オープンキッチンの目隠しリフォーム。アイデアと費用の目安

憧れのオープンキッチンをかなえたものの、暮らしてみたらキッチンが丸見えなのが気になって……という場合は、目隠しリフォームを検討してみましょう。
さまざまな形のものであふれ、毎日の作業によって汚れるキッチンは、どうしても生活感が出がちです。この記事では、そんなお悩みを解消するキッチンの目隠しリフォームのアイデアやその費用の目安について、リフォーム会社のJS Reform(日本総合住生活)の北田晃彦さん、瀧本加奈子さんに教えていただきました。

オープンキッチンの目隠しリフォーム

記事の目次

キッチンの目隠しリフォームの目的を確認

目隠しリフォームを検討する場合、その出発点は何らかの使いにくさや不満からでしょう。どうして目隠しをしたいのか、何を解消したいのかを掘り下げると、適切なプランが選べます。

まずは、なぜキッチンの目隠しをしたいのか、目的を確認してみましょう。
例えば、「調理中の手元やバックカウンターの生活感が丸見えなのがイヤ」「リビングに向かう来客からキッチンのごちゃごちゃが見えるのがイヤ」といった見えすぎることについて。どこからの視線が気になるか、逆にキッチンからの視線はどの程度抜けている必要があるのかをイメージしておくとよいでしょう。

ほかに、「収納が足りない」「水はねが気になる」「油はねや油煙拡散を防ぎたい」といった使い勝手の不具合があれば、一緒に解消できるプランを選ぶことが大切です。

揚げ物の油跳ねがリビングまで

油はねは、熱いだけでなく床を滑りやすくしたり壁をべたつかせたりと困ったもの

オープンキッチンのメリット・デメリット

目隠ししたくなるキッチンは、かなりフラットなタイプのオープンキッチンです。
オープンキッチンのメリット・デメリットをみていきましょう。

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オープンキッチンの種類

オープンキッチンは、キッチンとリビング・ダイニングが壁や吊戸棚で仕切られていない間取りプランの総称です。LDKの空間が一体になり、広く開放的な雰囲気が魅力です。

一口にオープンキッチンといっても、キッチンの配置や形状はさまざま。対面式、壁付けのどちらであっても、LDKの空間が一体になっていればオープンキッチンに含まれます。
また、キッチンの片側が壁についたペニンシュラ型、キッチンの両側が壁から離れたアイランド型、シンクとコンロが2列に分かれたⅡ型、キッチンがL字に折れたL型など、いずれのタイプでも、LDKの空間がつながっていればオープンキッチンに含まれるのです。

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オープンキッチンのメリット

オープンキッチンには、以下のようなメリットがあります。

  • リビングとキッチンの空間がつながり、開放的で広く感じられる
  • キッチンで作業しながら、リビングやダイニングにいる人と関われる
  • キッチンのデザインにこだわればLDKのインテリアのフォーカルポイントになる

オープンキッチンは、料理をしながらリビングにいる人とコミュニケーションがとりやすいので、小さな子どものいる家庭や、家族で過ごす時間が短くなりがちな共働き世帯は特に重宝するプランです。
また、ホームパーティーを開き、ゲストとおしゃべりしながら料理をするのが好きな家庭にも人気があります。

オープンキッチンのデメリット

オープンキッチンは、なるべく遮る壁を減らし、ワークトップの凹凸をなくしたほうがスッキリとおしゃれに見えますが、一方で、遮るものがない分いろいろな問題も出てきます。
オープンキッチンには、以下のようなデメリットがあります。

  • リビングやダイニングから丸見えなので、生活感が出て雑然とした雰囲気になりやすい
  • 洗い物をする際に水はねが気になる
  • 調理中に油はねが気になる
  • 油煙がリビングのほうに回りやすい
  • 吊戸棚がない分、収納が少なくなる

そのため、選んだときにはおしゃれでときめいたキッチンであっても、キレイな状態を保つのはなかなか大変。いざ使っていくと生活感の “見えすぎ”が気になることも。
「実際に、キッチンの目隠しを相談される方のほとんどが、手元を隠したいというお話からスタートします」(北田さん・瀧本さん、以下同じ)。

洗い物がたまった壁付けキッチン

たまった洗い物が丸見えでLDK全体に生活感が伝わってしまう

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手軽にできるキッチンの目隠しアイデア

自分で手軽にできる範囲での目隠しを検討しているなら、市販のグッズをうまく使って隠すのも手です。

小物やグリーンでディスプレイを楽しむ

まずは家にあるものや、100均などで気軽に買えるインテリア雑貨を使って目隠しをしてみましょう。手前に視線が止まるポイントがあるだけで、奥は意外と気にならなくなるもの。
写真立てや小さなグリーンポットのほか、おしゃれなかごや箱を置いて、パンやフルーツの一時置きにしても。

小物で手元を目隠し

フラットなワークトップでも、手前にちょっと小物をディスプレイするだけで視線を止める効果が

水はね、油はねガードのパネルを活用する

シンクまわりやコンロまわりに置くタイプのパネルなら、簡単に水しぶきや油はねをガードできます。サイズや素材はさまざまです。倒れにくく、サッと洗いやすいものが使いやすいでしょう。

突っ張り棒やロールスクリーンを使って目隠し

オープンな収納棚や背面の壁のごちゃつきは、突っ張り棒やロールスクリーンで目隠しするのも手。DIYでロールスクリーンを設置する場合は、天井や壁に下地があるか確認してから取り付ける必要があります。また、布製品は火の近くにならないよう気を付けましょう。

パーテーションや衝立を置く

物理的に遮るものを置いて視線を遮ります。ただし、素材によってはキッチン側からの視線も遮るため、せっかくのオープンな雰囲気を損なわないよう、部分的に使うなど、置き方に工夫が必要です。小さい子どもがいる場合は、ぶつかって倒さないよう配慮を。

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プロに依頼するキッチンの目隠しリフォーム

プロに依頼すれば、適切なプランでキレイに仕上げてもらえます。
「私たちがキッチンの相談を受けるとき、まずお伺いするのは来客が多いかやキッチンをどのように使うかなどのライフスタイルです。それにより、どのようなキッチンが合っているのか分かります」
リフォームの相談では、現在感じている困りごとや不満についてもプロに伝えると、ぴったりなプランを提案してもらえます。
ここでは、目隠ししつつ、ちょっとした不満も解消できるアイデアと、そのリフォーム費用の目安について紹介します。

※リフォーム費用は一般的なサイズ(一戸建て2550mm、マンション2400mm)のキッチンの場合の目安で、写真の実例の工事費用ではない。工期は設置工事にかかる日数の目安。

油はねガードで手元を隠す

調理中の油がはねて床につくと、滑りやすくなって危険です。すりガラスの油はねガードなら、手元を隠しつつ油の飛散を防げます。
油はねガードは、キッチン自体にオプションで付けられるものがあるので、キッチンを交換する際に検討することもできますが、パネルだけを後付けすることも可能です。リフォームで設置する場合は、しっかりビス止めできるので、倒れる心配もなく安全です。ガラスなので汚れも落としやすく、お手入れも比較的簡単です。
「キッチンにビス用の穴をあけるため、天板は人工大理石やステンレスであれば取り付け可能です。セラミックはビス止めのタイプは難しいので置くタイプのパネルを提案します」

もし、油はねに加えて、調理中にリビングへの油煙やにおいが拡散するのが気になるなら、換気扇とキッチンの間全体を覆うウォールタイプの油はねガードを選ぶとよいでしょう。ガラスなので開放感はそのままですが、手元が見えることが気になる場合は、パネルとリビングの間に小物などを置くのがベターです。

リフォーム内容 リフォーム費用目安 工期目安
油はねガード(ビス止め) 10万円程度 1日
油はねガード(アルミ枠ウォールタイプ) 15万円~ 1日

すりガラスの油跳ねガードのあるキッチン

すりガラスの油はねガードなら、オープンキッチンの開放感は損なわずに手元を隠せる(写真/カナジュウ・コーポレーション) 

ウォールタイプの油跳ねガードがあるキッチン

揚げ物が多い家庭なら、ウォールタイプが◎。コンロ前の床や壁のべたつきが解消できる(写真/カナジュウ・コーポレーション) 

広範囲で手元を隠し、水はねを抑える腰壁

腰壁は、人の腰の高さ程度の壁。キッチン本体とリビング・ダイニングを仕切る部分に腰壁を造作すれば、手元を隠しつつリビングへの水はね対策にもなります。
「弊社の場合、キッチンの腰壁の高さは100㎝~110㎝が多いです。リビングからは座って見ることが多いので、この程度の高さで十分手元は隠せますが、希望に合わせてもっと高くつくることも可能です」

腰壁のサイズやデザインはインテリアと予算に合わせて相談できます。収納と組み合わせたり、食事用のカウンターを設けたりすることも。せっかく造作するなら、キッチン側や腰壁の天板部分にコンセントを設けておくと便利です。

リフォーム内容 リフォーム費用目安 工期目安
腰壁(壁紙仕上げ) 10万円~ 2日
腰壁(タイル仕上げ) 12万円~ 2日
腰壁(収納を造作) 35万円~ 3日

側面まで回したシンプルな腰壁

腰壁は、リビング側だけでなく、側面まで回すこともある(写真/JS Reform(日本総合住生活)

おしゃれな腰壁で目隠ししたキッチン

カウンターを取り付け、カフェのように仕上げたデザイン性の高い腰壁(写真/ナサホーム

コンロ前に壁を設けて視線を遮り、油煙をカット

キッチンとリビングの境に、一部でも壁があるとリビング側や廊下側からの視線が手前で止まるため、奥が気にならなくなります。コンロ前に壁を設けると、油はねや油煙の拡散を防ぐ効果も期待できます。 「オープンキッチンは、吊戸棚がない分、換気扇や調理中の音がリビングに抜けやすいですが、コンロ前に一部壁を設けると音が軽減できます」

リフォーム内容 リフォーム費用目安 工期目安
コンロ前の壁(壁紙仕上げ) 15万円~ 2日

室内窓のあるコンロ前の壁

壁に室内窓を設置すれば、開放感も損なわず、調理中にリビングの様子もうかがえる(写真/ナサホーム

コンロ前に壁のあるキッチン

コンロ前に壁が設けて目隠し。調理中に発生する蒸気を換気扇にスムーズに送る効果も(写真/renoverocca?(リノベろっか?)

コンロ前の収納兼用の壁

コンロ前の壁と一体になった収納を造作し、リビング側からの使い勝手アップ(写真/renoverocca?(リノベろっか?)

広い範囲で視線を遮る間仕切り壁

せっかくオープンキッチンにしたのに全体を壁で覆うのはもったいない。そんなときには、気になる部分にだけ間仕切り壁を設けるのも手。室内窓を設けたり、ガラスやアクリル板のような透過性のある素材を使ったり、何となく奥にあるものが意識できるように造作すると、開放的な雰囲気をキープしたまま視線を遮ることができます。

リフォーム内容 リフォーム費用目安 工期目安
間仕切り壁(壁紙仕上げ) 20万円~ 2日
間仕切り壁(腰壁+透過素材) 50万円~ 2日

リビング側から見たキッチンとの間仕切り

間仕切りがあることで場所ごとの役割が整理されて空間効率がアップ(写真/stylekoubou(スタイル工房)

キッチンとリビングの間仕切り

間仕切りで緩やかに仕切りつつ、光や視線を通して空間の広がりを確保(写真/stylekoubou(スタイル工房)

バックカウンターの扉で生活感を隠す

モノや家電を置くことが多いバックカウンターは、生活感が出やすい場所。扉があると雑多な雰囲気が隠れるので、急な来客があっても安心です。
ただし、サッと片付いた印象にできる扉ではありますが、物を取り出すたびに扉を開くという動作が必要になるため、ずぼらな人には不向きなプランかもしれません。もともと片付けの意識が高い人が、さらなるキレイを目指して選ぶことが多いプランだそうです。

「付ける扉の枚数や厚みにもよりますが、キッチンと背面収納の間の通路の幅が10㎝~20㎝程度狭くなることも知っておいてください」

リフォーム内容 リフォーム費用目安 工期目安
収納を囲う壁と扉を設置(扉は既製品) 50万円~ 3~4日
収納を囲う壁と扉を設置(透明素材で造作) 80万円~ 3~4日

扉のあるオープンキッチンの背面収納

背面収納が扉で覆われているので、LDKはいつもスッキリした印象に(写真/JS Reform(日本総合住生活)

扉のあるキッチンの背面収納

扉の数や素材は使い勝手やインテリアに合わせて選びたい(写真/JS Reform(日本総合住生活)

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パントリーに隠したいものをまとめて収納する

間取り変更も含む思い切ったリフォームをするタイミングであれば、パントリーの導入もオススメしたいプランです。
「最近は、ショッピングモールでのまとめ買いや防災意識の高まりなど、自宅にストックをもつライフスタイルの家庭が増えているため、パントリーは人気のプランです。」

モノが少なく美しいオープンキッチン

物は極力パントリーに収め、リビングから見えるキッチンはスッキリと。オープンな棚は飾る程度にしておけば、来客にも“見せたい”キッチンに(写真/stylekoubou(スタイル工房)

パントリーがあるスッキリ片付いたキッチン

パントリーはリビング側からは見えにくく、作業場からはサッと入れる配置に(写真/stylekoubou(スタイル工房)

パントリーのメリットと収納アイデア

パントリーがあるメリットは、リビングから見えにくい位置にストックを収納できることです。また、片付ける余裕がないときでも、荷物を見えない場所に一時的に置いておけるため、キッチンがスッキリ片付きやすくなることです。

パントリーは、1畳以上あれば両側に棚が付けられます。
「小さな物を取り出しやすい浅い棚、大きなものを置ける深い棚、と奥行きの違う棚があると便利です。棚は可動式にし、収納するもののサイズにあわせて最初に定位置を決めてしまうと使い勝手が良くなりますよ」

もし広さに余裕があるなら、3畳以上のウォークインタイプもオススメです。パントリーの中に照明やコンセントをしっかり設け、冷蔵庫やウォーターサーバー、ロボット掃除機の基地なども格納して中で作業できるようにつくると使いやすくなります。種類が多い分別用のごみ箱など、生活感のあるものも隠してしまいましょう。

なお、パントリーを使う際は、荷物で両手がふさがっていたり、料理中で手がぬれていたりしがち。そのため、パントリーの入口はリビングからは見えにくい配置にして扉を付けないのが一般的です。

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まとめ

この記事では、オープンキッチンの目隠しと一緒に困りごとを解消するリフォームアイデアと費用の目安をお伝えしてきました。大掛かりな工事でなくても、長年のモヤモヤを解消できる方法もあるかもしれませんので、ぜひ試してみてください。

【最新版】キッチンリフォームの補助金・助成金。対象の工事や注意点、申請方法、期限は?

●取材協力
JS Reform(日本総合住生活)

設立から60余年、UR都市機構の住宅をはじめとした集合住宅の安全・安心・快適を支え続けてきたリフォーム会社。プランニングから施工まで一貫して行う。

構成・取材・文/竹入はるな
イラスト/黒猫まな子