予算500万円で全面リフォームやリノベーションはできる? 予算内で成功するポイントや500万円リフォームの事例を紹介

リフォーム費用500万円で一戸建てやマンションの全面リフォーム(リノベーション)は可能でしょうか。500万円の費用でキッチンをはじめとした水まわりの交換は? 一戸建ての外壁や屋根、内装をすべて工事できる? 予算500万円でどんなリフォーム工事ができるのか、一級建築士の柏崎文昭さんに教えてもらいました。

リフォーム予算のイメージ

(写真/PIXTA)

記事の目次

500万円でどこまでリフォームできる? 費用の相場から工事内容や範囲を確認

最初にお伝えしておくと、予算500万円で全面的なリフォームやリノベーションは難しいでしょう。しかし500万円もあれば、例えば水まわりと内装を一新するなど、十分暮らしを快適にすることができます。では500万円でどんなリフォームができるのでしょうか。早速紹介しましょう。

500万円でできる水まわりリフォーム工事の内容

水まわりリフォーム

予算が500万円あれば、水まわり設備の一新や、内外装のメンテナンスなど、いろいろなリフォームができます。だからといって、あれもこれもと欲張ってしまうと、予算内に収めるための妥協部分も増えてしまいがち。そうやって妥協を重ねてしまうと、結局「何のためにリフォームしたんだろう」という徒労感が生まれかねません。

そうならないためにも、500万円を使って何のためにリフォームするのか、そのためにはどこを中心にリフォームすべきかといった、優先順位をつけたリフォーム計画が大切です。リフォームする場所の優先順位だけでなく、例えばキッチンでも食洗機の有無や見た目のグレードなど、さまざまな部分の優先順位を決めてメリハリをつけることが大切です。リフォーム会社の意見も聞きながら、叶えたい暮らしに照らし合わせて、一つひとつ吟味しながら賢く予算内に収めるようにしましょう。

また、ひと言で「予算500万円」といっても、それが消費税を含んだ金額なのかどうかで、できる工事内容が変わってきます。なにしろ500万円の工事費用なら、単純計算で消費税は50万円かかります。消費税込みで500万円なら、工事費用は約450万円に収めなければなりません。金額が大きいと消費税額も大きくなるので、注意が必要です。

なお、最近は設備や部材等の価格が少し高くなっていますから、必ずリフォーム会社に見積もりを作ってもらってから、工事内容を検討するようにしましょう。

予算1000万円で全面リフォームやリノベーションはできる!? リフォーム体験談や施工事例、費用相場を解説 

キッチン・トイレ・お風呂(浴室)・洗面所の設備を入れ替える(約400万円)

「水まわり」とは「キッチン」「トイレ」「お風呂(浴室)」「洗面所」のこと。予算が500万円あれば、これらの設備をすべて一新することができます。もちろん、現在の自宅の状況や予算に応じて、キッチンとトイレだけなど、この中から選んでリフォームすることも可能です。それぞれどれくらい費用が必要になるのか、目安を見てみましょう。

■主なリフォーム工事の費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
キッチンの交換 壁付キッチンの位置は変えず、食器洗い乾燥機やオーブン付きキッチンに交換 約120万円
トイレの交換 古い洋式トイレを、多機能な温水洗浄便座付きタンクレストイレに交換 約40万円
お風呂(浴室)の交換 浴室サイズは変えずに、浴室換気暖房乾燥機付きの最新システムバスに交換 約145万円
洗面化粧台の交換 手洗い洗濯も可能な大きなボウルのある、収納の多い洗面化粧台に交換 約95万円

上記の水まわり4点をすべて一新したとして約400万円。もちろん、水まわり設備類のグレードや機能の増減に応じてリフォーム費用は変わりますが、水まわり4点をすべて一新しても十分500万円の予算内に収めることができそうです。

しかし水まわり4点をすべて一新すると、予算500万円ではほかにリフォームすることが限られそうです。そこで以降は、水まわり4点をすべて一新するのではなく、「キッチン」「トイレ」「お風呂(浴室)」の3カ所を上記のようにリフォームしたとして、ほかにどんなリフォームが可能か検証してみたいと思います。

壁付けから壁付けではなく、対面式キッチンに交換する(プラス約100万円~)

上記では壁付キッチンの位置を変えずにリフォームしましたが、壁付キッチンから、リビング側に向いて調理ができる対面式キッチンに交換した場合、費用はどれくらいかかるのでしょうか。

壁付キッチンを対面式キッチンに交換する場合、キッチン本体の価格のほかに、床や壁の工事も必要になります。その費用の目安は下記の通りです。

■壁付けキッチンから対面式キッチンにリフォームする場合の費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
壁付けキッチンを対面式キッチンに交換 食器洗い乾燥機やオーブン付きの対面式キッチンに交換 約220万円

壁付キッチンから壁付キッチンへリフォームする費用は約120万円でしたが、壁付キッチンから対面式キッチンへリフォームする場合、キッチン本体以外に配管や配線の移設工事、床や壁の補修費用がかかります。その費用の目安は約220万円。つまりプラス約100万円の費用がかかりますから、3カ所をリフォームした場合のリフォーム費用は約400万円になります。

■壁付け→対面式キッチンを含む水まわり3点のリフォーム費用の目安
リフォーム内容 想定事例の費用の目安
キッチン・トイレ・お風呂(浴室)の設備を入れ替える 約300万円
壁付キッチンを対面式キッチンに交換 プラス約100万円
上記リフォームをすべて行った場合 約400万円

キッチンをはじめ水まわり設備3点のグレード等にもよりますが、予算500万円なら「トイレとお風呂(浴室)設備を入れ替えて、壁付キッチンから対面式キッチンにリフォーム」することが可能です。

天井と壁のクロス張り替え(70m2でプラス約60万円~)

壁クロスの張り替え

水まわりを一新するだけでも家の雰囲気は十分変わりますが、あわせて天井や壁のクロスも張り替えると、さらにリフレッシュ感が出るのではないでしょうか。

マンションの3LDK(延床面積70m2)の住戸で、天井と壁をすべて張り替え、張り替える面積(施工面積)を210m2とした場合、リフォーム費用の目安は下記の通りです。

■天井と壁クロスを張り替えた場合のリフォーム費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
天井・壁クロスの張り替え すべての天井・壁のクロスを、汚れが付きにくい防汚機能のあるビニールクロスに張り替える 約60万円(施工面積が210m2の場合=延床面積70m2・3LDK相当)

天井や壁のクロス交換のリフォーム費用は、基本的に施工する面積に比例します。ただし、トイレのみ張り替えるなど施工する面積が小さい場合は、一般的に手間賃が加算されるので、キレイに比例するわけではありません。別の見方をすれば、なるべく広い面積を同時にリフォームしたほうが割安に感じられるでしょう。

また、天井や壁クロスには、ビニールクロスのほかに紙クロスや布クロス等種類がありますし、ビニールクロス自体もグレードによって価格が異なります。リフォーム費用を抑えたい場合、クロス選びも重要になりますから、サンプルで確認するなどしっかりと吟味するようにしましょう。

なお、壁を塗り壁にする方法もありますが、壁に下地を作ったり、左官工事が必要なため、壁クロスの交換よりも費用は高くなります。

ここまでのリフォームに加え、天井と壁のクロスを張り替えると下記の通りになります。

■水まわり3点(壁付キッチン→対面式キッチン)プラス天井と壁クロスを張り替えた場合のリフォーム費用の目安
リフォーム内容 想定事例の費用の目安
キッチン・トイレ・お風呂(浴室)の設備を入れ替える 約300万円
壁付キッチンを対面式キッチンに交換 プラス約100万円〜
天井と壁のクロスを張り替える プラス約60万円~
上記リフォームをすべて行った場合 約460万円~

予算500万円なら「トイレとお風呂(浴室)設備を入れ替えて、壁付キッチンから対面式キッチンにリフォーム」に加えて、「壁クロスを張り替える」こともギリギリできそうです。

床(フローリング)張り替え(広めのLDK40m2を張り替えたとしてプラス40万〜60万円)

床の張り替え

天井や壁クロスを交換するなら、やはり床もリフォームしたいところ。

床のフローリングを張り替える場合、リフォーム費用を左右するのは「張り替える面積(施工面積)」と「床材の種類」の2つです。

施工面積とリフォーム費用は基本的に比例していて、施工面積が広いほどリフォーム費用はかかります。また、選ぶフローリングによってもリフォーム費用が変わります。

ここでは、40m2のLDKに対面式キッチンを備えた場合で算出しました。また床材には、既存と同様の複合フローリングとしています。その場合の費用の目安は約40万〜60万円。ここまでの総額は下記の通りになります。

■水まわり3点(壁付キッチン→対面式キッチン)プラス天井・壁クロス張り替えプラス床の張り替えリフォーム費用の目安
リフォーム内容 想定事例の費用の目安
キッチン・トイレ・お風呂(浴室)の設備を入れ替える 約300万円
壁付キッチンを対面式キッチンに交換 プラス約100万円
天井と壁のクロスを張り替える プラス約60万円
LDK(40m2)のフローリングを張り替える プラス約40万〜60万円
上記リフォームをすべて行った場合 約500万円〜520万円

このように、水まわり(キッチン・お風呂・トイレ)の設備を一新するとともに、キッチンは対面式に変更。天井と壁クロス、LDKの床を張り替えると予算500万円を超える可能性があります。

そのため、壁付キッチンのままにしたり、水まわり設備のグレードを再検討するなどリフォーム内容や、設備の機能の有無・グレード等にメリハリをつけて費用を抑えるようにしたほうがよいでしょう。

なお、フローリングには大きく分けて、「複合フローリング」と「無垢(むく)フローリング」の2種類があり、価格も異なります。複合フローリングは合板を基材として、表面に木目などを印刷した化粧シートや薄くスライスした木材(突き板)を張ったもの。一方の無垢フローリングとは天然の木板そのものです。

一般的に複合フローリングより無垢フローリングのほうが高いのですが、いずれもグレード等によって異なり、比較する無垢フローリングと複合フローリングによっては、複合フローリングのほうが高いこともあります。

またフローリングの場合、「張り替え」ではなく既存のフローリングの上に新しいフローリングを張る「重ね張り(上張り)」する方法もあります。こちらのほうが、既存のフローリングの解体・廃棄費用が不要になるため、安く抑えることができますが、代わりに床の高さが上がり、廊下との段差が生まれる可能性があります。

さらに床材にはほかにカーペットやクッションフロア、タイル、畳がありますが、それによっても費用が変わりますので、予算や叶えたい空間のイメージを念頭に、しっかりと選ぶようにしましょう。

500万円でできる間取り変更リフォーム

次に、予算500万円でマンションの間取りを変更できるか検証してみましょう。

3LDKから2LDKに間取りを変更する(約250万円〜350万円)

想定したのは、下記の延床面積70m2・3LDKのマンションです。このリビングダイニングと、隣接する和室、ダイニング側に小さな取り出し口がある程度のキッチンを、すべて1つの空間に変更する場合、費用の目安は下記の通りです。

【Before】

3LDKの間取り図

【After】

3LDKの間取り図

■3LDK→2LDKに間取り変更する場合のリフォーム費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
3LDKから2LDKに間取り変更 リビングダイニングに隣接する和室と、クローズドのキッチンを取り込んで大きなLDK(30m2)にする 約250万円〜350万円

上記ではキッチンの位置を変えて対面式に、その背後に収納も用意しました。またすべて複合フローリングに張り替えたほか、天井と壁のクロスも張り替えています。そのほか、間取りの変更に併せて照明の位置も変えました。

もちろん、キッチンのグレードや備える機能、フローリングの選び方次第等で価格は変わりますので、必ずリフォーム会社から見積もりをもらって検討するようにしましょう。

上記の3LDKから2LDKに間取り変更するリフォーム費用の目安は約250万円〜350万円。予算500万円なら、さらにどんなリフォームが可能でしょうか。下記で見てみましょう。

内窓の設置(Low-E複層ガラスの掃き出し窓2枚で44万〜50万円)

3LDKから2LDKなど、大きなLDKにすると断熱性能に不安を感じる人もいるのではないでしょうか。そこで上記のリフォームに加え、ベランダ側の2窓の掃き出し窓に、樹脂サッシにLow-Eガラスを用いた高断熱の内窓を設置した場合を検証してみましょう。

特に管理規約によって窓の交換が難しいマンションでも、内窓を備えるリフォームは可能な場合が多いので、検討してみる価値はあると思います。

掃き出し窓の内窓設置リフォームの費用相場は下記の通りです。

■内窓設置リフォームのリフォーム費用の目安(掃き出し窓1窓当たり)
窓の種類 単板ガラス 一般複層ガラス Low-E複層ガラス
掃き出し窓
(サッシは樹脂製)
約17万円〜20万円 約20万円~23万円 約22万円~25万円

断熱性能は単板ガラス<一般複層ガラス<Low-E複層ガラスの順で高くなっていきます。ただし内窓の場合、単板ガラスでも既存の窓と合わせて窓が二重になるので、従来よりも断熱効果や結露防止効果が望めます。

上記の間取り変更と、掃き出し窓に高断熱のLow-E複層ガラスを用いた内窓の設置をするリフォーム費用の目安の合計は下記の通りです。

■3LDK→2LDKの間取り変更と内窓を設置するリフォーム費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
3LDKから2LDKに間取り変更 約250万円〜350万円
掃き出し窓に内窓を2窓設置(Low-E複層ガラス) プラス44万円〜50万円
上記リフォームをすべて行った場合 約295万円〜400万円

3LDKから2LDKへ間取りを変更して、内窓を備えても予算500万円以内に収まりそうです。

一戸建ての内外装を一新リフォームする

屋根の再塗装

続いて、一戸建てで内外装を一新するリフォーム費用を検証してみましょう。内外装の一新とは、具体的には天井・壁・床の張り替えと、屋根・外壁の塗装や葺き替え等です。

想定したのは延床面積120m2程度の木造総2階建てです。

天井・壁のクロス張り替えプラス床(フローリング)張り替え(約190万円〜290万円)

まずは内装、天井・壁クロス、さらに床も張り替えた場合の費用を見てみましょう。

天井・壁は、既存の天井・壁がクロスで覆われていて、新たに汚れが付きにくい防汚機能のあるビニールクロスに張り替えた場合を仮定して算出しました。また床は、既存の床がすべて複合フローリングだったと仮定して、同じ複合フローリングに張り替えた場合で算出しました。

延床面積120m2の天井・壁・床をすべて張り替えた場合のリフォーム費用の目安は下記の通りです。

■内装を一新するリフォームの費用の目安
リフォーム工事の内容 費用の目安
天井・壁クロスの張り替え すべての天井・壁のクロスを、汚れが付きにくい防汚機能のあるビニールクロスに張り替える 約80万円〜120万円
床の張り替え 複合フローリングから、新しい複合フローリングに張り替える 約110万円〜170万円
上記リフォームをすべて行った場合 約190万円〜290万円

上記の通り、内装の一新で約190万円〜290万円のリフォーム費用が必要だと想定します。予算500万円なら、さらにどんなリフォームが可能なのか見てみましょう。

屋根・外壁のリフォーム(約140万円〜900万円)

天井・壁クロスと床に加えて、屋根と外壁をリフォームした場合はどうなるのでしょうか。ここでは上記の内装の場合と同じく、延床面積120m2程度の木造総2階建ての場合で費用を算出してみました。

屋根と外壁はどちらも足場を組んで工事を行います。そのため別々に工事するよりも、一緒に行ったほうが工事費用を抑えることができます。

まず屋根のリフォーム費用を検証してみましょう。屋根のリフォームは下記の3つの方法があります。

■屋根のリフォーム方法
リフォーム方法 リフォームの内容
塗り替え 屋根材の塗装を塗り替える
重ね葺き(カバー工法) 既存の屋根材の上に重ねて新しい屋根材を施工する
葺き替え 既存の屋根材を撤去し、下地からやり直して新しい屋根材を葺く

塗り替えは、化粧スレート(彩色スレート)やセメント瓦、鋼板(トタン屋根やガルバリウム鋼板等)で行います。日本で古くから用いられている、粘土瓦や陶器瓦は塗り替えを行いません。

経年変化によって塗料が色あせると、見た目が悪くなるだけでなく、撥水性が落ちて水が染み込みやすくなります。そうなる前に塗装をし直すのが「塗り替え」です。目安としては、屋根の点検をかねる意味でも10年を目安に塗り替えると考えるとよいでしょう。

重ね葺き(カバー工法)は、既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねる方法ですので、既存の屋根材が化粧スレートや鋼板といった平らな屋根材でないと行うことができません。塗り替えでは対応できないほど屋根材が傷んだときに行います。あまりに劣化が進んでいて、すでに雨漏りがしている場合は重ね葺き(カバー工法)でも対応できないので、葺き替えを選ぶことになります。

葺き替えは、化粧スレートなら築20年超、瓦なら築50年超というように、基本的には古い家で行われる屋根リフォームです。屋根材を撤去し、下地からやり直すので、最も費用がかかります。

既存の屋根の状態や、屋根材によって選ぶべき方法が変わりますので、必ずリフォーム会社に見てもらい、見積書をもらって検討するようにしましょう。

延床面積120m2程度の木造総2階建ての、屋根のリフォーム費用の目安は下記の通りです。いずれも足場費用を含みます。

■屋根をリフォームした場合のリフォーム費用の目安
リフォーム方法 費用の目安
塗り替え 約60万円〜70万円
重ね葺き(カバー工法) 約100万円〜200万円
葺き替え 約150万円〜300万円

次に、外壁のリフォーム費用を見てみましょう。外壁は主にモルタルなどの塗装仕上げと、サイディングなどを張って仕上げているものがあります。以下では、その中のサイディングを用いた外壁のリフォームについて説明します。

サイディングのリフォームには下記の3つの方法があります。

■外壁(サイディング)のリフォーム方法
リフォーム方法 リフォームの内容
塗装 サイディングの塗装を塗り替える
重ね張り(カバー工法) 既存のサイディングの上に重ねて新しいサイディングを施工する
張り替え 既存のサイディングを撤去し、下地からやり直して新しいサイディングを張る

サイディングの表面は塗膜で覆われていますが、経年劣化によって塗膜が劣化すると雨水が染み込む原因ともなります。

そのため、表面を指で触ると白い粉がついたり、塗膜が部分的に浮いてきたら、まずは塗装を検討しましょう。塗装時期の目安は新築なら築10年~15年目ぐらいです。その後10年~15年ごとに塗り替える必要があります。

何度か塗装を行っても劣化が隠せなくなったら、重ね張り(カバー工法)か、張り替えを検討しましょう。リフォーム費用は重ね張り(カバー工法)のほうが抑えられますが、既存のサイディングの状態によっては張り替えなければならなかったり、重ねて張るサイディングの選択肢が主にガルバリウム鋼板などの金属系に限られるといった条件があるので、リフォーム会社と相談しながら方法を選ぶようにしましょう。

雨漏りなどで外壁の下地まで劣化が進んでしまった場合は、下地からやり直して新しいサイディングを張る(張り替え)必要があります。

延床面積120m2程度の木造総2階建ての、サイディングのリフォーム費用の目安は下記の通りです。いずれも足場費用を含みます。

■外壁をリフォームした場合のリフォーム費用の目安
リフォーム方法 費用の目安
塗装 約80万円〜120万円
重ね張り(カバー工法) 約180万円〜350万円
張り替え 約240万円〜600万円

内外装を一新するためのリフォーム費用の目安は約190万円〜290万円でした。それに加えて予算500万円で屋根や外壁のリフォームを行う場合、屋根の塗り替えと外壁の塗装ならできそうです。

■内装の一新と屋根・外壁リフォーム費用の目安
リフォーム方法 費用の目安
内装の一新(天井・壁クロス・床をすべて張り替え) 約190万円〜290万円
屋根の塗り替え プラス60万円〜70万円
外壁の塗装 プラス80万円〜120万円
上記リフォームをすべて行った場合 約330万円〜480万円

ただし、屋根や外壁の状態によってはもっと費用を抑えられたり、逆に状態が悪ければ費用がかさむので、必ずリフォーム会社に見積もりをもらって検討するようにしましょう。

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サイディング外壁のリフォーム。素材の種類と特徴、張り替え・重ね張り(カバー工法)の費用目安と実例も紹介 

500万円では難しいリフォームとは?

上記のように、予算500万円あれば、水まわりの一新や間取りの一部変更、内外装のリフォームなどはできそうです。では逆に、どんなリフォームなら難しいのでしょうか。

スケルトン工事を伴う大規模な間取り変更と、耐震・断熱リフォームは難しい

スケルトンリフォーム

(写真/PIXTA)※写真はイメージです

見てきたように、予算500万円あればできるリフォームはいくつもあるのですが、「全面リフォーム」「スケルトンリフォーム」と呼ばれる大規模なリフォーム工事は難しいでしょう。

スケルトンリフォームとは、基礎や柱、梁(はり)などの構造(躯体)部分を残して改修するというものです。一戸建てなら、根本的な耐震工事や断熱工事を行うことができます。併せて内外装をすべて一新したり、間取りを大きく変更することができます。

そもそも躯体を変更できないマンションの場合でも、水まわりは位置の移動に制限がありますが、一戸建て同様に間取りを大きく変更することができます。なお、管理規約によってできないこともありますので、事前に確認しておきましょう。

では、スケルトンリフォームすると、リフォーム費用はどれくらい必要になるのでしょうか。70m2・3LDKのマンションで、躯体のみを残して(スケルトンにして)設備や天井・壁・床等を新調した場合の費用の目安は下記の通りです。

リフォーム工事の内容 費用の目安
70m2・3LDKのマンションをスケルトンリフォームする すべての設備等を解体・撤去し、設備と内装すべてを一新する 約1300万円~

上記ではマンションの例としましたが、一戸建ての場合の費用もほぼ同じです。もちろん設備や床材等の選び方次第で費用は変わりますが、スケルトンリフォームを行う場合は、これくらいの予算が必要だと考えておきましょう。

スケルトンリフォームとは?マンションと一戸建ての費用相場は? メリット・デメリットと補助金や減税制度、後悔しないための対策を解説。施工事例も紹介! 

500万円でリフォームするなら考えておきたいお金のこと

予算が500万円あれば、いろいろできますが、だからといって油断しているとついつい予算オーバーになってしまいます。

冒頭で述べたように、メリハリのあるリフォーム計画がもっとも大切ですが、意外と忘れがちな、お金に関するポイントを下記で紹介します。

リフォーム費用とは別にかかるお金を計算しておく

予算500万円=リフォーム工事費ではありません。まず、先述したように消費税を含んだ金額が「リフォームに必要な費用」となります。500万円のリフォーム費用なら、消費税は50万円にもなりますから、「リフォームに必要な費用」を500万円以内にしたいのであれば、リフォームの工事費用は約450万円までにとどめなければなりません。

また、リフォーム費用には工事費用だけでなく、たいていは工事費全体に対して数パーセントの諸経費が必要になります。ですから必ず500万円で収めたいなら、リフォーム会社にその旨をあらかじめ伝えて工事内容を考えてもらい、プランを立ててもらうとよいでしょう。

場合によっては仮住まいが必要になることも

水まわり設備の入れ変えや間取り変更のリフォームは1日では終わりません。その間は生活空間が制限されるので、賃貸住宅やホテル等で仮住まいするなら、その費用も用意しておく必要があります。

リフォーム期間が長くなれば費用もかかります。こうした費用も「リフォームに必要な費用」ですので、予め計算しておきましょう。

家具や家電を買い替えるならあらかじめ考えておく

リビングなどを一新したり、間取り変更で新しいLDKにする場合など、新しい空間に似合う新しい家具がすでに頭に浮かんでいるのではないでしょうか。

広い意味では、そうした新調する家具や家電等も「リフォームに必要な費用」です。あれもこれもと揃えていくと、あっという間に数十万円になりますから、こうした費用を予算500万円に含むのか、別に用意するなら予算はいくらか、リフォーム前に考えておくようにしましょう。

リフォームローンや補助金を検討する

リフォーム工事の費用だけでなく、仮住まいや家具等を新調する費用を含むとどうしても予算500万円を超えてしまう場合や、そもそもローンを組むつもりだったのであれば、リフォームローンの吟味は事前に行っておきましょう。

リフォームローンは銀行や信用金庫、ネットバンキング、信販系などさまざまな金融機関が取り扱っています。融資額や金利などの融資条件は金融機関によって異なりますから、あらかじめホームページなどで比較検討しておくと安心です。

また省エネ性能など一定の条件をクリアすると、国や自治体などの補助金制度を利用できる場合があります。せっかくある制度ですから、積極的に活用しましょう。

500万円でリフォームした施工事例を紹介!

これまで見てきたように、予算が500万円あれば、大規模な全面リフォームは難しいけれど、暮らしやすさをグンと向上させることができます。では先輩たちはどんなリフォームを行ったのでしょうか。早速ご紹介しましょう。

なお、下記で紹介する施工事例で表示されている価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。実際にリフォームする場合は、必ず見積もりをもらってから検討するようにしましょう。

リビングダイニングを中心に好みの内装にリフォーム/420万円(マンション)

リビングダイニングのリフォーム

CDやお気に入りの雑貨などを収納する「見せる棚」は、施主の要望を受けリフォーム会社が造作したもの

リフォームを前提にメゾネットタイプの中古マンションを購入した施主。築年数は33年ですが、キッチンなどは新しい設備に入れ替わっていたので、住宅設備はそのままに、1階と階段の内外装に限定してリフォームすることにしました。

リフォームの中心となったリビングダイニングは、隣接する和室を取り込み、無垢フローリング材で統一。また階段はカーペット敷きから木製の踏板に変更し、玄関ホールにも無垢フローリングを敷きつめました。

さらに壁付キッチンの設備自体は新しかったものの、キッチンが備わる壁材が施主のイメージとは異なるものだったため、その上にお気に入りのタイルを張り、小物棚もつけてもらいました。そのほか、リビングダイニングの入り口にアンティークのガラス戸を使った扉を造作するなど、隅々まで施主好みの、ヴィンテージ感のある空間に仕上げることができました。

【DATA】
リフォーム費用:420万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、階段、廊下、洗面所、寝室、その他
住宅種別:マンション
築年数:33年
設計・施工:優建築工房

キッチンを2階へ移設し、吹抜けのあるLDKを設けた/470万円(一戸建て)

2階LDKのリフォーム

2階に作られた15畳大のLDK。既存のキッチンをそのまま移設しましたが、新たにヒノキの一枚板を使ったカウンターが備えられました

築29年の一戸建てを購入した施主。1階のダイニングキッチンが暗くて冬は寒いことや、2階は風が通らないこと、部屋が細々と分かれていてあまり使えていないことなどが悩みでした。

施主の希望する「明るく居心地のいいリビング」を実現するため、まず2階の2つの洋室と階段ホールを1つの空間にしました。そこへ1階にあったキッチンを移設して大きなLDKとし、リビング部分には吹抜けも設けられました。

以前の2階は風が抜けない上、西側は西日で暑く、1年中雨戸を閉めたままだったとか。しかし間取りの変更や断熱工事を行ったことで、光がたっぷりと降り注ぎ、暑い夏の日も快適に過ごせる2階LDKに生まれ変わりました。今では朝起きてカーテンを開けるのが楽しく、夜は月光を眺める楽しみも増えたそうです。

【DATA】
リフォーム費用:470万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、収納、洗面所、トイレ、階段、玄関ホール、その他
住宅種別:一戸建て
築年数:29年
設計・施工:リフォーム工房

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

まとめ

予算が500万円なら、全面リフォームやスケルトンリフォームは難しいですが、例えばキッチン・お風呂(浴室)・トイレの設備を入れ替え、内装も一新することができます。あるいは3LDKを2LDKにして内窓を備えたり、一戸建ての内外装をリフレッシュすることも可能です。

ただし注意したいのは、消費税額が案外大きいことや、仮住まい費用が必要になるなど、リフォーム工事費用“以外”にかかるお金のこと。また、漫然とリフォームするのではなく、目的を持ってメリハリのあるリフォーム計画を立てることが欠かせません。

叶えたい暮らしを実現するためにも、一つひとつ吟味しながら賢く予算内に収めるようにしましょう。

監修/一級建築士 柏崎文昭(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/籠島康弘
イラスト/伊藤美樹