「長野とモーニング娘。を繋げる存在になりたい」羽賀朱音の溢れる地元愛

取材、編集: 小沢あや(ピース株式会社) 構成: 伊藤美咲 撮影:小原聡太


モーニング娘。’23の12期メンバーで長野県長野市出身の、羽賀朱音さん。デビュー前、ハロプロ研修生として活動していた頃は長野県から東京まで新幹線でレッスンに通っていた彼女。上京した今でも地元が大好きで、時には日帰りでも帰省しているそうです。

今では長野県民代表として「秘密のケンミンSHOW極」(日本テレビ系列)に出演したり、信州テレビ「ずんマンモウ」の準レギュラーとしても活躍しています。そんな羽賀さんに、長野県の魅力やおすすめグルメ、今後の目標を聞きました。

アイドルではなく「モーニング娘。」になりたかった


―― 羽賀さんは研修生時代に、長野県から新幹線で東京まで通われていたんですよね。

羽賀朱音さん(以下、羽賀):そうです。愛知や大阪から通う子はたくさんいたんですけど、長野から通っているのは私だけで。ひとりで新幹線に乗って帰るのは、すごく寂しかったです。


―― 上京前から東京への憧れはありましたか?

羽賀:私は子どもの頃から、「モーニング娘。になりたい」という一心だったんです。なので、「アイドルになりたい」「東京でキラキラした生活を送りたい」とは全然考えていなくて。オーディションを受けたときは、上京することもまったく頭にありませんでした。

もともと東京に憧れの気持ちもなくて、むしろ恐怖しかなかったです。家族で年に1回くらい東京に行っていたんですけど、その度に必ずしゃっくりが止まらなくなっていた記憶があります(笑)。

―― (笑)。では、オーディションに合格してから、上京しなきゃいけないことに気づいたんですね。

羽賀:はい。上京するまでは、銀座が「ギンザ」なのか「ザギン」なのかも曖昧だったくらい、東京のことは何もわからない状態で上京しました。

―― モーニング娘。は、定期的に長野県でもライブを開催していますよね。


加入後、長野のコンサート会場の楽屋にて:オフィシャルブログより

羽賀:ライブで長野に来ると、メンバーから絶対に「空気が美味しいね」と言ってもらえるんですよね。自然が多い場所だからこその言葉ですし、私も長野に帰ってくると「息がしやすいな」と感じます。自然の多さや空気のきれいさは、どこにも負けないと思いますね。

長野県民御用達のスーパー「ツルヤ」

―― 長野県民御用達のスーパーといえば「ツルヤ」が有名ですが、羽賀さんも行かれていましたか?

羽賀:もちろんです! 食材を買いに行くとしたら、ツルヤ一択でした。近くにあって当たり前の存在だったので、ツルヤのない生活が考えられないくらいです。実家にあるナッツやドライフルーツは、大体ツルヤのプライベートブランドの商品でしたね。

―― よく買っていたものやおすすめの商品は何でしょう?

羽賀:パンとジャムです! ツルヤのパンは手作りで、特にクロワッサンがお気に入りです。ジャムもたくさん種類があるんですけど、私のおすすめはりんごジャム。果肉のシャキシャキ感が楽しめますし、甘すぎず、爽やかな風味がすごく美味しいんですよ。

あと、燻製ソーセージもめちゃくちゃ美味しいです! 私はボイルして食べるのが大好きでした。

ふと恋しくなる、ふるさとの味

―― 上京後に気づいた、長野県特有の文化はありましたか?

羽賀:長野のカリカリ梅はとっても甘くて、酸っぱさを感じないんですよ。東京でカリカリ梅を食べたときに、どれも酸っぱくて驚きました。

あと、長野ではポテトサラダには小さく切ったリンゴを入れるのが定番なんです。

―― 珍しいですね。都内だと、あまり馴染みがないです。

羽賀:あとは、毎年お盆の時期に天ぷらを食べるのが習慣でした。私にとっては夏に天ぷらを食べるのが普通で、「おばあちゃんの得意料理なのかな?」くらいにしか思っていなかったんです。東京に出てきてから、長野特有の風習であることを知りました。

―― 他に長野でよく食べていたものは何ですか?

羽賀:新幹線に乗るときは、よくおやきを食べていましたね。長野では、コンビニのレジ横によくおやきが置いてあるんです。私の祖母が地元でおやき屋さんを営んでいて、家のおやきが一番好きではあるんですけど、おやきならどれも好きですね。

―― おやきへの愛が大きいですね。

羽賀:長野の味と言えば、「こねつけ」も好きです。小麦粉とお米を混ぜて作ったもので、中に甘じょっぱい味噌が入っているんです。おやきよりはちょっと硬めの食感で、おやつとしても食事としても食べられます。

こねつけは長野の郷土料理中の郷土料理なので、あまり他県の方には知られていないかもしれません。善光寺の仲見世通りにも売っていると思うので、立ち寄った際にはぜひ食べてみてほしいです。

オーディション用の写真を撮った思い出の店


―― 長野でよく通っていた飲食店はありますか?

羽賀:長野県内を中心に展開しているファミリーレストラン「あっぷるぐりむ」によく家族で行きました。小学生の頃はお子様プレートがお気に入りでしたね。飛行機の形をしたお皿に旗が立てられたごはんが乗っていて、ギンガムチェックのスプーンとフォークで食べていたのを今でも覚えています。

あと、私がモーニング娘。のオーディションを受けるときに送った写真は「あっぷるぐりむ」の駐車場で撮ったものなんです。

―― もしかして、家族での食事中にオーディションを受けることを決めたんですか?

羽賀:ごはんを食べる前から「この日に応募写真を撮るぞ!」と決めていて、カチューシャも付けていたんです。食事をするために入ったあっぷるぐりむの駐車場の隅に白い壁があって、家族が「ここでいいじゃん!」と言い始めて、そこで撮ることになりました(笑)。

―― 羽賀さんの人生を変えた場所なんですね! 他に、長野でお気に入りのお店はありますか?

羽賀:七味唐からしが有名な老舗メーカー「八幡屋礒五郎」が運営する、「横町カフェ」というお店ですね。八幡屋礒五郎の七味を使った料理が食べられるお店で、私は中でもジェラートがすごく好きです。ジェラートに好きなだけ七味をかけられるんです。地元民も結構行っていますね。

それと、「いむらや」という中華料理屋さんのあんかけ焼きそばをぜひ食べてほしいです! テーブルに置いてある酢辛子をかけて食べると、あんの甘さとしょっぱさとピリッとした辛さが合わさって、めちゃくちゃ美味しいんですよ。最初はパリパリの麺なんですけど、最後の方になるとしなしなになってくるのも楽しめます。


「いむらや」のあんかけ焼きそば 写真:羽賀さん提供

「いむらや」は仕事終わりの方がよく行くお店なので、穴場だと思います。餃子やシュウマイも美味しいですよ。

モーニング娘。加入後は、夢の「長野県民代表」に


―― 羽賀さんが手土産や差し入れを持っていくとしたら、何を選びますか?

羽賀:研修生だった頃にモーニング娘。の長野公演を見学したことがあったんですけど、そのときはおやきと「りんごの木」の焼き菓子をたくさん詰めて持っていきました。りんごの木はお菓子の種類が豊富なんです。以前の長野公演でも差し入れをして、メンバーみんなで「いっせーの」で選んでもらっていました。

―― 楽しそうですね。長野公演では、「地元の方も観に来てくれているな」と、手応えを感じることはありますか?

羽賀:以前長野公演で、「野沢菜」のイントネーションの話をしたことがあるんです。長野県民は「野沢菜」を下がるイントネーションで発音するんですけど、お客さんに聞いたら半数くらいの人がそう発音をすると答えてくれて。「めちゃくちゃ地元の方がいる!」とわかってすごく嬉しかったです。

―― 長野の中でも、地域によって方言や文化が異なるんですよね。

羽賀:方言は変わりますね。長野市民は「〜するよね?」というのを「〜するしない?」と言うんです。でも、南信の方は使わないと思います。加入当初は長野市出身であることまでは公表していなかったので、地域の方言が出ないように気をつけていました。

―― 今は長野市出身だということを公表して、長野のテレビ番組にも出演していますね。

羽賀:長野でロケをするときは、私がマネージャーさんを引き連れています。「お土産屋さんはこっちで、お手洗いはあっちです」と、自然に体が動いちゃうんですよね(笑)。

研修生時代にレッスンで東京に行った日も、とにかく長野が恋しくて、早く帰りたかったんですよ。「新幹線の何号車に乗れば降りたときに階段が目の前にあるか」「どのルートで行けば一番早く改札に出れるか」などを全部把握しています。

―― 長野が本当に好きなんですね。お休みの日は長野に帰ることもありますか?

羽賀:1日お休みのときは、長野に日帰りすることも多いです。新幹線を使えば1時間40分ほどなので、すぐなんですよね。

―― 帰省したときはいつもどちらへ?

羽賀:かき氷を食べに行くことが多くて、いろんな友達をかき氷の沼に落としています(笑)。今では友達の方から「この店の新作を食べに行こう」と連絡が来ますね。


「ルビーの靴」のかき氷 写真:羽賀さん提供

アクセスしやすいお店だと、長野駅近くにある「ルビーの靴」というお店は冬でもかき氷を販売していて、さつまいもを使ったものが美味しいのでおすすめです。

長野とモーニング娘。を繋げる存在になりたい


―― 長野県民の特徴ってありますか?

羽賀:長野県民は、信号がない道でも、横断歩道で待ってる人がいたら絶対に止まってくれます。待っている歩行者がひとりでも、道を譲ってくれる優しさがありますね。

しかも、どんなに雪が降った日でも翌朝には通学路の雪かきが終わってるんです。片道50分くらいかかる長い道なのに、子供たちのために夜中や早朝から雪かきをしてくれていたのは本当にありがたかったですね。

―― 地元民たちの連携がすばらしいです。そして片道50分はかなり遠いですね……!

羽賀:家から小学校まで、5キロくらいあったんです。行きが上りだったので、帰りは下りで40分くらい。今でも歩くのは好きです。

―― 羽賀さんの基礎体力は通学で作られたのかもしれないですね。学生時代の友達と地元について話すことはありますか?

羽賀:大学進学や就職で上京する子には、「長野を満喫してから東京に来ないと後悔するよ」と伝えています。それでもみんな「長野に帰りたい」と言っていますし、長野県内で一人暮らしをしている子も「地元に戻りたい」と言っているんですよね。他の地域から上京した子から地元に帰りたいという話は聞かないので、長野県民は地元愛が強いんだなと思います。

―― 長野県民代表としてのお仕事も増えている羽賀さんの目標はありますか?

羽賀:長野とモーニング娘。を繋げる存在になりたいと思っています。モーニング娘。を観てくださっているファンの方に長野の良さを、長野の方にはモーニング娘。の良さを伝えていきたいです。そのために、私自身ももっと長野のことを知っていきたいなと思っています。

お話を伺った人:羽賀朱音

2002年3月7日生まれ、長野県長野市出身。2014年9月にモーニング娘。12期メンバーとしてデビューを叶える。8月30日にはアルバム『モーニング娘。ベストセレクション ~The 25周年~』をリリース予定。

編集:小沢あや(ピース)