II型(2列型)キッチンの特徴や使い勝手は? メリット・デメリットや選び方を大解剖!間取りやレイアウトの実例も紹介

カウンターが2列に配置されたII型キッチンは分担作業がしやすく、比較的コンパクトな間口でも設置可能なキッチンです。今回はII型キッチンの特徴や、リフォームの際の選び方を生活デザイン設計室サンクの古屋茂子さんに伺いました。また、リフォームでII型キッチンにした事例の間取りやレイアウトもご紹介します。

記事の目次

II型(2列型)キッチンとは

II型(2列型)キッチンとは、カウンターを2列に配置したキッチンです。シンクとコンロが別々のカウンターにあるセパレートタイプのII型キッチンのほかにも、壁付きI型キッチンの背面に配膳カウンターを設置するようなスタイルのものもあります。

アイランドキッチンを2列に配したII型キッチン

アイランドキッチンを2列に配したII型キッチン(画像提供/LIXIL(リクシル))

II型(2列型)キッチンのメリット・デメリット

II型(2列型)キッチンのメリット

カウンターが2つあるII型キッチンは作業スペースが2カ所になるので、2人で作業するときなどは分担作業がスムーズになります。親子や夫妻などで一緒に料理をすることが多いというライフスタイルにはピッタリのキッチンです。

また、シンクとコンロが別々のカウンターにあるII型キッチンは、シンクとコンロが1列に並ぶI型よりも短い間口で設置できるというのも特徴で、体の向きを変えて作業をするため、I型キッチンよりも作業のときの移動距離も少なくて済みます。

「リフォームのときには間取りの制約があってI型のカウンターキッチンにするにはスペースが足りないということもありますが、II型であればI型よりも間口を短くできるので、カウンターキッチンをつくることができるという場合もあります。

収納についても、シンプルな壁付きI型キッチンと比べると、背面にも収納スペースを設けることができるので、しっかりと収納量を確保できるのは魅力です」(古屋さん、以下同)

II型(2列型)キッチンのデメリット

横移動をして作業するI型キッチンとは違い、II型キッチンは体の向きを変えて作業をすることになります。壁付きI型キッチンに配膳カウンターをプラスするタイプのII型キッチンであれば、調理の際の動作はI型と変わりませんが、セパレートタイプの場合、使う人によっては動き方が好みではないということもあります。

「セパレートタイプのII型キッチンの場合、作業動線は短くはなるのですが、振り返って作業するため、コンロとシンクの間に物を運ぶときなどに不便さを感じることもあります。

例えば、コンロの方で大きな鍋で麺などを茹でた後、振り返ってシンクで麺をザルにあげてお湯を切るといった作業をするとき、大きな鍋を持って振り返るのは中々大変な作業です。シンクで洗った食材をコンロに移動するときに水が床に垂れてしまうということもあるでしょう」

I型のキッチンから、II型のキッチンにリフォームする場合、キッチン内で作業をするときの動線に違いがあることは、リフォーム前にイメージしておいた方がいいかもしれません。

II型(2列型)キッチンのレイアウトと間取り

II型キッチンには、オープン型、セミオープン型、独立型と主に3タイプのレイアウトがあります。それぞれの特徴と、間取りの例を見ていきましょう。

オープン型

キッチンとダイニングの間に壁がなく、キッチンカウンターがフラットな開放感のあるタイプのII型キッチンは、カウンターの片側が壁についているペニンシュラタイプのほかに、両側が壁に接していないアイランドタイプもあります。

オープン型のII型キッチンは開放感があり、スタイリッシュな雰囲気で配膳もしやすいのが特徴ですが、リビング・ダイニングとキッチンを遮る壁がないので、作業中の手元がリビング・ダイニング側から見えることが気になる場合もあります。

「オープン型は広々とした空間を演出できるのが魅力です。特にアイランドタイプなら、キッチンの周りを回遊でき、複数人で作業をすることの多い家族などには向いているスタイルでしょう。

ただし、開放感がある一方、フラットなカウンターの場合は手元が全て見えてしまうのが気になることもあります。カウンターをいつもきれいに片付けたり、掃除することが必要になるので、そのような日々のお手入れが気にならない人におすすめです」

オープン型

オープン型のII型キッチン

オープン型のII型キッチンはすっきりとした印象(画像提供/リノベーションスタジオKULABO(クラボ)

セミオープン型

ダイニングとキッチンの間に、部分的な壁や腰壁などを造作したり、吊り戸棚を取り付けたりするタイプがセミオープン型です。

オープン型よりも開放感は減ってしまいますが、ダイニング側への水はねなどを回避でき、手元を隠すことができるのがメリットです。吊り戸棚をつければ、より収納も確保できます。

「I型のカウンターキッチンのセミオープン型の場合、腰壁に加え、コンロの前だけには天井までの壁を設けることが少なくありませんが、セパレートタイプのII型キッチンの場合、コンロはキッチン背面の壁の方に設置されることが少なくありません。

レンジフードが壁際にあると、リビング・ダイニングとの天井のつながりを遮るものがないので、腰壁を設けてもLDK全体は広く見えます」

セミオープン型

セミオープン型のII型キッチン

セミオープン型のII型キッチンは手元を隠しつつ、開放感も叶う(画像提供/スタイル工房

独立型

キッチンとリビング・ダイニングが分かれていて、独立した個室のようになっているタイプのII型キッチンもあります。

独立型のキッチンは作業に集中でき、壁が多い分、収納も多く確保できます。一方、独立しているため、オープン型やセミオープン型と比較すると、リビング・ダイニングにいる人とのコミュニケーションが取りづらくなります。

「独立型は集中して料理をしたい人や、大人数の食事をまとめて準備をしたいという人にはピッタリです。作業しているところがリビング・ダイニングから見えないので、例えば、魚をさばいたり、泥野菜の下準備をしたりという作業も気にせずにできます」

独立型

独立型のII型キッチン

リビング・ダイニングに飛び出さないよう工夫し、片側に格子窓をつけたII型キッチン(画像提供/スタイル工房

II型(2列型)キッチンの費用相場

II型のシステムキッチン自体の価格はペニンシュラかアイランドかなどに加え、サイズや天板・面材などの素材やグレードにも左右されます。また、システムキッチン自体の価格に加え、リフォームの場合はもともとのキッチンを解体する費用や、壁・天井・床などの内装工事、必要な場合は給排水設備工事や電気工事等の費用もかかります。

「既製品の場合、II型キッチンは2列に分かれている分、I型のシンプルなキッチンよりも高い価格のものが多いかもしれませんが、設備は扉材や天板などの違いで、大きく価格が変わります。

また、同じII型でも、セパレートタイプではなく、シンクとコンロが壁際に並んで設置されているタイプのものは、給排水や換気などの部分がコンパクトにまとまっています。このようなタイプの方が、経路などがシンプルになるので工事費用も比較的安価になります。

また、ショールームなどではじめから高額なものを目にしてしまうと、どうしても予算以上のものに引かれてしまうと思うので、設備を選ぶ際は一度カタログなどを見て、自分のイメージをある程度固めてからショールームに確認しに行くのが安心です」

II型(2列型)キッチンを選ぶときのポイント

ポイント1 キッチンのサイズ

キッチンのサイズによって、使いやすさや費用、設置に必要な面積も変わります。

「I型のシステムキッチンの幅の定番サイズは2.4m〜2.7mですが、II型の場合はコンロとシンクが分かれているので、幅は1.8m〜が目安です。

リビング・ダイニング側のカウンターの奥行きについては、75cm〜90cm必要になるイメージですが、セパレートタイプではなく、配膳用のカウンターをリビング・ダイニング側に設けるタイプのII型キッチンであれば、リビング・ダイニング側のカウンターは45cmや60cmのものもあります」

アイランド型の場合、カウンターは1m超のものもあるため、設置するにはある程度の面積が必要になります。また、対面のカウンター部分に造作壁を設ける場合は、プラス10cm~30cm必要と考えておきましょう。

ポイント2 通路の幅

通路の幅をどうするかも、キッチン内の動きやすさを左右するポイントです。

「キッチンには引き出しの収納も多いので、引き出しを使うときに自分がその前に立つスペースも考えると、通路の幅は最低でも80~90cm必要です。また、人がすれ違うには1.2m必要といわれているので、複数人で作業するイメージなら、プラス30cmは必要と考えておきましょう。

特にペニンシュラ型は回遊することができないので、通路の幅をしっかり確保するのは必須です。アイランド型の場合は4方からの作業や移動が可能なため、通路の幅を広めにする必要はありませんが、ゆったりと余裕のあるキッチンにしたいのであれば、通路幅を広くとるのもいいでしょう」

また、ダイニングへの通路幅の目安は80cm程度ですが、アイランド型の場合はキッチンの両側に通路が必要になります。片方の通路は60cm程度でも問題はないそうですが、その場合でもキッチンの間口に加えて、80cm+60cm で140cm程必要になります。

ポイント3 冷蔵庫の位置

冷蔵庫の位置はキッチンの作業効率を考える上で重要です。冷蔵庫、コンロ、シンクの位置は、それぞれに2〜3歩で移動できるのが理想的です。

「最近は冷蔵庫に保存する調味料なども多いので、冷蔵庫は調理スペースに近い方が使いやすいです。また、家族が飲み物などを取りに行ったりすることもあるので、リビング・ダイニングからもアクセスしやすい所に置くのがいいと思います」

また、オープンなカウンターキッチンの場合、パントリーはキッチン内の見せたくないものを隠したりすることもできるので重宝します。キッチンにパントリーを設ける場合は、パントリー内に冷蔵庫を配置することもありますが、生活感を隠せて見た目がスッキリするというメリットがある一方で、冷蔵庫までの距離が遠くなり、物を取り出しにくいと感じることもあります。

ポイント4 床材

II型キッチンは調理中に床に水が落ちることもあるので、床の素材はお手入れのしやすさなどにも注意して素材を選ぶと安心です。

「滑らず、汚れがつきにくく、掃除がしやすく、見た目もきれいという点を重視したいとなると、フロアタイル(塩ビタイル)などがおすすめです。リビング・ダイニングと一体のフローリングを希望する場合は、耐水性や防汚性の高いものを選ぶようにしましょう」

フロアタイル

掃除がしやすく、傷つきにくいフロアタイルなら日々のお手入れもラク(画像提供/LIXIL(リクシル))

II型(2列型)キッチンのリフォームの実例

ここからはリフォームでII型(2列型)キッチンを採用した実例を間取りも併せて見ていきましょう。

【実例】I型キッチンからII型キッチンに。パントリーも新設

内装や設備を一新する全面改修で、I型キッチンからII型キッチンに変更しました。元々キッチンの背面には洗濯機置き場がありましたが、洗面・脱衣室と共に移動して、キッチンのスペースにゆとりを持たせ、パントリーも新設。すっきりと片付く、実用的なキッチンに生まれ変わりました。

家族で料理が楽しめそうなII型キッチン

前後に作業スペースがあり、家族で料理が楽しめそうなII型キッチン(画像提供/スタイル工房
【Before】

リフォーム前の画像

【After】

リフォーム後の間取り図

【実例】バーカウンターにもなるアイランドタイプのII型キッチン

大幅な間取り変更で20畳以上のLDKを実現。既存の壁付きI型キッチンは大胆に位置を変え、開放的なオープンキッチンをつくりました。
リフォームではカップボードも造作したため、収納力もたっぷり。バーカウンターにもなるオープンなキッチンながら、すっきりとした空間を叶えています。

高級感あふれるグラフテクト製のキッチン

高級感あふれるグラフテクト製のキッチン(画像提供/renoverocca?(リノベろっか?)
【Before】

リフォーム前の画像

【After】

リフォーム後の間取り図

【実例】造作で叶えたセパレートタイプのII型キッチン

3部屋に分かれていた1階はスタイリッシュで広々としたLDKに間取りを変更。ダイニングは家事動線を効率よくするために、キッチンとは横並びのレイアウトにしました。
限られたスペースに、パンを焼くオーブンも配したキッチンを設けたかったため、シンクとコンロを分けたセパレートタイプのII型キッチンを選択。シンク天板は人工大理石製、コンロ側は家具調仕上げのオリジナルのキッチンを造作しました。

こだわりが詰まった造作のII型キッチン

こだわりが詰まった造作のII型キッチン。背面には手作りの無垢(むく)材の棚も設置(画像提供/リノベーションスタジオKULABO(クラボ)
【Before】

リフォーム前の画像

【After】

リフォーム後の間取り図

II型キッチンは複数人で料理を楽しみたい場合はもちろん、限られたスペースで効率の良い家事動線のキッチンを求める人にはピッタリのキッチンです。I型やそのほかのレイアウトではイメージに合わないという場合は、II型キッチンも選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

【まとめ】II型キッチンなら分担作業がしやすく、省スペースでも対面式キッチンが叶う

II型(2列型)キッチンはカウンターが2つに分かれているキッチンで、シンクとコンロが別々のカウンターに配置されるセパレートタイプと、I型壁付きキッチンと配膳カウンターなどで構成されるタイプがあります。
II型キッチンのメリットは、作業スペースが分かれていることで、複数人でも作業しやすいという点です。また、シンクやコンロが横並びのI型キッチンと比べると、II型キッチンの方が比較的コンパクトな間口でもカウンターキッチンをつくることができるのが特徴です。
II型キッチンは体の向きを変えて作業をするため、家事動線の効率は良い一方、振り返って作業をするときに床に水が垂れやすいなどのデメリットもあります。
そのため、II型キッチンの床には、フロアタイルなど、水に強く、お手入れのしやすいものを採用するのが安心です。

●取材協力
生活デザイン設計室 サンク一級建築士事務所共同代表
インテリアコーディネーター 古屋茂子さん

●画像協力
スタイル工房
LIXIL(リクシル)
リノベーションスタジオKULABO(クラボ)
renoverocca?(リノベろっか?)

構成・取材・文/島田美那子