進化する街で変わらぬ景色に安心/中村ゆうひさんの地元「千葉県印西市」【私がここに住み続ける理由】

インタビューと文章: 小野洋平(やじろべえ)  

あなたが、その街に住み続ける理由は何ですか? 便利で暮らしやすい。好きなお店がある。自然環境が豊か。街並みが美しい。住民同士の結びつきがある。これ以外にも、きっとさまざまな理由があると思います。そんな、一つの街に長く住む人にフォーカスする「私がここに住み続ける理由」。

今回は千葉県印西市出身の漫画家・中村ゆうひさんにお話を伺いました。

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新たな趣味に出合える「ジョイフル本田」

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――千葉県印西市は「住みよさランキング」(東洋経済新報社)で7年連続日本一になるなど、近年注目が集まっています。中村さんは印西ご出身とのことですが、実際に住みやすいと感じますか?

中村ゆうひさん(以下省略)「じつは、あまりピンときていません(笑)。千葉ニュータウンを中心に街が発展し始めたのはここ10年くらいで、昔から印西市に住んでいる人の多くは地元がランクインしたこと自体、驚きだったと思いますよ。僕自身もそうで、急に地元が騒がれはじめたなくらいに思っています」

――でも、街の変化は感じていらっしゃるんですね。

「私が生まれ育った木下地区はあまり変化ありませんが、千葉ニュータウンの辺りはだいぶ変わりました。やはりお子さんのいる家族は住みやすいんだろうなと思います。いろいろな商業施設が集まっていますし、住宅街も整備されていますから。あのへんを歩いていると、子どもが楽しそうにしている様子をよく見かけます」

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印西牧の原駅にほど近い住宅街

――中村さんも、千葉ニュータウンには行かれますか?

「そうですね。よく『ジョイフル本田』に行きます。絵を描く仕事をしているので、2階の文房具や画材、クラフト用品コーナーを重宝しています。画材以外にもなんでもそろっているので、特に目的がなく店内を歩いているだけでも楽しいと思います。以前も消しゴムハンコやUVレジンを見つけて、つい買ってしまいました。近所にこういう場所があると、趣味の幅が広がりますね」

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ジョイフル本田千葉ニュータウン店。敷地内のCafe Boulangerie Couronne CHIBA-NEWではドッグランが併設されている

――他にも千葉ニュータウンでよく行かれる場所はありますか?

「『BIG HOP』ですね。スーパーや飲食店、洋服屋、本屋、雑貨屋などが入る複合施設です。私は家より外のほうが仕事がはかどるので、よくBIG HOP内のカフェで漫画を描いています。あと、私は行かないけど、施設内に観覧車や屋内動物園といった遊園施設もそろっていますよ」

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BIG HOPガーデンモール印西。印西市役所も入る

「あとは、印西市の図書館もよく利用しています。読みたい本を借りたり、漫画の題材について調べ物をしたりすることが多いです」

――創作するにはいい環境ですね。先ほどおっしゃっていたように広い公園もあるので、気分転換もできますし。

「まあ、私はあまり行かないですけどね。子どもが多い日中の公園に1人でいると不審者だと思われるかもしれないので(笑)。でも、『メイク インザイ オリジナル(※)』の撮影で訪れた『牧の原公園』は素晴らしいと思いました。公園の中心に標高41mの築山があり、そこから千葉ニュータウンの街並みが一望できるんです。整然とひたすら住宅が並んでいる景色がとても綺麗でしたね。東京から来られたカメラマンの方もすごく感動していましたよ」

※メイク インザイ オリジナル…印西市民の手で“印西らしさ”を一緒につくる、市のPRプロジェクト

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築山の頂上からの景色

近所で観た「カワセミ」の美しさに感動

――開発された千葉ニュータウンの利便性に注目が集まりがちですが、自然環境も豊かですよね。

「はい。特に、千葉ニュータウン方面に比べ、私の地元には今でも自然が残っています。最近、野鳥を観察するのが好きなんですけど、調べてみたら地元にも白鳥やシジュウカラ、ジョウビタキなど多くの野鳥が生息していることが分かったんです。たまたま、近所の利根川沿いで生のカワセミを見たときは嬉しかったですね。めちゃくちゃ綺麗な青緑色で、その美しさに感動しました。あらためて、ここが地元でよかったなと思った瞬間ですね」

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写真提供:中村ゆうひ

――市内には他にも、バードウォッチングや自然に親しめるスポットはあるのでしょうか?

「毎年冬に白鳥が1000羽以上も飛来するといわれる『白鳥の郷」や、樹齢300年を超える一本桜の『吉高の大桜」などが有名ですね。ただ、正直これだけ長く住んでいても知らない場所も多いです。印西市は平成22年に印旛村・本埜村と合併したのですが、旧印旛村・本埜村のあたりは小学校でも習っていませんし、私にとっては未開の地。今度ゆっくりこのあたりを散歩してみたいです。新しい野鳥や美しい風景に出合えるかもしれません」

――散歩がお好きなんですか?

「散歩は習慣ですね。特に街の北側は利根川と接しており、そこには土手がずっと続いています。土手からの見晴らしがよく、晴れた日には富士山が見えます。特に印西から離れてみたときに、あらためて地元の風景が美しいと感じます」

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写真提供:中村ゆうひ

「小学生時代の景色」が眺められる、とっておきの場所

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千葉ニュータウン中央駅前。マンション群にくわえて、ビジネスホテルや商業施設が充実

――今後も印西市は発展しそうですが、地元民としては変わらないでいてほしい部分もあるのでしょうか?

「そうですね。確かに、この10年で何もなかった土地に住宅や商業施設が建ち、街として成熟したと思います。これからも千葉ニュータウンのエリアを中心に、どんどん街が発展し、人が増えそうな気配も感じます。便利になるのはありがたいけど、変わらないでいてほしい風景もありますね。例えば木下地区の名物である、おせんべい屋さんはずっとなくならないでほしい。実家の近所にも数軒あって、子どものころはよく親と買いに行きました。割れてしまったおせんべいの欠片をたまにくれて、それがとても美味しかったんです。

あとは、私が通っていた小学校の近くに整備された『木下万葉公園』からの風景。今は小学校に入ることはできませんが、公園の高台からは小学生時代に見ていたのとほぼ同じ景色が広がっているんです。ここも、いつまでも残っていてほしい景色ですね」

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写真提供:中村ゆうひ

――お話を伺っていると、中村さんの強い地元愛を感じます。今後、印西市に住み続けたいですか?

「今はまだ決めていません。ただ、いつか私に家族ができたら、ここに根を下ろしたいと思っています。

ただ、正直ずっと暮らしていると、地元のよさって見えてきづらいですよね。私自身、以前は地元には誇れるものなんてないと思っていましたから。でも、他の街のこともいろいろ知った上で地元を見ると、自然環境はもちろん、整然とした住宅街や立ち並ぶチェーン店にさえ、安心感を覚える。見慣れた風景だからこそ“これでいいんだよ”って思えます。何より、ずっと印西市でのびのびと暮らしている家族の姿を見ると、ここに住み続けたら幸せそうだなって感じてしまいますね(笑)」

インタビューと文章: 小野洋平(やじろべえ)

 小野洋平(やじろべえ)

1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服がつくれず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。Twitter:@onoberkon 50歳までにしたい100のコト