屋根修理の費用相場。瓦やトタンなど屋根材別の注意点と、気をつけたいリフォーム詐欺

屋根は雨漏りを防ぎ、家を長持ちさせるためにも重要。不具合が起きたら適切な修理を行いましょう。修理方法は、屋根材の種類や屋根の状態によって異なります。屋根修理の費用相場や、補助金・火災保険は使えるのか、リフォーム会社の探し方などを解説。さくら事務所のプロホームインスペクターで一級建築士の坂 瑞貴さんに話を聞きました。

屋根修理をしている人のイラスト

(イラスト/杉崎アチャ)

記事の目次

屋根の修理は必要?どうやってチェックする?

屋根は風雨や紫外線から家を守る

屋根は雨や風、太陽からの紫外線、強風で飛んでくる物からの衝突などから住まいを守る役割をもっています。特に大切なのは、雨水が建物内に浸入しないようにすること。屋根材や防水シートの破損やずれ、劣化などで雨水を防ぐ効果が落ちてしまうと、雨水は壁内に入り込み構造材を腐食させるなど、建物の劣化スピードを早めてしまいます。

「厄介なのは、起こってしまった雨漏りは、その原因や発生場所を発見しにくいこと。雨漏りの原因が発生しないように、定期的にチェックやメンテナンスをすることが重要なのです」(坂さん、以下同)

屋根の修理が必要かはどうやってチェックする?

我が家の屋根の状態はどうなのか、どんな修理が必要なのかの判断は屋根のメンテナンスのノウハウがあるリフォーム会社や工務店、住宅診断を行うホームインスペクターに確認してもらうのが安心です。最近は、ドローンを使用して屋根の状態を安全に、詳しく確認するリフォーム会社もあるそうです。施主が自ら屋根に登って確認することは、たとえ1階部分や平屋の屋根であっても転落のリスクがありますから絶対にやめましょう。

確認する場合は、地面やベランダから見える範囲で。また、少し離れたところからだと屋根の広い範囲が見えますから、双眼鏡や望遠鏡、スマホのカメラのズーム機能を使用して、屋根材にずれや傷がないかなどをチェックするのもいいでしょう。

屋根のチェックやメンテナンスは何年おきに必要?

屋根は風雨や紫外線をダイレクトに受ける場所ですから、外壁よりも劣化が早い傾向にあります。そのため、傷や破損箇所がなくても定期的な塗料の塗り替えや瓦屋根であれば漆喰(しっくい)の補修などのメンテナンスを行う必要があります。

「屋根の塗り替えのサイクルは8〜10年が目安です。ただし、最近は塗料の性能がよくなっていることで耐久性が上がり、今後は塗り替えのサイクルが延びていくと考えられます。修理などが必要ないかの定期的なチェックは屋根材の種類にかかわらず8〜10年。台風や大きな地震の後にもリフォーム会社などにみてもらい、問題があれば早期に修理をしましょう」

屋根の不具合から雨漏りをしている一戸建てのリビングのイラスト

(イラスト/杉崎アチャ)

屋根材にはどんな種類がある?

屋根にどのような劣化が出るのか、どのような修理が必要なのかは、屋根材の種類によっても異なります。そこで、まずは主な屋根材について種類別におさらいしておきましょう。

瓦屋根

瓦は大きく分けて粘土系とセメント・コンクリート系があります。

粘土瓦は粘土を焼いてつくられた陶器製の屋根材。雨水が染み込みにくくなるように釉薬(ゆうやく)を塗り焼成された和瓦(日本瓦)や、1枚の瓦に複数の色が焼き付けられている独特の風合いがある素焼きのスペイン瓦やフランス瓦など、製造方法や色合い、形などにさまざまな種類があります。瓦を固定する漆喰の補修などメンテナンスを行えば、長期の耐用年数が得られます。

セメント・コンクリートを原料とした瓦は、粘土瓦よりもコストをかけずに施工できる点がメリットで、耐用年数が長いことも特徴です。なお、セメント瓦は現在、製造元の撤退・廃盤のため新しい瓦を入手することが困難です。

瓦屋根の画像

異なる色合いの瓦が屋根に独特の味わいをつくりだす洋瓦(画像/PIXTA)

スレート屋根

日本国内で多く使われている屋根材の一つがスレート屋根。薄い板状の屋根材を施工したものです。

セメントを加工した化粧スレートと、岩石を板状にした天然スレートがあります。化粧スレートは工場生産のため耐久性や防水性などの品質が安定しています。

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化粧スレート屋根の画像

セメントを加工した化粧スレートは定期的な塗装が必要(画像/PIXTA)

金属系の屋根

金属系の屋根材の中でも人気が続いているのがガルバリウム鋼板。鋼板の両面にアルミと亜鉛、シリコンでメッキ加工をした屋根材です。最近はカラーバリエーションも増えました。加工がしやすいため、複雑な形状の屋根でも対応しやすい点が特徴です。葺き替える際には、軒先に対して平行な横葺きと、軒先に対して垂直な縦葺きがあり、どちらを選ぶかで印象が異なります。なお、横葺きと縦葺きは施工できる屋根の勾配が異なりますから、貼り方についてはリフォーム会社に相談が必要です。

金属系の屋根材には、ほかに亜鉛をメッキ加工したトタンや、銅製の板でできた銅板がありますが、現在はあまり使用されていません。

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ガルバリウム鋼板の屋根の画像

軽量で耐震性が高く、サビにくいメリットがあるガルバリウム鋼板(画像/PIXTA)

アスファルトシングル

アスファルトを染み込ませたシート状のガラス繊維に石粒を吹き付けた屋根材。比較的低コストで施工できること、軽量で耐震性にも優れていることが特徴です。

アスファルトシングル屋根とは?特徴やリフォームの方法を解説 

アスファルトシングルの屋根の画像

アスファルトシングルは商品によっては積雪地域での使用は適さない(画像/PIXTA)

最近人気の屋根材は?

さまざまな屋根材がありますが、最近、よく使われる人気の屋根材は何でしょう?

「人気がある屋根材はガルバリウム鋼板です。軽量で地震の際に建物への負荷が抑えられ、サビに強いなど耐久性も高く、その割には価格がそれほど高くないことから新築でも葺き替えリフォームでもよく使われます」

ガルバリウム鋼板が住宅の外壁材や屋根材に使われるようになった30年ほど前は、色はグレーが中心でしたが、今では白やベージュ、ブラウン、ネイビー、ブラックなどさまざまな色や、ツヤのあるもの、ツヤを抑えたものなど、バリエーションが増えています。住まいの外観デザインに合うものを選びやすくなっていることも、人気の背景でしょう。

価格の安い屋根材は?

屋根材の価格は、瓦、スレート、ガルバリウム鋼板、アスファルトシングルといった種類のほか、同じ種類でもグレードによって異なります。

「金属系屋根材のトタンや銅板が安いのですが、今はほとんど使われていません。一般的に使われる屋根材でコストが抑えられるのは化粧スレート。次にガルバリウム鋼板。アスファルトシングルは商品によって高いもの、手ごろなものがあります。一番コストがかかるのは瓦です」

屋根材の変更で生まれるメリットは?

屋根を全面的にリフォームする際に、スレートからガルバリウム鋼板へ、瓦屋根からスレートへといった屋根材の変更は可能です。

「重たい瓦屋根をスレートやガルバリウム鋼板など軽量な屋根材に変更することで、耐震性向上のメリットがあります」

そのほか、同時に断熱工事を行うことで快適性がアップしたり、屋根の色や印象が変わることで新しい我が家に出会える楽しみが生まれたりもします。

屋根の葺き替え費用はいくらくらい?

総床面積120m2の家の屋根、葺き替えるといくらが目安?

屋根の修理が必要になった場合、いくらくらいかかると考えておけばいいのでしょうか。費用は修理の内容や建物の状況によるためケースバイケース。金額の目安は、実際に見積もりを取ることで確認しましょう。ここでは、参考として一般的な一戸建ての屋根を葺き替えた場合の金額の目安を紹介します。

総床面積が120m2程度で、1階と2階が同じ面積の総2階の一戸建てで、勾配の小さなシンプルな屋根の場合、一般的な化粧スレートで葺き

屋根の修理費用は修理内容や施工面積、施工方法、屋根の形状、必要な足場、選ぶ屋根材、建物の状況などさまざまな要素によって金額が異なります。施工面積が大きいほど材料費はかかりますし、屋根が複雑な形であれば手間がかかる分、費用もアップします。また、屋根の勾配によっては特殊な足場の設置が必要になり足場代がアップします。

「古いスレート屋根で有害物質のアスベストが含まれている場合、解体前の事前調査費用や、アスベスト解体のための特殊作業費用、専門事業者が行う運搬・処分費用などがかかるため、通常の解体作業よりも40万〜50万円程度のコストアップがあることも覚えておきましょう」

また、既存の屋根材とは違う屋根材に葺き替える場合、雨どいに影響することも。「例えば、瓦屋根からスレート屋根に葺き替える場合に、雨どいの位置も変わることが。雨どいをそのままにしておいたために、雨がうまく雨どいに落ちなくなったというケースもあります。そうならないよう、雨どいのやり直しをすると、その分の費用がかかります」

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屋根の葺き替えを検討している夫婦のイラスト

(イラスト/杉崎アチャ)

屋根の修理が必要なサインやメンテナンスは?

修理が必要な屋根の状況にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、屋根のリフォームのサインと、考えられる対処法を紹介します。

瓦のずれや破損

瓦屋根は塗装不要なため、メンテナンスに手間があまりかからない屋根材です。しかし、台風による大風や地震のあとなどには瓦がずれたり、浮いたり、破損をしたりなどが見られることがあります。部分的な瓦の差し替えや、屋根に乗っていた瓦を一度下ろして葺き直す締め直し、場合によっては全面葺き替えも視野に入れます。

瓦のずれや破損が見られる屋根の画像

瓦のずれや破損が見られる屋根(画像/PIXTA)

棟瓦のずれや棟板金の不良

屋根の傾斜面と傾斜面をつなぐ頂部分を棟といいます。瓦屋根は棟瓦が、スレート屋根やガルバリウム鋼板などの金属系の屋根、アスファルトシングルの屋根は山形になった棟板金がかぶせてあります。棟の瓦がずれていたり、板金の釘がゆるんでいたりなどの不具合が出ていたら、棟交換や葺き替えが検討されます。

退色やサビ、コケなど

化粧スレートやガルバリウム鋼板、アスファルトシングルで、退色のみなら塗り替えで対処します。カビやコケ、サビは除去して塗り替えや葺き替えを行います。

屋根材の割れ

化粧スレートやガルバリウム鋼板、アスファルトシングルが割れた場合、程度によって部分張り替えや全面葺き替えが必要です。

屋根の修理をする工事にはどんな種類がある?

屋根は状態によって適切な工事方法が異なります。我が家の屋根はどのような方法で修理すればいいかは、施工会社に屋根を確認してもらい、ベストな方法を相談しながら選ぶようにしましょう。ここでは、屋根の修理の主な工事について紹介します。

塗膜の塗り直し

ガルバリウム鋼板の屋根や化粧スレート屋根、セメント・コンクリート系の瓦屋根、アスファルトシングルの屋根は、表面に屋根材を保護する塗膜が施されています。塗膜は、日差しや風雨にさらされて、年月とともに剥がれてしまいます。そのため、8年〜10年おきを目安に塗り直しをする必要があります。

瓦屋根の葺き直し工事

屋根瓦は割れたり欠けたりしなければ、50年程長持ちする屋根材です。地震や台風で屋根が崩れてしまっても、割れていない瓦は再利用し、足りない分は新しい瓦を使って屋根を葺き直すことができます。ただし、廃番になっているセメント瓦は、新しい瓦を使っての葺き直しはできません。

屋根全体の葺き替え工事

屋根全体を新しくするのが葺き替え工事です。屋根材とその下にある野地板を撤去し、下地からやり直します。防水シートも新しくします。既存の屋根とは違う屋根材に葺き替えることや、屋根の形を変更することも可能です。

既存の屋根に重ねるカバー工法

重ね葺きとも呼ばれるカバー工法。既存の屋根の上に防水シートを張ったうえで、新しい屋根材を重ねて施工する工事方法です。既存の屋根の解体や撤去、廃材の処分がない分、葺き替え工事に比べて費用や安く工期も短縮できるメリットがあります。カバー工法の場合、既存の屋根はスレートやガルバリウム鋼板などフラットなものであることが必要。また、最近の屋根材は軽量になってはいますが、選ぶ屋根材によっては屋根部分が重くなり耐震性に影響することがあるので注意しましょう。

屋根のカバー工法を説明する図

カバー工法は、既存の屋根材をそのままに、新しい屋根材を重ねる工事方法(イラスト/杉崎アチャ)

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状態に応じて行う部分的な修理

瓦屋根の瓦をつないでいる漆喰は年月とともにひび割れたり、剥離したりします。漆喰(しっくい)の劣化が起きたら詰め直しが必要になります。

「そのほか、瓦やスレート板が一枚だけ割れてしまった場合には、その部分だけ差し替えることもあります。台風のあとには棟板金が強風で飛んでしまったり、雨どいが壊れたりということも。その場合も交換や補修工事を行うことになります」

屋根の雨漏りなど修理は自分でできる?

屋根の修理を自分でできればコストダウンにもつながりそう。しかし、屋根の修理は高所での作業。転落のリスクがあります。

「屋根に登ることは危険ですから、自分で屋根の修理をすることは絶対にやめてください。修理の方法も間違えれば、それが雨漏りの原因になることもあります。塗装も塗ってはいけない箇所があります。屋根材と屋根材の重なる部分は、雨水が流れる通り道。塗料でふさがれてしまうとその部分に水がたまり、屋根材や下地木材の腐食、雨漏りを発生させることがあり、建物の老朽化を早めます」

太陽光パネルが設置されている場合、屋根の修理は可能?

太陽光パネルが設置されている屋根でも、塗り替えなどのリフォームは可能です。

「太陽光パネルを養生したうえで塗装できる範囲だけ行うケースと、太陽光パネルを一度撤去し全体の塗り替えを行い再び設置するケースがあります。施主の方のご希望や屋根の状態、予算に応じて対応することになります」

将来、太陽光パネルを設置する予定なら屋根材の選択に注意

「屋根材は商品によっては太陽光パネルを設置するための金物と屋根材の相性が合わず、設置できないケースがあります。将来、太陽光パネルを設置する予定や可能性がある場合は、屋根の葺き替えで使用する屋根材が太陽光パネル対応かを確認しておくことが大切です。また、カバー工法(重ね葺き)をした場合も、屋根が二重になる分、太陽光パネルを設置するための金具が屋根の下地材に届かなくなってしまい、太陽光パネルを設置できないケースがあります」

屋根修理の依頼先の探し方

新築時の施工会社に相談するほか、知り合いのクチコミも参考に

屋根の状態をチェックし、必要な修理を適切な価格で施工してくれる施工会社はどうやって探せばいいのでしょうか。依頼先の探し方にはいくつか方法があります。

注文住宅や新築で購入した建売一戸建てなら、新築時に施工した建築会社や工務店に相談してみましょう。会社によっては、社内にリフォームを担当する部門があったり、グループ会社でリフォームを請け負ったりしています。施工をした会社であれば工法や構造についても把握しているので、屋根の修理についても相談しやすいといえます。

新築時の施工会社が現存していない、中古住宅で購入していて施工会社とは付き合いがないなどの場合、自分で依頼先を探す必要があります。インターネットで情報を集めるほか、過去にリフォームをお願いして印象の良かったリフォーム会社があれば、依頼先の候補に挙げるといいでしょう。また、屋根のリフォームをしたことのある知り合いや近所の人がいれば話を聞いてみましょう。

いくつか気になるリフォーム会社が見つかったら、インターネットや知り合いからのクチコミだけでなく、自分自身でその会社を確認すること。リフォーム会社のオフィスを訪ねて、過去の施工例の資料を見せてもらい、会社の雰囲気や対応を確かめることが大切です。

なお、依頼先がなかなか見つからない場合や探す時間が取れない場合は、スーモカウンターリフォームの利用も検討してみましょう。リフォームアドバイザーが依頼先探しをサポートし、予算や希望に合わせたリフォーム会社を無料で紹介してもらえます。相談だけでもOKで、紹介された会社であればお断りの代行もしてもらえます。

リフォーム会社の選び方は?信頼できる会社の見分け方と比較ポイント

屋根のリフォーム詐欺に注意

「避けていただきたいのは飛び込み営業の会社に依頼すること。突然やってきて、『近くで屋根のリフォームをしていたら、お宅の屋根が傷んでいるのが見えた』『このままだと雨漏りがする』などと不安をあおり、高額な契約や不要なリフォーム工事を迫るリフォーム詐欺が多くあります」

最近はリフォーム営業を装い敷地に入ろうとする強盗や空き巣の下見も発生しています。飛び込み営業には対応しない、家の中はもちろん、敷地にも入れないことが重要です。

屋根のリフォーム詐欺が急増!手口や身を守る方法は?通報や相談、契約解除についても解説 

屋根修理は複数の会社に相見積もりを依頼する

屋根の修理で後悔しないためには、複数のリフォーム会社を比較検討することが大切。我が家の屋根にはどんな修理が必要なのか、工事方法はどのようなものか、費用はいくらかかるのか、複数の会社に提案してもらうことで、必要な工事や工事費の相場が見えてきます。

なお、複数の会社に見積もりを依頼する際は、屋根の不具合で気がついていることや予算、同時に行いたいリフォームはあるかなど、同じ条件で依頼することがポイント。条件を揃えることで、上がってきた見積もりの比較検討がしやすくなります。

相見積もりをチェックするときの注意点

見積もりを確認する際には、どこに注意すればいいのでしょうか。

「見積書の金額が『一式●●万円』という記載だけで、工事の詳細を明確にしていない場合は、希望の施工がされていないなどトラブルのもと。工事内容と工事の方法、使用する屋根材の種類や数量などが明確になっているかを確認しましょう」

また、屋根の状態によって見積もりに書かれていない工事が発生する可能性はあるか、あれば、追加費用はどれくらいかかるのかなども確認しておくと安心です。

屋根の修理で補助金や火災保険は使える?

屋根修理の補助金、助成金は自治体の制度をチェック

住まいのある自治体によっては、屋根修理のみのリフォーム工事でも補助金や助成金が受けられるケースがあります。対象となる可能性があるのは断熱材入りの屋根材を施工したり遮熱効果のある塗料を使ったりする場合などの「省エネ化」、瓦屋根をスレートや金属系の屋根へ葺き替えるなどの「耐震性向上」、アスベストが使用されているスレート屋根などを葺き替える「アスベスト除去」に対するリフォーム工事です。

自治体が独自に設けている補助金・助成金の制度は、制度の有無や金額、リフォーム工事の内容、施工するのがその自治体に営業所がある事業者であることなど、適用条件が自治体によって異なります。補助金や助成金に詳しいリフォーム会社に相談してみるといいでしょう。

また地域は限定されていますが、強風による屋根の被害に対して、瓦屋根の耐風診断・耐風改修を対象とした国の補助金があります。対象区域の自治体が窓口となる制度なので、補助制度の有無を住まいのある自治体に問い合わせてみましょう。

補助金・助成金は、基本的に着工前の申請が必要。また、年度ごとに予算枠があり、申し込みが予算に達すると募集が締め切られるのが一般的。スケジュールについても早めに確認しておくことが必要です。

自然災害による屋根の破損や崩落は火災保険で補償される

屋根材の剥がれや、屋根瓦の落下など、台風や強風、竜巻といった自然災害が原因で屋根に被害があった場合は、火災保険に加入していると補償が受けられる可能性があります。例えば、台風や暴風、竜巻による被害は「風災」、大雪で屋根が崩落した場合は「雪災」、ひょうで屋根材が破損した場合は「ひょう災」で補償されます。火災保険は契約内容によって保険の適用範囲や補償対象となる損害額の下限、補償額が異なりますから、自分が加入している火災保険の内容を、普段から確認しておくといいでしょう。

保険金を請求できるのは、被害が発生してから3年以内が一般的ですが、時間が経つと、屋根の被害箇所が補償対象になる原因によるものなのかの証明が難しくなります。被害に遭ったら、片付ける前に被害を受けた箇所を写真に撮っておくこと。保険会社への連絡も速やかに行いましょう。

なお、台風や地震の後には、『火災保険を使えば、台風の被害に遭ったことにして無料で修理できる』『台風の被害の箇所のほかに、経年劣化や施工不良の箇所もまとめて火災保険で修理できる』など、嘘をついて保険請求することをそそのかす悪質な事業者が発生します。誘いにのるのは保険金詐欺に加担することになりますから、十分に注意をしてください。

外壁リフォームと同時に施工するメリットは?

屋根と同様、外壁も定期的なメンテナンスが必要

屋根には定期的なメンテナンスや適切な修理が必要ですが、外壁も同じ。雨風や紫外線から守る塗膜が必要な外壁材は定期的な塗料の塗り直しが欠かせませんし、破損などがあれば修理が、状態によっては張り直しが必要です。屋根の修理を行うタイミングが、外壁のメンテナンスの時期に近い場合は、屋根のリフォームと同時に外壁もリフォームしてしまうのも一つの方法。二つのリフォーム工事に共通の足場の設置が一度で済むため、別々にリフォームをするよりも、トータルでのコストが抑えられます。

住宅設備や開口部の交換などほかのリフォームも検討

屋根の葺き替えなど、大がかりな屋根修理を行うのは築30年ほどがたった古い一戸建てのケースが多いでしょう。新築以来、リフォームをしていない場合は、キッチンやシステムバスなどの水回り設備の老朽化や、内装の変色、間取りがライフスタイルと合わなくなっているなど、住み心地に影響が出ている可能性があります。窓や玄関ドアも最近の商品に比べると断熱性や気密性が劣っているでしょう。予算にもよりますが、屋根の修理は住まい全体のリフォームを考えるのによいタイミングともいえます。

「あと何年暮らすのか、屋根以外のリフォームをすることの費用対効果はどうかなども相談でき、屋根以外の工事も任せられるリフォーム会社に依頼するのが理想です」

リフォームは気になるところだけを個別にこまめに工事すると、手間も費用もかかります。今年、屋根を修理して、2年後に外壁の塗り替えをすれば2年連続で足場を立てることになります。床や壁紙を張り替えた数年後に、サイズが違い配管の変更もあるキッチンや洗面化粧台に入れ替えると、まだ新しい床や壁を剥がすことになります。一度に工事をする方が、材料の搬入や既存部分の撤去、廃材処理、足場など、共通する作業を一度にまとめることができますし、合計の工期も短縮できます。

屋根の修理の際には、ほかのリフォームのタイミングも来ていないか考えてみるといいでしょう。

足場工事の費用相場。外壁・屋根リフォームに必要な足場の種類と工事の注意点 

屋根修理を依頼する夫婦と施工するリフォーム会社の担当者のイラスト

(イラスト/杉崎アチャ)

屋根は雨風や紫外線から住まいを守る重要な箇所。定期的な点検で、屋根修理が必要な箇所はないかを確認してもらいましょう。屋根材のずれや破損など不具合があれば適切な修理をすることで、我が家の快適性をキープできます。

取材協力/坂 瑞貴さん(プロホームインスペクター)

取材・文/田方みき
イラスト/杉崎アチャ

取材協力/坂 瑞貴さん(プロホームインスペクター)
さくら事務所。大手リフォーム会社で営業・設計・施工管理、大手ハウスメーカーで営業・設計に従事した後、建築士事務所を設立。リフォームや賃貸サポートに従事。リフォームでは700件以上の施工経験がある。一級建築士、 既存住宅状況調査技術者、福祉住環境コーディネーター2級。
さくら事務所では、リフォーム・リノベーション工事チェック・完成検査を行うホームインスペクションのサービスも用意している。
執筆・取材/田方 みき
広告制作プロダクション勤務後、フリーランスのコピーライターに。現在は主に、住宅ローンや税金など住宅にかかわるお金や、住まいづくりのノウハウについての取材、記事制作・書籍編集にたずさわる。