キッチンのサイズ・寸法2400・2550・2700とは?リフォームで使いやすいサイズのキッチンにするポイントを一級建築士に聞いた

キッチンのリフォームで迷うのは寸法(サイズ)選び。カウンターの幅や高さ、シンクの寸法などによって、使い勝手はどう違うのでしょうか。キッチン選びのさまざまな注意点を、一級建築士のYuuさん(本名・尾間紫さん)に教えてもらいましょう。

キッチンで料理をしている夫婦のイメージ

(画像/PIXTA)

記事の目次

キッチンの標準的な寸法・サイズは?

キッチンサイズの数字は横幅を指す

住宅の新築やリフォームで多く採用されているのはシステムキッチン。ほかにも素材もサイズもいちから自由に作ることができるオーダーメイドキッチンもありますが、ここでは、広く普及している簡易型のI型(シンク、コンロ、作業スペースが一列に並ぶタイプ)のシステムキッチンのサイズについてお話ししていきます。

キッチンのサイズについて調べているとサイズ2400、2550、2700といった数字を見かけます。また、リフォーム会社の担当者との会話に「今のキッチンは2400ですね」「このスペースなら2700のキッチンが入りますね」という表現が出てくることも。この数字があらわすのは間口。つまりシステムキッチンの横幅のことです。

「2400、2550などの単位はミリメートル。メーカーによっては240、255などセンチメートルの単位で表記されていることがあります」(Yuuさん、以下同)

キッチンのサイズで多いのは幅2550、奥行き650、高さ850

日本の住宅で多く採用されるシステムキッチンのサイズは幅2550mm、奥行き650mm、高さ850mm。

幅2550mmが多い理由は、日本の住宅で多く採用されている工法が、在来工法であることが影響しています。在来工法は910mm単位が基準寸法(尺モジュール)。家の間取りや建具、床材や壁材などの寸法はこの尺モジュールに合わせて決められています。

「システムキッチンも同様で、例えば、6畳間の短い方の壁側(柱の中心から柱の中心までの距離が2730mm)に、幅2550mmのキッチンはすっぽり入ります。長い方の壁側(同3640mm)なら幅2550mmのキッチンの横に冷蔵庫を配置することができます。910mm単位で設計されている在来工法の家では、幅2550mmのキッチンは非常にレイアウトしやすい大きさなのです」

ただし、キッチンは使う人の身長や料理の仕方によって使いやすいサイズが異なります。そこで、キッチンメーカーでは、使う人や間取りに合わせて選べるように、キッチンのサイズにバリエーションを用意しています。

キッチンの幅(間口)の標準的な寸法・サイズは?

日本で使われているシステムキッチンの幅は1650mmから。150mm刻みで長くなります。一般的に採用されているのは2100mm〜3000mmです。

「大きければいいというわけではなく、使いやすいのは2700mmくらいまで。コンロとシンク、作業スペースが一列に並んだI型のキッチンの場合、2700mmよりも長くなると料理をするときの移動距離が長くて疲れやすくなります。また、熱いフライパンや鍋をもって移動する際のリスクもアップします」

キッチンの奥行きの標準的な寸法・サイズは?

I型やL型のキッチンの場合、ワークトップの標準的な奥行きは600mmまたは650mm。

「主流は650mmです。昔は奥行き550mmのキッチンもありましたが、その後、600mmが一般的になりました。650mmが増えたのは20年ほど前から。ただし、床面積の小さい家では600mmのほうが使い勝手がいい場合もあります。これらは、壁付けタイプのキッチンの場合の標準的なサイズです。最近人気のフラット対面式のキッチンでは、750mm〜1000mmくらいの奥行きのものもあります」

奥行きの長いフラット対面式のキッチンの画像

ワークトップからカウンターが段差なく延びているフラット対面式のキッチンは、壁付けタイプのキッチンに比べて奥行きが長いタイプを選択可能(画像/PIXTA)

キッチンの高さの標準的な寸法・サイズは?

床からワークトップまでのキッチンの高さは800mm、850mm、900mmが一般的。

一般的に用意されているのは5㎝刻みです。高さが1㎝違うだけでも料理のしやすさに影響することもあり、なかには1㎝刻みや3㎝刻みで高さを変えられるメーカーや商品もあります。同じメーカーでも、グレードによって高さのバリエーションへの対応が異なるケースがありますから、気に入ったメーカーのシステムキッチンで好みの高さがなかった場合は、違うシリーズの商品もチェックしてみるのがおすすめです。

キッチンのコンロの標準的な寸法・サイズは?

3口コンロは幅600mmが多いのですが、750mmのものもあります。

「ガスコンロの場合、元のサイズが600mmでも750mmのものに入れ替えることができます。750mmあれば大きな鍋やフライパンがゆったりと使えるようになります。ただし、その分調理スペースが小さくなることに注意を。また、気をつけたいのは海外メーカーのコンロ。サイズが800mm、900mmと大きめのものもあり、デザインもすてきなのですが、キッチンによっては日本製の本体に設置できないことがあるので注意が必要です」

キッチンのシンクの標準的な寸法・サイズは?

シンクの幅は650mm前後と800mm前後が主流。

シンクは大きいほど大きな鍋が洗いやすい、洗った野菜の一時置きがしやすいなどのメリットがあります。

システムキッチンの標準的な寸法(サイズ)

システムキッチンの標準的な寸法(サイズ)をまとめた図

システムキッチンの各部分のサイズのバリエーションは、メーカーやシリーズによって異なる。上図はシステムキッチンで採用されることが多い標準的なサイズ。横幅は1cm刻みのメーカーもあるが、多くは15cm刻み。高さは5cm刻みが主流。奥行きは60cmまたは65cmから、コンロの幅は60cmまたは75cm、シンクの幅は65cm前後または80cm前後から選択できるケースが多い(図作成/SUUMO編集部)

キッチンのサイズ、自分に合わないとどんな影響があるの?

キッチンの高さが合わないだけで食生活の質が下がる

キッチンカウンターの高さが自分に合っているかどうかは、食材を切ったり、洗ったり、鍋やフライパンを使ったりといった動作のしやすさだけでなく、体の負担にも大きく影響します。

一級建築士のYuuさんは、現在、2拠点生活。自分が使いやすいサイズにキッチンリフォームをしたマンションと、築20年の自分にとっては低いキッチンのままの家を2週間おきに行き来して暮らしています。

「私は少し高めのキッチンが好きなので、リフォームをしたキッチンの高さは88cm。これが私にとってはとてもピッタリで快適。一方、築20年の家のキッチンは80cm。私にとっては低すぎて、料理をしていると腰が痛くて立っていられなくなるほど」

キッチンの高さの合う、合わないによって料理へのやる気も違ってくるとか。

「高さが合っているキッチンでは、彩りのキレイなサラダや手の込んだ料理をつくったり、あれこれつくり置きをしたり。体への負担がなく、料理をするのがラクなこともあって、お料理を楽しもう、おいしいものをつくろうという気持ちになります。でも、低いキッチンの家では、できるだけラクをしたくなるため、お総菜が多くなり、包丁を使うと腰に負担がかかるのでカット野菜を買ってくるようになります。低いキッチンはシンクの底も低いので、食器を手洗いするのも食器洗浄機に移動させるのも大変。食器洗いがおっくうになるからお皿を使わなくなったりもします」

キッチンはデザインや機能も大切ですが、高さが違うだけで食生活のクオリティに影響するのですから、サイズはさらに重要。高さのほか、間口(幅)や奥行きの最適なサイズ(寸法)を知っておきましょう。

キッチンの使いやすい寸法・サイズの選び方は?

身長から出すキッチンの高さが最適?

同じ高さや幅、奥行きのキッチンでも、使う人によって使いやすい場合、使いにくい場合があります。人によって身長や腕の長さが違うだけでなく、料理の内容によってぴったりのサイズが異なるからです。

使う人の体に合うキッチンの高さは、下の計算式で出されるのが一般的。

身長÷2+5㎝ または 肘の高さー10㎝

例えば、身長160cmの場合は160cm÷2+5㎝で高さ85㎝がぴったりということになります。でも、人によってはもう少し高い方が使いやすいというケースも。Yuuさんの場合も、リフォームの際にこの計算で算出される高さよりも少し高めのキッチンを選んでいます。

「最適な高さは料理をするときの動きによって異なります。鍋やフライパンをコンロから持ち上げるときに、高い位置にあると力が入らず動かしにくいですし、大きな寸胴鍋は鍋の上部が顔に近くなり危険です。そのため、コンロは低めの方が使いやすいといえます。逆に食材を切ったりする作業スペースは高めの方が使いやすい人が多いでしょう。ただし、パンをこねたりする作業は低い方がラク。シンクの中で魚をさばくことが多いなら、シンクの底面は少し高めの方が適しています」

切る、洗う、振る、上げる、こねるなど、さまざまな動作がともなうのが料理。作業の内容によって使いやすいキッチンの高さは違ってきます。

「高さを決める際には、自分はどんな料理をするのか考えてみるといいでしょう。迷ったら高めにするのがおすすめ。低いキッチンを上げるとなると大掛かりな工事が必要ですが、高いキッチンはスリッパなど室内履きの底の厚さで調整ができます」

高さの違う作業スペースが欲しい場合は、キッチンの広さにゆとりがあれば、アイランドタイプの作業スペースを設けるのもいいでしょう。

コンロとシンクの間のサイズはどれくらいあればいい?

まな板を置いて食材を切ったり、調味料を混ぜたりする作業スペースは、コンロとシンクの間に配置されているのが一般的です。まな板やボウル、食材や調味料など料理に必要ないろいろなものが置かれるスペースです。

「ストレスなく料理をするには、幅は最低45㎝は必要です。60㎝以上あれば使いやすいですね。45㎝以下になると作業をする際に狭く感じます。最近はシンクの上を調理台として使えるスライド式のボードが付いているシステムキッチンもあります。小さなキッチンでも快適に使えるよう工夫をするのもいいですね」

また、奥行きの深いシステムキッチンを選ぶと、作業スペースも広くなります。ワークトップの手前でまな板を使い、奥にお皿を並べて盛り付けるといったような作業がスムーズにできます。

奥行きのあるワークトップで料理をする家族のイメージ

奥行きのあるワークトップなら手前にまな板、奥に食材を置いて広々と料理ができる(画像/PIXTA)

身長の違う家族で料理。キッチンの高さや幅は?

共働きの多い最近は、家族全員が料理をしたり、一度に複数の人がキッチンに立ったりする機会が多いでしょう。身長が違う家族でキッチンを共有する場合、高さはどう選べばいいのでしょうか。

「メインで料理をする人の使いやすい高さに合わせることになりますが、作業台を別に設けることができれば理想的です。アイランドタイプの作業台を背の高い人に合わせて、室内履きで高さを調整。小さな子どもも一緒に料理をする場合は、子どもはあっという間に背が伸びるので、数年間は踏み台を使うといいでしょう」

キッチンで料理をする夫婦のイラスト

(イラスト/もり谷ゆみ)

一人暮らしならキッチンのサイズは小さくても十分?

昔の賃貸住宅で採用されていたのは、一人暮らし用の物件なら幅90㎝のミニキッチン。大きくても150㎝。一人暮らしのマンションや一戸建てをリフォームする場合に、料理をしないのであればミニキッチンにしてキッチンのスペースを最小限にし、リビングを広くする、という選択もあります。

「最近は、一人暮らしでも家で料理をするという声をよく聞くようになっています。幅90㎝のミニキッチンはコンロが1つでシンクも小さいですし、作業台がない場合もあるなど使いにくいでしょう。幅150㎝(1500mm)のコンパクトキッチンにするだけでも、料理をしようという気持ちになると思います」

もちろん、毎日料理をするなら、ファミリータイプのマンションや一戸建てで採用される一般的なサイズのキッチンを選ぶのもおすすめ。ゆったりと効率よく料理ができます。

家事動線も考えてキッチンサイズを選ぶ

ワークトライアングルをチェックする

キッチンを同時に使う人の人数や、メインで使う人の身長、よくつくる料理の内容などで、使いやすいキッチンの高さや幅、奥行きなどがどう異なるかを解説してきました。もう一つ考えておきたいのは家事動線。

キッチンでテキパキとスムーズに料理をするために重要になるのがシンク、コンロ、冷蔵庫の3つの位置を結ぶ三角形「ワークトライアングル」の距離と形です。

一般的にシンク、コンロ、冷蔵庫の距離は下の範囲内が使いやすいといわれます。
シンクとコンロの距離 1200mm〜1800mm
シンクと冷蔵庫の距離 1200mm〜2100mm
コンロと冷蔵庫の距離 1200mm〜2700mm

さらに、3辺の合計が3600mm〜6000mmにおさまり、かつ正三角形に近いと動きやすく適切な配置とされています。これは、キッチンと冷蔵庫の配置だけでなく、キッチンの横幅にも関係があります。

「I型のキッチンで幅が2700mmを超えると使いにくくなるのは、シンクとコンロの距離が離れてしまうこと、さらに、横に冷蔵庫が並ぶと料理のときの移動距離がとても長くなります。ワークトライアングルを見てみると三角形ではなく、長い直線になってしまっています」

キッチンを選ぶ際には、シンクとコンロ、冷蔵庫のお互いの距離と位置のバランスをチェックし、使いにくそうな動線の場合、キッチンの横幅が長すぎないか、キッチンのサイズについても検討するのがおすすめです。

ワークトライアングルの図

(図作成/SUUMO編集部)

キッチンの寸法・サイズをリフォームで変更できる?

リフォームでキッチンを今より大きくすることはできる?

現在の住まいのシステムキッチンが使いにくい場合、リフォームで今よりも大きなシステムキッチンに交換することはできるのでしょうか。答えは、住まいの状況によってケースバイケースです。

例えば、大きなシステムキッチンを設置するためには、既存の壁をなくさなければならない場合があります。まずは、その壁が撤去できるかどうかの確認が必要です。

「木造一戸建ての場合、システムキッチンを配置したい場所に残さなければならない柱がある場合や、撤去したい壁に筋かい(建物の構造を強固にするために骨組みの中に斜めに入れる部材)が入っていれば、壁の移動がしにくくなります。また2階ののり方によっても壁の移動をしないほうが家にとってはいい場合もあります。

マンションの場合は、コンクリートでできている壁以外の簡易な間仕切り壁は撤去することができます。ただし、キッチンのサイズを大きくすることで排水や排気の位置が変わる場合はその経路を確認することが必要。中には、排水のための排水管の勾配がとれず、希望のシステムキッチンを設置できないことがあります」

リフォームでキッチンを今より小さくすることはできる?

今よりも小さなキッチンにリフォームするケースは多くあります。子どもが成長してその家で暮らす家族の人数が減ったとか、高齢になって暮らしをコンパクトにしたいとか、キッチンは小さくてもいいからリビングをもっと広くしたいとか、理由はさまざまです。

「キッチンが小さくなると、使い勝手が大きく違うように感じられる方も多いので、自分にとって使いにくいキッチンにならないかをよく確認することが大切です。特に、収納スペースも小さくなると、これまでしまっていたものが入りきらなくなることがあります。キッチンを小さくする場合は、同時に持ち物の整理もするようにしましょう」

マンションのキッチンの変更では排水経路が重要

リフォーム後、排水の不具合が起きないように注意

キッチンのサイズをリフォームで変更する際、壁に向かって設置されていたキッチンをリビング・ダイニングに向くよう変更したり、キッチンの位置を移動したりするケースもあります。一戸建ての場合、構造上重要な壁を動かしたり、撤去したりするのでなければキッチンの大きさを変更したり、移動したりするプランも比較的自由に実現できます。

注意したいのはマンションの場合。キッチンは、排水がスムーズに流れるように、排水口の下から床下を通って排水管を斜めに設置する必要があります。床下の空間はマンションによって異なり、空間の高さがどれくらいあるかによってキッチンの移動範囲が違ってきます。床下のタテの空間が小さければ排水管の勾配を確保できる距離は短くなるので、キッチンの移動できる範囲も小さくなります。物件によっては、一切移動ができないケースもあります。

「マンションのリフォームでは、キッチンの排水の不具合に関するトラブルはよく耳にします。排水管の勾配が十分にとれないと、流れが悪くなったり、臭いが上がってきてしまう、異音がするなどのトラブルが起きることもありますから、キッチンの移動や、シンクの位置が変更になるリフォームの場合は、十分な注意が必要です」

キッチンで料理をする夫婦のイラスト

(イラスト/もり谷ゆみ)

リフォームでキッチンのタイプ変更する場合の注意点は?

キッチンのタイプによって必要となる面積に違いがある

キッチンはシンク、作業スペース、コンロが一列に並んだI型や、カウンターがL字型に曲がったL型など、形によっていくつかのタイプに分けられます。横幅の合計や奥行きが同じでも、キッチンのタイプによって必要な面積が変わってきます。例えば、壁付け型のキッチンを、リフォームして対面式のキッチンにする場合、キッチンの大きさは同じでも対面式の方が、キッチンに必要な面積が大きくなります。そのため家が狭く感じられるようになることも。一戸建てのリフォームなら増築する方法もありますが、マンションの場合は増築できませんから限られた床面積の中でやりくりすることになります。

キッチンの面積が取られるのはどのタイプか、コンパクトにできるのはどのタイプかなどを見ていきましょう。

I型のキッチンは空間を有効活用しやすいスタイル

シンク、作業スペース、コンロが横一列に並んだI型のキッチン。前述の通り、標準的なサイズは幅2550mm、奥行き650mmですが、横長でコンロとシンクそれぞれの両脇に作業スペースを確保しておくと複数の人が作業をするのに便利です。キッチンの近くにダイニングテーブルがあれば、食材を広げたり、家族で料理をしたりするのに便利。キッチンとダイニングのスペースが区切られていない空間の有効活用がしやすいスタイルです。キッチン側の壁面に余裕があれば、今より大きめのキッチンに交換しやすいのもメリットです。

「どんなレイアウトにも順応しやすく、とても配置しやすいタイプです。シンプルなプランでリフォーム価格も抑えやすく、ローコストを重視するならキッチンはまずI型から考えてみるのがおすすめです。なお、大きなキッチンに交換する場合、幅が広すぎると左右の移動距離が長くなり料理がしにくくなります。2700mmまでを目安にするといいですね」

I型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

L型は料理の効率がいいが、キッチンに面積が必要

ワークトップがL字型のタイプ。サイズはメーカーや商品のシリーズによって異なりますが、シンク側は幅2100mm〜2550 mm、コンロ側は幅1650mm〜1800mmが目安。

「シンクとコンロの距離が近くなるため作業効率がよく、手早く料理ができます。テキパキと料理をしたい人におすすめのタイプです。ただし、コーナー部分が収納スペース・作業スペース、どちらの場合でもデッドスペースになりやすく、システムキッチンを配置する面積も大きくなります。床面積に余裕がある家なら、使いやすくゆとりのあるキッチンを実現できます」

L型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

II型は省スペースで調理動線も効率的

II型(セパレート型、2列型)はシンクとコンロが分かれて2列になっているタイプ。幅はそれぞれ1200 mm〜2250mmが目安。

「省スペースで対面式キッチンにできることや、複数で料理がしやすく調理動線が効率的なことから最近人気になっているタイプです。スムーズに料理をするには通路幅が重要で、一人で料理をするなら900mm、複数で使うなら1m以上は確保したいですね」

II型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

ペニンシュラ型は通路幅を確保するため床面積にゆとりが必要

片側が壁に付いた半島(ペニンシュラ)型のキッチン。幅は2400mm〜2600mmが目安。

「対面式のキッチンで多いタイプです。出入り口が1カ所なので、お子さんやペットがいるご家庭の場合、ベビーゲートやペットゲートを設置すれば危険の多いキッチンへの出入りをコントロールでき安心です。背面の壁側に収納棚(カップボードなど)を置く場合、キッチンと収納棚の引き出しがぶつからないよう、通路の幅は900mmは必要。複数で料理をするなら1mから1.1mは必要です」

キッチンカウンターからリビング・ダイニングへ回り込むための通路も、大きめのお鍋やお盆を持って移動するためには幅800mmは必要。壁付けタイプのI型からペニンシュラ型に変更する場合、通路幅を確保するためにはリフォーム前よりも広い床面積が必要になります。間取りによっては、ペニンシュラ型への変更は難しい、大きなキッチンにはできないなどがありますので注意が必要です。

ペニンシュラ型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

アイランド型はキッチンの両サイドに通路が必要

キッチンが壁に接していない島(アイランド)のような配置になっているタイプ。幅は2400mm〜2550mmが目安。

「回遊動線になるため、どこへ行くにも最短距離ですみ、毎日の家事がラクになるタイプ。複数で料理をするときもスムーズ。ただし、通路が2カ所に必要なため、キッチンの床面積が多く必要になります」

アイランド型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

U型はLDKの面積にゆとりがある家におすすめ

U型(コの字型)はシンクやコンロ、作業スペースが中央に向いたタイプ。キッチンに立ったときに、体の方向を変えるだけで、洗う、加熱する、切るなどの作業をする、という動きがスムーズにできます。サイズはメーカーや商品によって異なりますが、長いカウンターは2700mmまで、通路部分の幅が90mm〜1100mmが目安。

「囲まれているので落ち着いたスペースになり、オープンタイプのキッチンでも独立感が得られます。動線も短く使いやすく、高級感のあるキッチンです。ただし、キッチンに大きな床面積が必要になります」

U型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

平面図ではわからないキッチンの寸法はショールームで体験

ショールームではエアクッキングでサイズをチェック

リフォームする際、平面図だけでは実際のキッチンのサイズはわからないもの。図面やカタログ、WEBページの写真や情報だけで決めずに、メーカーのショールームで実物の色や質感、サイズ、使い勝手などを確認することが重要です。

「高さが合わないキッチンは料理へのやる気が起きなくなります。特に、自分にとって低いキッチンは、腰痛の原因になりやすいですから、必ずショールームで確認していただきたいです」

キッチンのショールームには、フライパンやお鍋がコンロの上に置いてあったり、カップボードに食器が入っていたりします。収納を開けてみるとまな板やおもちゃの包丁が入っていることも。これらの役割はショールームを華やかにする、ということだけではありません。

「まな板の上で食材を切り、シンクで洗い、フライパンで炒めて盛り付けるといった調理の工程をショールームでなぞってみるエアクッキングをしてみましょう」

食材を切るときには作業台の高さが合っているか、作業をするのに幅や奥行きは十分か、シンクの底面は低すぎないか、コンロはフライパンを振ったり鍋を持ち上げて移動したりしやすい高さかなど、確認することは多くあります。二人で料理をすることが多いなら、二人で一緒に試してみることが大切です。

「いつも家で履いている室内履きを変えたら、キッチンの高さが合わなくて使いにくくなった、という例があります。ショールームへ行くときは、自分が履いているスリッパなどを必ず持参するようにしましょう」

ショールームでキッチンを試す夫婦のイラスト

(イラスト/もり谷ゆみ)

実例紹介。サイズにこだわったキッチンリフォーム成功例を紹介

リフォームやリノベーションをするなら、毎日使うキッチンの快適性や機能性をアップさせたいもの。ここでは、間取り変更を含む全面リフォームの際に、キッチンをより使いやすく変更した実例を紹介します。

なお、紹介する実例のリフォーム、リノベーションの内容は契約時のもの。費用は概算。建物の状態や契約時期によって費用は変動します。掲載した費用や使用する設備などはあくまでも参考としてください。

キッチンは向きを変えて大きなサイズに変更

リモートワーク中心の働き方になるため、部屋の狭さや音漏れが気にならない個室を確保できる間取りにリフォーム。和室を洋室に変更し、リビング内に可動間仕切りで仕切れる個室を設けることで2LDKから3LDKに変更しました。以前のキッチンは独立型で狭かったため、大きなサイズの対面式キッチンに。水回りリフォームが得意なリフォーム会社に依頼することで、床を上げずにキッチンの向きを変更するプランもスムーズに実現しました。

対面式に変更したキッチンの画像

トリプルIH、白いタイル、間接照明でおしゃれに仕上げられた対面式キッチン(画像提供/アクアラボ)

リフォーム後のリビングの画像

床は愛猫の足にも心地よいオーク材の無垢フローリング。壁にはポイントでエコカラットを採用し、ナチュラルな北欧風の内装デザインに(画像提供/アクアラボ)

リビング内に設けられた個室スペース

リビング内に設けられた、可動間仕切りで仕切って使用できる個室スペース。可動間仕切りを閉めてもキッチンからリビングまで視線が抜けるため閉塞感もなく、テレビや外に広がる眺望も楽しみながら家事ができる(画像提供/アクアラボ)

Beforeの間取り図

Before(間取図提供/アクアラボ)

Afterの間取り図

After(間取図提供/アクアラボ)

【DATA】
リフォーム費用:1320万円
工期:約2.5カ月
リフォーム面積:約63m2
間取り:[ Before ]2LDK→ [ After ] 3LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、浴室・バス、洗面室、トイレ、収納、廊下、玄関、他
築年数:40年
住宅の種別:マンション
設計・施工:アクアラボ

1センチ単位で選べるキッチンを採用。回遊動線の効率的な水回りも実現

セカンドライフを快適に過ごせる家にしたいとマンションをリノベーション。和室の半分をフリースペース、もう半分をリビングに取り込み、洋室・フリースペース・リビングが一体となった広々とした間取りに一新。リビングの扉位置を変更し、脱衣室に扉を設けることで、キッチンー脱衣室―ダイニングが回遊動線で結ばれ家事効率がアップ。キッチンは間口(横幅)を1cm単位で選べるシステムキッチンを採用。毎日の掃除がしやすいよう、メンテナンスのしやすさも重視した。

広々としたリビングになった実例の画像

リビングを中心に計画された間取り。室内扉を開口が大きくとれる引き戸に変更し、洋室、フリースペース、リビングが一体となるように一新。和室だった場所の半分のスペースをリビングに取り込んで、広々と過ごせるようにした(画像提供/サンリフォーム)

システムキッチンを入れ替えたキッチンの画像

すっきりとしたデザインのシステムキッチンに交換。清潔感あふれるホワイトを基調にしたキッチンが完成した(画像提供/サンリフォーム)

Beforeの間取り図

Before(間取図提供/サンリフォーム)

Afterの間取り図

After(間取図提供/サンリフォーム)

【DATA】
リフォーム費用:1000万円
工期:2カ月
リフォーム面積:80.00m2
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK+S
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、寝室、収納、廊下、玄関、その他
築年数:24年
住宅の種別:マンション
設計・施工:サンリフォーム

キッチンには、自分の体や料理の内容、料理をする人数などに合うサイズがあります。キッチンの床面積によっても適した大きさや形があります。キッチンをリフォーム、リノベーションするなら、高さや幅、奥行きなどをよく検討して、使いやすいキッチン、料理が楽しくなるキッチンを実現しましょう。

●取材協力
Yuuさん(本名:尾間紫)
一級建築士事務所Office Yuu代表 一級建築士、インテリアコーディネーター。長年リフォーム業界の第一線で数多くの相談、設計、工事に携わってきた。その経験を活かし、住宅リフォームコンサルタントとして幸せなリフォームを実現するためのノウハウを自身のwebサイトで発信するほか、セミナー講演や執筆、人材育成研修などで活躍中

構成・取材・文/田方みき 
イラスト/もり谷ゆみ