全期間固定金利の住宅ローン【フラット35】には、借入当初5年間、金利を引き下げる制度がある。その代表が、質の高い住宅購入や新築に利用できる「【フラット35】S」だ。
このほか、子どもの人数によって金利を引き下げる「【フラット35】子育てプラス」や中古住宅を買ってリフォームする場合に利用できる「【フラット35】リノベ」、所定の自治体での住宅購入・新築に利用できる「【フラット35】地域連携型」など、金利引き下げ制度には複数のメニューがある。また、メニューの併用によって「金利引き下げ幅」や「引き下げ期間」を合算でき、当初5年間の金利を1%、6~10年の金利を0.25%というように、10年間にわたって金利が引き下げられるケースもある。
「【フラット35】S」は、「省エネルギー性」「耐震性」「耐久性・可変性」「バリアフリー性」に関する性能基準のうち1つ以上について、一定の性能基準を満たす住宅に利用できる。また、「【フラット35】S」には、金利引下げ幅が0.5%の金利Aプランと、0.25%の金利Bプランとがあり、Aプランのほうが条件となる住宅の基準は高くなる。
このほか、「ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅」を新築・購入する際には、当初5年間の金利を0.75%引き下げる「【フラット35】S(ZEH)」を利用できる。
「【フラット35】S」を利用する場合、【フラット35】の取扱金融機関に確認して申し込む。【フラット35】の金利は金融機関によって異なるので、比較検討することが大切だ。
「【フラット35】S」が利用できる住宅の主な基準は以下のとおり。等級表示されているものは住宅性能表示制度の等級と同じだが、住宅性能評価書を取得する必要はない。なお、中古住宅には特有の基準があり、利用しやすくなっている。
次の(1)~(5)のうちいずれか1つ以上の基準を満たすこと
(1)断熱等性能等級4かつ、一次エネルギー消費量等級6以上の住宅
(2)断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級4または等級5の住宅
(3)耐震等級(躯体構造の倒壊等防止)2以上の住宅
(4)高齢者等配慮対策等級3以上の住宅
(5)劣化対策等級3、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅(マンションは一定の更新対策が必要)
次の(1)~(3)のうちいずれか1つ以上の基準を満たすこと
(1)開口部断熱(二重サッシまたは複層ガラス等を使用)
(2)外壁等断熱(【フラット35】を利用して新築・購入した住宅で、断熱構造が新築時から変わっていないものなど)
(3)高齢者等配慮対策等級2以上の住宅
次の(1)~(5)のうちいずれか1つ以上の基準を満たすこと
(1)断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅
(2)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)3の住宅
(3)一定基準以上の免震建築物
(4)高齢者等配慮対策等級4以上の住宅(共同建て住宅の専用部分は等級3でも可)
(5)長期優良住宅(※)
※「認定低炭素住宅」「性能向上計画認定住宅」を含む。2021年10月の設計検査申請分より、土砂災害特別警戒区域内の新築住宅については「【フラット35】S」が利用できなくなる
次の(1)~(7)のうちいずれか1つ以上の基準を満たすこと
(1) 断熱等性能等級4かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅
(2) 断熱等性能等級5かつ、位置エネルギー消費量等級4以上の住宅(2022年度の改正認定基準に適合した認定低炭素住宅および性能向上計画認定住宅)
(3) 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上の住宅
(4) 免震建築物
(5) 高齢者等配慮対策等級3以上の住宅
(6) 長期優良住宅(維持保全計画認定も含む)
(7) 劣化対策等級3かつ、維持管理対策等級2以上の住宅(マンションについては一体の更新対策が必要)
省エネ効果がより高いZEH水準の住宅を購入・新築する場合、当初5年間の金利が0.75%引き下げられる。ZEH住宅は「住宅の断熱性能や省エネ性能などの大幅な向上」と「太陽エネルギーなどの導入」により、空調や給湯、照明、換気などの消費エネルギー(一次エネルギー消費量)が正味ゼロまたはマイナスとなる住宅のことで、住宅ローン控除など税制の優遇も受けられる。
また、ZEH水準の「長期優良住宅」を購入する場合、金利引き下げ幅が0.25%加算され、「当初5年間の金利が1%」引き下げられる。
中古住宅の購入と合わせて、省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性のいずれかについて、一定要件を満たすリフォームをする場合、借入当初5年間の金利が「1%または0.5%」引き下げられる。不動産会社がリフォームを行った中古住宅を購入する場合にも利用できる。
長期にわたって快適に住めるよう、劣化しにくく管理しやすい住宅を買う場合、借入当初5年間の金利が0.25%引き下げられる。「長期優良住宅(新築・中古)」「予備認定マンション(新築)」「管理認定マンション(中古)」「安心R住宅・インスペクション実施住宅・既存住宅売買瑕疵保険付保住宅(中古)」が対象。
一定要件を満たす住宅購入・新築に対する自治体の財政支援などによって、一定期間の金利を引き下げる制度。次の2種類があり、「【フラット35】地域連携型」を導入している自治体は、【フラット35】のホームページで調べられる。
子育て世帯が対象。当初5年間の金利が0.5%引き下げられる。
UIJターン、コンパクトシティ形成、空き家活用、防災・減災、地域産材使用、景観形成など、地域活性化への取り組みに寄与する住宅購入・新築が対象で、当初5年間の金利が0.25%引き下げられる。
利用できる人や住宅の条件は、自治体の地域活性化対策によって異なる。
紹介した金利引き下げメニューのうち条件に合うものが複数ある場合、メニューを併用して金利の引き下げ幅や引き下げ期間を合算することができる(※)。
例えば、子ども2人の家庭が「1.【フラット35】S」の条件に合う住宅を購入する場合、当初5年間の金利は「1%(0.25%×2人+0.5%)」となる。さらにその住宅を「2.【フラット35】地域連携型(子育て支援)」の自治体で購入する場合、当初5年間の金利引き下げ幅は1%になり、6年目~10年目の金利は0.25%引き下げられるのだ。
※併用できないメニューの組み合わせもある。
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