ペニンシュラキッチンとは半島型のカウンターキッチン(対面キッチン)のこと。開放感があり、スタイリッシュな雰囲気のペニンシュラキッチンは、リフォームでも人気のあるキッチンの一つです。今回の記事ではそんな人気の高いペニンシュラキッチンの魅力やメリットを解説。また、デメリットとその対策方法や、後悔しない選び方についても、一級建築士の白崎治代さんに伺いました。ペニンシュラキッチンを採用したおしゃれな事例もご紹介します。
記事の目次
ペニンシュラキッチンとは
ペニンシュラキッチンの「ペニンシュラ」という言葉はあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、英語で「半島」の意味です。
アイランドキッチンが「島」のような状態で壁に接していないキッチンであるのに対し、ペニンシュラキッチンは片側が壁についたレイアウトのカウンターキッチン(対面キッチン)のことを指します。
ペニンシュラキッチンのレイアウト
ペニンシュラキッチンはカウンターキッチンの一種
カウンターキッチンはキッチンとダイニングの間にカウンターを設けたキッチンのことで、ペニンシュラキッチはカウンターキッチンの一つです。カウンターキッチンはダイニングの方を向いて作業ができるので開放感があり、リビング・ダイニングにいる家族ともコミュニケーションを取りやすいという特徴があります。
カウンターキッチン以外に、キッチンには壁付けタイプのものもあります。
壁付けキッチンは対面ではなく、壁に向かって設置されたキッチンです。ダイニングとの境界があいまいなことも多く、カウンターキッチンよりもコンパクトなスペースでもつくることができます。
カウンターキッチンのレイアウトの種類
カウンターキッチンにはさまざまなレイアウトのものがあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
I型
I型はコンロ・シンク・調理台が一列に並んだタイプのキッチンです。ペニンシュラキッチンというと、I型が定番のレイアウトで、背面には収納棚などを設置します。
L型・II型・コの字型(U型)
コンロとシンクが横一列になっているI型とは違い、シンクとコンロの位置が分かれているL型・II型・コの字型(U型)などのカウンターキッチンもあります。
L型
L型はコンロとシンクが90度の位置に配置されたキッチンです。体の向きを変えるだけで使える部分ができるので、キッチン内の作業が横移動になるI型よりも動線が短くなり、効率的な家事動線が叶うレイアウトです。
II型
II型のカウンターキッチンはコンロとシンクのあるカウンターが前後に分かれているタイプのキッチンです。I型のペニンシュラキッチンの背面に調理カウンターを設けたり、壁付けのI型キッチンに対面カウンターを設置して、II型風のレイアウトにするケースもあります。
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コの字型(U型)
コの字型(U型)キッチンはワークトップがコの字になっていて、ほかのレイアウトよりも作業スペースや収納スペースをしっかりと確保できるのが特徴です。
L型のカウンターキッチンにカウンターなどを組み合わせて、コの字型風のレイアウトにすることもあります。
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ペニンシュラキッチンのタイプ
ペニンシュラキッチンは基本的に開放感のあるキッチンですが、オープンタイプとセミオープンタイプがあります。
オープンタイプ
オープンタイプのペニンシュラキッチンは、キッチンとダイニングの間に壁などの遮るものがなく、ダイニング側からも配膳や盛り付けなどがしやすい開放感のあるキッチンです。
リビング・ダイニングと一体感があるので、LDKが広々とした開放的な雰囲気になり、キッチンも隠す空間ではなく、見せる空間としてスタイリッシュに演出されることが多いのが特徴です。
セミオープンタイプ
セミオープンタイプのペニンシュラキッチンは、コンロやシンクの前などに壁や吊り戸棚などを設けたキッチンです。
オープンタイプよりも開放感はなくなりますが、ダイニングへの水はねや油はねを防げたり、収納を確保できたりというメリットがあります。
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ペニンシュラキッチンならダイニング側の仕様も選べる
面材パネル
オープンタイプのペニンシュラキッチンは壁付けキッチンとは違い、ダイニング側の側面にもパネルが施されるなど、見た目に美しい仕様になっています。
ある程度奥行のあるペニンシュラキッチンの場合は、パネルが施されたダイニング側のカウンターの下の空間をあけて、バーカウンターのようにすることも可能です。
「少人数の家族であれば、バーカウンターをダイニングとして活用することも少なくありませんが、普通のダイニングテーブルより高いキッチンカウンターの高さになるので、子どもがおやつを食べたり、朝食をさっととれたりするスペースとして利用するケースが多いですね」(白崎さん、以下同)
収納タイプ
ペニンシュラキッチンの場合、ダイニング側のカウンターの下の空間を収納として活用することも少なくありません。
「カップやお皿、カトラリーなど、食卓で使うものをダイニングから取り出しやすい場所に収納でき、便利です」
収納を設ける場合も、全面を収納にするのではなく、バーカウンターを組み合わせるなどライフスタイルにあわせてダイニング側の仕様を選ぶことができます。
腰壁
ペニンシュラキッチンには、ダイニング側に腰壁を設けたものもあります。
腰壁を設ける場合は、壁付けタイプのI型キッチンと同じタイプのシステムキッチンを採用することができるので、ダイニング側もパネルで仕上げられているフルフラットなペニンシュラキッチンよりも、価格を比較的抑えることができます。
また、腰壁を設けると、フルフラットペニンシュラキッチンよりも開放感は減りますが、手元を隠すことができ、ダイニングへの水はねなどの心配も軽減できるのはうれしいポイントです。
ペニンシュラキッチンのメリット
カウンターキッチンの中でも人気のペニンシュラキッチンですが、その魅力は何なのでしょうか。ここからはペニンシュラキッチンのメリットを見ていきましょう。
メリット1 開放感がある
ペニンシュラキッチンは対面式のカウンターキッチンのため、開放感があるというのが大きな魅力です。
既存のキッチンが壁付きタイプや独立型のキッチンの場合は、ペニンシュラキッチンにリフォームすることで、キッチンとリビング・ダイニングに一体感が生まれるため、広々とした雰囲気を演出できます。
メリット2 コミュニケーションを取りやすい
リビング・ダイニングの方を向いて作業をするペニンシュラキッチンは、家族とのコミュニケーションが取りやすいというのもうれしいポイントです。
「壁付きキッチンや独立型キッチンは、壁に向かって作業をするため、孤独感や閉塞感を感じることもあると思いますが、ペニンシュラキッチンにすると、家族とコミュニケーションを取りながらキッチンでの時間を過ごすことができます。
キッチンからはリビングにいる子どもに目が届きやすく、リビングからもキッチンが見やすいので、食育につながったり、家族の家事参加を促すきっかけにもなるかもしれません」
メリット3 アイランドキッチンと比べて省スペース
「片側が壁についたペニンシュラキッチンは、キッチンの両側に通路が必要なアイランドキッチンに比べ、省スペースで設置することが可能です」
アイランドキッチンにするにはLDKの広さが足りないという場合も、ペニンシュラキッチンであればシステムキッチンのサイズがアイランドタイプと同じでも、壁付けキッチンからの変更が可能ということもあります。リフォームでも比較的設置しやすいのもペニンシュラキッチンのメリットです。
メリット4 目隠しや収納を設けやすい
対面式のペニンシュラキッチンは、背面に収納棚などを設置することができるため、壁付きのI型キッチンなどよりも、収納スペースを確保しやすくなります。背面に家電などがあることで振り返れば手が届くため、家事動線もスムーズです。
また、壁付けキッチンに比べると、作業スペースが丸見えにならないという点も見逃せません。
「壁付けのI型キッチンは足元までダイニングから丸見えになってしまいますが、ペニンシュラキッチンの場合は対面式なので、その点を解消することができます。さらに、手元が見えるのが気になる場合は腰壁を設けたり、コンロの前に壁を設けたりすることもできるので、気になる部分はほどよく隠すことも可能です」
ペニンシュラキッチンのデメリットと対策方法
さまざまな魅力があるペニンシュラキッチンですが、デメリットもあります。ここからはペニンシュラキッチンのデメリットと、その対策方法も併せてご紹介します。
デメリット1 油はねや水はねが気になる
オープンタイプのペニンシュラキッチンの場合、コンロやシンクの前に壁などの遮るものがないため、調理のときの油はねや、シンクで水を使うときの水はねが気になることがあります。
対策として、腰壁や部分的なパーテーションを設置することで、ダイニング側への油や水の飛び散りを防ぐことはできますが、透明のパーテーションを選ぶ場合は、ダイニング側への飛び散りは防げても、パーテーション自体の汚れは見えてしまいます。
「透明のタイプのものは開放感やデザイン性を保ちながら、ダイニング側への飛び散りを防ぐことができます。一方で、パーテーションについた汚れがリビング・ダイニング側から目についてしまうので、こまめなお掃除は必要になります」
開放感やデザイン性を重視するのであれば、ある程度ダイニングやキッチン周りのこまめなお掃除が必要になるという点は、リフォームの際に考えておきましょう。
デメリット2 ニオイや煙が広がりやすい
ペニンシュラキッチンは開放的でLDKの一体感がある分、リビングやダイニングにもニオイや煙が広がりやすくなります。独立型のキッチンから、ペニンシュラキッチンにリフォームをする場合などは、気になることがあるかもしれません。
どうしてもニオイや煙の広がりが気になりそうであれば、独立型のキッチンにするのがおすすめですが、LDKのサイズに合わせたレンジフードを選んだ上で、換気を十分にすることで軽減することは可能です。
「リビング・ダイニングへ広がるニオイによって、調理をしている時間などを家族で共有していることを感じられたりもするので、ペニンシュラキッチンのメリットとしてとらえられる部分でもあります」
ペニンシュラキッチンを選ぶときのポイント
リフォームでペニンシュラキッチンにする場合、どのような点に気をつければ後悔を防げるのか。事前に気をつけておきたいポイントを見ていきましょう。
ポイント1 レイアウトとサイズ
既存のキッチンが壁付けタイプの場合、ペニンシュラキッチンに変更することで、リンビング・ダイニングのスペースが狭くなってしまう可能性は留意しておきましょう。
「壁付けキッチンの場合は、キッチンとダイニングの境界があいまいなことも多いものですが、ペニンシュラキッチンに変更すると、キッチンとダイニングは明確に分けて設けることになります。
LDKの面積は変更せずに、壁付けキッチンからペニンシュラキッチンにリフォームをする場合は、同じ広さの中に、キッチンとダイニングそれぞれを独立させてつくることになるので、キッチンに必要な面積をとることで、ダイニングがコンパクトになる可能性もあります」
システムキッチンの横幅はコンパクトなサイズのものもありますが、奥行きについては60cmや65cm程度が一般的です。そこに腰壁をつけるとプラス10cm位にはなるので、70cm〜75cmは必要になります。腰壁のないフラットなタイプのペニンシュラキッチンになるとシステムキッチンの奥行きが75cmや90cm、1m以上のサイズのものも珍しくありません。
さらに、ペニンシュラキッチンの場合は、キッチンの背後に通路や収納棚などのスペースも必要になります。
収納棚の奥行きが45cm〜50cm程度、通路が80cm~1m程度、冷蔵庫も背面の収納に並べて置くときは、ペニンシュラキッチンにした場合、キッチン全体の奥行きとして、2.2m~2.3m程度は必要になります。
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ポイント2 腰壁の有無
一般的に、ペニンシュラキッチンというと、フルフラットな腰壁のないタイプを想像する人も多いと思いますが、腰壁を設けることもあります。
腰壁がないタイプは、開放感があり、ダイニング側から見える部分までシステムキッチン自体のデザイン性が高いのが特徴です。
一方で、腰壁を設ける場合、ペニンシュラ型といってもシステムキッチン自体は壁付きのI型キッチンと同じタイプのものを採用することができるので、オープンタイプのペニンシュラキッチンを採用する場合よりも、費用を抑えられる傾向があります。また、腰壁のあるタイプは、手元を程よく隠せ、ダイニングへの油はねや水はねの不安も解消できます。
腰壁を設けるか、設けないかで費用面に違いも出ますが、見た目や使い勝手も左右されるので、それぞれのメリット・デメリットを考えて自分に合ったタイプを選択しましょう。
ポイント3 コンセントの数と位置
使いやすい位置に複数のコンセントを確保しておくことは、使いやすいキッチンをつくる上で不可欠ですが、オープンタイプの腰壁のないペニンシュラキッチンの場合、作業スペース近くに十分な数のコンセントを設けることが難しいこともあります。
「腰壁があればそこにコンセントをつけられますが、腰壁がないタイプのペニンシュラキッチンはそれができません。システムキッチン自体につけられるオプションのコンセントを使用するか、側面や背面の壁や収納部分にコンセントを配置することになります」
キッチン自体にコンセントをつけられるものを選ぶか、腰壁を設けてコンセントをつければ、ハンドブレンダーなどの調理スペースで使いたい家電がある場合は便利ですが、それが難しい場合は調理家電などは背面のカウンターや収納棚に置いて使用すると考えて、家電の数に合わせた数のコンセントを設置しておくようにしましょう。
ポイント4 天板(ワークトップ)の素材
天板(ワークトップ)の素材にも種類があり、キッチン選びの際は頭を悩ませる人も少なくありません。
「ステンレス、人工大理石、セラミックなどが主流の素材ですが、それぞれ特徴があります。
まず、ステンレスについては多少傷が付いても耐久性に影響はなく、熱に強く長持ちするため、プロの厨房などでもよく使われている素材です。ただし、金属なのでデザイン的にクールな印象になるため、インテリアの雰囲気によってはそぐわない場合もあります。
人工大理石は大理石風の樹脂素材です。最近は耐熱性も高くなってきていますが、熱々のフライパンなどを直接置くのはNGです。経年で色のくすみが気になることはありますが、細かいすり傷や水あかが目立ちにくく、清潔感を持って使えるのは魅力です。
セラミックについては最近使われるようになってきた素材です。熱や傷に強く、インテリア性も高いのが魅力ですが、価格はほかの素材よりも高い傾向があります。
また、ステンレスや人工大理石の場合は同じ素材でシンクと天板とシンクを一体成型できるので、継ぎ目がなくお手入れもラクですが、セラミックの場合、シンクは異なる素材になるため、継ぎ目が発生します」
天板の素材 | 特徴 |
---|---|
ステンレス | 傷はつきやすいが耐久性、耐熱性、コスト面が魅力。金属のシャープな質感がインテリアになじまないこともある |
人工大理石 | ステンレスよりも耐熱性は劣るが、扱いやすさやデザイン性が魅力。経年で色がくすむこともある |
セラミック | 耐熱性、耐久性、インテリア性は高いが価格も高め。天板とシンクは異素材になるので継ぎ目が発生する |
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ポイント5 レンジフード
コンロの前面に壁を設置する場合、レンジフードは壁付けタイプのものを選べますが、間仕切り壁などを設置しない、オープンなペニンシュラキッチンの場合は横壁付け、天井付けタイプのものを採用することになります。
「壁付けタイプのレンジフードの方が横付け、天井付けタイプよりも価格は安い傾向があり、機能面のバリエーションも豊富です。壁付けタイプの中には、側面や背面にカバーを取り付けてオープンキッチンでも使えるものもあります。
また、一般的なレンジフードは一般排気型という、排気のみを行うタイプなので、別に室内の壁や天井に給気口を設ける必要がありますが、同時給排気型というレンジフード自体で排気と給気ができるタイプのものがあります。同時給排気型のレンジフードは、給排気がレンジフード内で完結するため室内の温熱環境への影響が少ないなどのメリットがありますが、その分価格も高い傾向があります。
また、横壁付け、天井付けのレンジフードの場合は同時給排気型になると、排気用・給気用の2本のダクトをカバーするため、見た目が無骨な印象になり、気になることもあるかもしれません」
レンジフードはダクトにつなぐ必要があるため、オープンなペニンシュラキッチンの場合、希望のタイプのレンジフードを選べなかったり、設置は可能でも、ダクトの見え方が気になってほかの製品を選ばざるをえないということもあります。
さらに、レンジフードについては製品のタイプや機能以外にも、選ぶときのポイントがあります。
「レンジフードを選ぶときにはカラーと取り付ける高さも考えておきましょう。
まず、カラーについてはスチールにシルバー、ホワイト、ブラックなどの塗装をしたものか、ステンレスという選択肢になりますが、選ぶときはインテリアにあわせて選ぶといいでしょう。
また、取り付ける高さについては、高身長の人は特に注意が必要です。
レンジフード自体の高さは50cm、60cm、70cmとサイズを選べるものもありますが、中には70cmのみのサイズの製品もあります。
例えば、70cmの製品を天井高240cmのキッチンに設置すると、レンジフードが床から170cmのところにあり、身長によっては頭をぶつけてしまうので、使う人の身長も考えてサイズを選ぶようにすると安心です」
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ペニンシュラキッチンのリフォーム費用
キッチン自体の価格はサイズや天板の素材、デザインなどに左右されるため、選ぶものによって費用は大きく変わりますが、キッチンの交換だけの簡易リフォームでも50万円〜100万円程度の予算は必要になります。
壁付きキッチンからペニンシュラキッチンにするなど、位置変更を伴うようなリフォームの場合はペニンシュラキッチン自体の価格に加え、既存のキッチンの解体費用、壁や天井、床の張り替えなどの工事、さらに必要に応じて、給排水設備工事や電気工事などの費用がかかります。
また、壁付けキッチンを対面のペニンシュラに変更した場合、背面に収納を設置する場合が多いので、収納棚などの購入・設置費用も考えておきましょう。
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ペニンシュラキッチンのリフォームの事例
ここからはペニンシュラキッチンのおしゃれなリフォーム事例を見ていきましょう。
【実例】壁を撤去し、開放感のあるペニンシュラキッチンに
クローズドタイプのキッチンの壁を可能な限り解体し、開放感のある対面式のペニンシュラキッチンに変更。希望だったパン作りに欠かせない広い作業スペースを実現しました。また、キッチンの背面にキッチンとセットでコーディネートしたカップボードや冷蔵庫を並べて配置できるよう、廊下とLDKをつなぐドアの位置も変更しました。
【実例】複数人で一緒に作業できる広々キッチン
リフォームでは生活動線に配慮し、3階にあったキッチンを2階に移動。キッチンは以前よりひと回り広いセミオープンタイプのペニンシュラキッチンにし、背面には施主支給のカップボードを取り付けました。2台分の冷蔵庫置き場も確保し、キッチン裏には食品のストックや調理家電を収納できるパントリーも設置しています。
【実例】カウンターを現場で加工。コンロ前のガラスで開放感もアップ
キッチンに移動できないパイプスペースがあり、希望していた完全にフラットなオープンキッチンにするのは難しかったそうですが、リフォームの際、現地で天板を加工し、コンロ前の壁はくり抜いて特注の強化ガラスを設置。壁で囲まれ暗かったキッチンを、開放感のあるペニンシュラキッチンに変更しました。
ペニンシュラキッチンQ&A
最後に、ペニンシュラキッチンにリフォームする前に専門家に聞いておきたい気になる点を、白崎さんに教えて頂きました。
Q:ペニンシュラキッチンが向いているのはどんな人?
A:家族とコミュニケーションを取りながら、効率よく作業をしたい人にはピッタリ
「壁に向かって孤独に家事をするのが嫌、家族だんらんに参加したい、子どもの様子を見ながら料理がしたい、家族と一緒に作業をしたいという人にペニンシュラキッチンは向いていると思います」
壁付けキッチンの場合はリビングダイニングに背を向けて作業をすることになりますが、ペニンシュラキッチンであれば、リビング・ダイニングの方を向いて、家族と話したり、一緒にテレビを見たりしながら開放的な空間で作業ができます。
一方で、料理をするときは一人で集中して作業をしたいという人は、あえてペニンシュラキッチンを選ぶ必要はないでしょう。
「また、壁付けキッチンと違い、背後に食器棚や冷蔵庫を置けるというのもペニンシュラキッチンの魅力です。作業動線を効率的にして、家事効率を上げたいという人にもおすすめです」
Q:家が狭くてもペニンシュラキッチンにリフォームできる?
A:リフォームは可能でも、ダイニングのサイズダウンについてよく考えてから選択を!
「コンパクトなサイズのペニンシュラキッチンもありますが、キッチンに加え、通路や収納棚の奥行きも考えると、キッチンの奥行きは2.2m~2.3m程度必要です。壁付けキッチンからペニンシュラキッチンにリフォームする場合、ダイニングのサイズダウンも考えておかなければいけません。
例えば、家族人数が2人などで、ダイニングテーブルが置けなくても、食事用のカウンターがあれば十分ということもありますが、ダイニングが狭くなる分、工夫が必要になることも考えてリフォームは検討しましょう」
Q:ペニンシュラキッチン以外にはどんなレイアウトのキッチンがある?
A:壁に接していないキッチンではアイランドキッチンがあります
「ペニンシュラキッチンと言えば、I型のレイアウトが定番ですが、側面が壁についているレイアウトのカウンターキッチンではL型、II型、コの字型のなどのレイアウトのものがあります。
そして、ペニンシュラキッチンのように、壁に接していないキッチンのレイアウトと言えばアイランドキッチンです。周囲をぐるりと回遊できるタイプのアイランドキッチンは、ペニンシュラキッチン以上に開放感があり、家事動線も良いのが魅力ですが、設置するにはペニンシュラキッチンよりも比較的スペースが必要で、費用も高額になる傾向があります」
Q:おしゃれなペニンシュラキッチンにするポイントは?
A:スッキリ片付いていることがおしゃれなキッチンの大前提!まずは自分の収納の癖を把握しましょう
「おしゃれな印象のキッチンにするには、まずスッキリと片付いているかが大事なポイントです。
ダイニング側からどのように見えるかを考える上で、自分の収納の癖を理解して、キッチンをプランニングしておくと、おしゃれな空間をキープしやすくなります。
例えば、よく使う調味料は調理台に出しっぱなしにしてしまうという人は、無理せず腰壁などをつけて手元を隠せるようにしておくなど、自分が無理をしないで使いこなせるようにしておくことが肝心です。
また、ダイニングから見える背面の壁は見せる収納を上手く取り入れられると、おしゃれ度はアップしますが、すべてオープンな収納にしてしまうと、使いこなす難易度も上がります。隠す収納とうまく組み合わせてプランニングすると安心です。
例えば、手の届きづらい天井に近い部分はオープン棚にして観葉植物を飾ったり、見せる収納の部分には差し色を入れたりするのも、ポイントになっていいと思います」
開放感のある空間を実現できたり、作業中も家族とコミュニケーションが取りやすくなったりと、魅力的なペニンシュラキッチンですが、キッチン自体のデザインやサイズ、費用のほかにも、背面収納やレンジフードなど、リフォームの際には押さえておくと満足度が高まるような点がたくさんあります。今回ご紹介したポイントなども参考に、自分のライフスタイルや、理想の暮らしをイメージして、ぜひ自分にぴったりのキッチンを実現してください。
【まとめ】ペニンシュラキッチンにすることでLDKが開放的に。コミュニケーションを取りながら、効率よく作業もできる
ペニンシュラキッチンはキッチンの片方の側面が壁に接しているタイプのカウンターキッチンです。ペニンシュラキッチンの定番のレイアウトはI型ですが、壁に接しているカウンターキッチンのレイアウトではほかにL型、II型、コの字型(U型)などがあります。それらに対し、キッチンの両側に通路があり、壁に面していないタイプのキッチンではアイランドキッチンがあります。ペニンシュラキッチンの場合、シンクやコンロの前に壁のない、フルフラットなオープンタイプのもののほか、腰壁などを設けたセミオープンタイプのものもあります。ペニンシュラキッチンのメリットは開放感のある空間を演出できたり、リビングダイニングにいる家族とコミュニケーションを取りやすいといった点がまず挙げられ、さらに、ペニンシュラキッチンは背後に収納棚やカウンター、冷蔵庫などを設置することができるので、効率よく作業しやすいというのも魅力です。デメリットとしては、ダイニングへの油はねや水はね、ニオイや煙の広がりが気になることもあります。ペニンシュラキッチンにリフォームする際はキッチン自体のデザインや機能だけでなく、レンジフードや背面収納などもあわせて考えましょう。
●取材協力
白崎 治代さん
一級建築士。インテリアコーディネーター。一級建築士事務所「シーズ・アーキスタディオ」を夫の白崎泰弘さんと共同運営。
●画像協力
クリナップ
サンヨーリフォーム
JS Reform(日本総合住生活)
東京ガスリノベーション
構成・取材・文/島田美那子 イラスト/KAZMOIS