ベランダの防水は建物を雨漏りから守る大切な役割をしていますが、新築時にきちんと防水処理がなされていてもいずれやり直しが必要になります。
防水工事の種類やそれぞれの耐用年数、メンテナンスの時期、工事費用についてさくら事務所の松島伸行さんにお話を聞いてまとめました。
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記事の目次
ベランダの防水構造
主なベランダの防水構造はトップコート、防水層、下地の3層から成っています。シート防水は下地の上に塩ビシートなどを直接張っています。

下地
下地は構造用合板を梁(はり)の上に渡してつくります。
その上に防水層が載ります。
防水層
ここが防水の中心となるところで、FRP防水、ウレタン防水、シート防水などいくつかの種類があります。
FRP防水の場合は、下地の上に下塗り材やポリエステル樹脂などを重ね塗りします。ウレタン防水の場合はウレタンを何層か重ねて塗ります。シート防水は下地の上に直接防水シートを張ります。
この防水層が劣化すると雨漏りのおそれがあるので、防水工事をやり直す必要があります。
トップコート
防水構造の表面に塗る保護塗料をトップコートといいます。
ベランダ床の美観を保つとともに防水層を紫外線や雨などから守る役割をしています。
「トップコートを定期的に塗り直すことが防水層を守る基本です。これさえきちんとやっておけばベランダの防水は長持ちします」(松島さん、以下同)
ベランダ防水の種類
ベランダ防水の素材の違いによる種類はいくつかありますが、近年ベランダで使われている素材は限られています。
FRPの特徴と工事費用
「ベランダで使われている防水の種類は2000年代に入ってからの新築ではFRP防水がほとんどです。木造住宅では9割以上がFRP防水と思っていいでしょう」
FRPは繊維で強化したプラスチックのことで、浴槽の素材などにもなっています。液状のポリエステル樹脂と補強繊維を一体化して防水層を形成しますが、硬化して頑丈になるので、人が乗ったり歩いたりするベランダ床の素材として最適です。耐久性もあります。
「FRPの防水の耐用年数は10年~15年といわれていますが、定期的にトップコートの塗り直しを行えばもっと長持ちします」
FRP防水工事費用の目安は2万8000円~3万5000円/m2となります(トップコート塗りを含む、諸経費、税込)。
ウレタンの特徴と工事費用
「ウレタン防水は、かつて木造住宅では主流だった防水方法です。築30年~40年の築古の家ではウレタン防水を採用していることが多いでしょう。ウレタン防水を採用している家の場合、施工のしやすさや工事費用の安さなどからやり直しの防水工事もウレタン防水を採用することが多いようです」
ウレタン防水は液状のウレタン樹脂を塗り重ねることで防水層を形成します。ウレタンもプラスチック系の素材で硬化するとゴムのような材質になります。
「ウレタンの防水層はFRPのように固くないので、ベランダを使っているうちに切れたり、破れたりといったことが起こりがちです。FRP防水より早めにトップコートの塗り直しをやったほうがよいと思います」
新築では少なくなったウレタン防水もリフォームではよく用いられているようです。
「ウレタン防水の場合、表面にモルタルを塗って保護している場合が多いのですが、この場合モルタルをはがしてやり直すのは工事としては大変です。そこで既存の防水層はそのままにしてその上にウレタン防水層を足す方法でメンテナンスすることが多いですね。工事費はFRP防水と大きくは変わりませんが、多少安いと思っていいでしょう」
ウレタン防水層の耐用年数は約10年~13年です。
ウレタン防水工事費用の目安は2万5000円~3万円/m2(トップコート塗りを含む、諸経費、税込)となります。
シート防水の特徴と工事費用
「ベランダのシート防水は木造住宅ではあまり見られませんが、鉄骨系の住宅で採用されるケースが多いです」
シート防水は塩化ビニール製などの防水シートを敷き詰める工法です。現場施工する他の防水層とは異なり、工場生産のシートを使うので、できあがりにムラがなく性能が安定します。シートなのでトップコートはとくに必要ありませんが、シートの寿命を延ばすために塗る場合もあります。
シートを張るだけなので施工が簡単なように思いますが、実は難易度が高いようです。
「シート防水の施工は専門の業者でなくては難しいのです。そのために工事費が高くなることがあります」
シート防水の耐用年数は約13年~20年と比較的長いです。
シート防水工事費用の目安は2万5000円~4万円/m2(諸経費、税込)となります。専門性の高い施工業者を選ぶことで高くなる場合があります。
ベランダ防水工事の種類別費用と寿命
ベランダの防水工事費用の目安と耐用年数を表にしました。
下表は下地の劣化が進んでおらずそのまま使える場合に既存の防水層を解体しないで、その上から新しい防水層をかぶせて施工する費用です(カバー工法)。防水層が劣化すると下地にも影響します。下地の劣化が進んでしまうと解体して下地から施工のやり直しとなります。
| 種類 | 工事費用の目安/m2※ | 耐用年数 |
|---|---|---|
| トップコート | 約5000円~8000円 | 約5年~10年 |
| FRP防水 | 約2万8000円~3万5000円 | 約10年~18年 |
| ウレタン防水 | 約2万5000円~3万円 | 約10年~13年 |
| シート防水 | 約2万5000円~4万円 | 約13年~20年 |
諸経費・税込み
下地からやり直しになると費用は高くなる
ベランダ防水工事は、防水層だけでなく、床部分の劣化が激しく、下地まで傷んでしまうと下地からやり直しになります。その場合の工事費用は防水層だけの工事よりも高くなり、工事の内容に応じて変わります。
リフォーム費用が数十万円になる場合も
ベランダの雨漏りなどによって床の下地まで傷んでくると下地からやり直さなければなりません。また、ベランダの柵の塗装や取り合い部分のコーキングのやり直しなども絡んでくると費用はかさみます。
工事費用はベランダの劣化具合によって変わってきますので、リフォーム会社に調査を依頼して見積もりをもらいましょう。
ベランダの防水工事が必要なサイン
ベランダの防水が劣化してくると表面から見てもわかる現象があらわれます。こうなったら工事のタイミングというサインを見逃さないようにしましょう。
表面にチョーキングやひび割れ、はがれがある
「耐用年数の間に防水層まで劣化が進むことはそうそうないのですが、防水工事を行って7年~10年目あたりで表面のトップコートが傷んできます。表面に細かいひび割れが見られたり、塗膜がはがれたりしてくると防水層の保護という役割を果たせませんからトップコートをやり直す必要があります」
トップコートは常に紫外線や雨水にさらされていますから劣化が進みやすいのです。
トップコートの傷み始めには、チョーキングという現象が見られます。指で触ったときに白い粉がつく現象です。チョーキングはいずれひび割れやはがれにつながりますから、チョーキングが見られたら、そろそろメンテナンスの時期だなと考えてよいでしょう。
トップコートの塗り直しだけなら工事費用は、高圧洗浄や下地調整などを含めて、約5000円~8000円/m2で済みます。

防水層が膨れる、破れている
防水層の膨れはトップコートを通して目で見てわかることがあります。膨れや断裂が見られたら、もう耐用年数を超えています。すぐに工事を行わないと駆体に雨水が浸透して木部を腐らせるおそれがあります。
防水の種類によって工事方法はいろいろあるので、リフォーム会社に相談しましょう。例えばウレタン防水の場合は、現状をそのままにして、上からウレタン防水を行うカバー工法で行うケースもあります。

シート防水の浮き、はがれがある
耐久性が高いシート防水も、断裂したり水が入ったりして膨らんでくることがあります。そうなると防水工事をやり直さなければなりません。

床に水たまりができている
ベランダの床は排水勾配がとられているので正常であれば水たまりはできません。しかし排水溝にゴミがたまっていて排水を妨げたり、防水層が膨れて排水を妨げていることがあります。そうなると防水層をさらに劣化させることになります。

雨漏りしている
ベランダから雨漏りがしている場合は、原因をよく調査してもらう必要があります。
防水層からの水漏れとは限らず、手すりの笠木(かさぎ)の劣化などが原因のこともあります。
原因を明確にして対処してもらいましょう。
場合によってはベランダ全体の工事になってしまうこともあります。
しかし放置すると家全体の耐久性を損ねることになるので、必ずきちんと補修を行いましょう。
ベランダ防水は床部分だけではない
ベランダからの雨漏りは深刻な問題ですが、「ベランダは床部分の防水だけが全てじゃないんですよ」と松島さんはいいます。
防水層の立ち上がり部分に要注意
ベランダの防水は床だけでなく、ベランダの腰壁部分は25cm以上、サッシ部分は12cm以上防水層を立ち上げなければならないとされています(住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準)
室内とベランダに「またぎ段差」があるのはそのためで、水を屋内に浸入させないための措置です。
「手すり側や窓側の防水層の立ち上がり部分の端、笠木と壁の取り合い部などから雨水が浸入することがよくあります。実は床からよりもそうした周辺部から水漏れすることのほうが多いのです」
取り合い部には防水テープやシーリングで適切な止水措置を施さなくてはなりませんが、シーリングの劣化などには気をつけたほうがよいでしょう。


ベランダ防水工事をやるべき時期
ベランダ防水工事は定期的にやっておかないと劣化が進んで、工事費用も高くなってしまいます。適切な時期を覚えておきましょう。
トップコートの塗り替えは5年~10年ごとに実施
トップコートは防水層を紫外線や風雨から守るための保護塗料です。防水層よりは耐用年数は短いですが、はがれてきたりすると防水層そのものの耐用年数に影響しますから、防水層よりも早めに塗り替えるのがよいでしょう。
トップコートだけなら費用はそれほど高くないので、塗り直しは5年~10年ごとくらいを目安にしましょう。
防水層のメンテナンスは耐用年数に合わせて実施
防水工事は基本的には前述したそれぞれの防水層の耐用年数に応じてやればいいでしょう。
ただ、途中で防水層がふくらんできたりすれば、時期を早めたほうがいいかもしれません。
心配な現象が見られたら専門家に点検してもらいましょう。
外壁や屋根など他の防水工事と一緒に実施
ベランダから雨漏りがするというので調査してみると、ベランダそのものではなく、ベランダと外壁が接触したところや、窓まわりなどが雨漏りの原因になっていることも多いと松島さんはいいます。
「実はベランダの床から雨漏りしたというケースよりも手すりと外壁との取り合いとか周辺部分から浸水していることのほうが多いのです。ベランダまわりだけでなく、外壁や屋根が原因のことも多くもあります」
外壁と屋根、ベランダは家の防水の三大ポイントです。外壁や屋根のリフォーム時にはベランダの防水も併せて検討しましょう。
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ベランダ防水工事の実例
ここではベランダの改修まで行った上で防水工事を行った実例を紹介します。
※記載の費用は施工当時のもの、現在とは異なる場合があります。
雨水の浸入口を補修しウレタンで防水工事
ベランダの雨漏りにしばらく悩まされていましたが、散水調査を行い、雨漏りの原因である雨水の浸入口を発見、ウレタン防水とトップコートでベランダの床がよみがえりました。併せてこの機会にベランダ手すりの塗装も行いました。

雨漏りがあったのでベランダの改修と防水工事
ベランダ防水が劣化し階下の和室に雨漏れが発生、再発防止のため根本的な改修を施しました。既存の防水はそのままにし、その上から下地を造作、ウレタン密着塗膜防水の上、念入りに塩ビシート防水、さらに土間を増し打ちして仕上げました。プールサイドと同等の仕上げです。

ベランダ防水工事の依頼先選びの注意点
家の駆体の耐久性にも関わるベランダ防水工事をどこに依頼すればいいのか、選ぶ際の注意点を紹介します。
点検をしっかりやってもらう
ベランダ防水工事の依頼先選びの前に点検をしっかりやってもらうことが肝心です。
雨漏りがしているようなら、ベランダだけでなく周辺をきちんと調査してもらい、水漏れの原因を突き止めてもらいましょう。
点検に時間をかけて詳細に報告してくれるような会社が望ましいです。

見積もりの明細をもらう
見積もり明細は工事の詳細がわかります。
どのような材料を使ってどのような工事にいくらかかるかわかるのが、見積もり明細です。
明細をもとに詳しい説明を聞いて、納得がいったら契約しましょう。
ベランダの日常的なメンテナンス方法
フローリングを新しくするリフォームで知っておきたいポイントは、ほかにもいろいろあります。
掃除をこまめにやる
「ベランダの掃除は数カ月に一度はていねいにやるのがいいですね。落ち葉が溜まりやすい地域やペットの出入りが多い場合は、排水溝が詰まりやすくなるので気をつけましょう」
排水溝にゴミがたまると適切に排水されずに水がたまってしまいます。そうなると苔や雑草も生えやすくなります。台風の後もベランダにゴミが吹き寄せていることがあるので要注意です。
「ふだんあまり立ち入らないようなベランダも要注意です。いつのまにか雑草が生えていることもあります。そうなると防水層を傷めることになります。北側の小さなベランダや玄関ポーチの上の平屋根などはプールになっていても気が付かないことがあるので注意しましょう」

まとめ
ベランダ防水工事は雨漏りを防ぐ大切な工事です。
ベランダは下地の上にFRPやウレタンの防水層、さらにトップコートという構造になっています。
表面のトップコートのメンテナンスを定期的に行うことで防水層を長く維持することができます。
ただし、ベランダの雨漏りは床からよりも手すりや外壁など周辺から浸水することのほうが多いので、周辺を含めて入念に調査して対処することが必要です。
家全体の防水を考えると、防水工事はベランダ、外壁、屋根の3点をセットで行うのが望ましいでしょう。
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取材協力/さくら事務所 松島伸行さん
一級建築士、日本ホームインスペクターズ協会 公認ホームインスペクター
構成・取材・文/林直樹
住宅ジャーナリスト。著書に「最高の住まいをつくるリフォームの教科書」(共著、PHP研究所)など