屋外の共用施設とゆとりある設計が魅力。芝浦アイランドのタワマン

芝浦アイランドグローヴタワーの外観

物件名:
芝浦アイランドグローヴタワー
所在地:
東京都港区
竣工年:
2006年
総戸数:
833戸

「島びらき」から14年を経た、芝浦アイランドの今

芝浦アイランドは、JR田町駅からほど近い、運河に囲まれた約6万㎡のエリアを、官公民が一体となって開発した「島」だ。2007年の「島びらき」を前後に、住宅、商業施設、教育・医療施設が整備された。

現在、島内には分譲2棟(「グローヴタワー」と「ケープタワー 」)と賃貸2棟(「エアタワー」と「ブルームタワー」)、計4棟のタワーマンションが立ち、約4000戸、1万人が生活している。住民コミュニティ形成のために、分譲棟の各管理組合と、賃貸棟を運営管理する三井不動産投資顧問で構成された「芝浦アイランド自治会」が2009年に発足。自治会が中心となり、さまざまなイベントや防災美化活動を実施しており、毎年秋に開催される「芝浦アイランド島まつり」には、数千人の住民が参加しているという(2020年は新型コロナウイルス感染状況を鑑み中止)。

島内の街並みは、光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所が策定したデザインガイドラインに基づき、建物外観、植栽、照明計画などのデザイン調整を実施。「島びらき」の2007年当時、美しく調和のとれた都市景観が話題になった。14年を経た今は、アースカラーの建物外観に成長した樹々の緑が彩を与え、穏やかな運河の水面と相まって、潤いと落ち着きを感じる街並みが醸成されている。

芝浦アイランドの街並み

建物や街路はアースカラー、低木は樹種をそろえたことで、統一感のある街並みに

室内空間が広くとれる構造と共用部分のゆとりある設計も魅力

今回取材した分譲棟のグローヴタワーは、総戸数833戸、地上49階の大規模タワーマンションだ。建物外観はもちろん、ファサードやエントランス、ロビーもアースカラーでコーディネートされている。

グローヴタワーのエントランスの写真

アースカラーと植栽が美しく調和するエントランス

グローヴタワーのエントランスロビー

エントランスロビーは開放的な二層の吹抜けのスペース。大開口から芝浦西運河を望める

グローヴタワーのガーデンエントランス

フロントガーデンに面したガーデンエントランス。敷地内の豊かな植栽が借景に

竣工直後から住まわれている三田 彰さんに、購入のきっかけや住み心地などを伺った。

「芝浦アイランドを知ったきっかけは、妻がファンだったSMAPのCMです(笑)。どんなエリアなのだろうと興味を持ったので、島内で最初に販売されたグローヴタワーのモデルルームに見学に行きました。

見学時に低層階の角部屋の雰囲気が気に入り、CGで眺望を見せてもらうと、東側は賃貸棟のブルームタワーの植栽やプラタナス公園、南側はマンションの芝生広場に植えられた樹木の緑が眼前に広がっていました。芝生広場の先には芝浦ポンプ所があるため、今後、南側に高い建物は立たないだろうと考え、この部屋の購入を決めました」

グローヴタワーのガーデンテラス

緑が溢れる芝生広場とガーデンテラスは住民の憩いの場にも

実は、三田さんは大学の理工学部の教授で、空間・環境デザイン工学をご専門にされている、いわば“建築のプロ”だ。購入時には、建物の構造、設計施工会社、空間設計などについて、プロ視点でチェックされたと言う。

「マンションの形がシンプルな直方体なので、構造的に無理がなく、設計ミスをする可能性も極めて低いと思いました。柱と梁をバルコニーの外側に出したアウトフレームを採用しているため、室内空間を広く使える点も魅力でしたね。アウトフレームは外観デザイン面では縦のラインが強調されて、シャープに見えると思います。あと、設計施工が、超高層建築が得意な鹿島建設というのも安心感がありましたね。

また、2000年代前半に設計されたタワーマンションは、現在よりも経済性を追求していないので、ゆとりを持たせた空間設計が行われているケースが多いです。例えば、共用部の内廊下幅は1.2m程度が多いのですが、このマンションは約2.0m(柱部は約1.4m)あり、角はもっと広く確保されています。床から上階の床までの階高も高いため、リビングルームの天井高は2.6m(最上階および2階3階はそれ以上)あります」

グローヴタワーの廊下

グローヴタワーは中心に吹抜けを設けた「ボイド型」。24階までは中央部分に立体駐車スペースが配されているために内廊下で、25階以上は外廊下となっている

グローヴタワーにある光時計

24階の駐車場屋上に設けられた光時計。夜間は光が際立ち、美しい眺めが楽しめる

テニスコートやBBQができるアクアテラスなど、屋外の共用施設が充実

芝浦アイランドグローヴタワーには、数多くの共用施設がある。特徴的なのが、芝生広場やテニスコート、ガーデンテラスやBBQができるアクアテラスなど、屋外にある施設が多いことだ。

グローヴタワーのガーデンテラスとアクアテラス

水盤に隣接する、ガーデンテラスとアクアテラス

グローヴタワーのアクアテラスのBBQ場

アクアテラスにはBBQができるテーブル&チェアが5つ備えられている

グローヴタワーのフットサルコート

フットサルコートとしても利用できるテニスコート

屋内にあるパーティールームやゲストルーム、キッズプレイルームなどは芝生広場に面して配されており、窓越しに敷地内の豊かな緑を眺めることができる。

「新型コロナ感染拡大前は、パーティールームに学生を招いて年に1度パーティーをしていました。室内には調理設備があるので、シェフを招いて料理をつくってもらったこともあります。30階のビューラウンジは、お客様を案内して一緒に眺望を楽しむことが多いですね。私はゲストルームを利用したことはありませんが、週末は予約で満室のようです」

グローヴタワーのビューラウンジ

30階のビューラウンジからは、レインボーブリッジが一望できる(現在はコロナ感染予防のため閉鎖中)

グローヴタワーのゲストルーム

ゲストルームは2室。いずれも広々としたテラス付きの空間(現在はコロナ感染予防のため閉鎖中)

グローヴタワーのフィットネスルーム

フィットネスルームは明るく広々としたスペース(現在はコロナ感染予防のため閉鎖中)

グローヴタワーのキッズプレイルーム

キッズプレイルームには、室内にもテラスにも遊具がたくさん!(現在はコロナ感染予防のため閉鎖中)

グローヴタワーのカルチャールーム

落ち着いたインテリアのカルチャールーム。奥にはパーテーションで区切られたデスクコーナーも(現在はコロナ感染予防のため閉鎖中)

管理組合を法人化し、共用施設の用途転用を実施

共用施設の適切な維持と管理には、管理組合の活動が欠かせない。芝浦アイランドグローヴタワーの管理組合は17名で構成され、1年ごとに理事の約半分が入れ替わり運営している。三田さんは管理組合の理事を1年された後、現在は副理事長を務められている。

「私が理事になった時、ちょうど大規模修繕のタイミングでした。理事会で修繕計画を取りまとめた後に、工事会社のコンペを実施し、発注先を決めました。マンション総会に諮って承認を得られれば、2021年内に工事を始める予定です。

あとは、数年前に退去した3階のコンビニの跡地スペースを、どう活用するか議論しました。議論の結果、多目的スペースと会議室に転用することが決まり、設計プランニングのコンペと、コンペ案の住民投票、投票結果をふまえた設計先の選定を行いました。

この跡地スペースは、他の共用施設と違って隣や上階に住戸があるので、音の問題に対処する必要がありました。転用を決めた後も、騒音測定の実施や対策工事の検討などにとても時間がかかりました。こちらは2021年に完成する予定です」

ちなみに、コンビニ跡地を購入して登記をするために、管理組合は約4年前に法人化しているそうだ。

グローヴタワーの多目的スペースのパース図

多目的スペースのイメージパース。設計は、日本とスペインで建築設計やコミュニティデザインのプロジェクトを手掛けているホルヘ・アルマザン・アーキテクツ(画像提供/芝浦アイランド グローヴタワー管理組合法人)

そして三田さんは、次期は理事長になる予定だという。

「理事長になったら、さまざまな懸案事項に対応できる理事会組織に変えたいと考えています。具体的には、理事の人数を増やしたり、詳しい人が理事に残れるように任期を無くしたりすることなどです」

三田さんが考える懸案事項とはソフト/ハードの両面にあるが、いずれも築年数を経たからこそ生じるものだという。

「ソフト面で例を挙げるなら、自転車の無償貸出しサービスでしょうか。管理組合が電動と普通の大人用自転車を数十台保有しており、住民は自由に使用してよいことになっています。ただ、使う人が限られているのに、メンテナンスや駐輪場代にはそれなりの費用がかかり、その費用は管理費の中から支払っています。

ハード面は、主に共用部の劣化です。汚い、壊れたと言っていても前に進まないので、いつ、どの程度お金をかけて修繕・修理するのかを理事会で決めなければいけません。

マンション購入時に、共用施設が多いことや便利なサービスに魅力に感じた住民は多かったでしょう。しかし、時が経つと施設は劣化や故障しますし、サービスに対するニーズも変わるものです。理事会では、施設やサービスの在り方について、状況に応じて見直していきたいと考えています。

また、劣化した共用部の修繕・修理や、必要な時期に大規模修繕を躊躇なく行うには、そのための費用が必要です。築年数を重ねるとさらに費用がかかると予想されるので、修繕積立金の確実な徴収と、駐車場など共用施設で収益を上げることで、管理組合の財務をある程度余裕のある状況にしたいと思っています」

入居者の多様性を考慮した、防災への取り組み

管理組合の重要な活動のひとつが、年に1回実施している防災訓練だ。理事会には防災担当理事がいて、理事会の下部組織の防災会と一緒に、防災訓練を主導している。

「防災訓練では、初期消火訓練やAED講習、起震車や煙ハウスの体験などを実施しています。また、防災訓練と同じ日に、本など家庭にある不用品を交換する『グローヴBUZZ』というイベントをロビーで行っています。

というのも、このマンションは間取りのバラエティが豊富なので、入居者の家族構成や世帯も一人暮らしや若いカップル、子育てファミリー、終の棲家として暮らすシニア夫婦など多様なため、住民同士の交流があまり多くないのです。

住民同士が顔見知りであることは、災害発生時に大きなメリットになります。訓練への参加率を高めるための仕掛けとして『グローヴBUZZ』と呼んでいる、防災品の販売や古本の交換マーケット、防災訓練に参加した居住者が楽しめるBBQパーティーやテニスなどのイベントを開催しています。今後もイベント内容に工夫を重ね、参加率をアップさせたいですね」

『グローヴBUZZ』のチラシ

(画像提供/芝浦アイランド グローヴタワー管理組合法人)

マンション所在地の東京都港区では、地震発生時、自宅に被害がない場合は在宅避難が原則となっている。そのため、港区にある大規模タワーマンションは、マンション内に備蓄倉庫を設け、防災備蓄品を保管しているケースも多いようだ。

「芝浦アイランドグローヴタワーにも、各階に備蓄倉庫があります。以前は各階の防災担当者2名に鍵を保管してもらっていましたが、仕事など外出中に震災が発生するケースを想定し、最近、暗証番号キーに変更しました。また、水や食品などの備蓄品には消費期限があるため、理事会で交換ルールについて検討しています」

さらに、タワーマンションの場合、地震発生時にエレベーターが緊急停止し、中に閉じ込められる可能性がある。管理会社のスタッフは、エレベーターの中に閉じ込められた人を助ける方法を確認し、定期的に理事長と防災会の組織リーダーにも説明しているそうだ。

管理組合と管理会社のパートナーシップで快適かつ安心な生活を維持する

タワーマンション購入者は「資産価値」を重視する人が多いが、「快適かつ安心して暮らせる価値」も非常に重要といえる。三田さんは、これらの価値を維持するには、管理会社の協力が欠かせないと話す。

「これだけ大きなマンションになると、管理組合だけでは適切な管理が難しく、管理会社との協力体制が重要になります。しかし、管理会社に文句を言い続けたり、管理委託費の値下げ交渉をしたりする管理組合は多いと聞きます。これでは管理会社がやる気を持てないでしょうから、私たちはお互いを尊重し、適切な距離感を持って協力していきたいと考えています」

七夕の飾りつけがされたエントランスホール

管理会社が管理組合に提案し、実施した七夕のしつらえ。これまでは笹を飾るだけだったが、今年から足元にアジサイをあしらってより華やかに(写真/SUUMO編集部)

これからも、グローヴタワーの安心で快適な生活は、管理組合と管理会社の協力によって維持されていくだろう。

グローヴタワーの表札

※2021年のイベント開催、共用施設の使用は新型コロナウイルス感染症対策のため上記の通りではありません。今後の開催は未定です

構成・取材・文/山南アオ 撮影/柴田ひろあき

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