キッチン/台所のシンク(流し台)交換リフォーム、費用や選び方、注意点は?

キッチン(台所)のシンクはいつも清潔に保っておきたいところ。しかし、どんなに丁寧に掃除をしていても、長く使い込んだシンクは汚れや傷が少しずつ増えていきます。そこでシンク部分だけでも交換できないかと思う人もいるようですが、果たしてそんなことが可能なのでしょうか? リフォーム会社の優建築工房の大坂崇徳さんに教えてもらいました。

キッチンシンク/台所のシンク(流し台)

シンクのキズが増えたり、汚れが落ちないなら、そろそろシンクやキッチンの交換を検討したい(写真提供/優建築工房)

記事の目次

キッチン/台所のシンク(流し台)とは?

シンクとは、キッチン(台所)に備え付けられた水槽のこと。排水口が備わっていて、食材や食器などを水洗いしたり、調理に使ったお湯などを捨てたりする際に使います。日本語では「流し台」と呼ばれることもあります。

最近のメーカー製のシステムキッチンのシンクは、天板(ワークトップ)とシンクとの隙間に水が入ったり汚れがたまらないようにシームレスに仕上げられていたり、あえて大型にして一部にプレートなどを設置することで調理時の作業スペースに使えるようにできていたり、汚れが排水口へ流れやすいような形状をしているなど、使い勝手が格段に向上しています。

シンク(流し台)を交換できるキッチン・台所の条件

では、これまで使っていたキッチンの、シンク部分のみを交換することはできるのでしょうか? 結論からいえば「シンクを交換できるキッチンは、もともと天板(ワークトップ)とシンクを組み合わせて作られたキッチンです」とリフォーム会社の優建築工房の大坂崇徳さん。

「昔はステンレス製や人造大理石の天板(ワークトップ)に、ステンレス製のシンクを取り付け金具で締め付けて固定したキッチンが結構ありました。しかし締め付け部分がよく緩んで水が漏れたり、例えば熱いお湯を流してしまってシンクが変形したことで天板(ワークトップ)との接合部にゆがみができてしまい、そこから水が漏れたりすることもありました。また隙間を埋めていた部材が劣化すると、そこから水漏れしてしまいます」

こうした不具合を解消するため、近年のメーカー製のシステムキッチンは、天板(ワークトップ)とステンレスのシンクを溶着させたり、天板(ワークトップ)とシンクがともにステンレスか人工(人造)大理石製なら一体成形するなど進化。「ですから最新の、天板(ワークトップ)とシンクが一体化したシステムキッチンでは、シンクだけ交換というのは不可能です」

一方でキッチンメーカーではなく、施工会社が造作したキッチンの場合、天板(ワークトップ)とシンクを組み合わせて作られることがよくあります。ただし造作キッチンでも、最近はステンレス製や人工(人造)大理石製の天板(ワークトップ)とシンクなら、一体成形で作ることも増えてきています。

つまり、シンクのみ交換する場合(1)天板(ワークトップ)とシンクが一体化する以前のメーカー製のキッチンか(2)天板(ワークトップ)とシンクを組み合わせて作られた造作キッチンであることが、まず条件になります。

また(1)の場合でも、古いキッチンですから、メーカーが取り付け部材等を既に用意していないケースでは、交換することが難しくなります。

シンク(流し台)のタイプ

では、シンクを交換できるキッチンの場合、どのようなシンクに交換できるのでしょうか。

そもそもシンクは、天板(ワークトップ)に設置する方法で「オーバーシンク」「アンダーシンク」の2種類に分けることができます。シンクを交換する場合、この2種類の設置方法のどちらかを選ぶことになります。それぞれの特徴について説明します。

オーバーシンク

オーバーシンク

天板(ワークトップ)にフチが乗る形になるオーバーシンク(写真提供/優建築工房)

オーバーシンクとは、天板(ワークトップ)に開けた穴に、上からシンクを落とし込んでシンクのフチを天板(ワークトップ)に引っかけるようにするタイプのシンクのことです。

メリットとしては、シンクの見た目の存在感が増すことです。例えば木製の天板に白いホーロー製のシンクを備えると、シンクの美しさが際立ちます。

デメリットとしては天板(ワークトップ)よりシンクのフチが高く、その端にまな板を置いて作業することが難しいため、調理スペースが限られてしまいます。また下記のアンダーシンクより水漏れの心配は減りますが、それでも天板(ワークトップ)との隙間を埋める部材が劣化してしまうと、そこから水が漏れてしまいます。

アンダーシンク

アンダーシンク

天板(ワークトップ)に下から取り付けられる形がアンダーシンク(写真提供/優建築工房)

アンダーシンクとは、天板(ワークトップ)に開けた穴にシンクを下からはめ込み、シンクのフチを下から金具等でとめて設置するタイプです。

メリットとしては、天板(ワークトップ)をフラットにできるので、スッキリとしたデザインのキッチンになることです。またシンクにまな板がかかっても調理がしやすいため、オーバーシンクと比べて、調理スペースを広げやすくなります。

デメリットとしては、取り付け部が緩んだり、隙間の部材等が劣化してしまうとそこから水が漏れやすくなることです。

シンクの主な材料とその特徴

シンクは主に以下のような材料で作られています。材料によってそれぞれメリットとデメリットがありますから、それらをよく理解した上でシンクを選ぶようにしましょう。

ステンレスのシンク

ステンレスとは、鉄にさびにくい素材を組み合わせて作った合金です。ちなみにステンレス(stainless)という言葉は、「stain(変色)+less(少ない)」が由来です。

ステンレスのシンクのメリットとしては、まず耐久性や耐熱性が高いことが挙げられます。またサビにも強くて汚れが染み込みにくく、その名の通り変色もしにくいため、お手入れが簡単です。

一方、デメリットとしては細かい傷が付きやすく、長年使い続けていくと当初の光沢が失われます。

人工(人造)大理石のシンク

人工(人造)大理石とは、大理石の風合いと、加工のしやすさを兼ね備えた樹脂系の素材です。メーカーによって素材のレシピが異なり、名称も「人工大理石」または「人造大理石」が使われていますが、ここでは同じ素材として説明します。

人工(人造)大理石のシンクのメリットとしては、柔らかいので食器を落としても割れにくいこと、色や模様のバリエーションが豊富なことが挙げられます。

一方、かつてはデメリットとして熱に弱いことが挙げられていましたが、最近は耐熱性が進化し、熱い鍋なども直接置くことができます。

ホーローのシンク

ホーローとは鉄などの金属の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を焼き付けた素材です。

メリットとしては、耐久性や耐熱性が高いことがまず挙げられます。また臭い移りがしないため、キッチンを清潔に保ちやすくなります。

一方、デメリットとしては衝撃に弱いため、ガラス質の釉薬が割れて剥がれるとサビが発生することがあります。

陶器のシンク

キッチンよりも洗面台に用いられることが多いですが、陶器製のシンクもあります。中でも理科室にあったような、大きくて深さもあるシンプルな長方形のシンクが人気です。

メリットとしてはキズが付きにくく、お手入れが簡単なことが挙げられます。また光沢があり高級感もあります。

デメリットとしては強い衝撃に弱く、物を落とすと割れることがあります。

シンクのサイズ選びの注意点

シンクの交換を考えているなら、まず気をつけたいのはサイズです。既存の天板(ワークトップ)にはもうシンクを備えるための穴があるわけですから、その穴にピタリとはまるサイズを選ぶようにしましょう。

そのためには今使っているシンクのサイズを正確に測ることが大切です。間口や奥行き、さらに排水口とつなげるためにも排水口の位置やシンクの深さも忘れないようにしましょう。

シンクを選ぶ際のポイントは?

シンクを選ぶ際は、サイズ以外にも、下記の点に注意して選ぶようにしましょう。

耐久性

シンクには水や熱湯、洗剤が流れることになります。そのため、まずは耐久性に優れている素材を使ったシンクが良いでしょう。

上記で説明したように、ステンレスや人工(人造)大理石、ホーローはいずれも耐久性・耐熱性があり、中でもステンレスは熱や衝撃に強い素材です。昔からキッチンに使われていたのは、こうした高い耐久性があるためです。

清掃性

使うほどに汚れてしまうのがシンクですから、日頃の掃除は欠かせませんが、その掃除が簡単であるほど、使いやすいシンクと言えるでしょう。

基本的にステンレス、人工(人造)大理石、ホーローはいずれも汚れにくいという特徴があります。

ただし、ステンレスは清掃をはじめ日々使っているとどうしても細かなキズが付いてしまいます。また人工(人造)大理石は樹脂が多く含まれていますので、清掃方法を間違えるとキズが付いたり変色することがあります。

ちなみにメーカー製のシステムキッチンは、独自のコーティング技術でシンクを保護したり、清掃方法を紹介したりしています。

また、ゴミが自然に流れる形状を採用し、汚れにくいシンクを備えたシステムキッチンもあります。清掃性の高さを求めるなら、シンクの交換ではなく、最新のシステムキッチンへの交換も考えてみましょう。

機能性

限られたスペースで段取りよく調理をするなら、やはり機能性は重要です。その点、オーバーシンクの場合、どうしてもシンクと天板(ワークトップ)の段差ができてしまうため、アンダーシンクと比べてまな板を置くスペースが限られてしまいます。機能性を優先したいならアンダーシンクがおすすめです。

なお、最近はシンクの上で調理の下準備をすることで、調理がはかどる点が注目されて、メーカー製のシステムキッチンでは「調理のできるシンク」が人気になっています。シンク内に段差を設けて、そこにまな板や調理用プレートなどを引っかけて置くことで、シンク内で調理ができるようにしています。

残念ながら既存のシンクを交換したり、シンクを組み合わせて造作キッチンを作る場合、システムキッチンほどの機能を備えたシンクは選べません。

天板(ワークトップ)との相性

シンクを選ぶ際に、天板(ワークトップ)のデザインや素材も考慮したほうがいいでしょう。例えばステンレスの天板(ワークトップ)なら、シンクもステンレス製にするとスッキリしたデザインのキッチンにできます。

また木製の天板(ワークトップ)の場合、ステンレス製シンクならモダンに、ホーロー製なら少し温かみのある雰囲気にしやすくなります。このように、天板(ワークトップ)との組み合わせを考えてシンクを選ぶと、この先も愛着の持てるキッチンを作ることができます。

なお、タイルを張った天板(ワークトップ)も人気ですが、その場合アンダーシンクは難しいため、基本的にはオーバーシンクになりますから注意しましょう。

デザイン

天板(ワークトップ)との相性だけでなく、キッチンの周囲とのデザインの調和も考えると、さらにキッチンの前に立つことが楽しめるでしょう。

また、キッチンをリビングダイニングに向けたオープンなキッチンにするのか、あるいはオープンでもリビングダイニング側に天板(ワークトップ)より高いカウンターを設けて、手元を隠すのかによっても、シンクの選び方は変わるはず。

見せるキッチンなら天板(ワークトップ)との相性や、リビングダイニングの家具類との調和も含めて、シンクのカラーなどデザイン性も重要になります。

価格

シンクの価格は、メーカーやデザイン性、大きさ等で変わりますが、一般的にステンレス製のほうが安価です。手頃な価格のシンクに交換したいならステンレス製を中心に探してみましょう。

キッチン/台所のシンク(流し台)の交換リフォームの費用相場

シンクを交換、または造作キッチンのシンクを選んで取り付ける場合、シンク自体の価格は、幅100cm以内のステンレス製なら3万~5万円程度で購入できます。これに取り付ける施工費が5万円前後必要になります。

ただし、これはあくまで「スムーズに施工できた場合」です。というのは、シンクの交換リフォームで最も重要なのが、取り付けた後に水漏れをしないことだからです。一見「取り付けたら水漏れはしないのが当たり前では!?」と思うかもしれませんが、既存のキッチンのシンク交換は、細心の注意が必要なのです。

「シンクが古くなって交換するのであれば、当然既存の天板(ワークトップ)も劣化してゆがんでいる可能性があります。その状態で新しいシンクを取り付けても隙間ができやすく、そこから水漏れしてしまいます」と大坂さん。

そのほかにも、シンクに付属している部品が既存の天板(ワークトップ)に合わなかったり、そもそもシンクに付属部品が備わっていなかったり、あるいは既存と同じシンクをインターネットで見つけて交換しようとしても、取り付け部材が廃番になっているケースも。

特に輸入品のシンクは注意が必要です。取り付け部品が独特なのに取り扱い説明書がなかったり、輸入業者に問い合わせても知らなかったり、そもそも日本製と違い、精度が低く、ちゃんと水平や垂直になっていなかったり……。

まるで脅しているように聞こえるかも知れませんが、実はすべて大坂さんが実際に体験したトラブルです。施主がDIYで、あるいはほかの不慣れな施工会社等がシンクを取り付けたら漏水してしまい、大坂さんのいる優建築工房に助けを求めてきた例もあります。

「例えば天板(ワークトップ)も劣化していて、新しいシンクを取り付けると隙間ができることがあります。その場合の対処法を知っていたり、取り付け部品が合わなかった場合等に備えて代用品も用意しておくなど、シンクの取り付けには技術と慣れが必要です」

ちなみに優建築工房ではトラブルを防ぐため、例えば輸入品に関しては基本的に日本のキッチンメーカーが正規輸入しているもののみ施工するなど、工事を請け負う前に施主にしっかりとした説明を行っているそうです。

キッチン/台所のシンク(流し台)だけでなく、排水トラップの劣化にも注意しましょう

もうひとつ、シンクの交換を検討している場合に注意したいのが、排水管からの水漏れです。「シンクの排水口と排水管をつなぐ部分に排水トラップという部分があります。これは水をためることで排水の臭いや害虫が上がってこないようにするための部分ですが、これが劣化して水漏れを起こすことがあります」。古くなったシンクを交換するのであれば、排水トラップも交換が必要かどうか、確認するようにしましょう。

排水トラップ

写真の床から伸びる3本の配管のうち、一番左の配管上部に備わる白い部品が排水トラップ(写真/PIXTA)

「排水トラップはホームセンター等でも簡単に入手できますし、最近は動画サイト等で交換方法を紹介している動画もありますから、一見素人でもできそうに思えます。しかしシンクの水漏れの相談同様、こちらもお施主さまがDIYで交換したら、後日水漏れするようになって相談を受けたことがあります」

例えばパッキン(部品や配管の接続部分の密閉に使われる部材)がねじれて取り付けられていたり、径のサイズは合っているけれど厚みが違ったり。また排水トラップも種類がいろいろあって、それぞれで施工方法が異なります。ちょっとした加減で大事に至るケースがありますから、専門業者に任せたほうが良いでしょう。

10年以上使っているならキッチンリフォームも検討しよう

このように、単にシンクだけ交換すれば良いと思っていても、実は天板(ワークトップ)と排水管との取り付けには細心の注意が必要です。特に使い続けてきたシンクが傷んだ等で、交換を検討しているなら、天板(ワークトップ)や排水管も劣化していても不思議ではありません。

また、シンクの交換が必要なほど古いキッチンなら、収納部分も傷んでいたり、開き扉(現在は引き出しが主流)で使い勝手が悪かったり、扉の蝶番(ちょうつがい)が壊れそうだったり……。それならばシンクだけでなく、キッチンを丸ごと交換することも検討してみましょう。

キッチンを丸ごと交換するならメーカー製のシステムキッチンを選ぶ方法と、好みのキッチンを施工会社に依頼して作ってもらう造作キッチンにする方法の二通りあります。

メーカー製のシステムキッチンは、ここ数年で特に機能性が大きく向上しています。例えば上記でも紹介したように、ゴミが自然と排水口へと流れるシンク形状や、シンクにキズや汚れが付きにくいコーティングが施されている等はキッチンを作り続けてきたメーカーだからこそのワザ。大坂さんも「機能性を第一に考えるのであればメーカー製のシステムキッチンをおすすめします」と言います。

けれども画一的なデザインはちょっと苦手とか、リビングダイニングに向いたオープンなキッチンなので、急な来客時に手元を隠したい、という人は造作キッチンがおすすめです。「最近はステンレス製または人工(人造)大理石なら天板(ワークトップ)とシンク一体型のキッチンも作ることができます」。これなら、組み合わせ式のキッチンよりも水漏れの心配をしなくて済みますし、スッキリとしたデザインで好みのキッチンを実現できるでしょう。

■ステンレス製の天板(ワークトップ)&シンク一体型の施工事例

天板(ワークトップ)&シンク一体型造作キッチン

料理好きな施主が備えたのは、ステンレス製の天板(ワークトップ)&シンク一体型の造作キッチン。大きな魚をさばくこともあるため、シンクは幅1m超の大きな形状にしています(写真提供/優建築工房)

さらに、どうしても高い機能性が欲しいなら、システムキッチンに造作のカウンターを備えるという方法もあります。その場合、システムキッチンは最も手頃な価格設定になっている壁付け型を使いますから、メーカー製のオープンキッチンを選ぶより費用を抑えやすくなります。

■システムキッチンに造作カウンターを備えた施工事例

手元を隠したオープンキッチン

トクラス製システムキッチンの造作キッチンの事例。リビングダイニング側には奥のバックセットと同じ材料で収納棚を「見せる収納」として造作。キッチンに立つ人の手元も隠している(写真提供/優建築工房)

このように、シンクだけでなくキッチンを丸ごと変えたほうが使い勝手もデザイン性もグッと向上させることができます。まずは信頼できる施工会社に相談することから始めてみましょう。

まとめ

シンクを交換できるのは、天板(ワークトップ)とシンクを組みあわせて作られた古いシステムキッチンか、造作キッチンのみ。最近のシステムキッチンのように天板(ワークトップ)とシンクが一体化している場合、シンクだけを交換することはできません。

また、シンクを交換する場合、水漏れを防ぐためにも天板(ワークトップ)とシンクを正しく取り付けられる専門知識をもった施工会社にお願いするようにしましょう。

シンクを交換したくなるほど古いキッチンであれば、キッチンごとリフォームで入れ替えることも検討してみましょう。最近のシステムキッチンは高性能で調理がはかどりますし、清潔感を保ちやすくなっています。また造作でも天板(ワークトップ)とシンクが一体化したキッチンを作ることができます。

●取材協力
優建築工房

構成・取材・文/籠島康弘