ベランダ・バルコニーをリフォームしたい、あるいは新たにベランダ・バルコニーを備えたい場合、リフォームの費用はいくら必要なのでしょう。さらに、バルコニーに屋根を付けたり、ウッドデッキやサンルームを備える費用相場は? 一級建築士の柏崎文昭さんに教えてもらいました。

記事の目次
- 1. ベランダとバルコニーの違いとは?
- 2. ベランダ・バルコニーリフォームの費用の目安
- 3. ベランダ・バルコニーリフォームのメリット
- 4. ベランダ・バルコニーリフォームのデメリット
- 5. ベランダ・バルコニーリフォームの注意点
- 6. ベランダ・バルコニーの増設、サンルーム設置リフォームは「建築確認申請」が必要
- 7. ベランダ・バルコニーの増設、サンルーム設置リフォームは面積制限に注意
- 8. ベランダ・バルコニーのメンテナンスが大切
- 9. ベランダ・バルコニーの防水リフォームの施工事例
- 10. ベランダ・バルコニーの手すりもリフォームした施工事例
- 11. バルコニーに屋根を備えるリフォームの施工事例
- 12. ベランダ・バルコニーにサンルームを備えるリフォームの施工事例
- 13. ベランダ・バルコニーにウッドデッキやタイルなどを敷くリフォームの施工事例
- 14. マンションのベランダ・バルコニーのリフォームの施工事例
- 15. ベランダ・バルコニーを新たに設置したリフォーム事例
- 16. まとめ
ベランダとバルコニーの違いとは?
最初に、ベランダとバルコニーとの違いについて説明します。
なお、どちらも2階以上の、家の外に張り出したスペースを指していて、明確に分けられているわけではありません。あくまでも「そう呼ばれることが多い」だけなので、バルコニーをベランダ、ベランダをバルコニーと言っても間違いだというわけではありません。
ベランダとは
ベランダとは、2階以上にあり、住宅から外に張り出していて、ある程度の雨風をしのげる屋根のあるスペースを指して、そう呼ばれることが多いです。
マンションなど集合住宅の場合、たいてい上階のベランダ部分が屋根に相当します。

バルコニーとは
バルコニーとは、ベランダと同様、2階以上にあって住宅から外に張り出したスペースです。屋根のないタイプがバルコニーとよく呼ばれています。つまり、屋根があるスペースがベランダ、屋根のないスペースをバルコニーと分けて呼ぶことが多いです。

インナーバルコニーとは
一方、ある程度の雨風をしのげるバルコニーもあります。それが「インナーバルコニー」です。屋根があるというより、建物の内側に引っ込んでいる形状のバルコニーがこのように呼ばれています。建物の内側に引っ込んでいるため、屋根の下に入るので、雨風がしのげるのがバルコニーとの違いです。

テラス・デッキとは
テラスとは、土地の一部を盛り上げて平らにし、コンクリートやタイルなどを敷きつめたスペースを指します。1階にあることがベランダ・バルコニーとの違いです。
同様のスペースを「デッキ」と呼ぶこともあります。テラスは庭の一部で、デッキは室内の延長線、という分け方がよくされています。そのためデッキは、たいてい室内の床と同じ高さで作られていることが多いです。ただし、こちらも厳密な区分けがされているわけではありません。
また、テラスもデッキも、屋根の有無は関係ありません。

ベランダ・バルコニーリフォームの費用の目安
ベランダ・バルコニーをメンテナンスしないで放っておくと、最悪の場合は雨漏りにつながります。そのためベランダ・バルコニーは定期的にトップコート(防水層を保護する役割)を塗装したり、その下の防水層を確認して、劣化していれば修繕する必要があります。
また自宅のベランダ・バルコニーをリフォームによってアウトドア空間として利用したり、洗濯物が干せるように屋根を備えたり、サンルームにすることを検討している人もいるのではないでしょうか。
こうしたベランダ・バルコニーのメンテナンス費用や、利用目的にあったリフォーム費用、増設費用について紹介します。
バルコニーに屋根を付けるリフォーム費用の目安
本来は屋根のないバルコニーにも、屋根を付けることができます。
メリットとしては、雨風をしのげるので急な雨を気にせずに洗濯物を干せます。また屋根の種類によっては室内に入る日差しや紫外線を軽減することができます。
一方、デメリットとしては、立地条件や屋根の種類によっては室内に光が入らず暗くなります。また、台風や大雪で屋根が破損する可能性があります。
「普段からよく台風が通過するような地域や、積雪の多い地域であれば、屋根や取り付け部の強度を高めるなど対策するようにしましょう」(一級建築士の柏崎文昭さん、以下同)。
たいていの既製品の屋根には「耐風圧強度」や「耐積雪強度」が表示されています。耐風圧強度とは風にどれだけ強いのかを示すもので、台風並みの強風にも耐えられる性能の屋根もあります。同様に耐積雪強度は、「積雪20cm相当」といった具合に積雪に対する強度が表示されています。
これらの強度を確認して、その地域の特性にあった屋根を選ぶようにしましょう。
リフォーム費用の目安は、2間3尺(約3.7m×約0.9m)のバルコニーにフラットタイプ(F型)の屋根を付ける場合で、30万円〜40万円です。

ベランダ・バルコニーにサンルームを備える費用の目安
サンルームとは、屋根や壁をガラスなど透明な部材で覆うなどして、日光を取り込みやすいように作る空間のことです。屋根だけと違い、壁もあるので雨の日も洗濯物を干せますし、花粉や黄砂なども遮断しやすくなります。また、小さな子どもやペットが、天気を気にせずに遊べるスペースとしても活用できます。
一方、デメリットとしてはガラスや透明なパネルで覆われるため、夏は暑くなりがちなことが挙げられます。また、ガラスなど透明な部材は汚れが目立つため、定期的な掃除が欠かせません。
「そのほか、サンルームも屋根同様、台風や大雪で屋根が破損する可能性がありますから、地域の特性にあった耐風性能や積雪性能の商品を選ぶようにしましょう」。
リフォーム費用の目安は、2間3尺(約3.7m×約0.9m)のベランダ・バルコニーにサンルームを備える場合で、100万円〜130万円です。

ベランダ・バルコニーにウッドデッキを敷くリフォーム費用の目安
ベランダ・バルコニーにウッドデッキを敷けば、見た目が華やぎ、テーブルや椅子を置いてもサマになりやすいので、ベランダ・バルコニーで寛ぐ時間が増えそうです。また、室内のフローリングとウッドデッキを合わせれば、屋外のリビングのように使うこともできるでしょう。
ただし、1階の庭にウッドデッキを備えるのとは違い、以下のような注意が必要です。
「まずベランダ・バルコニーは排水溝や排水ドレン(排水口)がありますから、そこに枯れ葉などがつまらないように定期的な掃除が必要です。また、防水のメンテナンスも定期的に行わなければなりません。そのため、ベランダ・バルコニーには取り外せるウッドデッキがおすすめです」。
パネル状のウッドデッキを並べて敷くジョイントタイプのほか、エクステリアメーカーからも取り外せる、人工木を使ったウッドデッキが販売されています。
「さらに、ベランダ・バルコニーは排水ドレン(排水口)に向かって傾斜が付けられていますので、バルコニーに椅子を置いてくつろぎたいという人は、床の傾斜を補正するように敷けるタイプがよいでしょう」。
なお、マンションのベランダ・バルコニーは、専有部と同じように使えますが、建物の外壁や廊下などと同様に「共用部」です(専用使用権が設定された共用部)。そのためマンションによってはウッドデッキを禁止していたり、敷く際の注意事項などがありますから、必ず事前に管理規約を確認してからウッドデッキを敷くかどうか、検討するようにしましょう。
リフォーム費用の目安は、2間3尺(約3.7m×約0.9m)のベランダ・バルコニーに人工木を使ったウッドデッキを備える場合で30万円〜40万円です。

ベランダ・バルコニーにタイルを敷く費用の目安
ベランダ・バルコニーにタイルを敷く場合も、ウッドデッキ同様、排水溝や排水ドレン(排水口)を掃除したり、定期的な防水メンテナンスが行えるようにする必要があります。そのため、こちらもジョイントタイプなど、取り外し可能なタイルが良いでしょう。
またウッドデッキ同様に、マンションの場合は禁止されている場合や注意事項があるケースもありますから、必ず事前に管理規約を確認してから検討するようにしましょう。
リフォーム費用の目安は、2間3尺(約3.7m×約0.9m)のベランダ・バルコニーにタイルを備える場合で、20万円〜30万円です。

ベランダ・バルコニーの防水リフォーム費用の目安
一戸建て住宅やマンションのベランダ・バルコニーの場合、一般的に下記の3つの防水方法があります。いずれも住宅の母屋と同様に、木材や鉄骨、コンクリートなどでベランダ・バルコニーの形を作り、床の下地に防水層を形成して、その上にトップコート(防水層を保護する役割)を塗装します。
なお、後から増設する際に選ばれることの多い、エクステリアメーカーなどのアルミ製ベランダ・バルコニーには防水層はありませんから、防水リフォームの必要はありません。
1.FRP防水とは
「防水層に繊維強化プラスチック(FRP)を使う防水方法です。液状の樹脂に硬化剤を混ぜ合わせ、この混合物にガラス繊維などを組み合わせて下地に塗っていきます」。
下地に塗る工法なので、つなぎ目がなく、強靱で、耐水性や耐候性に優れています。FRP防水の耐用年数は10年〜25年ほどです。
リフォームでFRP防水を施す場合、2間3尺(約3.7m×約0.9m)のベランダ・バルコニーで24万円〜30万円(トップコートの塗布を含む)が費用の目安です。

2.ウレタン防水とは
「ウレタン樹脂を使う防水方法です。ウレタン樹脂は化学反応によって硬化するとゴムのような性質になり、柔軟性や防音性、耐衝撃性、高い密着力があります。また、FRP防水同様、下地に塗る工法のため、つなぎ目がないことがメリットです」。
耐用年数は約10年です。
リフォームでウレタン防水を施す場合、2間3尺(約3.7m×約0.9m)のベランダ・バルコニーで12万円〜15万円(トップコートの塗布を含む)が費用の目安です。

3.シート防水とは
「塩化ビニールなどのシートを下地に張り付ける防水方法です。使用されるシートは比較的安価で、広い面積を一度に施工しやすいのが特徴です」。
一方で、下地に塗るFRP防水やウレタン防水と違い、凹凸や複雑な形状の場所には向いていません。また経年劣化で硬くなると、破れやすくなります。
耐用年数は約10年です。
リフォームでシート防水を施す場合、2間3尺(約3.7m×約0.9m)のベランダ・バルコニーで11万円〜13万円(トップコートの塗布を含む)が費用の目安です。

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ベランダ・バルコニーの増設リフォーム費用の目安
ベランダ・バルコニーのなかった場所に、新たにベランダ・バルコニーを増設する場合、主に2つの方法があります。1つは母屋と同じ工法(木造住宅なら木造)で作る方法、もう1つはエクステリアメーカーなどが販売しているアルミ製ベランダ・バルコニーを備える方法です。
「母屋と同じ工法(木造住宅なら木造)で作るケースで、ベランダ・バルコニーを母屋に接続する場合、地震や風によってベランダ・バルコニーが揺れると母屋への負担になります。また、接続する際に防水施工など外壁工事が伴うため、後々の雨漏りの不安も出てきます」。
そのため、施工はベランダ・バルコニー増設の実績があるリフォーム会社に依頼すると安心です。
「理想的なのは、母屋にあえて接続せず、2間3尺(約3.7m×約0.9m)なら4本の柱で自立するベランダ・バルコニーを隣接させることです。接続しませんから、母屋への負担がありません」。
母屋と接続しないので、鉛筆が落ちる程度の隙間ができますが、人が落ちることはもちろんありませんし、逆に雨水を落としやすくなるので、ベランダ・バルコニーに水たまりができにくいというメリットもあります。また、雨水が落ちるのでその下の部屋や外壁のために庇などを備えます」。
一方で、同じく母屋に接続しますが、エクステリアメーカーなどが販売しているアルミ製ベランダ・バルコニーは、軽量であることと、接続はボルト等だけのため、比較的母屋への負担が少なくてすみます。
2間3尺(約3.7m×約0.9m)のアルミ製ベランダ・バルコニーを増設する場合、下記イラストのケースで、掃き出し窓の設置等の外壁工事と、アルミ製ベランダ・バルコニーを設置するリフォーム費用の目安は、約160万円〜210万円です。

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ベランダ・バルコニーリフォームのメリット
一戸建てでベランダ・バルコニーを設置する前に、設置するメリットをおさえておきましょう。
なお、マンションのベランダ・バルコニーについては洗濯物を干したり、ガーデニングを禁止しているマンションもありますから、必ず管理規約を確認しましょう。
2階以上に屋外のリビング空間を作ることができる
1階と比べて住宅密集地でも2階の、しかも手すりもあるベランダ・バルコニーなら、周囲からの視線を気にせずにさまざまな過ごし方ができるでしょう。
例えば、イスとテーブルを置いてコーヒーを飲んだり、読書をしたり。あるいはヨガマットを敷いてヨガを楽しんだり、夜は星空や夜景を眺めながらお酒を飲んだり。晴れた日は朝食や昼食を楽しんだり……。まるで屋外にあるリビングのように活用できます。

2階の居室が明るくなる
1階のテラスやデッキよりも、採光面で有利な2階以上に設置することになるのがベランダ・バルコニー。そのためテラスやデッキより明るい空間になりやすいのですが、接するリビングなどの居室も採光性が高まります。
なぜなら、ベランダ・バルコニーを設置するためには「出入り口」を備えることになるからです。ベランダ・バルコニーがない状態では、窓はせいぜい腰高窓程度のはずです。しかし出入り口用に開口部の大きな掃き出し窓を備えれば、隣接する居室部分も明るくなるというわけです。
出入り口の役割を考えれば勝手口ドアでも良いのですが、隣接する居室も明るくしたいのであれば、掃き出し窓がよいでしょう。
洗濯物を外干しできる
ベランダ・バルコニーという“外空間”に洗濯物を干すことができます。1階よりも採光面で有利な2階以上に干すことになりますから、早く乾きやすくなるでしょう。
家庭菜園やガーデニングを楽しめる
ベランダ・バルコニーを1階の庭のように使って、家庭菜園やガーデニングを楽しむという方法もあります。日当たりのいいベランダ・バルコニーは植物を育てるのには適した環境。見逃す手はありません。
また2階にリビングのある間取りなど、ベランダ・バルコニーに隣接する居室部分で過ごすことが多いなら、たとえ都市部にある住宅でも育てた“緑”を眺められますから、自然を身近に感じられるでしょう。

1階部分の有効活用ができる
2階のベランダ・バルコニーは、その下の空間の屋根代わりになります。ベランダ・バルコニーが広いほど、屋根で覆われる空間が広がることになります。
そんな、急場の雨もしのぎやすい1階部分に、例えばウッドデッキを備えてテーブルや椅子を置けば屋外リビングとして活用できますし、ベランダ・バルコニーの大きさによっては駐車スペースにすることも可能です。あるいは収納棚を置いて物置のように活用しても、雨に濡れずに必要なものを取りに行けたりします。

ベランダ・バルコニーリフォームのデメリット
メリットがある一方、ベランダ・バルコニーを設置する場合、下記のデメリットに注意が必要です。
掃除やメンテナンスが必要になる
ベランダ・バルコニーは屋外ですから、砂埃や落ち葉などがたまりやすくなります。掃除を怠れば排水溝や排水ドレン(排水口)がつまり、そのまま放置すると雨漏りの原因にもなりかねません。そのため、定期的な掃除が欠かせません。
雨などが降ったら洗濯物を取り込まなければならない
ベランダ・バルコニーに洗濯物を干す場合、雨には注意が必要です。屋根のないバルコニーはもちろんですが、屋根のあるベランダでも、横からの雨は防げません。
サンルームなど、横も覆われているなら雨の日も気にしなくて済みますが、それ以外では雨が降りそうになったら早めに洗濯物を取り込むようにしましょう。
ベランダ・バルコニーリフォームの注意点
ベランダ・バルコニーのある楽しい生活を送るためには、注意したいことがあります。
子どもの転落事故や防犯への対策が必要
ベランダ・バルコニーや窓からの子どもが転落する事故は毎年のように発生しています。そのため、ベランダ・バルコニーには子どもが転落しないような対策が必要です。
例えば、子どもが勝手に窓を開けてベランダ・バルコニーに出ないよう、手の届かない位置に補助錠を付けると安心です。また、子どもがよじ登りやすいような物をベランダ・バルコニーに置かないようにして、手すりが劣化して倒れそうになっていないか定期的に点検するようにしましょう。

また、警察庁によれば、一戸建ての住宅に侵入する窃盗犯の55.2%は窓から侵入しています。この窓には、ベランダ・バルコニーの窓も含まれています。マンションなど共同住宅でも3階建て以下で38.9%、4階建て以上で24.3%あります(警察庁「住まいる防犯110番」)。
まずは2階だからといって無施錠にせず、補助錠を備えたり、防犯フィルムを貼るなどの防犯対策を施しましょう。
台風や強風への対策・準備をしっかり行う
ベランダ・バルコニーは屋外空間です。そのため、1階のテラスや庭と同様に台風や強風への対策が必要になります。
まずは台風や強風で飛ばされる可能性があるものは、早めに室内に入れましょう。飛ばされたものが窓ガラスを割る危険があるだけでなく、目の前の道路など敷地外に飛んで歩行者や隣家に被害が及ぶ可能性もあります。
物干し竿や植木鉢、子どものおもちゃ、サンダルなどがあれば、早めに室内に取り込むようにしましょう。取り込めない大きな背丈のある植物などは、倒しておいたり、テーブルなどは逆さまにして重心を下げるなど、飛ばない工夫が必要です。また、窓の網戸が外れていないかも確認しておきましょう。
さらに台風では大雨の心配もあります。もし排水溝や排水ドレンにゴミがたまっていると、十分に排水できずに、ベランダ・バルコニーに水がたまってしまいます。雨量次第では窓から浸水する危険もありますし、マンションの場合、隣接住戸に影響を及ぼしかねません。台風の接近前には排水溝や排水ドレンを掃除しておきましょう。
そのほか、台風や強風では、飛来物によって窓ガラスが割れてしまう可能性もあります。万が一に備えてシャッターを備えるのも1つの方法です。シャッターを備えれば防犯にも役立ちます。

ベランダ・バルコニーの増設、サンルーム設置リフォームは「建築確認申請」が必要
リフォームで柱建てのベランダ・バルコニーを増築したり、ベランダをサンルームへリフォームする際は「建築確認申請」が必要になる場合があることに注意が必要です。
建築確認が必要な条件は以下の通りです。
- 準防火・防火地域内であれば、増築する面積にかかわらず建築確認申請が必要
- 準防火・防火地域外であれば、10m2を超える場合のみ建築確認申請が必要
ベランダ・バルコニーの増設、サンルーム設置リフォームは面積制限に注意
ベランダ・バルコニーを増築する場合は、「建ぺい率」や「容積率」に抵触しないか確認が必要です。
建ぺい率に関する注意点
「建ぺい率」とは敷地面積に対する建築面積の割合です。建築面積とは建物を真上から見たときの外周壁と柱の中心線で囲まれた面積(水平投影面積)になります。その地域ごとに建ぺい率が定められていて、増築によってこれを超えることはできません。
ベランダ・バルコニーの床の面積は、建ぺい率に関係する「建築面積」として算入されます。家の壁や柱から外側へ突き出している部分(奥行き)が1m未満であれば、建築面積に含まれません。
1m以上突き出ている場合は、突き出している部分の先から1m後退したところまでが建築面積に含まれます。
なお、サンルームの場合は、屋根付きで三方向を壁などで囲まれているため増築扱いとなることがあります。そのため突き出しているのが1m未満でも建築面積に含まれますので注意が必要です。

またベランダ・バルコニーが1m未満であっても、柱や、両サイドに壁がある場合は、柱や壁に囲まれた内部の部分が建築面積に含まれます。

容積率に関する注意点
「容積率」とは敷地面積に対する延床面積の割合です。延床面積は建物の各階の床面積の合計によって算出します。容積率も地域ごとに定められていて、増築によってこれを超えることはできません。
ただし、ベランダやバルコニーは外壁から突き出している部分(奥行き)が2m以下の部分は延床面積には含まれません。また、壁で囲まれていない外側の空間も2m以下であれば含まれず、2mを越えて出ている部分が延床面積に入ります。
なお、サンルームの場合は建ぺい率同様、増築扱いとなることがあり、その場合は床面積に含まれますので注意が必要です。

ベランダ・バルコニーはリフォームしてサンルームにできる? リフォーム費用の相場は?
ベランダ・バルコニーのメンテナンスが大切
ベランダ・バルコニーは風雨や紫外線にさらされるため、定期的なメンテナンスが必要になります。
ベランダ・バルコニーのトップコート再塗装は10年に1回が目安
母屋と同様の工法で作られるベランダ・バルコニーには、基本的に床に防水層が作られます。防水層を作る方法は主に3つ(FRP防水・ウレタン防水・シート防水)ありますが、いずれも表面にトップコートが塗装されます。
トップコートは紫外線や雨から防水層を保護するために塗装されるのですが、トップコート自体が経年や雨、紫外線で次第に劣化していきます。放っておくと下の防水層を傷め、雨漏りの原因にもなりかねません。そのため、定期的に再塗装する必要があります。
「再塗装は10年に1回が目安です。もし細かいひび割れが目立つようになってきたら、10年とはいわずに再塗装したほうが安心です。また、水がたまる場所は劣化が早まる恐れがありますから、排水ドレン(排水口)にゴミが詰まっていないか、日頃から見るようにしておくといいでしょう」。
そのほか、普段ベランダ・バルコニーに大きな収納箱など物を置いている人は、時々物の下に水たまりができていないか、劣化していないか確認するようにしましょう。
なお、エクステリアメーカーなどのアルミ製ベランダ・バルコニーには防水層やトップコートはありませんから、上記のようなメンテナンスは必要ありません。
ベランダ・バルコニーの防水工事は10年〜20年に1回が目安
「一般的に防水層の耐用年数は、FRP防水が10年〜20年、ウレタン防水やシート防水が10年前後です。一方、メーカー保証はたいてい、FRP防水も含めて10年です。ちょうどトップコートの再塗装の目安も10年に1回ですから、トップコートの再塗装の際に防水層を点検して、必要であれば防水層を修繕したり、再度施工するといいでしょう」。
また、防水層を保護するトップコートのメンテナンス状況により、防水層の寿命が早まったり長くなったりします。もしベランダ・バルコニーから雨漏りするようになったら、10年たっていなくても、すぐに雨漏りの原因箇所を特定し、必要に応じて防水工事をやり直すようにしましょう。
「また床が浮いたり剥がれたりしたら、防水層が傷んでいることが考えられるので、早めにリフォーム会社などに見てもらうようにしましょう」。
こちらも、エクステリアメーカーなどのアルミ製ベランダ・バルコニーの場合は不要です。
ベランダ・バルコニーの手すりはアルミ製ならメンテナンス不要
ベランダ・バルコニーの手すり部分も風雨や紫外線にさらされますが、たいていはアルミ製の手すりですので、メンテナンスは不要です。鳥の糞害などで汚れたら、家庭用洗剤と雑巾で拭き取る程度でよいでしょう。
手すりが鉄製の場合、表面に塗装を施しますが、塗装が剥げてさびたり腐食すると、最悪の場合崩落する危険があります。そうならないために、日頃から塗膜が剥がれていないか、サビがないか確認するようにしましょう。また塗料が劣化して手で触ると白い粉が付くようになったら、手すりの再塗装を施すようにするといいでしょう。
木製の手すりの場合も、注意が必要です。木は水に弱いため、防腐処理や防水塗装を施さないと劣化します。日頃から状態を確認し、腐食した部分があれば早めにリフォーム会社などに修繕を依頼するようにしましょう。
アルミ製のベランダ・バルコニーのメンテナンス方法
エクステリアメーカーなどが販売している、一戸建てに増設できるアルミ製のベランダ・バルコニーの場合、防水は施されていません。そのため、トップコートを塗装したり、防水工事をする必要はありません。
アルミは腐食しにくい部材ですが、日頃から汚れなどを雑巾などで拭き取るようにしましょう。特に海に近い場所や交通量が多い道路に接している場所は、塩害や排気ガスによる影響を受けやすいので、こまめに汚れを拭き取るようにするといいでしょう。
ベランダ・バルコニーの防水リフォームの施工事例
ベランダ・バルコニーに防水リフォームを行った施工事例です。
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
防水層の上に塗装されているトップコートを塗り替え
2階と3階にあるバルコニー。日差しや風雨にさらされて汚れ傷みが目立つようになりました。施工会社に見てもらうと、防水層はまだしっかりしているとわかりました。そこで防水層を保護するためにも、防水層の上の塗装部分(トップコート)を塗り替えました。

【DATA】
リフォーム費用:8万円
リフォーム部位:バルコニー(2階と3階)
住宅種別:一戸建て
築年数:26年~30年
設計・施工:松本巧舎
ベランダの雨漏りを修繕して、防水層も塗り替え
ベランダの雨漏りにしばらく悩まされていたという施主。施工会社に散水調査(水をかけて雨漏りの状況を再現した調査)を行ってもらい、雨漏りの原因を特定し、新しいベランダの床にリフォームしました。合わせて手すりも再塗装しています。

【DATA】
リフォーム費用:29万円
リフォーム部位:ベランダ
住宅種別:一戸建て
築年数:不明
設計・施工:松本巧舎
ハウスメーカーの築20年のベランダを防水工事
約20年前にハウスメーカーで建てた一戸建て。ベランダの防水層が劣化して、階下の和室に雨漏りが発生するようになりました。そこで施主は再発しないような根本的な修繕をリフォーム会社に依頼。ハウスメーカーの防水仕様は特殊だったため、既存の防水を残して、その上から木の下地を造作し、ウレタン防水を施工。さらにその上から塩ビシート防水が施されました。

【DATA】
リフォーム費用:43万円
リフォーム部位:ベランダ
住宅種別:一戸建て
築年数:20年
設計・施工:イズホーム
ベランダ・バルコニーの手すりもリフォームした施工事例
防水工事に加えて、手すりを交換したり、手すりに目隠しを備えたリフォームの施工事例です。
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
防水工事に加え、手すりの交換や外壁の再塗装も実施
港が見える築40年の鉄骨造住宅を購入した施主。眺望を特に楽しめるはずの2階のバルコニーは、手すりのサビがひどい状態でした。
そこで施工会社は手すりを解体・撤去し、新たに外壁の色と同じ白い手すりを設置。合わせて外壁の再塗装や床の防水工事なども施されました。

【DATA】
リフォーム費用:264万円(概算)
リフォーム部位:バルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:40年
設計・施工:山商リフォームサービス
隣家との目隠しのためにフェンスを設置
隣家の窓がベランダの間近にあるため、目隠しフェンスを設置することに。外からの視線を遮断しつつも光が届くポリカクリアマットが採用されました

【DATA】
リフォーム費用:18万円
リフォーム部位:バルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:6年
設計・施工:松本巧舎
バルコニーに屋根を備えるリフォームの施工事例
急な雨でも安心して洗濯物を干せるように、屋根を備えた施工事例です。 ※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
洗濯物を干せるように2階バルコニーに屋根を新設
従来は屋根のないバルコニーでしたが、干した洗濯物が急な雨でぬれないようにと屋根を備えることに。さびにくいアルミ製の屋根が新たに設置されました。

【DATA】
リフォーム費用:28万円
リフォーム部位:バルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:1年~5年
設計・施工:松本巧舎
室内の明るさを損なわずに洗濯物を干せる屋根を設置
急な雨でも安心できるよう、バルコニーの一部にポリカーボネート製の屋根を設置。屋根の形状は、フラット型よりも雨や風の吹き込みにくい、ゆるやかなカーブのR型を選びました。

【DATA】
リフォーム費用:13万円
リフォーム部位:バルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:8年
設計・施工:松本巧舎
ベランダ・バルコニーにサンルームを備えるリフォームの施工事例
雨だけでなく、花粉やPM2.5なども気にせずに洗濯物を干せるサンルームを備えた施工事例です。
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
1階の下屋(げや)を活用してサンルームを新設
築16年〜20年(推定)の一戸建てを購入した施主は、自分たちのライフスタイルに合うようリフォームすることにしました。間取りを変更したほか、1階の下屋(げや)を活用して、2階にサンルームを新設。雨の日も安心して洗濯物を干せる暮らしを手に入れました。

【DATA】
リフォーム費用:120万円(概算)
リフォーム部位:バルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:築16年〜20年(推定)
設計・施工:松本巧舎
ベランダ・バルコニーにウッドデッキやタイルなどを敷くリフォームの施工事例
ベランダ・バルコニーをセカンドリビングや、庭のようにリフォームした施工事例を紹介します。
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
ウッドパネルを敷いてバルコニーをアウトドア空間にリフォーム
冬は寒かったという1階のダイニングキッチンを、明るい2階へ移動して、新たにLDKを設置することに。それに合わせて以前は洗濯物を干すだけの場所だった2階のバルコニーも、リビングの延長のような空間へと生まれ変わりました。
リビング、ダイニング、キッチンそれぞれから出入りができるようになった新しいバルコニー。今ではここで朝食をとったり、湯上がりのビールを楽しんだり、ペットのカメも遊ばせられると施主も大喜びです。

【DATA】
リフォーム費用:90万円(概算)
リフォーム部位:バルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:20年
設計・施工:リフォーム工房
ウッドデッキを敷き木製フェンスでくつろぎの空間にリフォーム
築15年の一戸建てを購入して、好みの住まいへとリフォームすることにした施主。木のぬくもりあふれるリビングダイニングをはじめ、クロスや建具、照明、ルームアクセサリーなど、ひとつひとつのアイテムにもデザインにこだわって、理想の住まいをかなえました。
2階にあったバルコニーにはデッキを敷き、白いテーブルとイスを備えたくつろぎの空間に。プライバシーを確保するために木製フェンスを設置しました。フェンスを白くしたことで、室内のインテリアテイストにも合うだけでなく、閉塞感や圧迫感が抑えられています。

【DATA】
リフォーム費用:70万円(概算)
リフォーム部位:バルコニー・エクステリア
住宅種別:一戸建て
築年数:15年
設計・施工:ホームランド
マンションのベランダ・バルコニーのリフォームの施工事例
制限の多いマンションのベランダ・バルコニーのリフォームですが、マンションによってはここまでイメージを変えることができます。なお、マンションでベランダ・バルコニーをリフォームする場合は、必ず管理規約を確認してください。
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
目立つ設備機器を隠して庭園のようなバルコニーにリフォーム
購入したばかりの新築マンションを、施主はさらに自分たちらしい住まいにリフォームすることにしました。味気ないと感じた広いバルコニーは庭園のようにするため、ウッドデッキと白いタイルを敷き、元々あったエアコンの室外機と給湯器を隠す覆いも造作して設置しました。
さらに花壇やベンチも備え、デッキの高さをリビングの床とそろえました。こうして味気なかったバルコニーは、すてきなガーデンに生まれ変わりました。

【DATA】
リフォーム費用:130万円(概算)
リフォーム部位:バルコニー・エクステリア
住宅種別:マンション
築年数:0年
設計・施工:ホームランド
バルコニーをウッドデッキ&温水シャワースペースにリフォーム
施主が海のそばにある中古マンションを購入したのは、仕事上で必要な撮影スタジオとして、また宿泊もできる多目的施設にするためでした。2LDKだった間取りはワンルームにして、フロアタイルや石張りの壁などこだわりの素材を備えたハワイアンテイストの空間にリフォーム。
さらに、大きな掃き出し窓から出入りできるバルコニーには、ウッドデッキを敷いて温水シャワーを備え、海で遊んだ後に体やボードを洗える場所にしました。狙い通り、仕事にも使えて、休日は家族と思いっきり楽しめる海の近くの基地ができあがりました。

【DATA】
リフォーム費用:70万円(概算)
リフォーム部位:バルコニー・エクステリア
住宅種別:マンション
築年数:46年
設計・施工:フレッシュハウス
ベランダ・バルコニーを新たに設置したリフォーム事例
ベランダ・バルコニーを新設することで、今までなかった新しい暮らしを手に入れた施工事例です。
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
ロフトに合わせたルーフバルコニーを新設したリフォーム
老朽化で耐震性に不安があったという二世帯住宅。安心して暮らせる住まいへとリフォームすることになりました。2階は家族みんなでくつろげる場所として吹抜けのある開放的なリビングと、吹抜けと繋がった収納空間としてのロフトが新設されました。
さらに2階屋根の一部を取り払い、防水工事を行ってロフトから出入りできる約3畳のルーフバルコニーも新設。三世帯の憩いの場所になっています。

【DATA】
リフォーム費用:130万円(概算)
リフォーム部位:ルーフバルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:27年
設計・施工:リフォーム工房
2階にインナーバルコニーを新設したリフォーム
実家をリフォームする際に、2階にインナーバルコニーを希望した施主。施工会社はリビングとダイニングキッチンがインナーバルコニーをコの字に囲むプランを提案しました。
インナーバルコニーの室内側の3面すべてが大きなガラス窓で囲まれ、ダイニングと同じタイルの床が敷かれて室内との統一感もあるため、2階の中央にあるにもかかわらず圧迫感がありません。もう一つのリビングとして、施主はコーヒーを飲みながらのんびり過ごすのが楽しみのひとつになったそうです。

【DATA】
リフォーム費用:115万円(概算)
リフォーム部位:バルコニー
住宅種別:一戸建て
築年数:40年
設計・施工:リフォーム工房
まとめ
ベランダ・バルコニーは大きく、母屋同様に作るタイプと、増設時に採用されることの多いアルミ製の2つに分けることができます。
母屋同様に作るベランダ・バルコニーの場合は、防水層があります。防水層は主にFRP防水・ウレタン防水・シート防水があり、いずれも防水層の上にトップコートを塗装します。トップコートは10年に1回を目安に再塗装する必要がありますが、その際に防水層の状態を確認して、必要に応じて修繕や再施工するようにしましょう。
一方のアルミ製ベランダ・バルコニーには防水層がありません。また、耐久性の高いアルミ製のため、日頃の掃除程度で長く使うことができます。
なお、マンションのベランダ・バルコニーは、共用部のため、勝手にリフォームすることができません。必ず管理規約を確認してから、リフォームを検討するようにしてください。
また、一戸建てにベランダ・バルコニーを増設する場合は、建築確認が必要になるケースがあります。さらに、建ぺい率や容積率に収まるように注意しましょう。
そのほか、台風や積雪、子どもの転落事故などに注意が必要ですが、それさえクリアすれば、ベランダ・バルコニーはリフォームで、セカンドリビングをはじめ、さまざまな使い方ができます。ベランダ・バルコニーのリフォームで、新しいライフスタイルを手に入れましょう。
取材協力・監修/一級建築士 柏崎文昭さん(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/籠島康弘
イラスト/ふじや
自宅に離れを増築するために知っておきたい法規制と費用。渡り廊下にも規制がある?
雑誌「カーセンサー」編集部を経てフリーライターに。中古車からカーシェアリング、電気自動車までクルマにまつわる諸々の記事執筆を手がける。最近は住宅雑誌の記事も執筆していて、自分が何屋なのかますます分からなくなってきた。