昭和の名曲に歌われた日本コロムビアの跡地
「美空ひばり」といえば昭和が生んだ歌謡界の大スター。「真赤な太陽」「悲しい酒」「川の流れのように」など名曲の数々は時代を彩り、令和の今も歌い継がれている。
「港町十三番地」もまた往年のヒット曲として知られるが、この「港町」という地名が川崎市に実在することをご存じだろうか。場所は多摩川沿いに位置する川崎区港町(読み方は「みなとちょう」)。川なのに港?と思うかもしれないが、かつてこの地には川崎の特産品を海路で運ぶ川崎河港があり、それが地名の由来とされている。
実は、この川崎・港町にあったのが、美空ひばりさんが所属していた日本コロムビアの川崎工場だ。ここではレコードや蓄音器などが製造され、日本のレコード発祥の地ともいわれている。そんな縁もあって生まれたのが「港町十三番地」だったというわけだ。
ちなみに、最寄りの京急大師線港町駅の旧称は「コロムビア前駅」。工場の大きなネオン塔は、戦前から川崎のシンボルとして市民に親しまれていたという。
その港町駅では2013年のリニューアルに合わせて「港町十三番地」の歌碑を設置。電車の発着時のメロディーにも採用するなど、ひばりファンの聖地になっている。
今回、取材した「リヴァリエB・C棟」が立つのは、まさにこの川崎工場の跡地。土地の歴史はマンション内のカフェギャラリーに刻まれている。居住者以外も自由に出入りできるとのことで取材の前にのぞいてみると、古い蓄音器やレコードプレーヤーなどが並んでなかなかの見応え。美空ひばりさんがレコーディングに使っていた「日本コロムビア第一スタジオ(通称・ひばりスタジオ)」のシャンデリアがかかるなど、ミニミュージアムのような設えになっている。
「マンションが竣工してだいぶ経ちますが、わざわざ見学に訪れる方は今もいらっしゃいますよ」
こう教えてくれたのは、リヴァリエB・C棟管理組合の理事長、佐々木盛治さん、副理事長の安東雄介さんと安田晴美さんのお三方。日本の音楽産業を牽引してきた場所に暮らすなんて、親戚や友人に自慢したくなりそうだ。
川沿いの自然を享受できるタワーは交通アクセスも抜群
マンションの住み心地を伺う前に、気になっていたのは「リヴァリアB・C棟」という名称。A棟もあるということ?
「はい、駅寄りの隣に立つのがA棟です。もともとはトリプルタワーとして販売されていたのですが、B棟とC棟は建物がつながることから1つのマンションとして管理組合を立ち上げています。A棟とは管理会社が異なり別のマンションになっていますが、共用施設の一部を相互利用でき、コロナ禍前は3棟合同で夏まつりを開いていました」(佐々木さん)
竣工年はA棟が最も早く、ここを見て購入を決めた人は少なくないという。佐々木さんもその1人で、見学時にはA棟の角住戸が完売していたためB棟を買うことを決意したそう。安東さんも会社の先輩が住むA棟に遊びに行き、すっかり気に入りB棟に申し込んだとか。
では、購入の決め手はどこにあったのだろう。お三方からまず挙がったのは、駅前の立地と交通アクセスのよさだ。
「B棟のエントランスから港町駅までは徒歩1分ほど。1駅乗れば川崎駅で、そこから都心にも出やすいんです。今の勤務地は蒲田なのでドア・トゥー・ドアで30分程度。仕事で新橋などに出ることもあるのですが、そのときもスムーズに行けますね」
と安東さん。佐々木さんも頷いて言う。
「品川駅や新横浜駅にも行きやすいので、出張や旅行のときも便利ですね。羽田空港も近く、海外から帰国する家族や友人を車で迎えに行く場合、入国手続きの時間を考えると搭乗している便が空港に降りたのをアプリで確認してから家を出ても十分間に合うぐらいです」
便利でありながら、多摩川沿いの豊かな自然を享受できるのも大きな魅力といえる。佐々木さんと安田さんはこの立地が購入の決め手になったそうだ。
「川に面した住戸なら遮るものがなくて開放感は満点。しかも、その眺望はこの先も変わることはありません。とにかく景色第一で、買うなら川に面した角住戸と決めていました。実際、眺望は素晴らしいですよ。特に夜は川面にムーンロードができて幻想的な風景が広がる。つい写真を撮ってしまいます」(佐々木さん)
「景色という意味では夏の花火も素晴らしいですよ。川に面したわが家からは、大田区の六郷土手から打ち上がる花火は真っ正面に見えます。二子玉川の花火も眺められるんです」(安田さん)
一方、多摩川とは反対側の南向き住戸の眺望にも魅力がある、というのは安東さんだ。
「僕は日当たり重視で南向きの高層階を選んだのですが、東京湾側を向いているので海越しに千葉のほうまで見晴らせます。しかも、電車、車、飛行機、東京湾を行き交う船、さらにいえば川崎競馬場が近いので競走馬の練習風景も眺められる。つまり、人間が生活する上で使う乗り物を一挙に見れられるんですね。バルコニーに出て朝日を浴びながらその景色を眺めていると、『みんな頑張ってるな。よし、自分も頑張ろう』って思うんです」(安東さん)
リバーサイドだけにアクティビティも身近だ。河川敷にはサイクリングロードが整備されているほか、釣り、水上スキー、カヌーも楽しめる。
「在宅勤務の日は気分転換にサイクリングロードを自転車で走り、『キングスカイフロント』によく行きます。ここは新たに開発された商業施設で、1階にある広々としたカフェはリモートワークに最適。カヌーの貸し出しもしているんですよ」(安東さん)
気になるのは買い物の利便性だが、それも申し分ないという。
「このマンションが竣工した後、近くに『マーケットスクエア川崎イースト』ができてとても便利になりました。スーパーに加えて家電量販店やドラッグストア、クリーニング店も入っていて、生活のほとんどがここでこと足ります。オーケーストアやイトーヨーカドーも歩いていける距離にあり、使い分けもできますね」(安田さん)
JR川崎駅が徒歩15分ほどと生活圏内にあるのも利点だ。
「ショッピングモールなど商業施設が揃っていますし、官庁街があるので役所の手続きも済ませられます。再開発でどんどん便利になっているのでありがたいですね」(佐々木さん)
豊富な共用施設が棟をまたいだコミュニティの場に
エントランスロビーはB棟とC棟それぞれに設けられ、どちらもホテルライクでスタイリッシュ。共用施設の予約などができるコンシェルジュはB棟に集約されている。
B棟とC棟をつなぐウォータープロムナードも印象的だ。ガラス張りの通路の横には多摩川の景色と呼応するようなダイナミックな水景が広がり、日常の動線上にある癒やしのスペースとして親しまれている。
スケールメリットを活かした多彩な共用施設にも目を見張る。多摩川の絶景を楽しめるスカイラウンジや和室と洋室があるゲストルームはB棟・C棟それぞれにあり、ほかにスポーツスタジオ、キッチンスタジオ、ゴルフレンジ、ミュージックスタジオなどが集結している。
「スポーツスタジオは年間5400円の会費で朝6時から夜23時まで使い放題。休日の朝に行ったり、在宅勤務で体がなまっている日は仕事の後にちょっと汗を流したり。気軽に行けるのはありがたいですね」(安東さん)
「私は集会室をよく利用しています。3時間まで貸し切りにでき、料金は3時間で450円。ちょっと勉強したいときも集中できます。居住者が集まってヨガをしていることもありますね」(安田さん)
先述のとおり、A棟と相互利用できる共用施設もあり、例えばA棟にあるライブラリーはB・C棟の居住者も利用可能。逆に、A棟の居住者はゴルフレンジやミュージックスタジオを使うことができる。共用施設の有効利用につながり、行き来があれば自然と交流も生まれるだろう。
屋外の共用スペースとしては、桜並木に囲まれた芝生の広場が広がるサクラガーデンや、駐車場の屋上を活用したオーナーズスクエアという庭園もある。
「サクラガーデンの桜はそれはもう見事。毎年、開花の時季を心待ちにしています。芝生のスペースは養生のために立ち入りを土日に限定していますが、休日になるとくつろぐ人たちで賑わいますね」(安田さん)
聞けば、芝生の周りの花壇は、竣工後に住人によってつくられたもの。手がけたのは植栽くらぶ。安田さんはそのメンバーだ。
「植栽くらぶは植栽委員会の下にあるボランティア団体。サクラガーデンをもっと美しくしたいという思いから花壇をつくり、手入れや花の植え替えをしています。中心になって動いているのは6〜7名ですが、お花の植え替えをするときには居住者の方にも呼びかけ、20名ほどで賑やかに取り組んでいます。親子で参加する方も多いですよ」
自主防災組織が安全・安心と地域の連携をバックアップ
豊富な共用施設では年間を通じてさまざまなイベントが開催されている。企画・運営は管理組合下に組織されたフレンドリークラブ。担当理事3名を中心に、2023年にはハロウィンイベントや野菜の販売会、キッチンカーイベントなどが実施された。
「両棟のロビーに置くクリスマスツリーの飾り付けも、イベントの一環として住人参加型で行っています。お子さんの参加も多く楽しそうに飾ってくれます。本を持ち寄って別の本に交換できるブック交換会も人気ですし、コロナ禍前には新春のもちつき大会や川崎競馬場からポニーが来てくれたことも。これから徐々に復活させていく予定です」(安田さん)
マンション独自の自治会は立ち上げていないとのことだが、それに代わるのが自主防災組織だ。理事を中心に町内会の朝の挨拶運動に参加したり、交通安全運動週間中は通学路に立って呼びかけをしたりと地域交流をはかっている。
もちろん、活動の柱は防災の強化だ。
「川崎区の避難所運営会議に出席するなど自治体と連携しながら、防災訓練の実施や毎月1回、防災の知識をまとめた防災コラムの作成・掲示などをしています。そのなかで特に力を入れているのは、在宅避難のための備蓄の呼びかけですね。このマンションはオール電化なので、地震で電気が止まるとライフラインすべてがストップしてしまう。各自でしっかり備蓄をしてもらうことが欠かせません。一方で、マンション全体の防災グッズも川崎市の助成制度を使って増やしています。防災倉庫は各棟にあるのですが、最近、駐車場の下にも新たに設け、いざというときに備えています」(安田さん)
川沿いという立地から水害対策も念入りに行われている。このマンションには雨水や溢れた河水を逃す大きな地下ピットを備えているが、それに加えて電気室につながる部分の塀を高くし、タワーパーキングや地下の自転車置き場の通路に止水板を設置できるようにして安全・安心を高めているそうだ。
管理組合の体制についても随時、見直しがされている。
「監事を含めた16名の役員は両棟から半数ずつ選出していますが、その選出方法を今期から輪番制ではなくブロックごとの抽選に変更しました。輪番制では30年以上一度も理事にあたらない住戸が決まってしまう。その不公平感を解消するための施策です。また、立候補の場合も任期は2年までとして、多くの住人が理事を経験できるようにしています。そのほうがマンションへの愛着を持つ人を増やせますし、不正も防げる。やる気のある方は有志として参加できる体制づくりをしています」(佐々木さん)
実際、「このマンションが大好き」という安田さんの任期は今期限り。その後は自主防災組織運営委員会などで管理組合の活動に関わっていくつもりだとか。
最後に、理事長の佐々木さんに今後の抱負を伺った。
「コロナ禍で始めたキッチンカーは、決まった曜日に来てもらうなど定着させていきたいですね。定期的な出店があれば近隣の方々にとっても便利でしょうし、地域交流にもつながると思います。A棟と合同の夏まつりも再開できるといいなと思っています」
実際、キッチンカーは取材の後日、定期開催が決定。現在は毎月第2・4土曜に販売があるほか、第4土曜には地元で栽培された川崎野菜の直売会も開かれている。
多摩川をシンボルにした港町のコミュニティは、今後さらに潤いを増していきそうだ。