなテーブルを兼ねる造作キッチン

造作したアイランドキッチン

イメージに合う既製品がないということで、造作したアイランドキッチン(画像提供/renoverocca?(リノベろっか?)
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

約40畳の広々としたLDKの中で存在感を放つ全長4.7mのキッチンはリフォームで造作したもの。ダイニングテーブル部分が可動式になっているので、さらに50cmほど長くして使用することも可能です。将来料理を並べて大勢でビュッフェも楽しめるようなキッチンは、来客が多く、友人や家族と賑やかに過ごすのが好きという家族の暮らしにぴったりです。

【キッチンのリフォーム費用】 約220万円

【実例5】キッチンは位置を変え、L型カウンターがダイニングテーブルに

白とグレーを基調とした、エレガントな雰囲気のキッチン

白とグレーを基調とした、エレガントな雰囲気のキッチン(画像提供/BWスタジオ
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

給排水をはじめ、設備機器が古くなっていたマンションをスケルトン状態まで解体。壁付けだったキッチンは位置を変え、対面型のI型キッチンにしました。背面のカップボードはキッチン扉と同色にして統一感を出しています。また、キッチンにはL型のカウンターを造作し、食事ができるスペースに。レンジ横とカップボードのある壁に張った艶のある3色のタイルや、あえて配管をむき出しにした天井のシャビーな雰囲気が、クラシカル&エレガントな室内デザインのアクセントにもなっています。

【キッチンのリフォーム費用】 約250万円

【実例6】II型キッチンにすることで家事効率がアップ。収納スペースも確保

I型の壁付けキッチンをII型の対面キッチンに変更

I型の壁付けキッチンをII型の対面キッチンに変更(画像提供/FIND
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

リフォーム前のキッチンはI型の壁付けキッチンでしたが、シンクを対面にしたII型キッチンに変更しました。キッチンのレイアウトを変更したことで作業スペースが広がり、家事効率が大幅にアップしたそうです。また、収納力を高めるため、廊下をコンパクトにしてキッチン横に食器棚を新設するスペースを確保。対面式の木目が美しいオープンキッチンはオリジナルです。

【キッチンのリフォーム費用】 約84万円

【実例7】CUCINA(クチーナ)のオーダーキッチンで洗練されたスタイルに

照明にもこだわった、オーダーキッチン

照明にもこだわった、オーダーキッチン(画像提供/BWスタジオ
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

間取りは4LDKから2LDKにして空間にゆとりを持たせ、インテリアはバリのリゾート風にコーディネートしました。キッチンの位置はそのまま、CUCINA(クチーナ)のオーダーキッチンを採用。素材感のあるリビング・ダイニングのインテリアとも調和する木目のキッチンにはブラックの天板をセレクトし、こだわりの照明でスタイリッシュな雰囲気を演出しています。

【キッチンのリフォーム費用】 約120万円

【実例8】床を上げ、ステージのように見立てたアイランドキッチン

壁付けのL型キッチンをオープンなアイランドキッチンに

壁付けのL型キッチンをオープンなアイランドキッチンに(画像提供/アクアラボ
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リフォーム前の間取図

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リフォーム後の間取図

以前の間取りはキッチンが独立していて、その隣には使いにくい小部屋がありましたが、リフォームでは不要な小部屋を撤去し、キッチンをLDKの中心に移動させました。キッチンの位置変更に伴い、配管経路を確保するために上げた床はステージのように見立て、キッチンが主役になるよう演出。天井は配管を現しにして天井高を上げています。また、キッチンにはパントリーも新設し、収納力もアップしました。

【キッチンのリフォーム費用】 約350万円

マンションのキッチンレイアウトの種類

壁付けキッチン・対面キッチン(ペニンシュラ型・アイランド型)

キッチンにはさまざまな形やレイアウトがありますが、主なレイアウトとして壁側を向いて調理するような壁付けキッチンと、リビング・ダイニングの方を向いて作業する対面キッチンがあります。

壁付けキッチンはリビング・ダイニングに背を向けて調理することになり、キッチンの作業スペースが丸見えになるのが気になることもありますが、対面キッチンよりもキッチンの面積をコンパクトにできるため、リビング・ダイニングを広く取れるキッチンのレイアウトです。

面積の効率が良く、費用が抑えられるという点で壁付けキッチンを選択する人も少なくありませんが、最近では調理中も家族とコミュニケーションを取りやすい対面キッチンが好まれる傾向があり、既存の壁付けキッチンを対面キッチンに変更するようなキッチンリフォームも多くなっています。

壁付けキッチン

壁付きキッチンのイメージ

壁付けキッチンはリビングダイニングの面積を広く取れる(イラスト/ふじや)
対面キッチン

対面キッチンのイメージ

対面キッチンはリビングダイニングの方を向いて作業ができる(イラスト/ふじや)

なお、対面キッチンはリビング・ダイニングの方を向いて調理をするキッチンでカウンターキッチンとも呼ばれ、対面キッチンには、片側が壁についているペニンシュラ型と、両側が壁に接していないアイランド型があります。

ペニンシュラ型の対面キッチンは片側が壁についているタイプなので、コンロやシンクの前などに壁や腰壁などを設けやすく、開放感がある対面キッチンでも、見せたくないものはほどよく隠せるのが魅力です。

ペニンシュラキッチンの種類やレイアウトを紹介。メリット・デメリットや選び方の基本、おしゃれなリフォーム事例も!

一方、アイランド型は回遊動線やおしゃれな雰囲気が人気のキッチンです。キッチンを主役にしたようなLDKにはぴったりのキッチンですが、アイランドキッチンの両側に通路を確保する必要があるため、ペニンシュラ型よりも広い面積が必要です。また、キッチン自体の価格も、ペニンシュラ型よりもアイランド型の方が高額になる傾向があります。

アイランドキッチンのリフォーム費用・価格と実例。メリット・デメリット、DIYも解説!

壁付けキッチンか、対面キッチンかというレイアウトの違いのほかにも、キッチンの形によって、かかる費用や使い勝手は変わります。

I型キッチン

I型キッチンは、シンク・コンロ・調理スペースが一直線に並ぶ形のキッチンで、壁付けキッチンでも対面キッチンでもよくみられる形のキッチンです。I型キッチンはコンパクトなスペースでも設置でき、シンプルなシステムキッチンを選べば費用も比較的抑えることができます。

対面I型キッチンのイメージ

対面I型キッチンのイメージ(イラスト/ふじや)

I型キッチン・台所の特徴と交換リフォーム費用、実例を紹介!

II型キッチン

II型キッチンはシンク・コンロ・調理スペースが2列に配置される形状のキッチンです。II型キッチンというと、シンクとコンロが前後に分離したタイプが一般的ですが、壁付けI型キッチンの背面に、調理・配膳スペースとして対面カウンターを設けた、II型風のレイアウトのキッチンもあります。

対面II型キッチンのイメージ

対面II型キッチンのイメージ(イラスト/ふじや)

II型(2列型)キッチンの特徴や使い勝手は? メリット・デメリットや選び方を大解剖!間取りやレイアウトの実例も紹介

L型キッチン

L型のキッチンはシンク・コンロ・調理スペースがL字に配置される形状のキッチンです。壁2面に接する壁付けタイプと、1面だけ壁に接する対面タイプのものがあります。どちらの場合も、I型よりも面積は必要ですが、キッチン内の動線が効率的な形状のキッチンです。

対面L型キッチンのイメージ

対面L型キッチンのイメージ(イラスト/ふじや)

L型キッチン・台所の特徴と交換リフォーム費用、実例を紹介!

コの字型・U型キッチン

コの字型・U型キッチンはシンク・コンロ・調理スペースがコの字のように配置された形状のキッチンです。3面に作業スペースが配されるので、個室のようなクローズドタイプのキッチンでよくみられるタイプですが、オープンな対面キッチンで採用する場合もあります。キッチン自体が大きくなる分、費用は高くなる傾向があります。

対面コの字型キッチンのイメージ

対面コの字型キッチンのイメージ(イラスト/ふじや)

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マンションのキッチンリフォームの費用を左右するポイント

キッチン設備の選び方

リフォーム費用を占める材料費の部分を左右するのは設備選びです。グレードの高いシステムキッチンや内装材を選ぶことで、リフォーム費用はアップします。

また、リフォームの時は必ずしも全てを一新する必要はないので、既存の設備で再利用できるものがあればうまく活用することでリフォーム費用を抑えることもできます。

「リフォーム費用を左右するポイントとして、機器の選択は非常に大きいと思います。どのようなシステムキッチンを選ぶかというのもありますが、食洗機やIHクッキングヒーターを入れる場合と入れない場合では費用は変わりますし、換気扇もグレードの高いものを選んだりすると、その分費用はアップします」(BWスタジオ・竹内さん、以下同)

リフォーム工事の範囲

リフォーム工事の範囲が広くなるほど、費用はより多くかかります。

キッチンのリフォームといっても、単純にキッチンを入れ替えるだけというリフォームでは済まないケースも多く、付随する工事が発生するものです。壁紙や床の張り替えなどのほかにも、キッチンを壁付けから対面に変更したり、大幅に位置を移動させるような間取り変更を伴うケースもあります。大掛かりなリフォームになるほど工事面積は広くなり、工期も長くなる分、かかる費用も高くなります。

「配管工事や電気工事が増えるというだけでは、それほど大幅に費用が上がることはありませんが、大工仕事の範囲が増えると、費用は高くなります。

例えば、単純にキッチンを入れ替える場合でも、既存の壁のタイルをそのまま活かすのか、既存のタイルを剥がして、新しくパネルを張るのかという違いでも、費用には差が出てきます」

キッチンの形やレイアウト

「設備選び」と「工事の範囲」がリフォーム費用を左右するポイントであると紹介しましたが、この2つのポイントがリフォーム費用を左右するということは、キッチンの形やレイアウトの選択によっても、費用は大きく変わってきます。

例えば、壁付けのシンプルなI 型キッチンではなく、オープンなアイランドキッチンにしたいなどという場合は、まずキッチン自体の価格が高くなる可能性が高く、位置変更に付随する工事も必要です。

特に工事の範囲については、アイランドキッチンのようにオープンなタイプのキッチンほど、リビング・ダイニングとの一体感も高いため、リビング・ダイニングも合わせて、内装なども一新することになるでしょう。

キッチンの形やレイアウトによってはLDK全体のリフォームになるため、その分リフォーム費用は高くなります。

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マンションのキッチンリフォーム工事の種類と費用相場

キッチンリフォームでよく行われる工事の種類や費用相場についてみていきましょう。

キッチンの壁・床・天井の張り替え

設備を少し入れ替えるだけのリフォームであれば内装もそのままということはありますが、システムキッチンを入れ替えたり、位置変更をしたりするリフォームの場合は、同時に床・壁・天井の張り替えなどを行うのが一般的です。

「キッチンのリフォームを行う場合は、キッチン全体の内装もきれいにするというケースがほとんどです。キッチンの床・壁・天井の張り替えなどの工事にかかる費用の目安は20万円ほどです」

システムキッチン・設備の入れ替え

「古くなったシステムキッチンを入れ替えるシンプルなリフォームの場合、リフォーム費用は70万円〜100万円程度のイメージです」

選ぶシステムキッチンや設備のグレードによって、費用は変わりますが、100万円以内でも設備を一新するようなリフォームは可能だそうです。

なお、規格販売されているシステムキッチンではなく、家具メーカーなどに注文して、オーダーキッチンをつくって設置したり、大工さんなどにキッチンの造作をお願いするようなケースもありますが、オーダーキッチンの場合は費用が高額になることも多いようです。

また、キッチンの造作については、棚やカウンターを造作するのはそれほど高額にはなりません。例えば、シンクとコンロが分離したタイプのII型のキッチンは、キッチンが2列になる分、I型のキッチンよりも比較的費用は高くなりますが、I型キッチンの背面にカウンターを造作し、II型風のレイアウトにするといった方法で、予算をコントロールするケースもあります。

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キッチンの位置変更

キッチンの位置を変更する場合は、既存のキッチンの解体や、新しいキッチンの設置費用に加え、壁紙や床などの張り替え、給排水工事や電気工事などが必要になります。また、マンションの場合はキッチンの位置を移動するために、床を上げる工事が必要になることもあります。

「例えば、壁付けのI型キッチンから対面のシンプルなI型ペニンシュラキッチンへ変更するようなリフォームであれば、リフォーム費用の目安は150万円〜200万円位が目安です。

同じ壁付けキッチンから対面キッチンへ位置を変更するようなリフォームでも、レイアウトがI型ではないものやグレードの高いものを選んだり、リビング・ダイニングと合わせて内装も変えていくようなリフォームになると、費用は200万円〜300万円程度になります」

クローズドキッチンをオープンキッチンに変更

個室のような独立型のクローズドキッチンの壁を取り払い、オープンなキッチンに変更するリフォームもあります。

「キッチンの位置はそのままで、壁をなくしたり、壁に窓をつけたりしてオープンなキッチンにするような場合、費用は200万円程度でも可能です。壁をなくすこと自体にはそれほど大きな費用はかかりませんが、システムキッチンの位置も変更する場合は、300万円ほど費用がかかることもあります」

キッチンリフォーム費用の相場
キッチンの壁・床・天井の張り替え 約20万円
システムキッチンの入れ替え 約70万円〜100万円
キッチンの位置変更 約150万円〜300万円
クローズドキッチンからオープンキッチンに変更 約200万円〜300万円

マンションのキッチンリフォームの注意点

比較的自由なリフォームが可能な一戸建てと比べると、マンションのキッチンリフォームは注意が必要な場合があります。注意が必要なケースについてみていきましょう。

キッチンの移動が制限されるケースがある

マンションの場合、建物の構造によって、キッチンの移動に制限がかかる場合があります。

例えば、壁式構造のマンションの場合、構造壁は撤去することができないので、壁を取り払って広々としたLDKにし、キッチンの位置を変えるといったリフォームができないこともあります。間取り変更を前提に中古マンションの購入などを考えている場合は、マンションが壁式構造かラーメン構造か、構造の違いも気にしておくのが安心です。

「築年数が古い場合は壁式構造のマンションも少なくありません。古い壁式構造のマンションは、排水の形状も古いことが多く、壁付けキッチンを対面キッチンに変更するような位置変更でも難しいケースが多くなります。そのようなマンションのキッチンは設備的にリフォームの融通が効かないことが多いと考えておいた方がいいでしょう」

壁式構造

耐力壁で建物を支える壁式構造のイメージ

耐力壁で建物を支える壁式構造(イラスト/ふじや)
ラーメン構造

柱と梁で建物を支えるラーメン構造のイメージ

柱と梁で建物を支えるラーメン構造(イラスト/ふじや)

また、マンションの場合、PS(パイプスペース)や排気口については、共用部分なので位置変更ができず、キッチンまでの距離が遠すぎるとうまく排水ができなかったり、換気扇の位置によっては、うまく排気経路が確保できなくなる可能性があります。

「マンションのキッチンリフォームの場合、PSの位置とそこからの距離の確認が非常に重要です。

排水するためはある程度の勾配をとる必要があるため、キッチンを移動させるためには床を上げなければならないというケースもあります。しかし、床を上げる場合は12〜15cm程の段差ができますし、天井高との兼ね合いでおすすめできないこともあります」

また、キッチンの場合は排水だけでなく、排気のための配管についても考えなければなりません。排気口もマンションの場合は位置を変更できないため、排気口まで排気ダクトを繋ぐことになりますが、排気ダクトの設置についても制約があります。

「例えば、レンジフードの位置変更をしたい場所に梁がある場合は、梁に排気ダクトを通すことはできません。変更したいキッチンの位置によっては排気口まで排気ダクトをうまく繋げるのが難しい場合もあり、うまく繋げることができないと、希望する位置への変更は難しくなります」

中古マンションを購入する際に、キッチンの位置変更などを前提に検討することもあると思いますが、PSや排気口まで、排水管やダクトをどのように配置すればキッチンを移動させられるかなどといったことは、なかなか自己判断するのは難しいものです。そのような場合は購入前の段階で、リフォーム業者などプロも交えて、キッチンの位置変更が可能かどうかの確認をしておきましょう。

ガスコンロからIHへの変更がNGなことも

「マンションによっては、IHクッキングヒーターの導入自体がNGという場合もあるので、マンションの管理規約・使用細則などで決められているルールを確認してください」

IHクッキングヒーターへの変更がルール上問題ないマンションでも、ガスコンロからIHに変更する場合は電力使用量に注意が必要です。マンションの場合は1住戸あたりの電力量に上限があるので、電力不足になる可能性もあります。電力量についてはIHクッキングヒーターに限らず、食洗機などを導入する場合も注意が必要です。電源を追加して使用できる電力量を増やす場合は、分電盤の交換などの電気工事が必要になります。

また、電力量に加え、コンセントの数や位置もキッチンの使いやすさを左右する大きなポイントです。キッチンリフォームの際には、まずキッチンで使う家電などを明確にしておくことが、使いやすいキッチンをプランニングする上で欠かせません。

管理規約・使用細則を要確認

IHクッキングヒーターを導入したい場合は、マンションのルールの確認が必要と前述しましたが、そのほかにも管理規約や使用細則で、リビングや居室の床材などが指定されていることがあります。

「リビングや居室のフローリングの遮音等級などは管理規約などで決められていることが多いものです。リビング・ダイニングと合わせて、キッチンの床もフローリングに張り替える場合などは、確認するようにしましょう」

暮らし方や使い方からプランニングをする

マンションのキッチンリフォームに限ったことではありませんが、キッチンリフォームを考える際に、一番大事なのは暮らし方や使い方に合わせた計画をするということに尽きると言います。

「家族構成はもちろん、料理をする頻度やキッチンをどのように使うのかということで、その人に合うキッチンというのは変わります。リフォームの際には、キッチンをどのように使いたいのか、自分たちの生活スタイルなども踏まえてプランなどを考えるのが一番いいと思います」

リフォームの計画を立てるときには、予算はもちろん、キッチンの設備をどうするか、どんなレイアウトのキッチンにするかなどを先に考えてしまいがちですが、満足度の高いキッチンリフォームを叶えるためには、まずは自分の叶えたい暮らしを考え、そこから、それに合わせたプラニングをしていくことが必要です。

リフォーム費用を左右するポイントや、工事内容ごとの費用の目安をつかんでおけば、叶えたい理想のキッチンのイメージに合わせて、どこに予算をかけるのか、メリハリをつけて考えることもできます。今回紹介した費用相場やマンションならではの注意点も参考に、理想のキッチンリフォームを計画してみてください。

マンションのキッチンリフォームの費用は、設備の選択や工事範囲、レイアウトなどに左右される

マンションのキッチンリフォームは、どのような設備を選ぶのかに加え、キッチンの入れ替えなどに付随する工事が多いか少ないかなどによって、大きく費用は変わります。また、システムキッチンはグレードもさまざまですが、形も色々なものがあり、選ぶキッチンのレイアウトによってもリフォームの費用は左右されます。なお、マンションのキッチンリフォームの場合は一戸建てにはない制約・制限もあり、キッチンの位置を変更することが難しいケースもあります。キッチンの位置を変更するようなリフォームを前提に中古マンションの購入などを検討している場合は注意が必要です。

【2024年版】キッチンリフォームの補助金・助成金を解説。対象の工事や注意点、申請方法、期限は?

構成・取材・文/島田美那子 イラスト/ふじや