耐震リフォーム(耐震補強)の費用相場は? 耐震診断や補強工事の方法、耐震基準、減税・補助金制度などを解説

地震の多い日本ですから、自宅の耐震リフォーム(耐震補強)を検討したり、間取り等のリフォームの際に、同時に耐震補強の工事をすると費用はいくらだろうと気になっている人も多いでしょう。さらに「耐震補強のリフォーム工事には補助金は出るの?」とか「うちは木造住宅だけど、工事をする前に耐震診断をしたほうがいいの?」など、気になることもたくさんあるはず。耐震リフォームや耐震補強の方法、費用など、一級建築士の佐川旭さんに教えてもらいました。

耐震補強された家

耐震リフォーム(耐震補強)は、壁を壊して作業をするため、間取り変更や断熱性向上など他のリフォームとあわせて行う人が多い(画像/PIXTA)

記事の目次

耐震リフォーム(耐震補強)が必要な家とは?

どのような家だと耐震リフォーム(耐震補強)が必要なのでしょうか。地震に強い家と弱い家の違いをみてみましょう。

「新耐震基準」「旧耐震基準」とは?

地震が多い日本では、住宅などを建築する際に、建築基準法によって建物の耐震基準が定められています。一定の強さの地震が起きても倒壊または損壊しない建物になるよう、一定の基準以上の耐性が決められているというわけです。

日本ではじめて耐震基準という言葉が建築基準法に表れたのは1924年のことです。以降、大きな地震があると度々改正され、耐震基準が引き上げられました。建築基準法の耐震基準改正の時期や内容をまとめると下記のようになります。

■建築基準法の変遷
耐震基準 法改正の年 対象の建物 耐震の考え方
旧耐震基準 1950年 1981年5月31日以前に建築確認を受けて建てられた建物 震度5程度の中地震で倒壊しない。
新耐震基準 1981年6月1日 1981年6月〜2000年5月に建築確認を受けて建てられた建物 震度6強から7程度の大規模地震で倒壊しない。
現行 2000年6月1日 2000年6月1日以降に建築確認を受けて建てられた建物 地盤調査の実質義務付け、耐力壁配置のバランス計算の義務付け。
木造住宅は専用金物の使用を義務付け。

特に大きな改正は1981年と2000年の2回あります。このうち、1981年6月1日の耐震基準を「新耐震基準」と呼び、それ以前の耐震基準は「旧耐震基準」と呼ばれています。

さらに新耐震基準は、1995年の阪神・淡路大震災を受けて2000年6月1日に改正されました。これが現在の耐震基準になります。

旧耐震基準が「震度5程度の中地震で倒壊などの被害を受けないこと」を目的にしていたのに対して、新耐震基準は「震度6強から7程度の大規模地震で倒壊・崩壊しないこと」を目的に基準が設定されています。ちなみに震度7とは気象庁が定める震度階級で最も高い震度です。

つまり新耐震基準では、数十年に一度起こるかどうかという大地震に対しても建物が倒壊・崩壊せず、建物内や周囲の人の命を守るための基準になっています。ちなみに、2011年(平成23年)の東日本大地震や2016年(平成28年)の熊本地震、2024年(令和6年)の能登半島地震ではいずれも最大震度7を記録しました。

こうしたことを背景に、国や自治体では補助金制度を設けるなどして、地震に弱い旧耐震基準の住宅の耐震工事を促しています。

最新の耐震基準とは?

現在の耐震基準は阪神・淡路大震災を受けて2000年6月1日に改正された新耐震基準になります。同震災では多くの木造住宅が倒壊したため、木造住宅の耐震性を高めるための基準が設けられているのが特徴です。

「木造住宅の場合、2000年6月1日以前に建築確認を受けている住宅は耐震診断の受診や耐震リフォーム(耐震補強)の工事を検討したほうがよいでしょう」と一級建築士の佐川旭さん。

木造住宅の中で、最も広く普及しているのは木造軸組工法と呼ばれる、日本の伝統的な工法です。在来工法とも呼ばれ、基礎に土台をのせて柱を立て、梁(はり)などの水平な材を渡して骨組みを作ります。また壁には筋交いという斜めの材を入れて補強するなどして建物を支える構造になっています。

木造軸組工法のイラスト

木造軸組工法(在来工法)は、基礎の上に土台をのせて柱を立て、梁(はり)などの水平な材を渡して骨組みを作ります(画像/PIXTA)

「また2000年の改正では、それまで義務ではなかった地盤調査が、事実上義務化されました。地盤調査して地耐力を調べないと、基礎の方式や地盤改良など建物の計画に影響がでることもあるからです(佐川さん、以下同)」。

さらに、木造軸組工法は後述するように耐力壁で構造を支えますが、この耐力壁のバランス計算と、木材同士を部位ごとに専用の金物で固定することが義務付けられました。

こうして2000年の建築基準法の改正によって、木造軸組工法の耐震性能がより向上しました。

地盤調査

地盤調査とは住宅を建てる土地の強度を調べること。軟弱な地盤に建てると、住宅が傾いて沈んでしまう危険があるため、もし地盤が軟弱だとわかれば地質改良を施す必要があります(イラスト/ふじや)

2000年以前に建てられた建物は耐震診断を

現在多くの自治体では旧耐震基準で建てられた住宅に対して、耐震診断を促したり、現行基準に合わせた補強工事に対して補助を出すなどして旧耐震基準の住宅の解消に努めています。

「注意したいのは、上記の表にもあるように『旧耐震基準で建てられた住宅』とは『1981年5月31日以前に建築確認を受けて建てられた建物』を指すことです。たとえ住宅の竣工が1981年6月1日以降であっても、建築確認を受けたのがそれ以前であれば旧耐震基準の住宅になります」。

また、2000年以前に建てられた木造住宅も耐震診断を受けて、必要に応じて耐震補強の工事を行ったほうが安心です。

最新の耐震基準(2000年改正)以後の住宅でも注意が必要

最新の耐震基準は2000年6月1日に改正された基準です。ではこれ以降に建てられた建物であれば安心でしょうか。確かに建てた後から建物の構造に何も変更がなければ問題はありませんが、下記のようなリフォームをした場合(あるいは今後リフォームを検討している場合)、耐震診断を受けたほうが安心です。

間取り変更で壁を撤去すると耐震補強が必要になる場合がある

「リフォームで増築を伴わない場合は、建築申請が必要ありません。つまり、極端にいえば耐震基準を満たしていなくても下記のリフォームを行うことは可能なのです」。

もちろんリフォームを行った施工会社が、施工後に改めて耐震診断をするなどして耐震性能に対する説明をしてくれることもよくあります。そうした耐震診断などのきちんとした説明が行われているのであれば安心です。

もし下記リフォームを行ったけれど耐震性が確保されているかどうか不安であれば、耐震診断を受けることをおすすめします。

●間取り変更で壁を撤去した
「間取り変更をする際、開放的な部屋を作るために壁を撤去するリフォームはよくあります。しかしその壁が、先述した耐震性を保つために重要な耐力壁だった場合、撤去すると耐震性を損ねてしまいます」。

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●1階の外壁が減った
「木造住宅の場合、外壁は建物を支えるために重要です。リフォームによって大きな窓やビルトインガレージなど、大きな開口部を備えたことで1階の外壁が減ると、耐震性を損なう場合があります」。

インナーガレージにリフォームしたイラスト

1階の部屋をインナーガレージにすると、壁や柱が減るのでそのままでは耐震性能が落ちてしまいます。このような場合はガレージの柱や梁に鉄骨を用いるなど、さまざまな方法で耐震性能を高める必要があります(画像/PIXTA)

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●大きな吹抜けを作った
「リビングに大きな吹抜けを作ったりして2階の床面積が減った場合も、横からの力がかかったとき、ある部分に力が集中してねじれが生じる場合があります」。

ただし、以上のようなリフォームで耐力壁を撤去しても、代わりに、別の部分を補強して耐震性を確保する方法があります。その場合、建物全体に耐力壁をバランスよく配置するなどの技術が必要ですから、そうしたノウハウや技術のあるリフォーム会社に依頼したほうがよいでしょう。

また耐力壁の石膏ボードなどは撤去して筋交いを残せば耐震性を確保できます。そのため、この筋交いをあえて見せるデザインとして残し、開放感を出すリフォーム方法もあります。

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木造軸組以外の耐震診断や耐震補強は?

木造住宅には木造軸組構法(在来構法)のほかに、2×4(ツーバイフォー)工法、プレハブ(工業化住宅)工法があります。

2×4工法は「枠組壁工法」といわれる壁式工法の1種です。本来この工法は木造軸組構法(在来構法)よりも耐震性が確保しやすいため、あまり耐震診断を行うことはないのですが、診断してもらうことはできます。

一方プレハブ工法は、それぞれの建てたメーカーでなければ設計の詳細がわかりにくいこともあり、耐震診断を行いたい場合は各メーカーに問い合わせる必要があります。

なお、マンションの場合は、耐震診断も耐震補強も1棟全体で行うので、実施するかどうかは管理組合の判断になります。

耐震リフォーム(耐震補強)する際の耐震基準

リフォームで耐震補強を行う場合、どれくらいの基準まで補強すればよいのでしょう。その目安について、見ていきましょう。

大地震でも倒壊しないほどの耐震性能に高めると安心

耐震リフォーム(耐震補強)で基準の目安となるのが上部構造評点、通称「評点」です。

これは耐震診断を行った際に、その建物が地震に対してどの程度被害を受けにくいかを示す数字で、国土交通省住宅局建築指導課の監修により日本建築防災協会が発行している「木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づいて決められています。

評点は「0.7未満」から「1.5以上」まで4段階あり、建物の構造や壁の量などさまざまな情報を専用のコンピューターソフトに入力して算出します。

それぞれの評点のレベルは次のように判定されています。

■評点とその耐震性
評点 判定
1.5以上 倒壊しない
1.0以上1.5未満 一応倒壊しない
0.7以上1.0未満 倒壊する可能性がある
0.7未満 倒壊の可能性が高い

耐震診断ではこのうちの上の2つ、すなわち評点1.0以上であれば耐震性があると判断されます。一方1.0未満の場合は、現在の耐震基準で想定している震度6強から7程度の大規模地震によって被害が生じる可能性が高いため、耐震補強の対策が必要になります。後述する減税や補助金の対象も、評点1.0以上が求められます。

つまり、耐震リフォーム(耐震補強)では評点1.0以上を目指して行うことになります。

なお、評価点が1.0未満だからといって、住み続けても罰則を受けるといったことはありません。「倒壊する可能性がある」「倒壊の可能性が高い」住宅で暮らすかどうかは、施主自らの判断になります。

ただし、当然ながら自らの命の危険があるほか、倒壊することで道路を塞いで緊急車両が通れなくなったりするなど、他人にも迷惑を及ぼしかねないことは頭に入れておきましょう。

耐震診断の方法と費用は?

耐震リフォーム(耐震補強)を行う前に、まずは耐震診断を受けましょう。

耐震診断は自治体に相談するか、リフォーム会社に依頼

耐震診断とは、地震に対する建物の強さを診断することです。リフォーム会社に依頼することもできますが、耐震補強の助成を行っている自治体の中には、認定している調査機関から建築士を派遣してくれることもあります。

耐震診断の費用は木造住宅1棟あたり約10万円〜20万円です。ただし自治体によっては旧耐震基準以前に建てられた木造住宅など、一定の条件を満たした住宅は無料で、あるいは診断料の補助をしているところがたくさんあります。まずはお住まいの自治体の補助金制度を確認してください。

なお、自治体で耐震診断の補助をする場合、診断士の資格等に条件を課していることがほとんどです。そのため自治体の補助金制度を利用して耐震診断を受けるなら、必ず最初に自治体の窓口に相談しましょう。

耐震診断

住宅の耐震性能を専門家に調べてもらうのが耐震診断です。現地での目視調査などの結果を新耐震基準に照らし合わせて、診断してもらいます(イラスト/ふじや)

耐震診断と耐震リフォーム(耐震補強)の流れ

耐震診断を受けてから、耐震リフォーム(耐震補強)を行うまでは、下記のような流れになります。

なお、自治体の補助金を受けて耐震診断や耐震リフォーム(耐震補強)を行う場合、自治体によって条件などが異なります。補助金制度の利用を検討するなら、まずは自治体のホームページなどで確認したり、自治体の窓口で相談することが第一歩になります。

1.耐震診断を依頼する
自治体等に紹介してもらった耐震診断士のほか、リフォーム会社に依頼することもできます。

ただし、自治体の補助金を受けて耐震診断をしたい場合、たいていは一定の講習などを受けた有資格者に依頼することが義務付けられていますから、事前に確認しておきましょう。

2.現地調査
耐震診断士等が現地調査を行います。診断でチェックするのは対象となる住宅の間取りや家の形状、屋外、水まわり、小屋裏(屋根裏)、床下、基礎など多岐にわたります。診断には目視と専門の調査器具を使って行われます。

3.耐震診断
現地調査や設計図書など必要な情報をもとに、耐震診断士等が耐震性能を総合的に判断します。

4. 耐震リフォーム(耐震補強)
耐震診断をもとに、リフォーム会社へ耐震リフォーム(耐震補強)を依頼します。

なお、自治体の補助金制度を使って耐震リフォーム(耐震補強)を行う場合、リフォーム会社等の工事事業者の所在地などに条件が設けられている場合があるので、事前に確認しておきましょう。

5.プラン決定、施工
プランが決まったら着工します。工期は工事内容にもよりますが、壁を壊して耐震補強を行う場合で一ヵ月半以上はみておくとよいでしょう。

耐震方法の種類、耐震・制振・免震とは?

ひと言で「耐震補強」といっても、その方法は主に「耐震」「制振」「免震」の3種類があります。どの方法にするかはリフォーム会社など専門家と相談しながら、予算も鑑みて検討しましょう。

耐震とは

耐震とは建物が倒壊しないよう、揺れに抵抗することです。木造軸組工法の住宅の場合、筋交いなどの入った耐力壁で建物をがっちり固めてスクラムを組み、さらに部材を補強金物で固定して抜けないようにして、揺れに抵抗するイメージです。

木造軸組工法の住宅で耐震リフォーム(耐震補強)を行う場合、これが最も一般的な方法です。

耐震構造のイメージ

耐震構造とは、柱や梁、主要な壁、基礎など、建物自体を頑丈にして地震の揺れに耐える構造のことです(画像/PIXTA)

制振とは

制振とは、上記「耐震」方法を取り入れた構造に、プラスアルファの装置を取り付けて、振動エネルギーそのものを吸収する方法です。

代表的な制震装置は、壁の中に設置する制振ダンパーと呼ばれるもので、装置内のゴムやオイルなどで揺れを減衰させます。

制振構造のイメージ

制振構造とは、建物の壁の中などに、地震エネルギーを吸収する装置を組み込んで、地震の揺れを制御して軽減する構造のことです(画像/PIXTA)

免震とは

免震とは、建物に伝わる地震の揺れを大幅に低減することで、倒壊や損傷を防ぐ方法です。そのために建物と基礎が直接固定されないよう、その間に免震装置を取り付け、地震が起こっても装置内で振動を吸収してくれるので、建物に伝わる揺れが大幅に低減されます。

3種類の方法の中では最も費用がかかり、大掛かりな工事になります。

免震構造のイメージ

免震構造とは、地震の揺れが直接建物に伝わらないよう、建物と土台の間に揺れを吸収する装置等を配置した構造のことです(画像/PIXTA)

耐震リフォーム(耐震補強)する箇所と最新の工事方法

耐震リフォーム(耐震補強)ではどこを工事するのか、どんな工事をするのでしょうか。コストを抑えた耐震リフォーム(耐震補強)の低コスト工法とともに紹介します。

【基礎】ひび割れ修復や強度を高める

耐震性を高めるためには、建物をのせる基礎(土台)の強度も欠かせません。特に築年数が古い住宅では基礎が弱かったり、傷んでいる場合があります。

基礎には「ベタ基礎」と「布基礎」の2種類があります。ベタ基礎は立ち上がっている部分と地面を覆う床一面を、鉄筋を入れたコンクリートで一体化して、大きな面で家の重みを支えます。

一方で布基礎は立ち上がった部分のみで建物を支える構造で、鉄筋もここだけに入っています。

「古い住宅の多くは布基礎を用いていますが、ベタ基礎が大きな面で建物を支えるのに対し、布基礎は点で支えることになるので、耐震性能ではベタ基礎より劣ります」。

かつては布基礎が主流でしたが、阪神淡路大震災以降からベタ基礎が普及しはじめ、現在はベタ基礎が主流です。

基礎部分が強度を保っていない場合は、ひび割れを樹脂で修復したり、強度のある繊維を貼付して強度を高めたりします。

「また基礎の増し打ち(抱き基礎)は、もとある基礎の外周に追加で鉄筋コンクリートを打つ補強方法もあります」。

■ベタ基礎

ベタ基礎のイラスト

ベタ基礎は建物を大きな面で支えます。コンクリート部分にすべて鉄筋が入ります(画像/PIXTA)
■布基礎

布基礎のイラスト

ベタ基礎は建物を大きな面で支えるのに対し、布基礎は点で支えます。立ち上がっているコンクリート部分に鉄筋が入ります。地面もコンクリートが覆う布基礎もありますが、その場合コンクリートの厚さはベタ基礎よりも薄く、鉄筋も入っていません(画像/PIXTA)

【土台】劣化・腐食箇所を修復・交換する

土台とは、基礎コンクリートの上に水平に固定される角材のこと。柱などから伝わる荷重を支え、基礎に伝える役割があります。

「土台がシロアリに食われたり腐食していると、本来の役割を果たせなくなるので、それらの部分を修復したり交換する必要があります」。

土台の画像

土台とはコンクリートで作られる基礎と、建物を構成する木材の柱を接続するために、基礎の上端に水平に掛け渡される部材を指します(画像/PIXTA)

【壁】筋交いや耐震用合板を用いて耐震補強する

地震の揺れだけではなく、建物にはさまざまな方向から「力」がかかります。建物そのものの重さは垂直方向にかかりますし、地震や台風の強風は横からかかります。こうした「力」に対抗して、建物を支える役割をもつのが「耐力壁」です。

耐力壁は建物の工法や構造によって違いがあります。

「木造軸組工法の耐力壁の場合、代表的なのは筋交いを使った耐力壁です。筋交いとは、柱や梁で囲まれた四角形の対角線上に、斜めに渡した補強材のこと。一本通した片筋交いや、交差するように2本通したたすき掛けと呼ばれる筋交いがあります。耐力壁の強度を高めるために接合部を専用の金具で固定することもあります」。

また筋交いではなく、構造用合板などの面材を使って耐力壁にしたり、鋼鉄の柱と梁で作られた金属製の筋交い(ブレース)をたすき掛けにする耐力壁ブレース工法などもあります。

「2×4(ツーバイフォー)工法では、角材(2インチ×4インチ)と木製パネルとで作られた面材で壁や床、天井の六面体を構成して、箱型に組み立てます。この面材が2×4(ツーバイフォー)工法の耐力壁になります」。

つまり在来工法は「点」で2×4工法は「面」で耐震を考えるのです。
仮に耐力壁の不足があれば、それぞれ工法の「点」「面」のバランスをみて補うことが耐震リフォーム(耐震補強)の基本になります。

「耐力壁は備えればいいというものではなく、建物の四隅などにバランスよく配置することで、揺れに抵抗できるようにします。先述した「2000年の建築基準法の改正」では、このバランスを取る壁の量や壁倍率などが盛り込まれました」。

筋交いの画像

筋交いとは、柱や梁で囲まれた四角形の対角線上に斜めに渡した補強材のこと。横からの力に対して建物が歪むのを防ぎます(画像/PIXTA)

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【接合部分】必要に応じて柱や梁、土台の接合部分を補強する

柱と梁、梁と梁、土台と柱といった接合部分には地震による力が集中するため、大きな負荷がかかります。

上記の耐力壁で述べたように、全体のバランスを見ながら、必要に応じてこうした接合部分には金物でしっかりと強度を確保することが大切です。クギの径や長さ間隔によって耐力壁の強度が左右されるからです。

耐震補強金具の画像

地震の揺れによって接合部分の揺れや、部材が抜けるのを防ぐために、必要に応じて耐震補強金具を備えて耐震性能を高めます(画像/PIXTA)

【屋根】葺き替えて軽量化する

「屋根が重いと、建物の重心が高い位置になります。地震の際に重心が高いと遠心力によって建物の揺れが大きくなり、建物の負荷も増えてしまいます。そこで屋根を軽い屋根材に葺き替えることで、建物の揺れを小さくするという方法があります」。

基本的には上記の、建物そのものを強くした上で行う方法です。

屋根の葺き替え

ガルバリウム鋼板など、軽量な屋根材に葺き替えることで建物の揺れを小さくして、地震による建物への影響を抑えやすくなります(画像/PIXTA)

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【劣化部分】その他劣化している部分を修復・交換する

例えばシロアリや雨漏りで腐食した柱など、本来の役割を果たせなくなっている部材があれば、必要に応じて修復、または交換することが必要になります。

低コストで耐震リフォーム(耐震補強)する方法もある

例えば耐力壁を作る場合、本来なら壁を一度取り壊して筋交い等を入れて耐力壁を作り、再び壁を直します。

しかし、壁を壊さずに、壁の上から筋交いや構造用合板、金属のブレースを入れることで、コストを抑える方法もあります。また外壁の上にそのまま金属のブレースを備える方法もあります。他には室内側の壁の一部だけ壊して金物で柱や梁を補強し、その上を覆うように構造用合板を貼り、あとは室内のクロスをすべて張り替えることで見た目を統一する、という方法もあります。

金属ブレースによる耐震補強

低コスト工法の1つ、外壁の上に金属のブレースを備える方法(イラスト/ふじや)

最近では、なかなか住宅の耐震化が進まないことを背景に、こうした低コストを紹介している自治体もあります。

デメリットとしては、見た目が通常の方法とは異なることが挙げられます。

耐震リフォームを検討してリフォーム会社に見積もりを依頼したら、思いのほか工事費用が高くて工事を躊躇するケースはよくあります。そんな時に低コスト工法を採用すると費用を抑えやすくなります。

「できれば、工事方法の異なるパターンを3つぐらいから見積もりを依頼し、それぞれのメリット・デメリットを説明してもらった上で、どの工事にするか選ぶようにするとよいでしょう」。

耐震リフォーム(耐震補強)の平均費用は旧耐震基準の住宅で約189万円

耐震リフォーム(耐震補強)を行う場合、壁を取り壊したりするので、一緒に間取り変更や断熱リフォームを行うことが多いのですが、ここでは日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)が2021年3月に発表した調査結果より、耐震リフォーム(耐震補強)のみを行った場合の費用について説明します。

(※)以下の表は日本木造住宅耐震補強事業者協同組合が2021年3月に発表した調査による。対象住宅は1950年(昭和25年)1月〜2000年(平成12年)5月までに着工された木造在来工法・2階建て以下。

耐震リフォーム(耐震補強)の平均費用は全体で約168万円

木耐協の調査結果によると、耐震補強工事の平均施工金額は167万7421円、施工金額の中央値は140万円でした。

■全体の耐震補強工事の費用(※)
耐震補強工事の平均施工金額 167万7421円
耐震補強工事の施工金額中央値 140万円

同時に、耐震診断の結果も公表していますが、評点0.7〜1.0未満の「倒壊する可能性がある」の割合は16.9%、評点0.7未満の「倒壊する可能性が高い」は74.6%でした。つまり、91.5%の住宅が、現行の耐震性を満たしていないという状況が見えてきました。

■全体の耐震診断結果(※)
判定/評点 割合
倒壊しない/1.5以上 1.3%
一応倒壊しない/1.0〜1.5未満 7.2%
倒壊する可能性がある/0.7〜1.0未満 16.9%
倒壊する可能性が高い/0.7未満 74.6%
評点1.0未満 91.5%

倒壊可能性がある旧耐震基準の住宅は約92%

旧耐震基準の住宅に絞ると、耐震補強工事の平均施工金額は189万2208円。また評点1.0未満の、現行の耐震性を満たしていない割合は97.4%に高まります。やはり工事費用は旧耐震基準の住宅のほうがかかりやすいことがうかがえます。

なお、同調査での「旧耐震基準の住宅」とは、明確な建築時期の確認が困難なケースもあるため「1980年以前に建てられた住宅」としています。

■旧耐震基準住宅(1950年〜1980年築)の耐震補強工事の費用と(※)
耐震補強工事の平均施工金額 189万2208円
耐震補強工事の施工金額中央値 160万円
■旧耐震基準住宅(1950年〜1980年築)の耐震診断結果(※)
判定/評点 割合
倒壊しない/1.5以上 0.2%
一応倒壊しない/1.0〜1.5未満 2.5%
倒壊する可能性がある/0.7〜1.0未満 12.0%
倒壊する可能性が高い/0.7未満 85.4%
評点1.0未満 97.4%

耐震リフォーム(耐震補強)は新耐震基準の住宅でも必要

1981年〜2000年5月までに建てられた新耐震基準の住宅では、耐震補強工事の平均施工金額は152万3430円、現行の耐震性を満たしていない割合は85.9%になります。確かに旧耐震基準の住宅と比べて現行の耐震基準に達していない割合は減りますが、それでも85%超あります。やはり、2000年6月の改正以前に建てられた住宅は、耐震診断を受けたほうがよいでしょう。

なお木耐協でも、旧耐震建築物の木造住宅と、2000年5月までに着工された在来軸組木造住宅を「81-00木造住宅」として、耐震診断の受診や耐震リフォーム(耐震補強)を積極的に推奨しています。

■新耐震基準住宅(1981年〜2000年5月築)の耐震補強工事の費用と(※)
耐震補強工事の平均施工金額 152万3430円
耐震補強工事の施工金額中央値 125万円
■新耐震基準住宅(1981年〜2000年5月築)の耐震診断結果(※)
判定/評点 割合
倒壊しない/1.5以上 2.4%
一応倒壊しない/1.0〜1.5未満 11.7%
倒壊する可能性がある/0.7〜1.0未満 21.6%
倒壊する可能性が高い/0.7未満 64.3%
評点1.0未満 85.9%

大規模リフォーム時にあわせて耐震補強を行うケースが多い

耐震リフォーム(耐震補強)は耐力壁の追加工事が中心となります。そのためには壁をはがして筋交いなどを入れた後、もう一度内壁を仕上げるという工事が必要です。

必要な箇所の壁のみを補強することもできますが、どうせ壁をはがすなら、同時に断熱性能の向上や間取り変更も併せた、大規模リフォームを行う選択肢もあります。実際、SUUMOの施工事例では、耐震(耐震補強)性能と断熱性能の向上、間取り変更を同時に行うケースが多く見受けられます。

なお大規模リフォームの工事費は、1500万円〜3000万円(延床面積100〜120㎡の場合)程度が目安となります。

耐震補強を目的としたリフォーム費用・価格相場情報

耐震リフォーム(耐震補強)の注意点

耐震リフォーム(耐震補強)を検討する際に、あらかじめ知っておきたい注意点があります。確認しておきましょう。

ひと部屋だけ耐震補強するのは難しい

これまでに耐力壁のバランスについて幾度か述べたように、耐震リフォーム(耐震補強)で大切なのは、住宅全体にかかる力をバランスよく受け止めることにあります。そのため「地震の時に逃げ込めるよう、ひと部屋だけ耐震リフォームの工事をしたい」といっても難しいのです。

予算を抑える方法は何も工事箇所を絞ることだけではありません。まずは耐震診断を行ってもらい、どこが自分の家の弱いところなのかを把握し、それに対してどのような工事が必要かをリフォーム会社とともに検討するようにしましょう。

耐震リフォーム(耐震補強)が見た目や間取りに影響する場合もある

耐震リフォーム(耐震補強)では柱や梁、壁の追加や補強を施すことがあります。また、低コスト工法で紹介したように、壁の上から金属のブレースなど筋交いを入れる方法もあります。さらに、場合によっては窓などの開口部を狭くするので、採光性も変わることもあります。このように耐震リフォーム(耐震補強)が見た目や間取りに影響する場合があるのです。

ただし、追加する壁の一部にガラスブロックを用いた耐力壁にして採光性を確保したり、筋交いをあえて見せるデザイン手法など、他の方法を採れる場合もあります。リフォーム会社と相談しながら、どのような方法にするか、検討するようにしましょう。

場合によっては仮住まいが必要なケースもある

耐震リフォーム(耐震補強)は、補強する必要のある部位にもよりますが、仮住まいが必要になることがあります。その場合、工事費用とは別に仮住まいの費用が必要になります。耐震リフォーム(耐震補強)の見積もりを依頼する際は、仮住まいが必要になるかどうかも確認しましょう。

耐震リフォーム(耐震補強)を依頼する工事業者の選び方

まず、自治体の補助金制度を使って耐震リフォーム(耐震補強)を行う場合は、リフォーム会社などの工事事業者の所在地などに条件が設けられている場合があります。そのため事前に補助金の条件等を確認するようにしましょう。

その上で工事の依頼先を選ぶ際は、耐震リフォーム(耐震補強)の施工例が豊富であるなど、経験豊富なリフォーム会社のほうが安心です。施工実績はその会社のホームページなどで確認できます。

さらに、複数のプランを提案してくれるリフォーム会社を選ぶようにしましょう。なぜなら、低コスト工法で紹介したように、耐震リフォーム(耐震補強)の工事方法にはいくつかの方法があり、それによって見た目や予算が異なるからです。

耐震診断によってわかった自宅の弱点をどのように改善すればよいか、いくつか方法を提案してもらうことで、見た目の好みや予算に応じた耐震リフォーム(耐震補強)を行いやすくなります。

また、高齢であるなど、この先いつまで暮らすかわからない家に、あまりお金をかけたくないという人もいるでしょう。確かに耐震リフォーム(耐震補強)をしないからといって、別に罰則があるわけではありません。極端な話、工事をせずに万が一地震に遭っても、すべては自己責任になります。

「そんな時は、たとえ評価点1.0以上(一応倒壊しない)には届かないとしても、こちらの懐事情を鑑みて低予算のプランも提案してくれ、なおかつ『このプランなら地震が来た場合、浴室やトイレに逃げ込んだほうが安心です』など、緊急時の対応まで説明してくれるようなリフォーム会社なら、無理のない範囲で命を守れる可能性が高まるといえるかもしれません」。

耐震リフォーム(耐震補強)の施工事例

基本的に耐震リフォーム(耐震補強)は耐力壁の追加工事が中心となります。そのためたいていは壁をはがして筋交いなどを入れた後、もう一度内壁を仕上げるという工事が必要です。

どうせ壁を剥がすなら、同時に断熱性能の向上や間取り変更も併せた、大規模リフォームを行う選択肢もあります。実際、SUUMOの施工事例では、耐震(耐震補強)性能と断熱性能の向上、間取り変更を同時に行うケースが多く見受けられます。

下記では、そうした耐震リフォーム(耐震補強)に加えて暮らしやすい間取りや仕様に変更したリフォーム事例を紹介します。

なお大規模リフォームの工事費は、1500万円〜3000万円(延床面積100〜120㎡の場合)程度が目安となります。

【1800万円以下】難しい耐震工事を請け負ってくれる会社を見つけ、安心の住まいを実現

施主がリフォームを検討したのは、15年前に中古で購入した築33年の一戸建て。家族のライフスタイルの変化に合わせて暮らしやすい間取りにしようと考えたのです。

しかし、建物の一部が傾いているため、耐震工事が技術的に難しいといくつかの施工会社に断られました。しかしようやく請け負ってくれる会社を発見し、依頼することができました。

傾いていた部分は減築して建物全体に耐震補強を施し、地震にも安心して暮らせる住まいに。一方で減築部分は庭とテラス、バルコニーに生まれ変わりました。

さらに1階にあったリビングダイニングとキッチンは2階へと移動。玄関や水まわり、階段なども動かす大規模な間取り変更によって、無駄なくすっきり暮らせる住まいへと一新されました。

減築によって床面積は狭くなったのですが、間取り変更によって動線が整理され、開放感も生まれるなど暮らしやすさが増した住まい。施主は家が以前より広く感じられるそうです。

築33年一戸建てを購入して耐震リフォーム

2つの居室があった2階部分をリビングダイニングに。天井を上げ、間仕切りも取り払われましたが、構造上重要な柱や梁を現しにして、床などと同じ木の風合いを活かした色あいにすることで、開放感とぬくもりのある空間に仕上げられました(画像提供/リフォーム工房)

【DATA】
リフォーム費用:1567万円
リフォーム部位:LD、キッチン、洋室、子ども部屋、浴室、洗面所、トイレ、階段、収納、玄関、外壁・屋根、バルコニー他
住宅種別:一戸建て
築年数:33年
設計・施工:リフォーム工房

【1800万円以下】築35年の中古戸建を購入して耐震リフォーム

「昭和レトロな雰囲気を実現したい」という施主はリフォーム前提で中古一戸建てを探すことに。リフォーム会社と一緒に見つけたのが築35年の一戸建てです。

建物自体は一見しっかりしているものの、やはり耐震補強をしっかりと行う必要がありました。また耐震上抜けない柱や、天井に納まらない梁はそのまま活かしただけでなく、無垢(むく)材を張るなどして、従来の空間と違和感のないように仕上げられました。

さらに、昔ながらの太めの木製格子も残すなどして、費用を抑えながら施主の希望する「昭和レトロな雰囲気」へとリフォームされました。

またキッチンは当初、壁付けキッチンの背後にコンロ等加熱調理機器を分けて設置するII型キッチンを検討しましたが、耐震上抜けない壁があったためプランを変更。壁付キッチンは新しいものに変えるとともに、背後には壁を活かしてパントリーとして活用することに。

このように耐震性能を高めつつ理想の住まいへとリフォームすることができた施主。制約があることで逆にアイデアが膨らんで楽しかったそうです。

昭和レトロの雰囲気を残した耐震リフォーム

カーテンレールや巾木の色など既存の住まいの色をベースに、「昭和レトロ」の雰囲気を演出。日本家屋の趣を追求しつつも、暗くなりすぎないように白い壁を基調とした(画像提供/東京ガスリノベーション)

【DATA】
リフォーム費用:1579万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、和室、浴室・バス、洗面室、トイレ、収納、玄関、外壁・屋根、他
住宅種別:一戸建て
築年数:35年
設計・施工:東京ガスリノベーション

【2100万円以下】築92年の実家を二世帯住宅へとリノベーション

大正12年に建てられたという、愛着のある実家。施主は二世帯住宅に改修しようと、まずはリフォーム会社に徹底的な調査をしてもらうことにしました。その結果、築92年の実家は、基礎の一部がなかったほか、たび重なるリフォームにより構造も弱体化していることがわかりました。

そこで、まずは新しい基礎が作られました。さらに梁や柱が追加され、連結金物による補強、躯体(くたい)全体を構造用合板で覆うなど大がかりな補強によって、強固な構造躯体へと改修されました。

調査の最中、以前のリフォームで備えられた天井や壁の化粧をはがして現れたのは、大正時代に完成した無垢材の天井や柱でした。中でも天井は、施主の祖父が切り出した松材が使われていて、囲炉裏の煙にいぶされた名残で黒くなっています。そんな古きよきものを大切にしながら、現代のデザインが加味された快適な住まいに刷新されました。

築92年一戸建ての耐震リフォーム

元は個室だった空間を、間仕切り壁を撤去して対面式のキッチンに。キッチンの前に柱がなくても構造上問題がないように、正面に見える太い梁が補強のために入れられた(画像提供/優建築工房)

【DATA】
リフォーム費用:2069万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、和室、廊下、階段、寝室、キッチン、洗面所、バルコニー・エクステリア、その他
住宅種別:一戸建て
築年数:92年
設計・施工:優建築工房

【2100万円以下】細かく仕切られた一戸建てを、開放感のある広々とした間取りに

母屋と離れのある築30年の一戸建て。細かく仕切られた間取りで、段差も多く、ライフスタイルに合わなくなったため、施主はリフォームで問題点を解消することにしました。

従来の洋室と和室、キッチン、廊下に分かれていたスペースは、大きなLDKに生まれ変わるなど、広々とした開放的な間取りに。そのために間仕切り壁は撤去されましたが、その補強対策は、なるべく室内に邪魔な柱や壁が出てこないように綿密な計画が行われました。

一方で、どうしても外せない柱と筋交いは、あえて画像のような現しにしてデザインポイントとして活用。全面床暖房や複層サッシ、断熱材も入れ直し、快適な性能も追求されました。こうして、友人たちが集まって楽しめる、明るく開放的なLDKのある住まいへ生まれ変わりました。

柱と筋交いを現しにした耐震リフォーム

リビングダイニング部分には、構造上どうしても抜けない柱と壁があったが、柱と筋交いを現しにして、明るく開放的なLDKのデザインポイントとして活用された(画像提供/東京ガスリノベーション)

【DATA】
リフォーム費用:2030万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洗面所、トイレ、洋室、玄関、その他
住宅種別:一戸建て
築年数:30年
設計・施工:東京ガスリノベーション

【2100万円以上】子どもの独立を機に夫婦で暮らしやすい住まいへとフルリフォーム

築32年の一戸建て。子どもが独立し、定年後の夫婦2人の生活を考えた施主は、1階中心の暮らしができるように間取りを一新したいと考えました。

これからの暮らしはダイニングテーブルと椅子を中心としたいという施主の要望に合わせ、従来吹抜けのあったリビングは、吹抜けのあるダイニングキッチンへと変更。それにあわせて従来のダイニングキッチンは主寝室と浴室等の水まわりに。寝室を2階に移し、玄関周りに光を届けるために階段の向きも変えました。

これだけの大がかりな間取り変更が行われましたが、綿密な計画により、耐震対策は老朽化に伴うものと、玄関周りに耐震バランスを考えた耐力壁を設けたくらい。空間に柱や筋交いが残るということはありませんでした。

間取り変更と耐震リフォーム

吹抜けの2階部分に障子が設けられ、夏は障子を開けて、新設されたロフト脇の高窓を開けると涼しい風が吹き抜ける。一方、冬は障子を閉めれば暖房効率が高められ、暖房費は以前の1/2程度に抑えられているという(画像提供/優建築工房)

【DATA】
リフォーム費用:2440万円
リフォーム部位:リビング・ダイニング、階段、廊下、書斎、洋室、トイレ、その他
住宅種別:一戸建て
築年数:32年
設計・施工:優建築工房

耐震リフォーム(耐震補強)に使えるリフォームローンとは

大規模リフォームと同時に耐震補強工事を行うのであれば、リフォームローンを検討してみましょう。

銀行など金融機関が用意しているリフォームローンの他に、住宅金融支援機構の「リフォーム融資(耐震改修工事)」を利用する方法もあります。同機構が定めた一定の条件に沿う必要がありますが、金利は他の金融機関より抑えられているのが魅力の1つです。

また満60歳以上なら、通常の返済方法と比べて月々の負担額を抑えられる「高齢者向け返済特例」を利用することもできます。

リフォーム会社によっては提携しているローンを紹介してくれる場合もあるなど、たいていはローンに関する相談に乗ってくれるので、一度相談してみましょう。

耐震リフォーム(耐震補強)の工事に減税・補助金制度を利用する

現在、国は「令和12年(2030年)までに耐震性が不十分な住宅、令和7年(2025年)までに耐震性が不十分な耐震診断義務付け対象建築物(大規模建築物が対象)をおおむね解消する」ことを目標に掲げています。

そのため国は耐震リフォーム(耐震補強)に対する節税制度がいくつか用意していますし、助成してくれる自治体もたくさんあります。利用できる制度を調べて、上手に活用しましょう。

自治体の耐震リフォーム(耐震補強)補助金制度

多くの自治体では、耐震診断や耐震リフォーム(耐震補強)の費用に対して補助金制度を設けています。

たいていは1981年の新耐震基準施行以前に建てられた木造軸組工法の住宅を、現行基準に合わせて補強する工事に対して補助を出すというものですが、対象となる住宅や、工事に関する細かな条件など自治体によって異なります。

まずはお住まいの自治体のホームページなどで、補助金制度があるか、その内容はどんなものなのか、事前に確認しておくとよいでしょう。

耐震リフォーム(耐震補強)で所得税が控除される

耐震リフォーム(耐震補強)は税金面でもメリットがあります。

一定の要件を満たす耐震リフォーム(耐震補強)を行うと、所得税が最大25万円、同時に増改築を行うと合わせて最大62.5万円控除されます。

控除を受けるための主な要件は以下の通りです。

家屋の主な要件
  • 耐震補強を行ったのが自ら居住する住宅であること(賃貸住宅は除く)
  • 1981年5月31日以前に建築された住宅であること(改修工事前は現行の耐震基準に適合しないこと)
改修工事の主な要件 現行の耐震基準に適合させるための耐震改修であること
手続き 必要書類を添えて所轄税務署に確定申告を行う
この制度の期限は2025年12月31日です。詳しくは所轄税務署に確認しましょう。

耐震リフォーム(耐震補強)で固定資産税が減額される

耐震リフォーム(耐震補強)を行うと、固定資産税が2分の1に減額されます。上記の所得税の控除と合わせて使うことができます。

減額されるのは工事を行った年の翌年分だけで、家屋の120㎡相当分までが2分の1に減額されます。

減額が適用される主な要件は以下の通りです。

家屋の主な要件 1982年1月1日以前から存在する住宅であること
改修工事の主な要件 現行の耐震基準に適合させるための耐震改修であること
工事費の要件 50万円超であること
手続き 工事完了後3カ月以内に必要書類を添えて、物件所在地の市区町村に申告
この制度の期限は2026年3月31日(工事完了)です。詳しくは各市区町村に確認しましょう。

長期優良住宅化リフォーム推進事業による補助金制度を利用する

耐震リフォーム(耐震補強)で耐震性を高めるなら、同時に省エネ性能を一定基準まで高めて、建物の劣化対策を施せば、長期優良化住宅リフォーム推進事業による補助金80万円〜210万円を受け取ることもできます。

耐震リフォーム(耐震補強)に合わせて大規模なリフォームを検討しているなら、長期優良化住宅リフォーム推進事業による補助金制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

長期優良住宅化リフォーム推進事業とは

長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、既存の住宅を、長期間にわたって高い性能を維持する住宅にリフォームすることを推進する国の事業。良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備等を図るのが目的です。

いくつかの性能基準の必須項目の1つに耐震性があり、ここでは耐震診断基準の評点1.0以上や、現行の新耐震基準に適合することなどが求められています。

補助額は最大210万円/戸

補助金の額は対象となるリフォーム工事費用の1/3。ただし補助限度額があり、その金額はリフォーム後の住宅性能や施主の属性に応じて、下記のように異なります。

■長期優良化住宅リフォーム推進事業の補助額
  リフォーム後の住宅性能 補助額
認定長期有料住宅型 長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合 160万円/戸
(210万円/戸)
評価基準型 長期優良住宅(増改築)認定を取得しないもの、一定の性能向上が認められる場合 80万円/戸
(130万円/戸)
()内は、三世代同居対応改修工事を実施する場合や、若者・子育て世帯または既存住宅の購入者が改修工事を実施する場合の補助額。

「認定長期有料住宅型」とは、国が定めた「長期優良住宅(増改築)」の基準に達した住宅のこと。また「評価基準型」とは、認定基準に達していないものの、劣化対策・耐震性・諸エネルギー対策について評価基準に適合する住宅となります。

例えば三世帯で同居する住宅にリフォームする際、「長期優良住宅(増改築)」の基準に達した住宅にすれば最大210万円まで、認定基準に達していないものの、一定の評価基準をクリアしていれば最大130万円まで補助金を受け取ることができます。

なお、同事業では災害時の電力確保や水の確保などを評価項目とした「防災性レジリエンス性」の向上改修工事についても補助金が受け取れますが、その補助上限額が15万円/戸となります。

長期優良化住宅リフォーム推進事業の対象になる工事

長期優良化住宅リフォーム推進事業の補助金を受けるためには、下記の要件に適合することが求められます。

1.リフォーム工事前にインスペクション(建物の現状調査)を行うこと
2.リフォーム工事後に次の性能基準を満たすこと

【必須項目】
A:構造躯体などの劣化対策
B:耐震性
C:省エネルギー対策
※他に一定規模以上の住戸面積を有することが補助金の対象となる
【任意項目】
D:維持管理・更新の容易性の基準

長期優良化住宅リフォーム推進事業の対象工事

A「構造躯体の劣化対策」とは柱や床などの腐朽や蟻害の抑制。B「耐震性」とは大地震でも倒壊しないよう耐震性を確保すること。C「省エネルギー対策」とは窓や壁、床、天井などの断熱化、給湯器などの高効率化。D:「維持管理・更新」とは給排水管を点検・清掃・交換をしやすくすること(イラスト/ふじや)

3.リフォーム履歴と維持保全計画を作成すること

また、必須項目以外の住宅の性能向上につながる工事、例えばバリアフリーの改修工事や、インスペクションで指摘を受けた箇所の補修工事も補助の対象です。

そのほかに三世代同居に対応するためキッチンやトイレを増設したり、若者・子育て世帯が子どもの住宅内の事故防止のために行う工事も対象です。

なお、補助を受けるには、同事業の事業者登録を行ったリフォーム会社など事業者との工事請負契約が必要です。同事業の補助金制度の利用を検討する場合、同事業の事業者登録が済んでいるか、あるいは登録する予定があるか確認するとともに、同事業について詳しいリフォーム会社に依頼するとよいでしょう。

【最新版】リフォームで使える補助金と減税制度。対象のリフォーム・リノベーション、補助金額や申請方法・期限は?

まとめ

地震の多い日本ですから、家の耐震性能は重要です。見てきたように、2000年以前に建てられた家は現在の耐震基準を満たしていない可能性がありますから、安心のためにも耐震診断を受けることをおすすめします。自治体の補助金制度などを利用できる場合が多いですから、まずはお住まいの自治体のホームページなどで確認してみましょう。

多くの場合、耐震リフォーム(耐震補強)では壁をはがして筋交いなどを入れた後、もう一度内壁を仕上げるという工事が必要になります。どうせ壁をはがすなら、同時に断熱性能の向上や間取り変更も併せた、大規模リフォームを検討してみてはいかがでしょうか。

また、低コスト工法など、予算に合わせた耐震リフォーム(耐震補強)も可能です。工事方法にはいくつか方法があり、それによって見た目や予算が異なります。リフォーム会社からプランを提案してもらう際、予算別に2〜3案提案してもらうとよいでしょう。

4号特例縮小でリフォームも建築確認申請が一部必要に。2025年4月の建築基準法改正を解説 

監修/一級建築士 佐川旭(佐川旭建築研究所)
構成・取材・文/籠島康弘

取材協力・監修/佐川旭さん
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がけている
執筆・取材/籠島 康弘
雑誌「カーセンサー」編集部を経てフリーライターに。中古車からカーシェアリング、電気自動車までクルマにまつわる諸々の記事執筆を手がける。最近は住宅雑誌の記事も執筆していて、自分が何屋なのかますます分からなくなってきた。