キッチンの配置は、冷蔵庫や収納、ダイニングテーブルのレイアウトに影響。使いやすいキッチンへのリフォームとは?

キッチンで大切なのは使いやすい配置。リフォーム、リノベーションをするなら、キッチンの間取りや、システムキッチンのタイプ、調理時の動線にかかわるシンク、コンロ、冷蔵庫の位置など、さまざまな視点から検討することが大切です。一級建築士のYuuさん(本名・尾間紫さん)にお話を伺いました。

使いやすい配置のキッチンで料理をするイメージ

(画像/PIXTA)

記事の目次

間取りでキッチンの配置はどう違う?

キッチンの間取りは大きく分けると独立型とオープン型

キッチンは間取りによって独立型のキッチンとオープン型のキッチンがあります。キッチンがリビングやダイニングからは独立した間取りになっているのが独立型キッチン。キッチンとリビング、ダイニングが一つの空間になっているのがオープン型キッチンです。

昔は、独立型キッチンが主流でしたが、今はリビングとダイニング、キッチンを間仕切り壁で分けないオープン型キッチンが好まれる傾向にあります。独立型もオープン型もそれぞれにメリット、デメリットがあります。ライフスタイルや料理をする人の好みによって使いやすいタイプは異なりますから、独立型キッチン、オープン型キッチン、両方の特徴を知って、自分にはどのタイプが合っているかを考えましょう。

集中して料理ができる独立型キッチンの特徴とメリット、デメリット

独立型キッチンの特徴は?

独立型キッチンは下の図のように、キッチンが一つの部屋になっているタイプ。出入口は1カ所なのが一般的で、壁に囲まれているため独立性の高い空間になります。

独立型キッチンを説明する図

(図作成/SUUMO編集部)

独立型キッチンのメリットは?

最近の建売一戸建てや新築マンション、間取り変更をともなうキッチンのリフォームではあまり採用されなくなった独立型キッチンですが、実はさまざまなメリットがあります。

・料理に集中しやすい
料理をするときにはテレビを見たり、家族と話したりせずに、集中したいという人にとっては、リビングやダイニングとは別の空間になった独立型キッチンがぴったりです。

・キッチンの音がリビング、ダイニングに漏れにくい
「蛇口からの水の音、食材を炒める音、食洗機の音など、キッチンから発生する音は思った以上に気になるもの。独立型キッチンの場合、これらの音がリビングやダイニングに漏れにくいメリットがあります」(Yuuさん、以下同)

・汚れやニオイがリビング、ダイニングに広がりにくい
調理や洗い物をすると、水や油は思った以上に遠くに飛ぶものです。独立型キッチンの場合、料理の後の水や油の汚れはキッチンの中を掃除すればさっぱりキレイになります。換気をきちんとしていれば、調理中のニオイがリビングやダイニングの壁やカーテンにしみついてしまう、ということもないでしょう。

・リビングやダイニングからキッチンのごちゃごちゃが見えない
キッチンは食材や調理器具、使った後の食器類でごちゃごちゃしがち。いつでもきれいに片付けておくのは大変です。独立型キッチンなら、リビングやダイニングからキッチンの様子が見えませんから、食事中や食後の時間はキッチンの状態が気になりませんし、急な来客のときにも慌てずにすみます。

・収納家具や家電を置く場所を多く取りやすい
独立型キッチンは壁に囲まれているため、食器棚や食品を収納する棚、調理家電を置くカウンターなどを置く場所を多く確保しやすいのがメリットです。

独立型キッチンのデメリットは?

独立した空間になっているために生まれるいくつかのデメリットがあります。

・リビング、ダイニングにいる人とコミュニケーションをとりにくい
独立型キッチンは他の空間とは壁で仕切られていますから、料理中にリビングやダイニングにいる人とは会話ができません。来客が多い世帯や、ホームパーティーを開く機会が多い場合、料理やお茶の用意をする人は、さびしい思いをしがちです。

・家事動線が長くなる
「独立型キッチンはオープン型キッチンに比べて、配膳や片付けの動線が長くなるデメリットがあります」

盛り付けた料理をダイニングに運んだり、食後の食器をキッチンへ戻したりする際、オープン型キッチンなら、カウンター越しに手渡しすることもできますが、独立型キッチンは必ず出入口を経由しなければなりません。

・室内環境のコントロールがしにくいこともある
「全館空調でキッチンも含めた家の中の空気がコントロールされている住まいであれば、キッチンも四季を通じて快適です。しかし部屋ごとにエアコンを設置している個別空調の場合、キッチン専用のエアコンを付けている家はそう多くはありません。閉鎖的なキッチンは、リビングやダイニングのエアコンの冷気や暖気が届きにくいので、冬は寒く、夏は料理の熱でさらに室温が上昇するなど、料理が苦行になってしまいがちです」

独立型キッチンはどんな人に向いている?

メリットもデメリットもある独立型キッチン。
「料理に集中したい、キッチンは隠したい、という人に向いています」

いくつかのデメリットをどうとらえるかはキッチンを使う人によって違います。気にならず、かつ、メリットのほうが大きく感じられる場合は、リフォームの際に独立型のままにしておく、独立型キッチンにする、という選択肢もあります。

オープンな間取りで人気のオープン型キッチンの特徴とメリット、デメリット

オープン型キッチンの特徴は?

キッチンがダイニングやリビングと一つの空間になっているのがオープン型キッチン。下の図は間仕切りのないオープン型。大きな開放感が感じられる間取りになっています。

またキッチンとダイニングの間に家具や腰壁、対面式ならコンロ前にガラスなどの間仕切りを設け、程よく空間を分けながらダイニングとのつながりを持たせたタイプをセミオープン型キッチンと呼んでいます。

オープン型キッチンを説明する図

(図作成/SUUMO編集部)

オープン型キッチンのメリットは?

新築マンションや建売一戸建て、注文住宅、リフォームやリノベーションでも人気のあるオープン型キッチンには、さまざまなメリットがあります。

・開放感がある
オープン型キッチンのメリットは、なんといっても開放感。料理中の視界にダイニングやリビング、庭や窓の外の風景が入ってくれば、開放的な気分で料理ができます。採光もとりやすく、明るいキッチンになるのもメリットです。

・子どもを見守りやすい
子育て世帯にとってオープン型キッチンの大きなメリットになるのは、料理中に子どもを見守りやすいこと。キッチンに立ったとき、ダイニングやリビング、隣接する洋室や和室などが見渡せれば、いつでも子どもの様子がわかって安心です。キッチンが壁側に向いている場合でも、子どもの気配が感じられ、料理をしながらの会話もしやすいといえます。

・リビング、ダイニングにいる人とコミュニケーションをとりやすい
キッチンと、リビング、ダイニングの空間がつながっているので、家族や来客と会話をしながら料理をしたりお茶の用意をしたりできるのがメリットです。キッチンが壁を向いているタイプでも、壁で仕切られていなければコミュニケーションはとりやすいでしょう。

・空調のコントロールがしやすい
「リビングやダイニングと一つの空間になったオープン型キッチンなら、リビングやダイニングのエアコンの冷気や暖気が届きやすいのでキッチン内の環境を整えやすく、四季を通じて快適に料理ができます」

・動線が短くバリアフリーにも対応しやすい
「家事効率が高い動線計画が立てやすく、配膳や後片付けが手早くできます。また車いすでも使いやすい間取りにできるなど、バリアフリーにも対応しやすくなります」

オープン型キッチンのイメージイラスト

(イラスト/藤井昌子)

オープン型キッチンのデメリットは?

音やニオイ、水や油の飛び散りなどキッチンで発生する困りごとが、同じ空間のダイニングやリビングに広がってしまうのがオープン型キッチンのデメリットです。

・キッチンの音がリビング、ダイニングにいるとうるさい
水の音、炒める音、食器がぶつかる音など、キッチンは大きな音がしがち。最近は、水はねの音を抑える静音シンクや、音の静かな換気扇もありますが、独立型のキッチンに比べると人によっては騒音と感じてしまうかもしれません。

・水や油がダイニングにはねやすい
洗い物をするときの水や料理ではねた油は、思った以上に遠くまで飛びます。オープン型でキッチンがダイニングに向いている場合は、ダイニングの床やテーブル、壁などをこまめに掃除する必要があります。

・料理のニオイがリビング、ダイニングに広がりやすい
魚や肉を焼いたとき、揚げ物をしたときのニオイは室内に広がるため、ニオイを吸い込みやすいカーテンや布製のソファ、カーペットなどにニオイが染み付いてしまわないか心配になります。

「ニオイを軽減するためには料理を始める10分くらい前から換気扇をまわして、室内に空気の流れをつくるようにします。料理のあとも30分くらいは換気を続けましょう」

オープン型キッチンでは、LDKを快適に保つために、こまめな手入れをするようにしましょう。

・リビングやダイニングからキッチンの内側が見えてしまう
キッチンのワークトップの上や、背面収納など、キッチンの内側がダイニングやリビングから見えてしまうのがオープン型キッチンの難点。特に、玄関ホールからリビングに入る際に、キッチンの脇を通る間取りになっていると、家族だけでなく、来客からもキッチンの中が見えてしまいます。

オープン型キッチンはどんな人に向いている?

オープン型キッチンは、キッチンに開放感が欲しい人、リビングやダイニングにいる人と話をしながら料理をしたい人、料理中も子どもの様子を見守りたい人、バリアフリー対応にしたい人に向いています。

「最近は、おしゃれなキッチンや、調理家電も増えています。すてきなデザインのキッチンをインテリアとして見せたい、という人にも向いています」

オープン型キッチンの対面型と壁付け型。キッチンの配置で使い勝手はどう違う?

対面型と壁付け型、どこが違う?

リビングやダイニングにいる人とコミュニケーションがとりやすいオープン型キッチン。イメージするのは、下図の上のようなキッチンがリビング・ダイニングに向かって配置されている対面型キッチンでしょう。料理をしながら子どもの様子を見守りやすく人気のあるタイプです。

もうひとつ、下図の下のように、キッチンが壁付け型になった配置の場合、振り返ればリビング、ダイニング。家族や来客と適度に会話をしながら、壁に向かって料理に集中することもできます。

オープン型キッチンでの対面型と壁付け型では、それぞれどのようなメリット、デメリットがあるのか整理していきましょう。

■対面型

オープン型キッチンの対面型を説明する図

(図作成/SUUMO編集部)
■壁付け型

オープン型キッチンの壁付けタイプを説明する図

(図作成/SUUMO編集部)

対面型のメリット、デメリットは?

対面型キッチンは、家族や来客とコミュニケーションをとりやすい、子どもの様子を見ながら料理ができるなど、オープンなLDKだからこそのメリットを得られるタイプです。

「そのほか、キッチンに立ったときに開放感があるのが大きなメリット。ただし、できた料理をダイニングテーブルに運んだり、食後に食器を戻したりといった家事動線が壁付け型に比べると長くなるのがデメリット。また、吊り戸棚を設けると暗くなったり風通しが悪くなったり、エアコンが届きにくくなったりする可能性があるので注意が必要です」

壁付け型のメリット、デメリットは?

「壁付け型はキッチンとダイニングのスペースを共用できるため、面積の有効活用がしやすい点がメリットです。ダイニングキッチンで使うスペースをコンパクトにおさめれば、リビングを広くとることも可能になります」

デメリットは冷蔵庫や食器棚を置ける壁面が少ないこと。横幅の大きなシステムキッチンを選ぶと冷蔵庫を横並びに置けない、食器棚を置く場所がないなど、困る場合があります。

リビングを広くしやすい壁付け型のキッチンのイラスト

(イラスト/藤井昌子)

壁付け型、対面型、それぞれどんな人や家に向いている?

リビング、ダイニング、キッチンに間仕切りがない一つの空間でも、キッチンを壁付け型にするか対面型にするかで、キッチンの使い勝手は違ってきます。

「壁付け型は床面積を有効に使えますから、LDKが狭い家におすすめのタイプです。料理に集中したい人にも向いています。対面型は料理をしながら家族と話したり、子どもの様子を見守ったりを重視する人にいいですね」

キッチンのタイプによってシンク、コンロ、作業スペースの配置が変わる

キッチンはシンク、作業スペース、コンロが一列に並んだI型や、カウンターがL字型に曲がったL型、2列になったII型(セパレート型)、対面型キッチンに採用されるペニンシュラ型のほか、アイランド型、U型(コの字型)の、大きく分けて6種類のタイプがあります。それぞれにシンク、コンロ、作業スペースの配置に違いがあり、冷蔵庫や食器棚のレイアウトにも影響します。自分にとって料理がしやすそうな配置はどのタイプなのか、考えてみましょう。

I型のキッチンは横幅と冷蔵庫の位置に注意

シンク、作業スペース、コンロが一列に並んだキッチンは「I型」といわれています。後述する対面型キッチンで採用されるペニンシュラ型やアイランド型もシンク、作業スペース、コンロが一列に並んでいますが、ここでは、独立型キッチンやオープンなキッチンでも壁に向かって配置されるキッチンという前提でお話しします。

「6タイプのキッチンのなかではシンプルで価格も低め。ローコストなリフォームやリノベーションなら、まずI型からプランを検討してみるのがおすすめです」

注意点はキッチンの横幅。I型のキッチンは食材を切るなどの下準備、食材を洗う、加熱するといった作業を、横移動だけで行います。横幅が大きなキッチンで、冷蔵庫や食器棚を横並びに配置すると移動距離が長くなってしまいます。冷蔵庫を並べて配置するなら、横幅は2700mmまでが使いやすいキッチンの目安になります。

I型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

L型にリフォームするなら床面積にゆとりが必要

ワークトップがL字型のタイプ。角になった部分に作業スペースがあり、シンクとコンロが90°の配置になります。

「シンクとコンロの距離が近くなるため作業効率がよく、テキパキと料理をしたい人におすすめのタイプです。ただし、作業スペースのコーナーになった奥のほうや下の空間がデッドスペースになりやすく、キッチン

本体の面積も大きくなるため、I型からL型にリフォームをする場合は、より広い床面積が必要になります」

L型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

II型はシンクとコンロの配置が料理をするのに効率的

II型(セパレート型、2列型)はシンクとコンロが分かれた2つのワークトップが並ぶタイプです。

「コンロとシンクが通路を挟んだ位置にあるため、複数で料理をする場合にそれぞれの作業スペースを確保しやすいのがメリット。最近人気のレイアウトです。1人で料理をするなら通路幅は90㎝程度、2人以上の場合は1m〜1.1mを確保しておくと快適です」

II型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

ペニンシュラ型は通路幅を確保するため床面積にゆとりが必要

片側が壁に付いた半島(ペニンシュラ)型で、対面型のキッチンで多いタイプです。コンロは壁側で壁やガラス板でダイニングと間仕切るケースと、間仕切りのない完全にオープンなケースがあります。冷蔵庫やカップボードなどの収納棚は背面に配置するのが一般的です。

「キッチンと収納棚の引き出しがぶつからないよう通路の幅は900mm程度、複数で料理をするなら1m以上は確保したいですね」

通路の幅は広すぎても食材や食器をとりに行く際の移動距離が長くなり、家事効率がダウンするので注意しましょう。

ペニンシュラ型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

アイランド型はキッチンの両サイドに通路が必要

キッチンが壁に接していない島(アイランド)のようなタイプ。ペニンシュラ型と同様、食器棚や冷蔵庫は背面に置かれることが多くあります。

「回遊動線になるため、毎日の家事がラクになるタイプ。出入口が2カ所あるので、シンクやコンロを使っている人の後ろを通らなくても、冷蔵庫から飲み物や食材の出し入れをすることができるなど、動線がスムーズです。車いすを使用する際も行き止まりがないのでスムーズに動けます」

アイランド型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

U型は料理に必要な動作がスムーズ

U型(コの字型)はシンクやコンロ、作業スペースが中央に向いたタイプ。それぞれの辺にシンク、コンロ、作業スペースが分かれるように配置すれば、体の方向を変えるだけで、洗う、加熱する、切るなどの動きがスムーズにできます。

「動線が短く使いやすい配置のキッチンです。囲まれているので独立感のある落ち着いたスペースにもなり、高級感もあります。ただし、U型キッチンは広いスペースが必要です。LDKにゆとりのある家に向いています」

U型のキッチンの図

(図作成/SUUMO編集部)

キッチン収納の配置の注意点は?

背面収納を設けるなら通路幅に注意

ペニンシュラ型やアイランド型、II型のキッチンでキッチンの背面の壁側に食器棚(カップボード)などの収納を設ける場合、リフォーム前にチェックしたいのは、キッチンのスペース内にシステムキッチンと食器棚を配置したうえで、料理がしやすい通路幅を確保できるかどうか。特に、複数で料理をする機会が多い場合は要注意です。

「システムキッチンの奥行きが650mm、食器棚の奥行きが450mm、そのほか、通路の幅はキッチンと食器棚の引き出しがぶつからない900mm以上、複数で料理をするなら1m以上が目安になります」

吊り戸棚や食器棚を配置しないならキッチン本体の収納力をチェック

「キッチンのリフォームでは、吊り戸棚を無くしたいという要望が多いですね。吊り戸棚をはずすと頭上がスッキリとしてLDKの開放感がアップします。キッチンが明るくなって気持ちがいいですし、風通しも良くなり、エアコンも届きやすくなります」

吊り戸棚をはずした場合に心配なのは収納スペースが足りるかどうか。

「最近のシステムキッチンはキッチン本体にさまざまな収納の工夫がされています。吊り戸棚をはずす場合や、食器棚を置くスペースがとりにくい場合は、収納力のあるシステムキッチンを選ぶといいでしょう」

パントリーをキッチンのそばに配置すると便利

食品の買い置きやお米などのかさばるもの、災害に備えるストック食品などを収納しておけるパントリー(食品庫)。

「コロナ禍以降、食品はまとめ買いをしてスーパーに行く回数を減らすというライフスタイルの人も多くなり、食品庫の重要性が見直されています」

床面積があればキッチンの近くやキッチンのスペース内にパントリーを設けるのもおすすめです。

パントリー、食品庫のあるキッチンのイメージ

(画像/PIXTA)

キッチンの配置はワークトライアングルがポイント

ワークトライアングルはシンク、コンロ、冷蔵庫の配置

キッチンでテキパキとスムーズに料理をするために重要になるのがシンク、コンロ、冷蔵庫の配置です。この3つの位置を結ぶ三角形の動線を「ワークトライアングル」といい、このバランスや距離によって家事の効率が違ってきます。

一般的にシンク、コンロ、冷蔵庫の距離は下の範囲内が使いやすいといわれます。
シンクとコンロの距離 1200mm〜1800mm
シンクと冷蔵庫の距離 1200mm〜2100mm
コンロと冷蔵庫の距離 1200mm〜2700mm

さらに、3辺の合計が3600mm〜6000mmにおさまり、かつ正三角形に近いと動きやすく適切な配置とされています。これは、キッチンと冷蔵庫の配置だけでなく、キッチンの横幅にも関係があります。

「I型のキッチンで幅が2700mmを超えると使いにくくなるのは、シンクとコンロの距離が離れてしまうこと、さらに、横に冷蔵庫が並ぶと料理のときの移動距離がとても長くなります。ワークトライアングルを見てみると三角形ではなく、長い直線になってしまっています」

キッチンを選ぶ際には、シンクとコンロ、冷蔵庫のお互いの距離と位置のバランスをチェックし、使いにくそうな動線の場合、キッチンの横幅が長すぎないか、キッチンのサイズについても検討するのがおすすめです。

ワークトライアングルを説明する図

(図作成/SUUMO編集部)

右利きか左利きかで、使いやすいシンクやコンロの配置は違う?

右利きなら、まな板で切った野菜をまとめてコンロにあるお鍋に入れる際、コンロは作業スペースの右にあると使いやすいでしょう。しかし、お鍋の中の料理を箸で取り出して盛り付けるなら、コンロは作業スペースの左にあるほうがスムーズです。

「コンロやシンクの位置がどちらにあると使いやすいかは作業によって違ってきますし、実際は慣れによるところが大きいといえます。また、コンロは壁側に寄せたいなど、間取りによってコンロの配置が決まることも多くあります。自分にはどちらが合っているのか、キッチンのショールームで実際に料理をするときの動作をしてみることが大切。やってみると、普段の逆のほうが使いやすいと気づく方もいらっしゃるかもしれません。ただし、高齢の方は新しい生活に慣れることがなかなか難しいので、リフォーム後も同じ配置になるようにするほうがいいかもしれません」

テキパキと料理をする人のイラスト

(イラスト/藤井昌子)

キッチンの配置を変更するリフォーム。費用の目安は?

キッチンの配置を変更するリフォーム工事の項目

システムキッチンの配置を変更する場合、主に下のような項目の費用がかかります(※実際の項目は工事内容によって異なります)。

  • システムキッチンの商品代
  • 組み立て設置
  • 既存のキッチンの撤去と処分
  • 給排水管工事
  • 電気工事
  • ガス工事
  • 換気扇工事
  • 床、壁、天井の張り替え
  • 養生
  • 窓の移動や換気扇の移動がある場合は関連する工事や外壁補修など
  • 諸経費

リフォームにかかる費用は、さまざまな費用の合計になるため金額はケースバイケースです。

キッチンの配置を変更。リフォーム費用の目安はいくら?

選ぶシステムキッチンのグレードやサイズ、内装工事の有無や内装材のグレード、工事内容によって費用は異なりますが、ここでは、一般的なシステムキッチンの場合の目安を一級建築士のYuuさんに教えてもらいました。

・オープンな間取り。壁付け型のキッチンの向きを変えて対面型のキッチンに
リフォーム費用の目安 120万円〜

・独立タイプのキッチンの壁を撤去してオープンタイプに
リフォーム費用の目安 向きの変更がある場合 150万円〜、向きの変更がない場合 100万円〜

・システムキッチンをI型からL型やII型に変更
リフォーム費用の目安 200万円〜

「ここに挙げた金額はあくまでも目安です。システムキッチンの価格はメーカーやシリーズによって幅がありますから、リーズナブルなキッチンを選ぶなど工夫をすれば、もっと低コストでリフォームは実現可能です」

実例紹介。キッチンの位置やタイプを変更した成功リフォーム

リフォームやリノベーションをするなら、今のキッチンよりも使いやすく、楽しく料理ができるプランに変更したいもの。ここでは間取り変更を含むリフォームやリノベーションの際に、キッチンの位置やタイプを変更した実例を紹介します。

なお、紹介する実例のリフォーム、リノベーションの内容は契約時のもの。費用は概算。建物の状態や契約時期によって費用は変動します。掲載した費用や使用する設備などはあくまでも参考としてください。

壁付け型のキッチンをオープンな対面型キッチンに変更

リフォーム前のキッチンはL字型でリビングの様子がわかりにくい壁付け型でした。リフォームの際に、対面式に変更。リビングに隣接しキッチンスペースと壁で仕切られていた洋室までリビングを拡張することで、広々としたオープンスタイルのLDKになりました。

リフォーム後のLDKの画像

バルコニーから少し離れた、洋室の陰になっていた壁付け型のキッチンは、ダイニングやリビングと一体化したオープンキッチンに変更(画像提供/JS Reform)

リフォーム後のリビングからキッチン、ダイニングを撮影した画像

シンプルでナチュラルなデザインに仕上がったLDK。料理をしているときに、リビングやダイニングにいる人との会話も楽しめる(画像提供/JS Reform)

LDKに隣接する和室からキッチンが見える画像

LDKに隣接する和室。引き戸を開放すれば、LDKとの一体感が感じられる空間になる(画像提供/JS Reform)

Beforeの間取り図

Before(間取図提供/JS Reform)

Afterの間取り図

After(間取図提供/JS Reform)

【DATA】
リフォーム費用:696万円v
工期:2カ月
リフォーム面積:78.23m2
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、和室、トイレ、洗面所、浴室、廊下、玄関
築年数:43年
住宅の種別:マンション
設計・施工:JS Reform

L型の対面型キッチンに変更し広さも確保

壁に囲まれた独立型のキッチンを、I型からL型に変更し、リビング・ダイニングに向いた対面型にリフォーム。キッチンの隣の和室との間取りを調整することで、親子で料理を楽しめる広さを確保しています。キッチンからは子ども部屋や、水回りへも行き来しやすい動線になりました。

リフォーム後のキッチンの画像

独立していたキッチンは、対面型の開放的なスペースに。L字型にすることでスペースを有効活用している。水回りから子ども部屋までつながる動線は動きやすく、風通しもいい(画像提供/JS Reform)

リフォーム後のリビングの画像

リビングはダイニングやキッチン、和室とつながった開放的な住空間に。白をベースにナチュラルな建具で落ち着いた印象(画像提供/JS Reform)

Beforeの間取り図

Before(間取図提供/JS Reform)

Afterの間取り図

After(間取図提供/JS Reform)

【DATA】
リフォーム費用:1440万円
工期: 75日
リフォーム面積:85m2
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 3LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、洗面室、トイレ、洋室、和室、収納、廊下、玄関
築年数:34年
住宅の種別:マンション
設計・施工:JS Reform

キッチンを移動し斜めに配置。II型を採用し効率的な家事動線に

マンションの2住戸をつなげるリノベーションで、広々とした明るいLDKを実現。壁面に向いていたI型キッチンを移動し、リビング・ダイニングを見渡せる位置に斜めに配置。省スペースで回遊できるII型を採用することで、水回りや玄関へもアクセスしやすい効率的な家事導線を実現しています。

リフォーム後のLDKの画像

キッチンを斜めに配置する大胆なプラン。東西にあるバルコニーから光と風が入る、広々としたLDKになった(画像提供/stylekoubou(スタイル工房))

キッチンの造作収納家具の画像

さび茶色に塗り上げられた造作の収納家具がキッチンのポイント。素材感と色味が空間を引き締めている。リビング・ダイニング側には小物を、キッチン側には家電などがおさまる(画像提供/stylekoubou(スタイル工房))

対面型のキッチンから見渡すリビング、ダイニングの画像

キッチン側から見渡せるリビング・ダイニング。オークの無垢フローリングやタモ突板などのナチュラルな素材をベースに、キッチンやテレビ背面にあしらったさび茶色がアクセントのおしゃれな空間だ。(画像提供/stylekoubou(スタイル工房))

Beforeの間取り図

Before(間取図提供/stylekoubou(スタイル工房))

Afterの間取り図

After(間取図提供/stylekoubou(スタイル工房))

【DATA】
リフォーム費用:1700万円
工期:約2.5カ月
リフォーム面積:86m2
間取り:[ Before ] その他 → [ After ] 3LDK
リフォーム箇所:LDK、洗面所、浴室、トイレ、洋室、廊下、玄関、収納、その他
築年数:32年
住宅の種別:マンション
設計・施工:stylekoubou(スタイル工房)

独立型キッチンを、LDKに一体感が生まれる対面のII型に

1階が2世帯に分かれている2×4(ツーバイフォー)住宅の、1階全体をひとつの住まいにリノベーション。キッチンは独立型で壁付けタイプだったのを、オープンなII型タイプに。シンクのあるキッチンカウンターからはLDKが見渡せて開放感たっぷりです。

リノベーション後のLDKの画像

開口を可能な限り広げてLDKの一体感と開放感を実現。梁(はり)の補強を行い、耐震性を担保している。キッチン奥の壁にあしらったブルーグレーのタイルが爽やかなアクセントになっている(画像提供/stylekoubou(スタイル工房))

リフォーム後のキッチンの画像

省スペースでもコンロ脇とシンク脇それぞれの作業スペースがある使いやすいII型タイプ(画像提供/stylekoubou(スタイル工房))

キッチンから見渡せるリビングダイニング

独立型からオープンな対面型に配置を変更したことで、キッチンからは広くて明るいリビング・ダイニングが見渡せる(画像提供/stylekoubou(スタイル工房))

Beforeの間取り図

Before(間取図提供/stylekoubou(スタイル工房))

Afterの間取り図

After(間取図提供/stylekoubou(スタイル工房))

【DATA】
リフォーム費用:1900万円
工期:約4カ月
リフォーム面積:約91m2
間取り:[ Before ] その他 → [ After ] 2LDK+S
リフォーム箇所:LDK、洗面所、浴室、トイレ、洋室、廊下、収納、玄関、その他
築年数:32年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:stylekoubou(スタイル工房)

独立型やオープン型など間取りによって、選ぶシステムキッチンのタイプによって、シンクやコンロ、冷蔵庫、リビング・ダイニングとの配置や距離が異なり、それによって使い勝手も違ってきます。自分にとって使いやすいキッチンはどのような配置なのか、リフォームのプランを決める前にじっくり検討しましょう。

●取材協力
Yuuさん(本名:尾間紫)
一級建築士事務所Office Yuu代表 一級建築士、インテリアコーディネーター。長年リフォーム業界の第一線で数多くの相談、設計、工事に携わってきた。その経験を活かし、住宅リフォームコンサルタントとして幸せなリフォームを実現するためのノウハウを自身のwebサイトで発信するほか、セミナー講演や執筆、人材育成研修などで活躍中

構成・取材・文/田方みき
イラスト/藤井昌子