除雪をしても、次から次へと降る雪。玄関前や駐車場の雪かきは冬の重労働です。ロードヒーティングを設置すれば、雪かきから解放されるのでしょうか。融雪槽や融雪マットなどはロードヒーティングの代わりになるのでしょうか。設置費用やランニングコストも気になります。この記事では、一戸建てでロードヒーティングを設置する場合に知っておきたいポイントを解説。北海道と青森県でロードヒーティングをはじめとした融雪・防雪関連製品の製造販売・施工を手がける株式会社ホクエイ(本社:北海道札幌市)の、営業担当・矢野修さんに話を聞きました。

記事の目次
雪をとかすロードヒーティングの仕組みは?
雪が積もるたびに繰り返される除雪作業は、体力的にも時間的にも大きな負担になります。そんな雪国の暮らしをサポートするのが「ロードヒーティング」と呼ばれる融雪設備です。ここでは、ロードヒーティングの基本的な仕組みや動作の流れについて解説します。
ロードヒーティングとは
ロードヒーティングとは、積雪地域の坂道やカーブなどの道路、まちなかの歩道、マンションや一戸建ての玄関まわりや駐車場などに導入される融雪設備のこと。降ってきた雪をとかすため、ロードヒーティングを設置しているスペースは、短時間に数十センチも積もるような大雪のとき以外は、除雪をする必要がなくなります。
ロードヒーティングの仕組み
ロードヒーティングは、あたためられた不凍液が循環するパイプや、発熱する電線を地面の下に埋め、地中や地面のアスファルト(仕上げ材)を保温し、あたためることで降ってきた雪をとかす仕組みです。
「北海道などの寒冷地では12月ごろから地面の下の土が凍り始めます。いざ雪が降ったときに急にあたためても、ロードヒーティングは土中の氷をとかすために熱を使ってしまい、地表の雪まではなかなかとけません。そこで、冬期間は地中温度センサーにより保温運転を行って地中の凍結を防ぎ、降雪センサーで雪を感知するとボイラーやヒーターが作動し路面を加熱して雪を水に変えるのです」(矢野さん、以下同)

ロードヒーティングの種類は主に3種類
ロードヒーティングには灯油やガスボイラーで不凍液をあたためる「温水循環式」、電気で発熱する「電気式」、空気の熱と電気で温水をつくる「ヒートポンプ式」があります。
【1】温水循環式のロードヒーティング
「温水循環式」「電気式」「ヒートポンプ式」のロードヒーティングの中で、多く採用されているのは、灯油またはガスを熱源とする「温水循環式」
「電気代が上がっているため、電気を熱源とする電気式や、電気を使用するヒートポンプ式に比べて、現在は灯油やガスが熱源のロードヒーティングのほうがコスト面でのメリットがあると考えられて、当社の場合はほとんどが温水循環式の施工です。オール電化住宅の場合も、現地調査をして灯油のほうがメリットがあると判断できれば、小型の灯油タンクを設置して温水循環式のロードヒーティングにすることをご提案しています」
温水循環式ロードヒーティングの仕組みと費用
灯油またはガスで動くボイラーで不凍液をあたため、地面の下に埋め込んだパイプを行き来させることで雪をとかします。電気式やヒートポンプ式に比べて熱の立ち上がりが早く、雪をとかすパワーがあるのが温水循環式のメリット。熱源も灯油とガスの2種類から選べます。
温水循環式のロードヒーティングで忘れないようにしたいのはメンテナンス。
「不凍液には、パイプのサビ止めと凍結防止の効果がありますが、徐々に劣化していくため、5年に一度程度の不凍液交換をオススメしています。そのほか、ボイラーも交換の必要があります。メーカーでは10年前後をボイラーの寿命としていますが、ロードヒーティングは使用が1年のうちの半分程度なので、実際には15年、20年と問題なく使われているケースも多いです」

設置費用とランニングコストの目安
一般の一戸建て住宅では、玄関とまわりと駐車スペースにロードヒーティングを設置したり、屋根付きのカーポートを設置している場合は玄関から道路までのアプローチ部分だけをロードヒーティングにしたり、施工面積はさまざまです。設置費用は施工面積のほか、表面の仕上げ材によって異なります。
「表面の仕上げには、一般的なアスファルトのほか、レンガ敷きやインターロッキング、コンクリート仕上げなどがあります。コストを抑えやすいのはアスファルト。コンクリート仕上げは鉄筋を組むなどの費用がかかるため高くなります」

【2】電気式ロードヒーティング
電気式ロードヒーティングは、路面下に埋設した電熱線に通電し、その熱で雪や氷をとかす仕組みです。ボイラーや不凍液を用いないため構造が比較的シンプルで、定期点検や交換といったメンテナンスの手間が少ない点が特徴といえます。
また、スイッチを入れてから短時間で熱が伝わるため、立ち上がりが早く、玄関まわりや駐車スペースなど限られた範囲での利用に適しています。
一方で、使用した分だけ電気代がかかるため、広範囲に敷設するとランニングコストが高額になるおそれがあります。そのため、積雪量が多い地域では必要箇所を絞って導入されるケースが一般的です。
電気式ロードヒーティングの仕組みと費用
電気式ロードヒーティングは、地中に埋設した電熱線に通電し、路面を直接あたためて雪をとかす方式です。温水やポンプを使わないため構造がシンプルで、故障リスクは比較的低く抑えられます。耐用年数は20〜30年以上とされ、長期使用にも向いています。
設置費用は20m2前後で40万〜60万円程度と、ほかの方式に比べて初期費用を抑えやすい傾向があります。ただし、電気料金の変動に左右されやすく、稼働時間が長くなると冬季の光熱費が大きな負担になる場合もあるため、設置面積や使用頻度を見極めたうえで慎重に判断することが求められます。

【3】ヒートポンプ式ロードヒーティング
ヒートポンプ式ロードヒーティングは、空気中や地中に存在する熱エネルギーを利用して路面をあたためる方式です。電気によってヒートポンプを稼働させ、取り込んだ熱を効率的に増幅し、不凍液を加熱して地中の配管内を循環させることで融雪を行います。温水を用いる点ではボイラー式と共通しますが、灯油やガスを燃焼させないため、エネルギー効率が高く環境負荷を抑えやすい点が特徴といえます。
初期費用は3種類の中で最も高めとなる傾向がある一方、運転時に必要なのは主に電気代のみで、ランニングコストを抑えやすい方式です。ただし、加熱までにやや時間を要することや、機器寿命が比較的短い点には注意が必要です。
ヒートポンプ式ロードヒーティングの仕組みと費用
ヒートポンプ式は、ヒートポンプユニット内で空気熱や地中熱を冷媒に取り込み、圧縮によって高温化させた熱で不凍液をあたためます。その温水が配管内を循環し、路面を加熱することで雪をとかす仕組みです。電力消費が少なく効率的に熱を得られるため、電気式と比べてランニングコストを抑えやすい点が大きなメリットといえます。
設置費用の目安は20㎡前後で80万〜90万円、平米単価では4万〜4.5万円程度とされています。不凍液の定期交換や本体の更新費が将来的に発生する可能性もあるため、初期費用と維持費のバランスを踏まえて導入可否を判断することが大切です。使用頻度や敷地条件に応じて検討するとよいでしょう。

ロードヒーティングのメリットは?
毎冬、何度も除雪車や排雪車が稼働する積雪地域では、自宅の敷地にロードヒーティングを設置したとしても、雪かきの必要がゼロになるわけではありません。車道に除雪車が通った後は、寄せられた雪が車道の脇に山をつくります。わが家の敷地から出るためには、人や車が出入りできる道を開けなくてはなりません。とはいえ、ロードヒーティングを設置するメリットはいろいろ。多くの人が思いつく雪かきの負担軽減のほかにもメリットを紹介しましょう。

雪かきの手間や時間を減らせる
駐車スペースや玄関から道路までのアプローチにロードヒーティングがあれば、「家から出られるように早起きをして雪かきをする」「仕事から帰ってきたら、駐車場の雪かきをしないと車を敷地内に入れられない」といった、雪かきのつらさから解放されます。
「ロードヒーティングは高齢になって雪かきが辛くなってから設置するというイメージが多かったのですが、最近は、共働きで忙しい、お子さんが小さくて雪かきの時間をとれないという若い世帯の方でも設置するケースが増えています」
体への負担を軽くする
雪かきは重労働です。特に、重たい雪を積み上げていく作業は大変。腰や肩を痛めたり、転んで打撲をしたり。汗をかいて冷えてしまえば風邪をひくこともあるでしょう。ロードヒーティングがあれば、そんな体への負担を軽くできます。
滑りやすい路面での転倒を防ぐ
積もった雪がとけ、再び凍るとスケートリンクのようにツルツル滑るアイスバーンになります。ロードヒーティングは、降ってきた雪をとかして凍結を防ぎますから転倒を防ぐことができます。
売却時のアピールポイントになる
ロードヒーティングは不動産価値にもメリット。売却をする際に、ロードヒーティングが付いていることが、その一戸建ての魅力の一つになります。ロードヒーティングのほか、後述する融雪槽や融雪機もアピールポイントになります。
ロードヒーティングの注意点は?
ロードヒーティングは、雪かきの手間を軽減し、冬場の暮らしを快適にする便利な設備です。しかし、設置には季節的な制約があったり、融雪水による段差や排水の問題など、注意すべき点も少なくありません。ここでは、ロードヒーティングを導入する際に押さえておきたい注意点について解説します。
ロードヒーティングは設置工事ができない期間がある
地域によっては、ロードヒーティングの設置工事が冬にはできなくなります。
「北海道の場合は積雪があるだけでなく、地面の下が凍っていますから工事自体が困難。春の雪どけを待って着工することになります。東北や北陸などで、マイナスの気温が続かず、地面の下が凍らない地域であれば冬季の工事も可能です」
大雪だった冬の後は、早めに工事の相談をすること
冬までにはまだ時間があるからと、工事の申し込みを先延ばしにしていると、次の冬にはロードヒーティングの設置が間に合わないことがあるそう。
「大雪が続いた数年前は、冬が終わる前からお問合せが殺到して、夏ごろには年内の工事の受け付けができない状態になりました。冬には工事ができないため、もうひと冬、ロードヒーティングなしで過ごすことになります。例年、冬の真っ最中や雪どけころからご相談が増え始めて、早いケースでは4月の雪どけ直後から工事をしています」
雪かきに苦労する冬を、1回でも少なくするために、ロードヒーティングの設置を決めているなら早めに工事の相談するのがいいでしょう。
段差を防ぐためには、排水溝の設置を確認
ロードヒーティングで雪がとけて積もらない場所と、ロードヒーティングがなく雪が積もって高さができている場所の「段差」。高くなった車道と、低くなったロードヒーティングのある駐車スペースの出入りの際、「ガクン」と車が上下に揺れたり、車の下部をこすってしまったりします。この段差は、ロードヒーティングを付けた場合、避けられないものなのでしょうか。
「住宅の敷地内でとかした融雪水が道路に流れないよう、ロードヒーティングの排水溝を敷地の端に設ける必要があります。この排水溝がないと、道路際のところで融雪水が凍り、その上に雪が降り、また融雪水が流れて凍り、と繰り返しているうちに段差はどんどん大きくなります。排水溝をきちんと設置していれば、段差ができないわけではありませんが、大きくなるのを抑えることはできます。排水溝をつくらずに工事を終えている施工会社も見られます。ロードヒーティングの工事を依頼するときには、施工会社に排水溝の設置について確認しておくといいでしょう」

ロードヒーティング以外の融雪対策を紹介
ロードヒーティングは便利な融雪対策ですが、設置や維持にかかるコスト・スペースが気になる方も多いのではないでしょうか。そんなときに検討したいのが、融雪機や融雪槽、融雪マットなどの別の選択肢です。ここでは、ロードヒーティング以外の融雪設備について紹介します。
融雪機は雪の塊や氷も短時間でとかす
バーナーであたためた燃焼缶に雪を投入し、どんどんとかしていくのが融雪機。
リアカーのように車が付いていて移動できるタイプもありますが、メインは敷地内に埋設するタイプ。燃焼している融雪機に、雪かきスコップやスノーダンプで雪を投入すると、機種によっては1時間でスノーダンプ100杯分ほどをとかすことが可能。一般的な大きさの一戸建てなら、一度の雪かきで出る雪は20〜30分で処理できるとか。
「融雪機のメリットはランニングコストの安さ。雪かきが必要な面積が20m2くらいとすると、ワンシーズンでロードヒーティングなら6万円くらいかかりますが、融雪機では灯油代は1万5000円前後ですみます。重たい雪を、上に積み上げなくていい点も楽ですね。氷や雪の塊もとかしてしまえるパワーもメリットです」
ただし、燃焼時の音が大きいため、夜間や早朝の使用は避けるなど近隣への配慮が必要です。


融雪槽は運転音も静かでゆっくりあたためてとかす
地中に埋設した深さのある融雪槽に、雪を投げ込むと温水循環式パイプであたためてとかす仕組みです。
「音が静かな点が融雪槽のメリット。また、バーナーを燃焼させる融雪機は、雪をとかし終えるまでフタを閉めずに近くで待っている必要がありますが、融雪槽は雪を投入後、スイッチをオンにしてすぐにフタを閉めることができます


融雪マットは階段や玄関前に手軽に設置
玄関まわりの融雪対策として手軽なのが、電気であたためられた融雪マットを敷くこと。車などの重量物には対応していませんが、玄関前や階段など、必要な場所に敷くことで安全な通路を確保できます。

ロードヒーティング、融雪機、融雪槽など雪対策にはどれを選ぶといい?
冬場の雪対策として注目される「ロードヒーティング」や「融雪機」「融雪槽」などの設備は、それぞれ仕組みや設置費用、使い勝手に違いがあります。ここでは、各融雪設備の特徴や選び方のポイントについて紹介します。
ロードヒーティングが向いている人
敷地内の雪をとかす設備はロードヒーティングだけでなく、融雪機、融雪槽、融雪マットとさまざま。選ぶ際のポイントは何でしょうか。
ロードヒーティングは、夜眠っている間でも留守にしているときでも、雪が降ると降雪センサーが感知して自動的に雪をとかしてくれるため除雪の手間要らず。設置にコストはかかりますが、除雪に時間をかけたくない、除雪をする体力がない、といった人に向いている設備です。
「除雪する時間や体力があっても、お住まいの近くに雪捨て場がなく、集めた雪を遠くまで運ぶのが大変という方からも需要があります」
融雪機、融雪槽、融雪マットが向いている人
冬の間、常に稼働していなくてはいけないロードヒーティングに比べて、融雪機、融雪槽は必要なときだけ使用する設備。融雪マットは歩くスペースに設置するもの。そのため、ランニングコストが気になる人には、融雪機、融雪槽、融雪マットが向いているといえます。
「除雪をする体力や時間がとれる間は融雪機や融雪槽を使い、高齢になって車も使用しなくなったら、玄関から道路までの歩行通路だけをロードヒーティングにするなどの方法もあります」
ロードヒーティングの設置に使える融資・補助金制度
ロードヒーティングは快適な冬の暮らしを支える一方で、設置費用やランニングコストが気になる設備でもあります。導入を検討する際には、自治体の補助金や融資あっせん制度などの活用も視野に入れておきたいところです。ここでは、ロードヒーティング設置に利用できる融資や補助金制度の概要について解説します。
自治体によって融資あっせん制度や補助金制度がある
融雪設備の導入にあたっては、自治体が実施している融資あっせん制度や補助金制度を活用できる場合があります。内容は地域によって異なり、融雪機や融雪槽、ロードヒーティングなどの設置を対象に、費用負担の軽減や資金調達を支援する仕組みが設けられているケースも少なくありません。
制度の有無や概要、対象条件、申請時期などは年度ごとに見直されることが多いため、最新情報はお住まいの自治体の公式情報を確認することが大切です。
申請は着工前に。予算に達すると募集は締め切られるのが一般的
自治体の補助金を受けるには、着工前に申請を行う必要があるケースがほとんどです。
「融資あっせん制度の場合は、申し込む人に返済能力があるか金融機関の審査を受けるほか、市民税を滞納していないかなども確認されます。予算に達すると募集を締め切るのが一般的ですから、補助金や融資あっせん制度を利用するなら早めに施工会社に相談するようにしましょう」

ロードヒーティングは施工面積だけでなく、種類によって設置費用やランニングコストが異なります。コストを抑えやすい融雪槽・融雪機は設置するためのスペースが必要です。わが家のライフスタイルや予算、敷地条件によって、どの設備を選ぶのが最適なのかが違ってきます。依頼先を選ぶ際には、複数の種類の融雪設備を手がける施工会社に相談することで、わが家に合う提案が期待できます。
イラスト/上坂じゅりこ
広告制作プロダクション勤務後、フリーランスのコピーライターに。現在は主に、住宅ローンや税金など住宅にかかわるお金や、住まいづくりのノウハウについての取材、記事制作・書籍編集にたずさわる。