川沿いの自然と生活利便性を兼備
桜の名所・花見川をはじめ豊かな自然に抱かれた千葉市花見川区。千葉市6区では中央区に次いで人口が多く、穏やかな住宅地が広がっている。
そのなかで1990年代に開発が始まったのが瑞穂地区だ。一戸建てが連なる傍らに、赤い屋根をトレードマークにしたマンションの住居棟が立ち並んでいる。ここが今回の目的地、「ガーデンプラザ新検見川」。約6.4万㎡の広大な敷地には14棟もの住居棟のほか共用棟4棟を擁し、総戸数は1031戸を数える。
メガマンションだけに管理体制は独特だ。14の住居棟は棟ごとに管理組合が組織され、大規模修繕などは個々に対応。一方、植栽や共用施設などの管理にあたるのが団地管理組合。この役員には各棟の理事から選出された14名が就いている。
今回、取材に応じてくださったのは団地管理組合の理事である山下さん、小井沼さん、齊藤さんお三方。みなさん、竣工時から暮らし、瑞穂地区の成り立ちにも詳しいとのことでじっくりお話を聞かせていただいた。
まず伺ったのは住み心地について。居住者の方々はどのように感じているのだろう。
「このマンションの特色の一つは隣に花見川区役所があること。さまざまな手続きがスムーズにできる上、図書館や保健福祉センターも入っているので助かります。また、敷地内にはスーパー『サミット』がありますし、郵便局、クリニック、薬局もすぐ目の前。瑞穂地区の開発に伴い、隣に小学校も新設されました。生活に必要なものがマンションの周りにほぼすべてそろい、とても住みやすいですね」(齊藤さん)
立地としてはJR総武線の幕張駅と新検見川駅の間にあり、どちらも徒歩15分以上。少し距離はあるが、駅までの移動手段によって使い分けができるという。
「幕張駅までは道が平坦なので自転車で快適に走れます。新検見川駅は途中に坂道があるものの、バスの本数が多いのでこちらに出る方も結構いらっしゃいます」(小井沼さん)
ちなみに、バス便ならJR京葉線の海浜幕張駅に出ることも可能。駅の周辺には飲食店が多く、「食事や一杯飲むときには海浜幕張駅によく行きます」(山下さん)
さらに、バスや車の場合、「イトーヨーカドー幕張店」や「コストコホールセール幕張倉庫店」、「イオンモール幕張新都心」などの商業施設も生活圏内。京葉道路の武石インターや東関東自動車道の湾岸習志野インターも近く、利便性は抜群だという。
もっとも、最初の分譲が始まった頃は周囲に区役所しかなく、決して便利とはいえなかったというのは齊藤さんだ。
「幕張駅に通じる道路や花見川にかかる瑞穂橋もなかったので、大回りをしなければならなかったんです。バスも土日は運行がなくて陸の孤島状態。暮らすうちにだんだんインフラが整い、今は本当に便利になりました。高齢になってからも暮らしやすいと思いますね」(齊藤さん)
住環境では自然の豊かさも見逃せない。花見川沿いはサイクリングロードとして整備され、自転車を走らせれば稲毛の海岸まで20分ほど。公園も多く、特にマンションの向かいにあるしらさぎ公園は広い野球場があるほか、千葉市の花“オオガハス”の名所としても知られている。
「そもそもオオガハスはマンションにほど近い東京大学検見川厚生農場(現・東京大学検見川総合運動場)で発掘された古代のハス。ここにはハス見本園があり、現在はボランティア団体『大賀ハスのふるさとの会』が管理を引き継いで観蓮会の開催などを行っています。実は私はその事務局のメンバー。オオガハスは地元の誇りなんです」(山下さん)
ビオトープやハーブガーデンもあるエコロジカルデザイン
こうした自然環境を踏まえて設計されたのが、マンションのランドスケープだ。正面の入り口で出迎えるのは、クスノキとイチョウの大木。敷地内も多くの草木で埋め尽くされている。このあたり一帯は“瑞穂の杜”と呼ばれているが、敷地内にもその杜が続いているというわけだ。
「昔の資料を見ると、竣工に合わせて1.5m以上の高木が1000本ほど植えられたそうです。ほかにサザンカなどの垣根が巡らされ、ハーブガーデンも設けられています。この環境を気に入って入居した方は多く、みなさん、緑への愛が深いですね」(小井沼さん)
緑の間を縫うように流れるせせらぎ“水の道”も印象的だ。全長は約200mにも及び、涼やかな景観と水音もまた住人の癒やしになっている。
さらに、せせらぎを辿っていけば、雑木林に囲まれたビオトープが出現。水中では在来種の水生植物が育ち、ニホンメダカも放流されているそうだ。
こうした環境の維持・管理にあたっているのが先述した団地管理組合だ。組合下には植栽管理委員会とビオトープ委員会が置かれ、どちらも担当理事のほかに住人有志を募って活動をしている。両委員会を掛け持ちしている住人もいるそうだ。
山下さんは植栽管理委員会の担当理事。現在の活動状況を伺った。
「先ほども言ったようにこのマンションには高木1000本が植えられていますが、枯れたり元気がなくなったりした木も少なくありません。また、実生(みしょう)といって木から落ちた種から新たな木が生え、当初の景観が様変わりしつつあります。その木を抜いて当初の状態に戻すか、そのまま生かすかという課題も生じています。
そこで、植栽の手入れをする造園業者のほかにコンサルタントの会社を入れて、全体の景観をどのように構築し直すかを協議していく予定です。具体的にはまず植栽の現地調査を行い、方向性を見定めた上で長期的な計画を立てていくことになるでしょう。誰が見ても『いいね』と思える、そんな場所にしていきたいですね」(山下さん)
東側にあるハーブガーデンについても土の入れ替えを行うなどリニューアルが進行中だ。
「以前はさまざまなハーブが茂って、自由に摘むことができたんですね。ハーブ好きの居住者に手伝ってもらいながら、その状態に戻していくことが目標です。ほかにシンボルツリーを明確にして冬にイルミネーションで彩れたらいいねという話も出ていますが、これはまだ構想段階ですね」(小井沼さん)
ちなみに、この地域ではマンションの自治会と一戸建ての自治会の共同組織「瑞穂みどりの少年団」によるボランティア活動が行われている。参加しているのは瑞穂小学校の児童たち。街路の花壇の植え付けや樹木のハンドブックの作成などが行われ、コロナ禍前はこのマンションも活動場所になっていたという。
「以前、実施されたのは樹木の名札付けやハーブガーデンの花の植え替えで、和やかな地域交流になっていました。マンション内でのこの活動も徐々に再開できるといいなと思います」(齊藤さん)
一方、齊藤さんが担当するビオトープ委員会ではマンションの居住者である植物の専門家に指導を仰ぎながら、ビオトープとその周囲の植物の管理・育成に尽力している。例えば、水中の植物一つ一つに付けた名札は委員会で製作したもの。ビオトープの生態系を壊すザリガニやブルーギルといった外来生物の駆除も行っている。
さらに、3月から11月までは毎月1回、ビオトープの清掃も実施。委員を中心に約10人で行われるそうだ。
「腰の上のほうまであるゴム長靴で水に入り、植物の先生の指示のもと不要な水草を抜いたりゴミを拾ったり。特に夏は蚊との戦いもあって大変。でも、みなさん、楽しみながら作業していますね」(齊藤さん)
11月に開催のGPフェスタが一大イベント
緑と水に潤う環境に加え、豊富な共用施設もこのマンションの魅力だ。例えば、プラザハウスと名付けられた1番館には、ラウンジ、図書室、パーティー室、大集会室などが集結。さらに敷地内を歩けば、陶芸や木工などを楽しめるホビーハウス、バーベキューができるクラブハウス、テニスコート、ゴルフレンジといった施設が次々と現れる。まさしく6万㎡超の広大な敷地の賜物だろう。
共用施設を利用してサークル活動も盛んだ。自治会公認サークルはテニス、音楽家グループ、陶芸、囲碁、ハンドベル、シニアゴルフ、少年剣道、吹き矢、木彫りの鳥を製作するバードカービングなど9団体の多彩なサークルが立ち上げられている。
これらのサークルが活躍するのが、毎年11月に行われる「GPフェスタ」だ。大集会室では音楽家の居住者が結成した「ミュゼ」をはじめとする演奏会が開かれるほか、陶芸などの作品展示会、テニス教室、こども・大人絵画展など催しは多彩。商品券があたる抽選会も好評とか。
「マンションと一戸建ての自治会が共催する夏まつりも盛大です。瑞穂小学校の校庭を会場にして櫓(やぐら)を組んで盆踊りをしたり、子どもたちが引く山車(だし)が街を練り歩いたり。屋台もたくさん並ぶのですが、すべて住人の手づくり。マンションと一戸建ての垣根を取り払う地域交流の場になっています」(小井沼さん)
ちなみに、サークルにはマンション以外の住人が参加している団体も多いそう。街ぐるみのコミュニティが、住み心地のよさをさらに押し上げているのだろう。
ホームページとLINE で14棟の情報を共有
もちろん、修繕や防災も安全・安心な暮らしのために欠かせない要素だ。このマンションではどのように取り組んでいるのだろう。
まず、防災については団地管理組合で舵を取り、理事とボランティア11名による防災会が発足している。
「活動の柱は防災に対して意識を高めてもらうこと。大地震の際、マンションは自宅避難が基本なので、それに備えるための情報提供を積極的に行っています。例えば、避難時に役立つ防災グッズを紹介したり、防災セミナーを受けた際には動画に残して居住者なら誰でも見られるようにしたり。災害時には対策本部を立ち上げる計画ですが、その役割はあくまでも後方支援。住人同士が助け合いながら避難できることを何より重視しています」(小井沼さん)
災害への備えとしては、スムーズに情報伝達ができるようLINEの公式アカウントもつくられている。まだ登録者は少ないそうだが、これが機能すればいざというときの心強いツールになるだろう。
一方、共用施設の修繕については、団地管理組合の修繕委員会が主導して実施。6年前には大規模修繕も行ったそうだ。
対して、住居棟の修繕は、先述のとおり、各棟の管理組合が個別に対応。14棟はそれぞれ竣工年や建物の形状・階高が異なるため、大規模修繕も個々の長期修繕計画に基づいて実施されている。
「住居棟の修繕にあたっては特にルールはなく外壁の色や素材も自由に選べるのですが、大幅に変更したケースはこれまでないですね。暗黙のうちにマンションの統一感が守られている感じです」(小井沼さん)
竣工時から変わらない整った美観は、マンションに対する愛着の賜物なのだろう。
そのなかで唯一、課題になっていたのは情報の分断。よその棟でどのような取り組みをしているのか、知る術がなかったのだという。
そこで2021年に立ち上げられたのが自治会・団地管理組合のホームページだ。声をあげた小井沼さん自身がホームページ委員会の担当になり製作を担当。パスワードが必要な住民専用のページには、居住者全体に周知したい事柄が随時アップされている。同時に防災のためにつくったLINEアカウントも情報共有に活用。風通しのよさを向上させている。
小井沼さんによれば、ホームページの作成にはマンションの魅力を広く発信したいという思いもあったという。実際、一般公開しているページには写真とともに共用部が丁寧に紹介されるほか、新築分譲時のパンフレットを住居棟ごとに閲覧できる。
「このマンションの購入を検討している方の参考になればと、古い資料もじっくり見直しました。自然豊かで生活利便性も高いここは、子育てするには最適な環境が整っています。竣工から30年近く経ち居住者が高齢化するなか、若い世代にも入居してもらえるとうれしいですね」(小井沼さん)
団地管理組合下には6つの委員会のほかに、「ガーデンプラザ新検見川の未来を考える会」も発足している。文字どおり、マンションの未来を見据えながら、長期目線の方針を検討していく組織だ。今だけでなく先々にも目をやるその姿勢によって、さらに住みやすいマンションへと発展していくことだろう。