コの字型(U型)キッチンにリフォームするメリット・デメリットは?間取りや収納のポイント、リフォーム実例も紹介

作業スペースが広く、使いやすそうなコの字型キッチンですが、自分の住まいに取り入れるなら、コの字型キッチンにはどのような特徴があるのか、リフォーム前にきちんと理解しておきたいものですよね。今回はコの字型キッチンのメリット・デメリットやリフォームのポイントについて一級建築士の白崎治代さんに伺いました。コの字型キッチンの実例も、間取りと共にご紹介します。

コの字型(U型)キッチンのイメージ

(画像/PIXTA)

記事の目次

コの字型キッチンとは?

コの字型(U型)キッチンは3面で構成されるキッチン

コの字型キッチンはU型キッチンともいわれ、その名前の通り、コの字またはUの形のキッチンです。コの字型キッチンは3面で構成され、3つの面はそれぞれシンクエリア、コンロエリア、そしてもう一つが収納エリアやワークエリアなどとして分けられています。一般的なI型キッチンなどよりも動線がコンパクトだったり、調理スペースを広く取ることができたりするのが特徴です。

コの字型(U型)キッチン

コの字型(U型)キッチン(画像提供/Panasonic)

L型やⅡ型と食器棚などを組み合わせるタイプも

一般的には、カウンターが一続きでコの字型になっているシステムキッチンをコの字型キッチンと呼びますが、L型やⅡ型のシステムキッチンに食器棚やカウンターなどを組み合わせることで、コの字型のレイアウトのキッチンをつくるケースもあります。

コの字型キッチン

L型のペニンシュラキッチンに収納を組み合わせたタイプのコの字型キッチン(画像提供/LIXIL)

コの字型キッチンの施工事例

実際にコの字型キッチンを採用するとどのような間取りになるのか、施工事例を見てみましょう。

※費用は複合リフォーム全体費用の概算。リフォーム当時の価格で現在の価格とは異なります

【実例】壁付けからコの字型に変更し、コミュニケーションをとりやすいキッチンに

以前のキッチンは壁付けタイプだったため、家族に背を向けて料理をしなければなりませんでした。そこで、住まいのトータルリフォームを機に、キッチンは使い勝手が良く、コミュニケーションをとりやすいコの字型に変更しました。料理をしながら、自然とお互いの様子がわかるという点が気に入っているそうです。

担当者と共にショールームに足を運びオーダーしたコの字型キッチンは収納も充実。ゴミ箱もしまうことができます。また、冷蔵庫の置き場も使いやすい位置に設けたことで、凹凸のないすっきりとスタイリッシュな空間になりました。

全体がすっきりとした印象のコの字型キッチン

全体がすっきりとした印象のコの字型キッチン。収納もたっぷり(画像提供/東京ガスリノベーション

間取図

【DATA】
リフォーム費用概算:1100万円
リフォーム面積:45.13m2

【実例】DIYを取り入れて、こだわりのキッチンを実現

築30年の中古住宅をリフォーム前提で購入。壁付けだったI型キッチンは撤去して、L型のキッチンにカウンターを組み合わせたコの字型キッチンを造作しました。リビング側のカウンターには、お気に入りのグラスやお酒などを飾りながら収納できる棚を設けています。

また、キッチン手前の車輪付きの収納ベンチはDIYで製作。キッチンの壁のタイルには好きな赤とオレンジをポイントに取り入れるなど、自分達でも手を加えながら、オリジナリティあふれる空間をつくりました。

こだわりのつまったキッチン

こだわりのつまったキッチンが完成(画像提供/stylekoubou(スタイル工房))

間取図

【DATA】
リフォーム費用概算:1300万円
リフォーム面積:73m2

【実例】L型キッチンに背面収納を組み合わせて造作した、コの字型キッチン

リフォームではもともと1階にあったLDKを日当たりのいい2階に移動。開放感のある空間をつくるため、2階の間仕切りをなくし、その分、新しく梁(はり)を入れて補強も行いました。

オープンなL型のカウンターキッチンに合わせて、背面のカウンター収納やつり戸棚も同じデザインでナラ材を使い造作。木のぬくもりが感じられ、使い勝手もいいコの字型キッチンが完成しました。キッチンの床にはフロアタイルを採用しています。

背面には家電や食器の収納棚を造作しコの字型に

背面には家電や食器の収納棚を造作しコの字型に(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

間取図

【DATA】
リフォーム費用概算:1070万円
リフォーム面積:130m2

【実例】独立型からオープンスタイルのコの字型キッチンにリフォーム

もともと1階と2階で分かれていた二世帯住宅を、各世帯同じくらいの広さになるようにリフォーム。内装はそれぞれの世帯の好みを反映し、1階と2階で異なる雰囲気に仕上げています。

2階の子世帯のキッチンはもともと壁に囲まれた独立型キッチンでしたが、腰壁だけにして開放感のあるオープンタイプのコの字型キッチンに変更。欧風スタイルのキッチンに合わせて選んだ華やかなピンクのタイルが、ナチュラルな木の雰囲気や白をベースにした空間に、かわいらしい雰囲気をプラスしています。

ピンクのタイルがキッチン空間のアクセントに

ピンクのタイルがキッチン空間のアクセントに(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

間取図

【DATA】
リフォーム費用概算:3800万円
リフォーム面積:160m2

コの字型キッチンのメリット

収納や調理、配膳のスペースが広い

コの字型キッチンはI型キッチンなどよりも、システムキッチン自体が大きく、キッチンの天板やカウンターの面積が広いので、調理や配膳をゆとりのあるスペースで行うことができます。また、キッチン下の収納スペースをたっぷり確保でき、つり戸棚などを設けなくても収納力があるため、圧迫感も少なくできるのはうれしい点です。

さらに、デッドスペースにも見えるコの字型キッチンのコーナーの部分ですが、カウンターの上は実は収納スペースとして便利に使える部分だといいます。

「コの字型キッチンのカウンターのコーナー部分は、調理などには使わない部分なので、置きっぱなし、出しっぱなしもOKなゾーンです。調理道具や調理家電などを置いておけるので、出し入れの手間なく、カウンターの上で調理の動作を完結することができます」(白崎治代さん、以下同)

コの字型キッチンのコーナーのイメージ

コーナー部分は出しっぱなしもOK(画像/PIXTA)

効率的な動線で作業がしやすい

コの字型キッチンは、カウンター・コンロ・シンクなどに囲まれたレイアウトになるため、移動距離が短く済む効率的な家事動線を確保することができます。

「I型キッチンなどの場合は、調理のときは左右に歩いて移動する必要がありますが、コの字型キッチンの場合は、体の向きを変えるだけで済むのでスムーズに作業を行うことができます」

効率的な動線のコの字型キッチンのイメージ

(画像/PIXTA)

コの字型キッチンのデメリット

広い面積が必要

カウンターや天板などが広くて使いやすいのはコの字型キッチンのメリットですが、その分、コの字型キッチンをつくるには広い面積が必要です。

「対面・背面にそれぞれ約65cm、ダイニング側の腰壁に10cm、通路に約1mを確保すると、コの字型キッチンの奥行は2m40cmほどになります。

既存のキッチンが対面式キッチンなどであれば同じ程度の奥行ですが、もともとのキッチンが壁付きのI型キッチンなどで、リフォームを機にコの字型キッチンに変更したいという場合は、ある程度既存のキッチンスペースよりも広い面積が必要になることを考えておかなければいけません。

また、LDKの広さはそのままで、キッチンをコの字型に変更すると、キッチンが広くなる分、リビング・ダイニングの面積が減ることになります。対面カウンターの部分がダイニングテーブルを兼ねているようなタイプのコの字型キッチンにするなどの工夫は可能ですが、ダイニングスペースとは分けてコの字型キッチンにリフォームするのであれば、十分にキッチンスペースを確保できるかをよく検討する必要があります」

なお、コの字型のシステムキッチンは大きく、面積が広い分、システムキッチン自体の価格も、施工費用も高くなる傾向があります。

コーナー下の収納が使いづらい

コの字型キッチンのコーナーの部分は、カウンターの上は出しっぱなしOKなスペースとして活用しやすいものですが、カウンター下の収納部分は少し使いにくいものです。

「扉を開けるとカウンター下にワゴンが入っていたり、回転する棚が設けられているなど、コーナー部分の収納は使いづらさを軽減する工夫されているものが多いですが、ワンアクションで取り出したいものの収納には不向きです。備蓄など、普段あまり使わないものを入れるスペースとして活用はできますが、持て余す人も少なくありません」

複数人で作業しづらい

コの字型キッチンは1人で調理などをするには、効率的な動線で使いやすいキッチンですが、複数人で作業をする場合は使いにくいこともあります。

「例えば、コンロの前に1人が立っているときに、もう1人がシンクを使おうとすると身体がぶつかってしまうなど、複数人の場合は使いづらさを感じることがあります。コの字型キッチンを複数人で使いたいという場合は、通路部分を広めに取っておくのがいいでしょう」

コの字型キッチンのリフォームのポイント

コの字型のメリットを活かすレイアウトにする

体の向きを変えれば欲しいものに手が届くコンパクトな動線がコの字型のメリットですが、コンロ、シンク、収納、家電などのレイアウトによって、作業効率は変わります。

「コンロ、シンク以外のもう1面は収納や家電を置くゾーンとして活用することが多いと思いますが、冷蔵庫や調理家電が調理スペースから手の届きやすいところにレイアウトされていると使いやすいキッチンになると思います。

また、意外と見落としがちなのはゴミ箱の場所です。動線を遮らないような場所に、ゴミ箱を置くスペースを確保しておくようにしましょう。通路の部分に物を置いてしまうと、せっかくのコの字型キッチンの良さが軽減してしまいます」

ゴミ箱のイメージ

通路にゴミ箱を置くと、効率的な動線の妨げに(画像/PIXTA)

収納は使いやすい場所に適量設けるのが鉄則

コの字型キッチンの多くは2面または3面が壁に面しているので、壁の部分を活用しやすく、収納をたくさん設けることも可能です。しかし、必要以上に収納を設けることは、使いやすさという観点であまりいい方法とはいえません。

「コの字型キッチンはつり戸棚などをたっぷり取り付けたり、背の高い収納棚を設置しやすかったりするものですが、収納は収納したいものの量に合わせてプランニングすることが大事です。つくり過ぎてしまうことで、費用もアップします。収納量を確保することばかりにとらわれず、カウンターを広くとったりする方がコの字型キッチンのメリットを活かすことができます」

また、コの字型キッチンのコーナー下収納の使いづらさが気になるという人は、ダイニング側から収納の出し入れができるようなタイプのキッチンを選んだり、造作したりするのもオススメです。

「コーナー部分の収納は、ダイニング側から取り出せるような収納にしておくと、カップやティーバッグなどのお茶のときに使う用具や、ちょっとした文房具などの小物をしまうなど、ダイニング側で使いたいものを収納する場所として、うまく活用できることもあります」

コーヒーカップとコーヒーミルのイメージ

ダイニングで使うものは、ダイニング側から取り出せると便利(画像/PIXTA)

コの字型キッチンにはある程度の広さが必要になりますが、作業スペースが広く、効率的な動線を確保できるコの字型キッチンは料理好きにはうれしい、使いやすい形のキッチンです。リフォームでコの字型キッチンにする場合は、ぜひコの字の形を活かすレイアウトにして、調理などの時間をより楽しめるようなキッチンにしてみてください。

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【まとめ】コの字型キッチンはコンパクトな動線と広い調理スペースが魅力

コの字型(U型)キッチンは3面で構成されているキッチンです。L型キッチンに背面収納やカウンターなどを組み合わせたタイプのものもあります。コの字型のレイアウトは一般的なI型キッチンなどよりもコンパクトな動線や広い調理スペースが特徴で、1人で料理をするのには使い勝手のいいキッチンです。一方、コの字型キッチンはシステムキッチン自体が大きいため、LDKの面積を変えないリフォームの場合は、キッチンに面積が必要になる分、リビング・ダイニングに十分な広さを確保できなくなることも考えられます。また、コの字型キッチンはカウンター下にたっぷりと収納が確保できる上、壁面が多いのでつり戸棚などもたくさんつけることが可能ですが、必要以上に収納量を確保するよりも、カウンターなどを広く取るのがオススメです。さらに、冷蔵庫や調理家電を調理スペースから手の届きやすいところにレイアウトしたり、ゴミ箱などの場所を計画的に設けておくと、コの字型キッチンのメリットを活かすことができます。

●取材協力
白崎 治代さん

一級建築士。インテリアコーディネーター。一級建築士事務所「シーズ・アーキスタディオ」を夫の白崎泰弘さんと共同運営。

●画像協力
stylekoubou(スタイル工房)
東京ガスリノベーション
Panasonic
LIXIL

構成・取材・文/島田美那子

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