ペニンシュラキッチンとは、片側が壁に接した半島型のカウンターキッチン(対面キッチン)です。開放感があり、スタイリッシュな雰囲気から、リフォームでも人気の高いキッチンタイプです。この記事では、ペニンシュラキッチンの特徴やおしゃれなリフォーム事例、メリット・デメリット、後悔しない選び方などを詳しく解説します。また、よくある質問について一級建築士・白崎治代さんに伺いました。ペニンシュラキッチンを検討中であれば、ぜひこの記事を読んで理想のキッチンづくりに必要な知識を身につけておきましょう。

記事の目次
ペニンシュラキッチンとは
ペニンシュラキッチンは、キッチン本体の左右のどちらか一方が壁に接地している「対面型」のキッチンのひとつです。名称の「ペニンシュラ」は英語で「半島」を意味し、半島のように壁面から突き出たカウンターの形状からその名が付いています。
キッチンのレイアウトは俯瞰視点での形状で分類され、ペニンシュラキッチンは「I型」や「L型」「II型」などの種類があります。もっとも一般的な「I型」は、コンロ・シンク・調理台が一列に並んだタイプのキッチンです。ペニンシュラキッチンにおけるI型は、横一列のキッチン本体の左右どちらかが壁に接地しているタイプで、横一直線のコンパクトな動線で調理できます。
「L型」はカウンターがL字型になっています。動きやすい三角形の動線が特徴で、このL字型のレイアウトを活かして、片側をリビングにカウンターにすることでペニンシュラキッチンとして応用できます。
「II型」はカウンターを二列に配列したタイプで、作業スペースも収納スペースも広いことから人気があります。この配置の一方をカウンターとしてリビング側に開放すれば、ペニンシュラキッチンとして応用できます。また、I型のペニンシュラキッチンの背面に調理カウンターを設けたり、壁付けのI型キッチンに対面カウンターを設置したりして、II型風のレイアウトにするケースもあります。
どのタイプもカウンターがリビング側を向いており、家族とのコミュニケーションを取りやすいのもメリットです。

アイランドキッチンとの違い
ペニンシュラキッチンとよく混同されるのがアイランドキッチンです。アイランドは「島」の意味を持ち、四方が壁に接しない独立型のキッチンです。ペニンシュラキッチンとアイランドキッチン、どちらも対面型キッチンですが、両側に通路が必要なアイランドキッチンに比べて、ペニンシュラキッチンのほうが省スペースで設置できます。
ペニンシュラキッチンのリフォーム事例
ここからはペニンシュラキッチンのおしゃれなリフォーム事例を見ていきましょう。
【事例】壁を撤去し、開放感のあるペニンシュラキッチンに
クローズドタイプのキッチンの壁を可能な限り解体し、開放感のある対面式のペニンシュラキッチンに変更。希望していた、パンづくりに欠かせない広い作業スペースを実現しました。また、背面にはキッチンとセットでコーディネートしたカップボードや冷蔵庫を並べて配置できるよう、廊下とLDKをつなぐドアの位置も変更しました。

【事例】複数人で一緒に作業できる広々キッチン
リフォームでは生活動線に配慮し、3階にあったキッチンを2階に移動。キッチンは以前よりひと回り広いセミオープンタイプのペニンシュラキッチンにし、背面には施主支給のカップボードを取り付けました。2台分の冷蔵庫置き場も確保し、キッチン裏には食品のストックや調理家電を収納できるパントリーも設置しています。

【事例】カウンターを現場で加工。コンロ前のガラスで開放感もアップ
キッチンに移動できないパイプスペースがあり、希望していた完全にフラットなオープンキッチンにするのは難しかったそうですが、リフォームの際、現地で天板を加工し、コンロ前の壁はくり抜いて特注の強化ガラスを設置。壁で囲まれ暗かったキッチンを、開放感のあるペニンシュラキッチンに変更しました。

ペニンシュラキッチンのタイプ
ペニンシュラキッチンは「I型」などのレイアウト分類とは別に、大きく分けて2つのタイプがあります。オープンタイプ、セミオープンタイプそれぞれの特徴を知り、キッチン選びに役立てましょう。
ペニンシュラキッチンは基本的に開放感のあるキッチンですが、オープンタイプとセミオープンタイプがあります。

オープンタイプ
オープンタイプのペニンシュラキッチンは、キッチンとダイニングの間に壁や間仕切りなど遮るものがなく、空間に一体感を持たせた開放感があります。LDK全体を広く見せる効果があり、キッチンを隠す空間ではなく見せる空間として、スタイリッシュに演出できるのも魅力です。
また、ダイニング側から配膳や盛り付けがしやすく、料理や片付けの動線がスムーズで、家族や来客とコミュニケーションを取りながら作業できるメリットがあります。特に、小さな子どもがいる家庭では、料理をしながらリビングの様子を見守れる点が安心材料となります。
一方で、開放的である分、リビング・ダイニング側からキッチンが丸見えになるので、日ごろから整理整頓を意識し、生活感を出しすぎないよう気を配る必要があります。料理の手元を見られたくない場合はシンクの高さを調節したり、手元を隠すための腰壁を設けたりする工夫が求められます。油はねや料理のニオイ、煙、水はねなどがLDK全体に広がるリスクがあるため、換気性の高いレンジフードの採用や掃除しやすい素材選びも考えなければなりません。
セミオープンタイプ
セミオープンタイプのペニンシュラキッチンは、コンロやシンク前に壁や吊り戸棚を設けたスタイルです。キッチンとリビング・ダイニングの間に間仕切りができるため、オープンタイプよりもやや閉鎖的ですが、機能性に優れています。水はねや油はねがダイニングに飛びにくく、調理中の手元も隠れるため料理に集中できます。また、完全オープンではないため、雑然としたものが目に付きにくく、来客時も安心です。間仕切りとして吊り戸棚を設ければ作業しやすく、収納スペースを確保できる点もメリットです。
ただし、リビング・ダイニングとの一体感や開放感はやや損なわれ、キッチンに熱がこもりやすいというデメリットがあります。


カウンターキッチンのレイアウトの種類
カウンターキッチンにはさまざまなレイアウトがあります。それぞれの特徴を見てみましょう。
I型
I型は、コンロ・シンク・調理台が一列に「I」の字に並んだタイプのキッチンです。ペニンシュラキッチンというとI型が定番のレイアウトで、左右のどちらかが壁面に接しています。省スペースで設置できるため、空間を有効に使えるのが大きなメリットです。背面にカップボードや食器棚などの収納を設けることで、動線がシンプルかつ効率的になり、調理や片付けもしやすくなります。

L型
L型は、コンロとシンクが90度の位置に配置されたキッチンです。体の向きを変えるだけでコンロとシンクの両方を使えるので、キッチン内でスムーズに作業できます。I型よりも動線が短くなり、効率的な家事動線が叶うレイアウトです。
このL型レイアウトを活かして、片側をリビングに面したカウンターにすることでペニンシュラキッチンとして応用できます。対面スタイルで配膳や会話がしやすくなるため、家族とのコミュニケーションを重視したい方におすすめです。

II型
II型のカウンターキッチンは、コンロとシンクのあるカウンターが前後に分かれているタイプで、作業スペースが広く、効率的な動線を確保できるのが特徴です。
この配置の一方をカウンターとしてリビング側に開放すれば、ペニンシュラキッチンとして応用できます。また、I型のペニンシュラキッチンの背面に調理カウンターを設けたり、壁付けのI型キッチンに対面カウンターを設置したりして、II型風のレイアウトにするケースもあります。

コの字型(U型)
コの字型(U型)キッチンは、ワークトップがコの字になったタイプです。ほかのレイアウトに比べ、3方向に調理スペースや設備を配置できるので、作業効率の高い動線が実現できます。収納スペースをしっかり確保できる点も魅力です。
このうち一辺をカウンターとしてリビング側に開放すれば、ペニンシュラキッチンとして応用可能です。また、L型のカウンターキッチンにカウンターなどを組み合わせて、コの字型風のレイアウトにすることもあります。

ペニンシュラキッチンのメリット
カウンターキッチンの中でも人気のペニンシュラキッチンですが、その魅力は何なのでしょうか。ここからは、ペニンシュラキッチンのメリットを7つ紹介します。
メリット1 開放感がある
ペニンシュラキッチンは対面式のカウンターキッチンのため、開放感があるというのが大きな魅力です。
既存のキッチンが壁付きタイプや独立型のキッチンの場合は、ペニンシュラキッチンにリフォームすることで、キッチンとリビング・ダイニングに一体感が生まれるため、広々とした雰囲気を演出できます。
メリット2 コミュニケーションを取りやすい
リビング・ダイニングの方を向いて作業をするペニンシュラキッチンは、家族とのコミュニケーションが取りやすいというのもうれしいポイントです。
「壁付きキッチンや独立型キッチンは、壁に向かって作業をするため、孤独感や閉塞感があることもあると思いますが、ペニンシュラキッチンにすると、家族とコミュニケーションを取りながらキッチンでの時間を過ごすことができます。
キッチンからはリビングにいる子どもに目が届きやすく、リビングからもキッチンが見やすいので、食育につながったり、家族の家事参加を促したりするきっかけにもなるかもしれません」

メリット3 アイランドキッチンと比べて省スペース
「片側が壁に付いたペニンシュラキッチンは、キッチンの両側に通路が必要なアイランドキッチンに比べ、省スペースで設置することが可能です」
アイランドキッチンにするにはLDKの広さが十分でなくアイランド型をあきらめざるを得ない場合でも、ペニンシュラキッチンであれば同じサイズのシステムキッチンを採用できることがあります。壁付けキッチンからの変更も可能な場合があり、リフォームでも比較的設置しやすい点もペニンシュラキッチンの大きなメリットです。

メリット4 目隠しや収納を設けやすい
対面式のペニンシュラキッチンは、背面に収納棚などを設置することができるため、壁付けのI型キッチンなどよりも収納スペースを確保しやすくなります。振り返るだけで調理家電を使用できたり必要なものにすぐ手が届いたりと、動線がスムーズで家事の負担軽減にもつながります。
また、壁付けキッチンに比べると、作業スペースが丸見えにならないという点も見逃せません。
「壁付けのI型キッチンは足元までダイニングから丸見えになってしまいますが、ペニンシュラキッチンの場合は対面式なので、その点を解消することができます。さらに、手元が見えるのが気になる場合は腰壁を設けたり、コンロの前に壁を設けたりすることもできるので、気になる部分は程よく隠すことも可能です」

メリット5 家事動線がよくなる
ペニンシュラキッチンは、レイアウトの自由度が高く、コンロ・シンク・冷蔵庫の配置を工夫することで効率的な家事動線を確保しやすいのが大きなメリットです。
よく採用されているのは、壁に近い位置にコンロを配置し、シンクの後ろ側に冷蔵庫を配置するスタイルです。ダイニングやリビングからも冷蔵庫にアクセスしやすく、料理をしている人と動線が重ならないため、キッチンが渋滞するのを避けられます。
また、ペニンシュラキッチンにカウンターを取り付ければ、料理の配膳や食器の片付け、食材の一時置き場としても使えて便利です。
メリット6 アイランドキッチンよりも手入れがしやすい
ペニンシュラキッチンは、アイランドキッチンに比べて手入れがしやすいのが特徴です。アイランドキッチンは四方が壁から独立しているため、油はねや水はねが広がりやすく、掃除の手間も増えがちです。
一方ペニンシュラキッチンは片側が壁に接しているため、汚れの方向が限定され、清掃の範囲を抑えることができます。さらに、コンロ前に壁があるセミオープンタイプであれば、油はねなどをより効果的に防げるため、より掃除がしやすい環境が整います。
ただし、お手入れがラクなのはあくまでもアイランドキッチンと比べた場合であり、対面式である以上、リビングやダイニング側への油やニオイの広がりには配慮が必要です。
メリット7 アイランドキッチンよりは価格を抑えられる
ペニンシュラキッチンは、アイランドキッチンと比較して価格を抑えられるというメリットもあります。アイランドキッチンは四方すべてが露出するため、どの面にも化粧パネルなどの仕上げ材が必要となり、その分コストが高くなりがちです。一方、ペニンシュラキッチンは片側が壁に接しているため、仕上げ材の使用面が少なく、必要な部材や施工費を抑えることができます。そのため、比較的予算を抑えながら、おしゃれで開放感ある対面キッチンを導入したい方におすすめです。
ペニンシュラキッチンのデメリットと対策方法
さまざまな魅力があるペニンシュラキッチンですが、デメリットもあります。ここからはペニンシュラキッチンのデメリットと、その対策方法も併せて紹介します。
デメリット1 油はねや水はねが気になる
オープンタイプのペニンシュラキッチンは、コンロやシンクの前に壁や吊り戸棚などの遮るものがなく、ダイニング側からも配膳や盛り付けがしやすい開放感のあるレイアウトが魅力です。しかしその反面、調理中の油はねや、シンク使用時の水はねが気になることがあります。
その対策として有効なのが、腰壁や部分的なパーテーションの設置です。特に透明のパーテーションを選べば、油や水の飛散を抑え、空間をスッキリと保つことができます。ただし、透明な素材は汚れや水滴が目立ちやすく、ダイニング側からもパーテーションの汚れが見えてしまうという難点があります。
「透明のタイプのものは開放感やデザイン性を保ちながら、ダイニング側への飛び散りを防ぐことができます。一方で、パーテーションに付いた汚れがリビング・ダイニング側から目に付いてしまうので、こまめなお掃除は必要になります」
開放感やデザイン性を重視するのであれば、ある程度ダイニングやキッチン周りのこまめなお掃除が必要になるという点は、リフォームの際に考えておきましょう。

デメリット2 ニオイや煙が広がりやすい
ペニンシュラキッチンは開放的でLDKとの一体感がある分、空間が仕切られていないため、調理中のニオイや煙がリビングやダイニングにも広がりやすいというデメリットがあります。特に、もともと独立型のキッチンを使っていた場合には、リフォーム後にその違いを強く感じることもあるでしょう。どうしてもニオイが気になる方は、再び独立型キッチンを検討するのもひとつの選択肢ですが、LDKの広さに合った高性能なレンジフードを導入し、こまめに換気を行うことで、ニオイや煙の拡散はある程度抑えることが可能です。
「リビング・ダイニングへ広がるニオイによって、調理をしている時間などを家族で共有していることを感じられたりもするので、ペニンシュラキッチンのメリットとしてとらえられる部分でもあります」
デメリット3 収納スペースが少ない
ペニンシュラキッチンは開放感を重視したデザインのため、吊り戸棚などの上部収納が設置されていないケースが多く、収納スペースが少ないのがデメリットです。調理器具や食器、調味料などの置き場が足りないと、ものが出しっぱなしになりキッチンが雑然と見えてしまう原因にもなります。
その場合は、スペースを上手に活用しましょう。キッチン下を活用したり、背面に収納棚やキャビネットを設置したり、パントリーを設けるといった工夫で補えます。また、リビング側に収納を備えたキッチンを選ぶことも有効です。快適な空間を保つには、キッチンに置くものを見直し、収納の計画と使い方のルールを決めることがポイントです。
デメリット4 来客時に見せたくない部分を見られる可能性がある
ペニンシュラキッチンは開放感があり、リビングとの一体感を演出できる魅力がある分、リビングからもキッチン内部がよく見えます。カウンタートップやシンクの中までも丸見えになり、雑然とした印象になりやすいです。また、作業中、調理や配膳の手元が気になることもあるでしょう。
特に、来客時に散らかっている様子や見せたくない部分まで目に入ってしまう可能性があります。こうしたデメリットの解消には、腰壁や部分的なパーテーション、透明パネルなどで目隠しを設けることで、開放感を損なわずに視線をコントロールする工夫をしましょう。
後悔しない!ペニンシュラキッチンを選ぶときのポイント
リフォームでペニンシュラキッチンにする場合、どのような点に注意すれば後悔を防げるのでしょうか。事前に把握しておきたいポイントを紹介します。
ポイント1 レイアウトとサイズ
既存のキッチンが壁付けタイプの場合、ペニンシュラキッチンに変更することで、リビング・ダイニングのスペースが狭くなってしまう可能性は留意しておきましょう。
「壁付けキッチンの場合は、キッチンとダイニングの境界があいまいなことも多いものですが、ペニンシュラキッチンに変更すると、キッチンとダイニングは明確に分けて設けることになります。
LDKの面積は変更せずに、壁付けキッチンからペニンシュラキッチンにリフォームをする場合は、同じ広さの中に、キッチンとダイニングそれぞれを独立させてつくることになるので、キッチンに必要な面積をとることで、ダイニングがコンパクトになる可能性もあります」
システムキッチンの横幅は比較的コンパクトなものも選べますが、奥行きについては60~65cm程度が一般的です。そこに腰壁を設ける場合は、さらに10cm程度プラスされるため、全体の奥行きは70~75cmほど必要になります。もし腰壁のないフラットなカウンタータイプを選ぶ場合は、キッチンの奥行きが75cm、90cm、場合によっては1m以上になることも珍しくありません。
さらに、ペニンシュラキッチンの場合は、背面に通路や収納棚を設けるスペースも必要です。収納棚の奥行きが約45~50cm、通路の幅は80cm~1m程度が目安です。冷蔵庫を背面収納と並べて設置する場合も含めて考えると、キッチン全体の奥行きとして、最低でも2.2~2.3mほどは確保しておく必要があります。

ポイント2 腰壁の有無
一般的に、ペニンシュラキッチンというと、フルフラットな腰壁のないタイプを想像する人も多いと思いますが、腰壁を設けることもあります。
腰壁がないタイプは開放感があり、ダイニング側から見える部分までシステムキッチン自体のデザイン性が高いのが特徴です。
一方で、腰壁を設ける場合、ペニンシュラ型といってもシステムキッチン自体は壁付きのI型キッチンと同じタイプのものを採用することができるので、オープンタイプのペニンシュラキッチンを採用する場合よりも、費用を抑えられる傾向があります。また、腰壁のあるタイプは、手元を程よく隠せ、ダイニングへの油はねや水はねの不安も解消できます。
腰壁を設けるか、設けないかで費用面に違いも出ますが、見た目や使い勝手も左右されるので、それぞれのメリット・デメリットを考えて自分に合ったタイプを選択しましょう。
ポイント3 コンセントの数と位置
ペニンシュラキッチンを導入する際は、コンセントの数や位置にも気を配ることも大切です。利便性を考え、作業台スペース近くにコンセントを確保することは必要不可欠ですが、オープンタイプはコンセントを設けにくいという課題があります。
「腰壁があればそこにコンセントを付けられますが、腰壁がないタイプのペニンシュラキッチンはそれができません。システムキッチン自体に付けられるオプションのコンセントを使用するか、側面や背面の壁や収納部分にコンセントを配置することになります」
ハンドブレンダーなど、作業スペースで使いたい家電がある場合は、キッチン本体にコンセントを付けるか、腰壁を設けると便利です。それが難しい場合は、背面のカウンターや収納棚に調理家電を置くことを前提にし、使用する家電の数に合わせてコンセントの数や位置を計画的に決めましょう。日常的に使いやすいキッチンにするためにも、家電の種類とコンセントの配置はリフォーム前にしっかり検討しておくことが大切です。

ポイント4 天板(ワークトップ)の素材
キッチンの天板(ワークトップ)の素材にはいくつか種類があり、どれを選ぶか頭を悩ませる人も少なくありません。
「ステンレス、人工大理石、セラミックなどが主流の素材ですが、それぞれ特徴があります。
まず、ステンレスについては多少傷が付いても耐久性に影響はなく、熱に強く長持ちするため、プロの厨房などでもよく使われている素材です。ただし、金属なのでデザイン的にクールな印象になるため、インテリアの雰囲気によってはそぐわない場合もあります。
人工大理石は大理石風の樹脂素材です。最近は耐熱性も高くなってきていますが、熱々のフライパンなどを直接置くのはNGです。経年で色のくすみが気になることはありますが、細かいすり傷や水あかが目立ちにくく、清潔感を持って使えるのは魅力です。
セラミックについては最近使われるようになってきた素材です。熱や傷に強く、インテリア性も高いのが魅力ですが、価格はほかの素材よりも高い傾向があります。
また、ステンレスや人工大理石の場合は同じ素材でシンクと天板とシンクを一体成型できるので、継ぎ目がなくお手入れもラクですが、セラミックの場合、シンクは異なる素材になるため、継ぎ目が発生します」
| 天板の素材 | 特徴 |
|---|---|
| ステンレス | 傷は付きやすいが耐久性、耐熱性、コスト面が魅力。金属のシャープな質感がインテリアになじまないこともある |
| 人工大理石 | ステンレスよりも耐熱性は劣るが、扱いやすさやデザイン性が魅力。経年で色がくすむこともある |
| セラミック | セラミック 耐熱性、耐久性、インテリア性は高いが価格も高め。天板とシンクは異素材になるので継ぎ目が発生する |
ポイント5 レンジフード
ペニンシュラキッチンを採用する際は、レンジフードとの相性にも気を配りましょう。コンロの前面に壁を設置する場合は、一般的な壁付けタイプのレンジフードを選べます。一方、間仕切り壁などを設けないオープンタイプのペニンシュラキッチンでは、横壁付けタイプや天井付けタイプのレンジフードを採用することになります。
「壁付けタイプのレンジフードのほうが横付け、天井付けタイプよりも価格は安い傾向があり、機能面のバリエーションも豊富です。壁付けタイプの中には、側面や背面にカバーを取り付けてオープンキッチンでも使えるものもあります。
また、一般的なレンジフードは一般排気型という、排気のみを行うタイプなので、別に室内の壁や天井に給気口を設ける必要がありますが、同時給排気型というレンジフード自体で排気と給気ができるタイプのものがあります。同時給排気型のレンジフードは、給排気がレンジフード内で完結するため室内の温熱環境への影響が少ないなどのメリットがありますが、その分価格も高い傾向があります。
また、横壁付け、天井付けのレンジフードの場合は同時給排気型になると、排気用・給気用の2本のダクトをカバーするため、見た目が無骨な印象になり、気になることもあるかもしれません」
レンジフードはダクトにつなぐ必要があるため、オープンタイプのペニンシュラキッチンでは、希望のタイプのレンジフードを選べないケースや、設置可能でもデザイン性を考慮して別の製品に変更せざるを得ないケースもあります。


さらに、レンジフードについては製品のタイプや機能以外にも、選ぶときのポイントがあります。
「レンジフードを選ぶときにはカラーと取り付ける高さも考えておきましょう。
まず、カラーについてはスチールにシルバー、ホワイト、ブラックなどの塗装をしたものか、ステンレスという選択肢になりますが、選ぶときはインテリアにあわせて選ぶといいでしょう。
また、取り付ける高さについては、高身長の人は特に注意が必要です。
レンジフード自体の高さは50cm、60cm、70cmとサイズを選べるものもありますが、中には70cmのみのサイズの製品もあります。
例えば、70cmの製品を天井高240cmのキッチンに設置すると、レンジフードが床から170cmのところにあり、身長によっては頭をぶつけてしまうので、使う人の身長も考えてサイズを選ぶようにすると安心です」
ペニンシュラキッチンのリフォーム費用相場
キッチン本体の価格は、サイズや天板の素材、デザインなどによって大きく異なります。キッチンの交換だけといった比較的シンプルなリフォームでも、50万円〜100万円程度の予算が必要です。
一方で、壁付けキッチンからペニンシュラキッチンに変更するなど、配置の変更を伴う場合は、キッチン本体の価格に加えてさまざまな追加費用が発生します。例えば、既存キッチンの解体費用、壁・天井・床の張り替え、給排水管の移設、電気工事などが必要となり、リフォーム全体の費用は100万円〜200万円程度になるのが一般的です。
さらに、対面式のペニンシュラキッチンへ変更した場合には、背面に収納を設けることが多いため、収納棚の購入・設置費用も予算に含めて考えておきましょう。
※補助金・助成金制度は、年度や自治体によって内容が変更される場合があります。最新の情報は、各自治体や関連省庁の公式ウェブサイトでご確認ください
【Q&A】ペニンシュラキッチンに関するよくある質問
最後に、ペニンシュラキッチンにリフォームする前に専門家に聞いておきたい気になる点を、白崎さんに教えていただきました。
Q:ペニンシュラキッチンが向いているのはどんな人?
A:家族とコミュニケーションを取りながら、効率よく作業をしたい人にはピッタリ
「壁に向かって孤独に家事をするのが嫌、家族だんらんに参加したい、子どもの様子を見ながら料理がしたい、家族と一緒に作業をしたいという人にペニンシュラキッチンは向いていると思います」
壁付けキッチンの場合はリビング・ダイニングに背を向けて作業をすることになりますが、ペニンシュラキッチンであれば、リビング・ダイニングのほうを向いて、家族と話したり、一緒にテレビを見たりしながら開放的な空間で作業ができます。
一方で、料理をするときは一人で集中して作業をしたいという人は、あえてペニンシュラキッチンを選ぶ必要はないでしょう。
「また、壁付けキッチンと違い、背後に食器棚や冷蔵庫を置けるというのもペニンシュラキッチンの魅力です。作業動線を効率的にして、家事効率を上げたいという人にもおすすめです」
Q:家が狭くてもペニンシュラキッチンにリフォームできる?
A:リフォームは可能でも、ダイニングのサイズダウンについてよく考えてから選択を!
「コンパクトなサイズのペニンシュラキッチンもありますが、キッチンに加え、通路や収納棚の奥行きも考えると、キッチンの奥行きは2.2m~2.3m程度必要です。壁付けキッチンからペニンシュラキッチンにリフォームする場合、ダイニングのサイズダウンも考えておかなければいけません。
例えば、家族人数が2人などで、ダイニングテーブルが置けなくても、食事用のカウンターがあれば十分ということもありますが、ダイニングが狭くなる分、工夫が必要になることも考えてリフォームは検討しましょう」
Q:ペニンシュラキッチン以外にはどんなレイアウトのキッチンがある?
A:壁に接していないキッチンではアイランドキッチンがあります
「ペニンシュラキッチンといえば、I型のレイアウトが定番ですが、側面が壁に付いているレイアウトのカウンターキッチンではL型、II型、コの字型などのレイアウトのものがあります。
そして、ペニンシュラキッチンのように、壁に接していないキッチンのレイアウトといえばアイランドキッチンです。周囲をぐるりと回遊できるタイプのアイランドキッチンは、ペニンシュラキッチン以上に開放感があり、家事動線もよいのが魅力ですが、設置するにはペニンシュラキッチンよりも比較的スペースが必要で、費用も高額になる傾向があります」
Q:おしゃれなペニンシュラキッチンにするポイントは?
A:スッキリ片付いていることがおしゃれなキッチンの大前提!まずは自分の収納の癖を把握しましょう
「おしゃれな印象のキッチンにするには、まずスッキリと片付いているかが大事なポイントです。
ダイニング側からどのように見えるかを考える上で、自分の収納の癖を理解して、キッチンをプランニングしておくと、おしゃれな空間をキープしやすくなります。
例えば、よく使う調味料は調理台に出しっぱなしにしてしまうという人は、無理せず腰壁などを付けて手元を隠せるようにしておくなど、無理なく使いこなせるようにしておくことが肝心です。
また、ダイニングから見える背面の壁は見せる収納を上手く取り入れられると、おしゃれ度はアップしますが、すべてオープンな収納にしてしまうと、使いこなす難易度も上がります。隠す収納と上手く組み合わせてプランニングすると安心です。
例えば、手の届きづらい天井に近い部分はオープン棚にして観葉植物を飾ったり、見せる収納の部分には差し色を入れたりするのも、ポイントになっていいと思います」

開放感のある空間を実現できたり、作業中も家族とコミュニケーションが取りやすくなったりと、魅力的なペニンシュラキッチンですが、キッチン自体のデザインやサイズ、費用のほかにも、背面収納やレンジフードなど、リフォームの際には押さえておくと満足度が高まるような点がたくさんあります。今回ご紹介したポイントなども参考に、自分のライフスタイルや、理想の暮らしをイメージして、ぜひ自分にピッタリのキッチンを実現してください。
まとめ
ペニンシュラキッチンは、キッチンの片側が壁に接しているカウンターキッチンです。開放感のある空間を演出でき、リビングやダイニングにいる家族とのコミュニケーションが取りやすいのが魅力です。レイアウトはI型が一般的ですが、L型やII型、コの字型(U型)などもあります。シンクやコンロ前に壁のないフルフラットなオープンタイプや、腰壁を設けたセミオープンタイプなど、スタイルも選べます。また、背後に収納棚やカウンター、冷蔵庫を配置しやすいため、作業効率も高くなります。
一方で、ダイニングへの油はねや水はね、ニオイ・煙の広がりが気になる点や、収納スペースが少なく感じることがデメリットとして挙げられます。ペニンシュラキッチンにリフォームする際は、キッチン自体のデザインや機能だけでなく、レンジフードや背面収納なども考慮することが大切です。普段の生活スタイルや家族の希望などを踏まえた上でしっかりと計画を立て、理想的なペニンシュラキッチンを導入しましょう。
イラスト/KAZMOIS
一級建築士。インテリアコーディネーター。一級建築士事務所「シーズ・アーキスタディオ」を夫の白崎泰弘さんと共同運営。
名古屋出身、北海道在住のライター。ロンドンでジェンダー学の修士号を取得後、株式会社リクルート入社。「SUUMO新築マンション」の編集者を経て現在はフリー。ただいま北海道で子育てライフを満喫中。