空間を仕切る間仕切り。例えば兄弟2人で使っていた広い子ども部屋を、彼らの成長に合わせて壁で仕切ることで個室を2つ設けたり、リビングの一部を仕切って仕事スペースとして活用するなど、さまざまな目的に合わせていくつもの「間仕切り」の方法があります。では、どんな方法があり、それぞれの費用はどれくらいなのでしょうか。早速解説していきましょう。

記事の目次
間仕切りリフォームをするメリット・デメリット
間仕切りリフォームを行う前に、そのメリットとデメリットについてあらかじめ把握しておきましょう。
まず間仕切りリフォームを行うメリットですが、ライフスタイルに合わせて間取りを使い勝手がよくなるように変更できることです。兄弟2人で使っていた子ども部屋を2つに分けたり、リビングに仕事用スペースを設けたりするのは、その一例です。
既存の空間に間仕切りを加えるだけですから、大がかりな工事は必要なく、方法次第で費用も抑えることができます。
また広いリビングダイニングで、ダイニングを使わないときはリビングとダイニングを区切ることで、リビングのエアコンなど空調効率を高めることもできます。
壁ではなく開閉式の間仕切りにすると、さらに活用方法は広がります。例えば洗面室兼脱衣場だった場所の一部を、脱衣場として使えるよう間仕切りリフォームを行えば必要なときだけプライバシーを確保できます。また、LDKでリビングとキッチンの間に開閉式間仕切りを備えれば、急な来客時でもリビングからキッチンを簡単に見えないようにできます。
このように間仕切りの目的に合わせて、方法をいろいろ選べます。目的に応じて間仕切りの種類を選ぶとよいでしょう。
一方で空間を仕切ることで考えられるデメリットとしては、開放感が損なわれることです。方法や間取りによっては外光を遮ってしまいますし、行き来がしにくくなるなど生活動線にも影響を及ぼします。間仕切りリフォームを行う場合は、こうしたデメリットもあわせて考え、どんな間仕切りを備えるのか検討するようにしましょう。
では間仕切りリフォームにはどんな種類があって、費用はどれくらいでしょうか。下記で詳しく見ていきましょう。
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間仕切りリフォームの種類と、その費用は?
間仕切りリフォームは単に壁を新設するだけでなく、いろいろな方法があり、それによって費用も異なります。空間を仕切る目的に沿った方法を選んで間仕切りリフォームを行いましょう。
間仕切りにドア・ガラス戸(引き戸)を設ける
しっかりと空間を仕切る方法の1つに、間仕切りドアやガラス戸を用いる方法があります。壁を新設するのとは異なり、必要に応じて開閉できるので空間を広げることもできます。
間仕切りドアは引き戸や折り戸が多く、ガラス戸であれば引き違いのガラス戸が主流です。壁ほど完全ではないものの、ある程度隙間なく閉じることができます。
また窓を備えた間仕切りドアや引き違いのガラス戸なら、閉めた状態でも採光を確保しやすくなります。商品の種類が豊富で、例えば採光は必要だけど目隠し効果も欲しいなら、すりガラスのガラス戸を採用する、という具合に建具を選ぶこともできます。
大きな部屋の間仕切りとして、室内高2.4m×幅2.7mの引き戸タイプの間仕切りドアやガラス戸を備える場合、窓ガラスのついた間仕切りドア(引き戸)を備えるリフォーム費用の目安は約41万円、引き戸のガラス戸を備えるリフォーム費用の目安は約53万円です。
採用するドアの種類やサイズ、施工会社などによって金額は異なりますから、あくまでも目安として考えてください。
可動式扉(引き戸)でリビングと和室を仕切った施工事例
リビングダイニング、キッチン、和室、洋室と細かく分かれていた空間を、1つの大きなLDK+パントリー+和室へとリフォームした施工事例です。従来の和室の代わりに新設された和室は、LDKと引き戸で仕切られ、床にはLDKは同じフローリング材と和モダンな畳が敷かれました。
そのため普段は開け放ってLDKの続き間として和室を使えます。また閉めれば畳の上を幼い子どものお昼寝スペースに活用できるなど、さまざまな用途に応じてLDK+αの広い空間を仕切って使うことができます。

【DATA】
リフォーム費用:1160万円(総額)
リフォーム部位:リビングダイニング、キッチン、洋室、和室、洗面所、トイレ、廊下、収納、その他
住宅種別:一戸建て
築年数:21年
設計・施工:アクアラボ
間仕切りに格子戸・障子・襖を使う
和室など和風の空間を仕切るなら、格子戸や障子、襖(ふすま)を使う方法があります。昔ながらのデザインの商品だけでなく、最近は和モダンな空間に合うようなデザインのものもありますから、インテリアに合わせて選ぶとよいでしょう。
格子戸は、縦横に木材を格子状に組んだ扉や引き戸のことです。そのためガラスをはめても光を通しやすく、閉めていても閉塞感を感じにくいというメリットがあります。ガラスを入れなければ通気性もよくなります。
障子は木枠に和紙を貼った建具のこと。格子戸やガラス戸と比べれば光を遮りますが、ほんのりとした柔らかい光を届けてくれます。
襖は、昔から日本の家で間仕切りとして利用されてきました。格子戸や障子と比べて光を通しませんが、その分格子戸や障子よりも冷暖房効率は高くなります。
大きな部屋の間仕切りとして、室内高2.4m×幅2.7mのガラスが入った格子戸(両面格子)を備える場合、リフォーム費用の目安は約120万円、障子や襖の場合は約39万円です。
採用する格子戸等の種類やサイズ、施工会社などによって金額は異なりますから、あくまでも目安として考えてください。
古民家の家具を再生した間仕切りの施工事例
子どもの独立を機に、築16年のマンションを夫婦2人の好みの空間に一新した施工事例です。リフォームのテーマは「大正ロマン」。自然素材を多用したレトロ風の空間を実現しました。
それを最も表しているのがリビングダイニングでしょう。隣接するフリースペースはもともと和室で、床がリビングダイニングと同じ無垢(むく)のウォールナットで統一されています。さらにこの2つの空間を間仕切る建具に、古民家で使われていた重厚な格子戸を間仕切りとして再利用。この格子戸を開ければ広々としたリビングダイニングに、閉めれば夫婦の狙い通りのレトロな空間になります。

【DATA】
リフォーム費用:150万円(概算)
リフォーム部位:リビングダイニング
住宅種別:マンション
築年数:16年
設計・施工:優建築工房
間仕切りにアコーディオンカーテンを使う
手軽に間仕切りをしたいなら、アコーディオンカーテンを使う方法があります。ホームセンターなどで購入し、自分で取り付ければ商品代だけですみますし、販売店等の設置サービスを利用しても、壁や引き戸、格子戸等を備えるよりも安くすみます。
例えば日中リビングのすべてを使うわけではなければ、アコーディオンカーテンで仕切って冷暖房効率を高めて節電する、といったことができます。あるいは親族が泊まりに来た際に、リビングを仕切って個室として活用するという利用法もあります。
大きな部屋の間仕切りとして、室内高2.4m×幅2.7mのアコーディオンカーテンを設置する場合、リフォーム費用の目安は約20万円です。
採用するアコーディオンカーテンの種類やサイズ、施工会社などによって金額は異なりますから、あくまでも目安として考えてください。
リビングをアコーディオンカーテンで仕切った施工事例
家族5人で暮らす新居として、リフォーム前提で中古マンションを購入した施主。購入したのは築28年の、ゆったりとしたメゾネットタイプの住戸です。
従来のリビングダイニングは、隣にあった和室を取り込むことで広々とさせましたが、アコーディオンカーテンを備えて、必要があれば個室として使用できるようにしました。

【DATA】
リフォーム費用:507万円(総額)
リフォーム部位:LDK、浴室、洗面室、トイレ、廊下、階段、玄関、収納、照明、その他
住宅種別:マンション
築年数:28年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)
※表示価格について/表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
間仕切りにカーテンやロールスクリーンを使う
アコーディオンカーテン同様に手軽な方法として、カーテンやロールスクリーンを使う方法もあります。仕切る幅によっては既製品の突っ張り棒を活用できるので、コストも手間も省きやすくなります。
例えば洗面室兼脱衣場で、服を脱ぐときに目隠ししたいといった場合に便利です。
大きな部屋の間仕切りとして、室内高2.4m×幅2.7mの間仕切りとしてカーテンを設置する場合のリフォーム費用の目安は約18万円、ロールスクリーンの場合は約20万円です。
採用するカーテンやロールスクリーンの種類やサイズ、施工会社などによって金額は異なりますから、あくまでも目安として考えてください。
ロールスクリーンでリビングを仕切った施工事例
子どもの独立を機に、それまでの一戸建てを息子家族に譲り、代わりに息子家族が暮らしていた築26年のマンションに移り住むことにした夫妻。遊びに来る孫たちがのびのびと遊べるようにと、リビングダイニングの隣にあった和室を取り込んで、明るく開放的なリビングダイニングにすることにしました。
さらに息子たちが泊まっていくこともできるようにと、リビングダイニングにロールスクリーンを設置し、個室として使えるようにしました。

【DATA】
リフォーム費用:100万円(概算)
リフォーム部位:リビングダイニング
住宅種別:マンション
築年数:26年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)
※表示価格について/表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。
間仕切りにパーテーションやパネルを置く
パーテーションやパネルで間仕切りする方法は、オフィスなどでよく利用されています。置くだけで簡単に持ち運べるタイプから、固定するタイプ、あるいは天井から床まで間仕切りするタイプや、立ち上がると向こう側が見えるタイプなど、種類はさまざま。また素材も豊富です。
住まいで使う場合、リビング等で仕事をする際の間仕切りとして、あるいはLDKのリビング部分とダイニング部分を緩やかに区切りたいとき、子ども部屋を分けるが同性なのでスペースが区切れればいい場合、といった際の活用方法が考えられます。
大きな部屋を室内高2.4m×幅2.7mのパーテーションで間仕切る場合、費用の目安は約21万円です。
採用するパーテーションの種類やサイズ、施工会社などによって金額は異なりますから、あくまでも目安として考えてください。
キッチンとリビングダイニングをガラスのパーテーションで間仕切りした施工事例
築4年の自宅に移り住むことになった施主。築浅なので既存の状態を活かしながら、自分好みの空間へリフォームすることにしました。
以前のキッチンは、リビングダイニングとの間に壁がありましたが、これを取り払い、さらに少しリビングダイニング側に移動。ただし「オープンは嫌だけど、リビングダイニングが見えるキッチンに」という施主の要望から、キッチンの目の前にはあえてガラスのパーテーションが備えられました。おかげで施主の希望した、リビングダイニングとの程よい距離感が生まれました。

【DATA】
リフォーム費用:120万円(概算)
リフォーム部位:キッチン
住宅種別:一戸建て
築年数:4年
設計・施工:リフォーム工房
間仕切りに可動式家具を設置する
可動式の収納家具等を間仕切りにして利用する方法です。例えば広い子ども部屋を最初は2人で使う場合、収納をどちらか一方に備えておき、個室に分ける時に収納家具で分けると、それぞれの個室に収納を備えることができます。
子どもが独立したら、再び収納を片方に寄せるなどして、夫婦の趣味スペースに活用するなど、壁を設置するより間取り変更の自由度が高まります。
高さや幅をオーダーメイドで作れる可動式の収納家具もあります。部屋の広さにピッタリの収納家具を備えれば、個室のプライベート感は高まります。
大きな部屋を室内高2.4m×幅2.7mの可動式家具で間仕切る場合、費用の目安は約55万円です。
採用する可動式家具の種類やサイズなどによって金額は異なりますから、あくまでも目安として考えてください。
間仕切り壁を新設する
空間を仕切る方法として、最も一般的な方法です。他の方法よりも完全に独立した空間を作れます。一方デメリットとしては、将来的に1つの部屋に戻すことになった場合、壁の撤去や、壁のあった部分の床を修繕する必要があります。
また部屋の条件によっては、一方の部屋の風通しや採光が悪くなったり、照明やコンセント、冷暖房機器等を追加しなければならなくなります。そのためあらかじめ2つの空間に分けることを前提として広い空間を作っておいたほうがよいでしょう。
大きな部屋に室内高2.4m×幅2.7mの間仕切り壁を備える場合、費用の目安は約16万円です。
壁材やクロス、サイズなどによって金額は異なりますから、あくまでも目安として考えてください。
子ども部屋を壁で間仕切りした施工事例
子どもの成長に合わせて、子ども部屋を2つに分けることにした施工事例です。従来の子ども部屋にドアは1つしかなかったため、2部屋は上つりタイプの引き戸と壁で間仕切り、従来のドアから見て奥にある個室からも廊下へと出入りできるようにしました。

【DATA】
リフォーム費用:18万円
リフォーム部位:子ども部屋
住宅種別:一戸建て
設計・施工:松本巧舎
間仕切りの撤去工事の費用
間仕切り壁を設置して部屋を分けるリフォーム工事は、比較的簡単に行うことができます。しかし、分けた部屋を再びもとの大きな部屋に戻すためには、壁を撤去するための費用がかかります。
室内高2.4m×幅2.7mの間仕切り壁を撤去するリフォーム費用の目安は、約5万円です。ただし、間仕切り壁を撤去すると天井や壁のクロスに色焼けによる跡が残りがちです。間仕切り壁の撤去とともにクロスを張り替えると、その費用が別途必要になります。
一方、床にも色焼けの跡が残りますが、そのうち分からなくなることも多いため、そのままにしておいたほうが経済的です。
まとめ
リフォームで間仕切りを備える目的は、さまざまあり、それによって適切なリフォーム方法が変わります。 最初に思いつくのは間仕切り壁を設置する方法でしょう。例えば兄弟2人で使っていた広い子ども部屋を、彼らの成長に合わせて壁で仕切ることで、それぞれのプライベートを守る個室を2つ設けることができます。
一方で、壁ではなく開閉式の間仕切りをLDKでリビングとキッチンの間に備えれば、急な来客時でもリビングからキッチンを簡単に見えないようにできます。
このように、間仕切りたい目的によって、方法はさまざまあります。まずはどんな目的で間仕切りを設置したいのか、それに合う方法はどれなのか、検討することから始めましょう。
●監修
一級建築士 柏崎文昭(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/籠島康弘
雑誌「カーセンサー」編集部を経てフリーライターに。中古車からカーシェアリング、電気自動車までクルマにまつわる諸々の記事執筆を手がける。最近は住宅雑誌の記事も執筆していて、自分が何屋なのかますます分からなくなってきた。