キッチン選びの際、ワークトップ(天板)はどれを選ぶか悩んでしまうポイントの一つではないでしょうか。この記事ではキッチン天板に絞って、一級建築士のYuu(尾間紫)さんに話を伺い、素材ごとの特徴やどんな人に向いているのかを解説します。主なキッチンメーカーのワークトップ(天板)も紹介します。
※記事内の価格は消費税込み、2023年11月時点。
記事の目次
キッチンワークトップ(天板)の種類
まずキッチン天板の主な種類から説明しましょう。
システムキッチンの天板の主な素材は3種類
さまざまな素材が使われているキッチン天板ですが、システムキッチンで多く使われているのはステンレス、人造(人工)大理石、セラミックの3種類です。
「一般的なシステムキッチンの天板に使われているのはステンレス、人造(人工)大理石、セラミックの3種類。最近ではクォーツストーンという水晶を素材とした天板も出ています。他にメラミンや木製、タイルなどもありますが、こういった素材を使いたい場合は基本的にはオーダーメイドになります」(Yuuさん、以下同)
天板の価格は素材やデザイン、表面加工によって異なる
「一番安価なのはステンレス天板ですが、品質やデザインによって価格の幅が広く、製造方法や成分、加工によっては高価なステンレス天板もあります。幅広く普及しているのは価格とデザイン性のバランスが取れている人造(人工)大理石天板。セラミック天板の価格は高めです」
選ぶ素材や加工によって、天板にはシステムキッチン1台当たり数千円~70万円ほどの価格差が生じます。
キッチンのワークトップ(天板)選びのポイント
キッチン天板を選ぶ際、どのようなことに注目して選べばよいのでしょうか。キッチン天板選びのポイントをまとめました。
インテリア性や色・デザインの好みで選ぶ
「15年~20年前までは人造(人工)大理石は熱に弱いとか変色しやすいなどと言われており、耐熱性や耐久性はステンレスが丈夫でよいとされてきました。ですが、今の人造(人工)大理石は高品質になって素材による大きな違いはほぼなくなり、最近のキッチン天板選びではインテリア性や色・デザインの好みを重視する傾向が強くなっています」
「素材によって熱や衝撃に対する耐性は多少異なるものの、日常の料理や生活で生じる熱や衝撃であれば、どの素材でも大きな問題はありません」
キッチンのデザイントレンドをチェック
「天板はできるだけ薄く軽やかにというのがトレンドです。エッジのデザインや全体のフォルムはよりシンプルになり、家具に近い存在になってきています。世界的なキッチンデザインの傾向も、ノイズレスを意識した繊細なデザインが増えています」
水返しの有無や天板の厚みで印象は変わります。水返しとはカウンターから水が落ちないように設けられた立ち上がりのこと。天板の一番手前の部分です。形だけでなく、天板の加工やデザインも各社からさまざまな種類が出ているので、実際にショールームで確認してみてください。
素材によって対応できないレイアウトや加工も
素材によってはL型のキッチンや、切り欠きなどの特注対応ができなかったり、水が周囲に流れないようにキッチンの奥に設けたバックガードを付けられなかったりすることもあるので注意が必要です。
「人造(人工)大理石やセラミック天板の中には、バックガードが一体で成型できないものもあります。天板とバックガード、シンクのつなぎ目がなく一体型になっているとゴミが溜まりにくく、掃除がしやすいというメリットがあります。バックガードと天板の継ぎ目や、L型にした時の継ぎ目、シンクとのつなぎ目などがどうなっているのかにも注目していただければと思います」
人気は白の人造(人工)大理石天板
「人気は白い人造(人工)大理石天板です。キッチンはどんどんオープンになっていてインテリア的な要素が強く求められています。そのため、見た目が美しく、清潔感のある人造(人工)大理石が選ばれています」
白は水垢も目立ちません。濃い色は水垢が白く目立つ恐れがあるので、気になる方、こまめな掃除が苦手な方は避けたほうがよいかもしれません。
以下、それぞれの素材について特徴をまとめました。
ステンレス天板の特徴
ステンレスは“stainless(さびにくい)”に由来する、クロムを10.5%以上、炭素を1.2%以下含んだ合金です。金属なのにさびにくく清潔で、リサイクルできるのが特徴です。
「ステンレス天板は、耐水性と耐熱性に非常に優れており、丈夫です。また、金属なのでシミがつくなど着色汚れがありません。汚れが染み込むことがなく清潔感があります。ただ、細かいキズが付きやすい、水垢が目立ちやすいというデメリットもあります」
ステンレスは熱に強く、丈夫
「ステンレス天板は熱や水に強く、丈夫です。ステンレスそのものの耐熱温度は、おおよそ600度以上。火からおろしたばかりのフライパンを置いても、焦げ付くことがありません。また、多少雑に扱っても、ヒビが入ったり、割れたりすることがありません」
ちなみに、キッチンに使われるステンレスには、SUS304(18-8ステンレス)とSUS430(18-0ステンレス)があり、多くのメーカーでより耐熱性・耐食性に優れたSUS304(18-8ステンレス)が使われています。
ステンレスは掃除がしやすく清潔
「ステンレスは衛生的で、サッとひと拭きで汚れが落とせるので掃除がしやすいのが大きなメリットです。さらに汚れが落としやすいコーティングを施しているメーカーもあります」
なお掃除の際、キッチンハイターなどの塩素系の洗剤は使用すると、ステンレス表面の膜が破壊される可能性があり、錆の原因となるので注意しましょう。泡タイプであれば問題ないとしているメーカーもありますので、確認するとよいでしょう。
ステンレスはモダンなデザインが得意
「昔と比べてステンレスのキッチンは洗練されたデザインになっています。オールステンレスのキッチンならシャープな印象に、木と組み合わせてナチュラルモダンな印象にもなります」
水返しのないフラットなデザインなら、よりシャープでモダンなキッチンにすることが可能です。
デメリットは細かいキズや白い水垢が目立つこと
「デメリットは、食器を置いたり物が当たったりしてできる細かいキズや水垢が目立つことです。ヘアピンやハサミ、空き缶などを長時間放置しておいたときに発生する“もらい錆”もなかなか取れません。専用のステンレス磨きで戻すことも可能ですが、かなりの重労働です」
「最近では、表面にエンボス加工を施すなど、キズが付きにくい、付いても目立ちにくい工夫がされています」
ステンレス天板が向いている人・向いていない人
ステンレス天板は、モダンなデザインが好きな人、細かいことを気にせず思い切りキッチンを使いたい人に向いています。
「ステンレスを美しく保つためには、水滴が付いたらすぐにふき取るなどの手間が掛かります。買った当時の美しさを求めるなら、お手入れは必須。でも作業スペースとして考えるなら、耐久性が高いステンレス天板は思い切り料理ができて、使いやすいキッチンになります。プロの料理家の多くはステンレスキッチンを使っています。美しさの維持よりも実用性を求める人、清潔感を重視する人、キッチンを調理場として捉える人に向いているといえるでしょう」
ステンレス天板が選べるキッチンメーカー
ステンレス天板を選べる主なキッチンメーカーを紹介します。
クリナップ
高品質なステンレス天板を長年作り続けているクリナップ。キズに強いエンボス加工や親水性のセラミック系特殊コーティング「美コート」を施し、汚れやキズに対する工夫が特徴です。
●選べる7種の天板
ハイエンドシリーズのセントロでは、ヘアライン、エンボス、バイブレーションなど、7種類の表面加工がそろっており、基本プランのサテンエンボスから変更が可能です。
シリーズ | 価格 |
---|---|
セントロ | 140.1万円~ ※I型・B-Style・基本プラン・間口2550㎜の場合 |
ステディア | 108.9万円~ ※I型・基本プラン・間口2550㎜の場合 |
ラクエラ | 87.5万円~ ※I型・スライド収納プラン・間口2550㎜の場合 |
トーヨーキッチンスタイル
トーヨーキッチンスタイルはもともとステンレス加工を得意とする会社です。デザインにこだわり、見せるキッチンを提供しています。「エンブレムトップ」や、チタン研磨仕上げなど、高い加工技術を要する天板が特徴です。
●独自の加工を施した「エンブレムトップ」
職人の手作業で作る工程が多く、モノづくりへのこだわりが、「エンブレムトップ」などの独創的なデザインを生み出しています。
●チタン研磨仕上げのステンレス天板
高品質ステンレスSUS304を使用した天板に、職人によるチタン研磨を施し、使い込んだような温かみを演出。あえて表面をスクラッチ加工し、キズやくもりを目立ちにくくしています。天板の厚みはわずか1.3㎝と薄く、スタイリッシュです。
シリーズ | 価格 |
---|---|
iNO(イノ) | 87.2万円~ ※ON-WALL(C)プラン 間口1690㎜ |
BAY(ベイ) | 52.4万円~ ※ON WALLプラン 間口1990㎜ |
サンワカンパニー
サンワカンパニーのシステムキッチンの標準仕様は、ほとんどがステンレス天板です。表面加工はヘアラインが標準ですが、オプションでキズが目立ちにくいバイブレーションも選べます。比較的価格が安く、オンライン購入となっているのも特徴です。
●バイブレーション仕上げ
オプションで選択できるバイブレーション仕上げ。細かな表面加工で小さなキズや指紋が目立ちにくくなっています。
●数種類がそろう、ステンレス天板のシステムキッチン
サンワカンパニーのキッチンは10シリーズ。2種類を除き、ステンレス天板が選べます。価格帯もさまざまなので、好みや予算に合わせて選びやすいでしょう。
シリーズ | 価格 |
---|---|
Elevato EX(エレバートEX) | 69.5万円~ ※ウォール型・基本プラン・間口2550㎜の場合 |
Elevato(エレバート) | 64.5万円~ ※ウォール型・基本プラン・間口2550㎜の場合 |
Grad45(グラッド45) | 49.8万円~ ※ウォール型・基本プラン・間口2550㎜の場合 |
Witte(ウィッテ) | 34.4万円~ ※ウォール型・基本プラン・間口2550㎜の場合 |
Osso(オッソ) | 35.9万円~ ※ウォール型・基本プラン・間口2550㎜の場合 |
人造(人工)大理石天板の特徴
合成樹脂を主成分としてつくられている「人造(人工)大理石天板」。見た目の美しさと程よい柔らかさが大きな特徴です。最近は天板が薄く、スタイリッシュなキッチンが各社から出されています。
「人造大理石」と「人工大理石」は同じもの?
カタログなどを見ると、キッチンメーカーによって「人造大理石」や「人工大理石」と異なった表記を目にしますが違いはあるのでしょうか。
「人造大理石と人工大理石はメーカーによる単なる呼称の違いで、合成樹脂を主成分とした同じものを指しています。原料はアクリル樹脂やポリエステル樹脂、最近はアクリル樹脂に無機物を混ぜたものもありますね」
特に定められた定義はなく、中には天然の大理石を含んだものを「人造大理石」と表記し、人工大理石と区別しているキッチンメーカーもあります。
人造(人工)大理石キッチン天板の種類
「多くのキッチンメーカーが人造(人工)大理石天板を採用しています。メーカーによって原料や配合が異なり、オリジナルの人造(人工)大理石天板を提供しているので、違いを確認しながら選ぶとよいでしょう」
アクリル系樹脂、硬質アクリル系樹脂、アクリル系エポキシ樹脂、樹脂+天然水晶など各社、独自の使用原料や配合で天板を作っています。
米国デュポン社製のアクリル系人造(人工)大理石「コーリアン®」を採用しているメーカーもあります。コーリアン®は天然石の雰囲気を持ち、耐傷性、耐溶剤性が高く、高品質の人造(人工)大理石として、上位ランクのシリーズで選択できるようになっていることが多いです。
また、天然水晶を使用したものは「クォーツ」または「人工水晶」と呼ばれ、風合いが天然石に似ています。
350度の物を10分置いても大丈夫
アクリル系は瞬間の熱に強いことから、キッチン天板では主にアクリル系の人造(人工)大理石が使われています。
「15~20年ほど前までは、耐熱性に弱く熱いものが置けない、と言われていた人造(人工)大理石天板ですが、今どきは耐熱性が高いものが主流を占めています。耐熱温度は原料や製造方法で異なるので、メーカーによってそれぞれですが、大体350度で10分、つまり、熱々のフライパンを一瞬置いたくらいでは大丈夫です」
注型成型の人造(人工)大理石天板は厚みがあり割れにくい
「人造(人工)大理石天板は、合板の裏打ちや台座の上に6㎜~10㎜以上の人造(人工)大理石が載っています。人造(人工)大理石の作り方には熱と圧力をかけてプレスして作るプレス成型と材料を方に流し込んで作る注型成型がありますが、注型成型のほうが厚みがあります。高級グレードのキッチンの多くは注型成型です」
手入れしやすく、美しいキッチンがかなう
「人造(人工)大理石天板の大きな特徴は美しさ、そして豪華さです。お手入れも昔に比べてずっと楽になっていて、美しさを保ちやすくなっています。各メーカー、成分や配合を工夫しており、さまざまな天板が出てきています。成分や配合によって透明度や質感が異なってくるので、ショールームで実物を確認するとよいでしょう」
基本のお手入れは中性洗剤とスポンジで
「基本のお手入れは、中性洗剤とスポンジで軽くこすり洗いをする。洗剤を使ったら、しっかり洗い流す。ほとんどの汚れはこれで落ちます。また付いた汚れは時間がたつほど落としにくくなるので、すぐに落とすようにすることが大切です」
選び方によってはシミになったり、キズが目立つことも
「個々の品質が異なる人造(人工)大理石は、選ぶものによってはシミになったり、キズが目立ったり、キズの補修がしにくかったり、変色しやすかったりします。よく品質を見極めて選ぶ必要があります」
人造(人工)大理石天板が向いている人・向いていない人
「オープンスタイルのキッチンの場合、人造(人工)大理石天板のキッチンを選んでおけば、空間全体が高級感あるオシャレな雰囲気になります。以前に比べて人造(人工)大理石のキッチン天板を選ぶ人は増えていて、それもキッチンのオープン化が進んだことによるもの。見せるキッチンにしたい人に向いている天板と言えるでしょう。またその際には白やベージュを選べば空間全体が明るい雰囲気になりますよ」
人造(人工)大理石天板が選べるキッチンメーカー
各社とも、独自の配合による人造(人工)大理石天板がありますが、中でも特徴ある天板を提供しているキッチンメーカーを紹介します。
トクラス
トクラスは国産で初めて人造大理石天板のキッチンを製造販売した会社です。約半世紀にわたり、素材の研究開発から自社で一貫生産を行い、高品質な人造大理石天板とシンクを製造しています。
トクラスのキッチンは全て人造大理石天板で、「テノール」「グラーナ」「クラストン」の3種類があります。
●厚みのあるむく材(ソリッド)の人造大理石天板
トクラスの人造大理石天板は注型成型で作られた、厚みのあるむく材です。厚みが10㎜以上あるため、キズやシミをサンドペーパーで磨いて修復することができます。
●人造大理石の柔らかさとセラミックの質感を併せ持つ「テノールカウンター」
トクラスの前身はヤマハの家具・住宅設備部門です。ピアノ塗装の技術を生かして作られたのが「新感覚人造大理石テノールカウンター」です(特許出願中)。表面に特殊な塗装を施し、深みのある濃色や焼き物の質感を感じさせる仕上がりになっています。人造大理石の柔らかさとセラミックの質感を併せ持つ天板です。
●シームレス結合でシンクやバックガードとのつなぎ目がなし
天板とシンク、バックガードのつなぎ目がないため、ゴミがたまることもなく掃除がしやすいのもトクラス天板の特徴です。
シリーズ | 価格 | 対象プラン |
---|---|---|
Collagia(コラージア) | 131.0万円~ | I型・間口2550㎜・ローバック基本プラン |
Bb(ビービー) | 105.5万円~ | I型・間口2550㎜・フロアスライドプラン |
TOTO
TOTOのキッチン天板は3種類の人工大理石天板を用意。中でも独自の技術で透明感のある「クリスタルカウンター」が人気です。
●透明感のある「クリスタルカウンター」
すりガラスのような透明感が特徴のクリスタルカウンター。滑らかな手触りで、キズかつきにくく、熱や衝撃に強い高耐久なキッチン天板です。
●柄入りなど全10種類がそろう
クリスタルカウンターは単色5種類、柄入り5種類があり、選ぶ天板によって落ち着きや華やかさなどが演出できます。
シリーズ | 価格 |
---|---|
ザ・クラッソ | 109.9万円~ ※ I型・間口2550㎜・おすすめプラン・人工大理石カウンターの場合 |
129.7万円~ ※ I型・間口2550㎜・クリスタルプラン・クリスタルカウンターの場合 |
|
ミッテ | 90.4万円~ ※ I型・間口2550㎜・基本プラン・人工大理石カウンターの場合 |
パナソニック
パナソニックでは「スゴピカ素材(有機ガラス系)の人造大理石 グラリオカウンター」「天然石を90%以上配合された人造大理石 クォーツカウンター」「濃色人造大理石 フリオカウンター」「人造大理石カウンター」の4種類の人造大理石天板が用意されています。
●汚れが落としやすい「スゴピカ素材(有機ガラス系)」のグラリオカウンター
「Lクラス キッチン」で選べる「スゴピカ素材(有機ガラス系) グラリオカウンター」は、人造大理石天板でありながら、天然石のような質感。硬いのでキズがつきにくく、撥水、撥油成分が配合で、汚れが落としやすくなっています。
シリーズ | 価格 |
---|---|
Lクラス キッチン | 135.5万円~ ※壁付I型・間口2550㎜・グラリオシンプルプランの場合 |
ラクシーナ | 115.4万円~ ※壁付I型・間口2550㎜・ベーシックプランの場合 |
リビングステーションVスタイル | 94.3万円~ ※壁付I型・間口2550㎜・ベーシックプランの場合 |
セラミック天板の特徴
セラミックとは無機質を成型、高温で焼成したものです。熱に強く、丈夫で、焼き物ならではの風合いや深い色合いが人気となっています。また、ほぼ無孔質なため、調味料や薬品などが染み込みにくいのが特徴です。
「焼き物であるセラミックには、丈夫さとともに自然を感じさせる風合いがあり、それが人気を呼んでいます。ただ、他の素材に比べ価格は高くなっています」
焼き物ならではの風合いはセラミックならでは
セラミック天板は陶器のような質感が特徴です。
「自然を感じさせる素材感、ナチュラルな素材感のあるセラミックは、重厚感があり美しい天板です。より家具に近いキッチンになります」
セラミック天板というとダークカラーの天板を思い浮かべる方も多いと思いますが、ベージュや白、木目調なども用意されています。
硬度が高く、天板の上で直接包丁が使える
「硬さ、丈夫さはステンレスや人造(人工)大理石に比べ、圧倒的に高くなっています。天板の上で魚をさばくなど、直接包丁を使うこともできます。缶詰を落としたくらいではキズがついたりすることもありません」
セラミックには硬さゆえのデメリットも
硬さが魅力のセラミックですが、硬いが故のデメリットもあります。
「硬いセラミックはお皿やグラスを落とすと割れやすい。陶器のコレクションをしているような方は、底の部分などがセラミックで傷つくのではないかと心配されることもあります」
キッチンのレイアウトによっては選べない場合も
L字型のキッチンの場合、セラミック天板を選べなかったり、コーキングによるつなぎ目ができるなど、制限がある場合もあります。また、バックガードがつけられないこともあるので、しっかり確認しましょう。
セラミック天板が向いている人・向いていない人
「セラミック天板は、料理が好きでインテリアに強いこだわりがあり、高級感を求める方に向いています。家具のような風合いのキッチン、例えば、アイランド型でオープンにする場合、セラミックならインテリアの中にすんなりと馴染んでくれます。また天板の上をいろいろな調理スペースとして使えることも魅力の一つなので、ある程度の広さがあるカウンターのほうが、セラミックの良さを生かすことができるでしょう」
セラミック天板を選べるキッチンメーカー
セラミック天板を選べる主なキッチンメーカーを紹介します。
LIXIL(リクシル)
INAXの技術を受け継いだLIXIL。INAXは100年にわたりセラミックタイルや便器などの衛生陶器を作り続けてきました。その焼き物技術はセラミック天板に生かされていて、家具を思わせる高級シリーズ「リシェルSI」で選ぶことができます。
ただしセンターキッチン(アイランドキッチン)・ペニンシュラL型には対応しておらず、バックガードも付きません。また、対応できる奥行に制限があるレイアウトもあるので、確認が必要です。
シリーズ | 価格 |
---|---|
リシェルSI | 128.7万円~ ※壁付I型・間口2550㎜・セラミックおてごろプランの場合 |
クリナップ
クリナップではステディアとセントロでセラミック天板を選ぶことができます。クリナップで使用されているセラミックはスペイン・コセンティーノ社の「DEKTON」です。
●多彩な種類がそろう
天然石を磨き上げたような「ストニカコレクション」、天然石や木材など天然素材をモチーフにした「アースコレクション」、セラミックならではの風合いを生かした「インダストリアルコレクション」が用意されています。
●L型キッチンにも対応。オプションでバックガードも選択可
クリナップのセラミック天板はL型のキッチンにも対応しています。ただし、つなぎ目には約5㎜のコーキングが施されます。また、オプションでバックガードも設置可能です。
シリーズ | 価格 |
---|---|
セントロ | 161.3万円~ ※ I型・B-Style・基本プラン・間口2550㎜・セラミック天板の場合 |
ステディア | 142.0万円~ ※ I型・基本プラン・間口2550㎜・セラミック天板の場合 |
その他のキッチン天板
「木製」「タイル」「メラミン化粧板」などもキッチン天板として選ばれています。
木製のキッチン天板
木は水に強い塗装を施すことで、キッチン天板として活用できます。ウッドワンの「フレームキッチン」では木製の天板が用意されています。
タイルのキッチン天板
タイルは熱や水に強く、種類も豊富です。今は疎水機能と耐油機能を持つ目地が出ており、気になる目地の汚れにも対応しています。
タイルの天板にする場合はオーダーメイドになります。
ウッドワンではタイル専用の下地が用意されているので、好きなタイルを購入して、あなただけのキッチンが作れます。
メラミンのキッチン天板
メラミン化粧板は表面硬度が高くキズがつきにくく、耐薬品性も高い素材で、シンナーで拭いても大丈夫です。汚れが付きにくいので掃除がしやすいメリットがあります。
キッチン天板の選び方まとめ
技術が進み、さまざまな素材、デザインのキッチン天板が出ています。デザイン、使い勝手、価格を考えながら、ベストなキッチン天板を選んでください。
- 素材ごとの特徴をチェックする
- 素材ごとの各社の違いをチェックする
- 各社の強みの素材をチェックする
- デザインをチェックする
- 使い勝手をチェックする
- 最終的には、自分の好きな天板を選ぶ
構成/林直樹 取材・文/小林真弓
イラスト/シュクヤフミコ