ビルトインガレージの増築リフォームの価格・費用、メリット・デメリットは? シャッターの種類や離れのガレージとの違いも解説

ビルトインガレージ(インナーガレージ)とは、建物内部に設置するガレージのこと。「使っていない部屋があるから、そこをガレージにしたい」とか「雨の日も濡れずに家に出入りしたい」という人にオススメです。ではビルトインガレージ(インナーガレージ)を、リフォームで設置するにはどうすればいいのでしょうか。ビルトインガレージ(インナーガレージ)に備えるシャッターや、離れのガレージとの違いについても解説します。

ビルトインガレージ(インナーガレージ)

ビルトインガレージ(インナーガレージ)

記事の目次

ビルトインガレージ(インナーガレージ)を増築するリフォーム費用

ビルトインガレージ(インナーガレージ)は、従来あった1階の部屋を解体してガレージに変える方法と、敷地内に新たに増築する方法があります。

ビルトインガレージ(インナーガレージ)を増築する方法

リフォームによってビルトインガレージ(インナーガレージ)を設置する場合、不要になった1階の部屋を解体してガレージに変える方法と、建物に隣接させるように増築する、といった方法があります。

隣接するように増築する場合、ガレージの上にテラスを設けたり、部屋を設けることも可能です。

どちらの場合でも、広さや内装のこだわり次第で費用は変わりますので、数社のリフォーム会社に見積もりを依頼するようにしましょう。目安としては、6畳の部屋を解体または増築して1台分のスペースを確保するとして約200万円~といったところです。

ビルトインガレージ(インナーガレージ)をリフォームで備える際の注意点

不要になった1階の部屋をガレージに変更する場合、駐車したい車の台数によっては間口を広げる必要があります。あるいは、車の他に自転車やバイク等を置きたいのであれば、そのスペースも確保しなくてはなりません。

その際に、構造上抜けない柱や壁がある場合は、その位置を変えずにガレージを計画する必要があります。場合によっては他の部屋や玄関等の間取り変更の工事が必要になるでしょう。

また、車が出入りする道路との関係で、ガレージから道路までの通路を整備したり、車の向きを変えたりするためのスペースが必要になる場合もあります。

このように、ガレージ部分だけでなく、付随する工事が増えるほどリフォーム費用がかかります。

離れのガレージを増設するリフォーム費用

ガレージを建物に繋げるのではなく、独立して備える方法もあります。リフォーム会社に建築してもらう方法と、既製品を設置してもらう方法があります。

リフォーム費用の目安は、地盤の状況や基礎の仕様にもよりますが、床のコンクリート工事などを含めて約80万円〜です。

インナーガレージと離れのガレージ、カーポートの違い、それぞれのメリット・デメリット

よく「ガレージ」とひとくくりにしてしまいがちですが、家の駐車スペースは「ガレージ」と、「カーポート」の2種類に分けられます。ビルトインガレージ(インナーガレージ)は「ガレージ」に含まれます。

「ガレージ」とは屋根と3方向以上を壁で覆った駐車スペースのことで、「カーポート」とは屋根と柱だけで構成された駐車スペースのことです。

それぞれのメリット・デメリットは下記のようになります。

■「ガレージ」のメリット・デメリット
メリット デメリット
  • 車を雨や風、イタズラから守りやすい
  • 棚等を設けてちょっとした物置にも使える
  • 大きさによってはくつろぐスペースも設けて、ちょっとした部屋のように使える
  • カーポートよりリフォーム費用がかかる
  • ドアを開けて乗り降りできる幅が必要になる
  • ガレージ内で洗車すると湿気がたまりやすくなる
■「カーポート」のメリット・デメリット
メリット デメリット
  • ガレージより安く設置できる
  • 壁がないので、ガレージより狭いスペースでも設置しやすい
  • ガレージほどではないが、雨や紫外線を防ぎやすいので、車の劣化を抑えやすい
  • 雨や風が入り込みやすいので、ガレージより汚れやすい
  • 壁やシャッターがないので、イタズラされる心配がある
  • 柱だけで屋根を支えるので、積雪に対する注意が必要

離れのガレージやカーポートを増設する際の注意点

「ガレージ」や「カーポート」は、法律上「自動車車庫」と呼ばれ建築面積の対象になります。そのため、建ぺい率に注意が必要になる場合があります。

建ぺい率は敷地面積に対する建物面積の割合のことで、自治体により各用途地域別に比率が定められています。

1階の部屋をビルトインガレージ(インナーガレージ)にリフォームする場合、既に建物自体が建ぺい率に沿って建てられているので問題はありません。

しかし増築でビルトインガレージ(インナーガレージ)を設置する場合や、離れのガレージを設置する場合は、その地域で定められている建ぺい率に収まるよう設置や増築を行う必要があります。

一方で、「カーポート」は下記の一定の条件を満たせば、自動車車庫部分の面積の一部(下記参照)を算入しなくてもよいという緩和措置があります。そのため、多くのカーポートではこの緩和措置を受けられます。ただし自治体により詳細が異なる場合もあるので、詳しくは施工会社や各自治体に確認するようにしましょう。

●緩和を受けられる条件
  • 柱の間隔が2m以上
  • 天井の高さが2.1m以上
  • 外壁のない部分が4m以上連続している
  • 地階を除く階数が1であること

ちなみに、容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)はというと、ガレージやカーポートは延床面積には含まれますが、延床面積を考える際に、割り引いて換算する緩和措置の対象になっています。具体的には延床面積の5分の1を限度として容積率の計算からは除外されます。

ただしこの緩和措置は、容積率の計算上の延床面積を割り引くものであり、固定資産税評価の査定においては、登記簿謄本上に記載された延床面積が対象となります。

主なシャッターの種類と特徴

建物内部に備えるビルトインガレージ(インナーガレージ)ですから、防犯上やはり車の出入口にはシャッター等の“扉”を備えたほうがよいでしょう。 “扉”は主に3種類ありますが、リフォーム前にそれぞれの特徴を確認しておきましょう。

巻き取り式シャッター

巻き取り式シャッターは、扉部分が上部のボックスに巻き取られるタイプのことです。材質は主にスチールかアルミで、中が見えない全面目隠しタイプのほか、中が見えるグリルシャッターもあります。間口の広さや開閉スピード、デザインなどで価格が変わります。

スッキリとした外観にしたいなら、ボックスをガレージ内に設置するタイプがおすすめです。

一般的に巻き取り式シャッターは、開閉時の音が大きいので、住宅街の場合は注意が必要ですが、静粛性の高いタイプもあります。カタログで調べたり、リフォーム会社等に確認してみましょう。

巻き取り式シャッター

写真は車1台用のガレージシャッター。電動式で高さ2.5mを約13秒で開放でき、開閉音も静かです(写真提供/三和シヤッター工業「サンオート静々動々」)

オーバースライダー

オーバースライダーは、扉部分が上方向に開きますが、扉は巻き取られるのではなく、天井に沿って収納されます。また扉を巻き取らないので、一般的に巻き取り式シャッターと比べて静かで、開閉時間も短いのが特徴です。

材質もアルミやスチールのほかに、木製も選べますから、木造の家にもデザインを合わせやすくなります。

なお、天井に沿って収納するため、ある程度の高さが必要になります。リフォーム会社に依頼する際、自宅に設置できるか確認するようにしましょう。

オーバースライダー

写真は木製タイプのオーバースライダー。2種類のパネルデザイン、4種類(米ヒバ、米松、米杉、米ツガ)の無垢(むく)材から選べます(写真提供/三和シヤッター工業「ゼグラ」)

引き戸タイプ

横へ扉を開くタイプです。上記のオーバースライダーのように、ガレージ内の壁に沿って収納する(サイドスライダー)タイプや、家の引き戸と同じように扉を引き込むスペースを設ける方法があります。

こちらも扉を巻き取らないので、静粛性が高いというメリットがあります。また家の引き戸と同じようにする場合は、リフォーム会社にオリジナルで作製してもらうのが一般的ですが、その分、外観や玄関ドアなどとデザインを合わせやすくなります。

ビルトインガレージ(インナーガレージ)のメリット

ビルトインガレージ(インナーガレージ)を含むガレージのメリットは、簡単に上記でも解説しましたが、ここではビルトインガレージ(インナーガレージ)に絞って、メリットをさらに詳しく説明します。

土地が狭くてもガレージを設けることができる

既存の建物で、既に建ぺい率や容積率がギリギリという場合でも、1階の空いている部屋をガレージにリフォームする方法なら、ガレージを設けることができます。

一方で、離れのガレージや増築でビルトインガレージ(インナーガレージ)を作る場合、既存の建物以外に設置するスペースが必要ですし、その地域で定められている建ぺい率や容積率内に収めなければなりません。

またカーポートは上記で説明した通り、建ぺい率の緩和措置を受けることができますが、そもそも車を置ける場所がなければ設置することができません。

雨の日でも濡れずに外出・帰宅できる

ビルトインガレージ(インナーガレージ)なら建物との出入口を設けられます。いわば「車を駐車する部屋」ですから、雨が降っていても濡れずに外出し、帰宅できます。

この「雨に濡れずに出入りできる」というメリットを活かして、ビルトインガレージ(インナーガレージ)→パントリー→キッチンという具合に、生活動線を考えた間取り変更も考えられます。ビルトインガレージの設置に合わせて間取り変更のリフォームも検討してみてください。

趣味の部屋として活用しやすい

ビルトインガレージ(インナーガレージ)を、単に駐車スペースとして捉えるのではなく、「駐車スペースもある部屋」として考えると、暮らしがより豊かになるでしょう。

車が好きな人なら、愛車を眺められるようソファを置いたり、仕事&趣味部屋と兼用にするのもいいかもしれません。

また車だけでなく、冬用タイヤなどを置き、さらにキャンプ道具やスキー、スノーボード、サーフィンといったアウトドア道具も置けるようにすれば、遊びに出掛ける際にすぐ車に道具を積み込めて便利になります。

ビルトインガレージ(インナーガレージ)のデメリット

一方で、1階にビルトインガレージ(インナーガレージ)を設けるため、いくつかの制約や注意すべきことがあります。下記で詳しく見てみましょう。

1階の居住スペースが減る

当たり前ですが、1階にビルトインガレージ(インナーガレージ)を設ければ、その分1階の居住スペースが減ります。そのために暮らしが不便になりそうなら、間取り変更も視野に入れてリフォームしましょう。

逆に、1階部分の居住スペースを減らす代わりに、日当たりのよい2階にリビング等を設ける、という考え方もできます。間取り変更や耐震・断熱対策といった大規模なリフォームをする際に、1階のビルトインガレージ(インナーガレージ)の設置も検討するといいかもしれません。

エンジン音やシャッター音に注意

建物の中に車がとまるため、どうしてもエンジン音が建物内に響きがちです。朝早くや夜遅く車を出し入れすると、家人を起こしてしまうかもしれません。そのため建物との出入口も含め、天井や壁などに防音対策が欠かせません。また近くに寝室を設けないなど、間取りにも工夫が必要です。

またエンジン音だけでなく、巻き取り式シャッターは開閉時に扉を巻き取る作動音がします。音を気にする時間帯に車を出し入れするなら、静粛性の高い製品や、オーバースライダーがおすすめです。

その他、音ではありませんが、排気ガスが建物内に入り込まないよう、換気扇等を備えると安心です。またビルトインガレージ(インナーガレージ)内で洗車をすると湿気がこもりやすくなり、それが車や建物に悪影響を与えかねないので、できれば洗車は避けましょう。

とはいえスペースの関係でどうしても洗車をしたい場合、出口に排水口を設けて、そこに向かって床に傾斜をつければ、雨で濡れた車を入れても床に水がたまりにくくなります。

ビルトインガレージ(インナーガレージ)にリフォームした施工事例

ビルトインガレージ(インナーガレージ)にすると、どんな暮らしが待っているのでしょうか。リフォームした施工事例を見てみましょう。

1階の倉庫&車庫を施主の「秘密基地」にリフォーム

ビルトインガレージへリフォーム

1階はガレージと”秘密基地”のワンフロアに改装。1人で音楽を聴いたり本を読んだりしてこもるだけでなく、友人を招いてお酒を飲んで語らうこともあるそう(写真/尾形和美 設計/エムズワークス)

車が大好きですが、家族と暮らす自宅は都市部にあり、間取りや敷地を考えるとビルトインガレージ(インナーガレージ)にすることができなかった施主。しかし海の近くに築50年以上の木造住宅を見つけました。敷地の関係上、再建築不可物件でしたが、施主はここを「秘密基地」としてリフォームすることに。

もともと1階部分は倉庫と車庫に使われていたようで、床にはコンクリートが既に打たれていました。建築家の松永基さんはこれをそのまま活かし、施主の所有する車の高さに合わせて、天井高を確保。さらに倉庫だった場所は施主がオーディオやアウトドア用品を置いて、くつろぎのスペースに。

一方2階部分は浴室やキッチンなど水まわりを備えた広いワンルームとし、海側に広いウッドデッキを確保しました。晴れた日はウッドデッキから広い海と空を眺められます。

こうして週末に1人で楽しむはずの秘密基地が完成したのですが、施主の妻も気に入ったようで、よく夫妻と愛犬で訪れているそうです。

ウッドデッキのあるガレージハウス

ガレージのシャッターは車の前後に装備。2階のLDKへはウッドデッキに通じる外階段を上って入ります。耐震・断熱リフォームも合わせて行いました(写真/尾形和美 設計/エムズワークス)

工場+事務所の物件を家族みんなが喜ぶガレージハウスに

ビルトインガレージへリフォーム

ガレージの左側面にシャッターがあるので、脇の小道からバイクが出し入れできます。床はリノベーション前のままですが、かえって味があります(写真/尾形和美 設計/SA Lab.一級建築士事務所)

元はおそらく「1階が工場で2階と3階が事務所だったと思います」という鉄骨造の建物。施主は20年以上前に、リフォームして販売するというこの物件を自宅として購入しました。

当時は1階にガレージと玄関、浴室と洗面室があり、2階にLDK、3階が寝室等という間取り。子どもが生まれ、家族3人で暮らしてきましたが、さすがに購入して20年以上、築年数でいえば45年以上ともなると、あちこちが傷んできました。

そこでフルリノベーションすることに。もともと車が好きだった施主は、これを機に1階をガレージだけにして、自分専用の個室のようなロフトも備えることにしました。「妻には『水まわりを全部2階にまとめるから便利になるよ』と言ったら、すんなりOKをもらえました」。

ほかにも2階より上は、造作キッチンをはじめ妻と子どもの好みをたっぷり聞き入れた仕様に。こうして施主は念願のビルトインガレージ(インナーガレージ)を拡張することに成功しました。

ロフト付きビルトインガレージ

愛車とバイクを収納しているビルトインガレージ(インナーガレージ)に、施主の趣味を楽しむためのロフトも設置。車を出し入れするための引き戸は、外壁と同じ赤味のレッドシダーを採用(写真/尾形和美 設計/SA Lab.一級建築士事務所)

まとめ

ビルトインガレージ(インナーガレージ)は、こだわり次第ですが、200万円程度から設置することができます。愛車のコンディションを良好に保ちやすいだけでなく、土地が狭くても設置できて、雨の日の買い物も濡れずに済むといったメリットもあります。一方で、リフォームの方法によっては家の耐震性を弱めてしまうことも。リフォームでビルトインガレージ(インナーガレージ)を備えるなら、信頼のできるリフォーム会社にお願いしましょう。

監修/佐川旭(佐川旭建築研究所)
構成・取材・文/籠島康弘