思い出のつまった街を盛り上げていきたい/吉祥寺歴20年の久保田涼子さん【私がここに住み続ける理由】

インタビューと文章: 小野洋平(やじろべえ)  

あなたが、その街に住み続ける理由は何ですか? 便利で暮らしやすい。好きなお店がある。自然環境が豊か。街並みが美しい。住民同士の結びつきがある。これ以外にも、きっとさまざまな理由があると思います。そんな、一つの街に長く住む人にフォーカスする「私がここに住み続ける理由」。

今回、お話を伺うのは、広島から上京してから約20年間にわたり吉祥寺で暮らす久保田涼子さん。フリーランスのWebデザイナーやシンガーソングライターとして活動する久保田さんの吉祥寺への想いをお届けします。

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地元を感じた商店街。心落ち着く井の頭公園

――大学への進学で上京された久保田さん、吉祥寺を選ばれた理由とは?

久保田涼子さん(以下省略)「大学が近かったからですね。上京前は吉祥寺がどんな街かも知りませんでした。ただ、広島の知り合いに初めて東京を案内してもらったときに井の頭公園に連れて行ってもらって、『こんな素敵な場所が東京にもあるんだ』と思いました。あのときの桜並木は今でも鮮明に覚えています」

――実際に暮らし始めてみて、印象はどう変わりましたか?

「住んでみたら、とっても生活がしやすくて。吉祥寺には『吉祥寺サンロード商店街』というアーケード商店街があるんですけど、私の故郷・広島にも『本通り』と呼ばれる、同じようなアーケード商店街があります。幼いころから慣れ親しんだ風景を、東京でも見ることができたのは嬉しかったです。ちなみに広島FMの周波数は78.2MHzで、むさしのFMも78.2MHz。なんだか不思議と親近感が湧いたんですよね。気付くと吉祥寺に棲み着いてから20年が経っていました(笑)」

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吉祥寺駅北口に広がるサンロード商店街

――それほど暮らしやすかったということですよね。思い出の井の頭公園には、今も行かれますか?

「行きますよ。子どもがいる友人が遊びに来たときは『井の頭自然文化園』へ動物を見に行ったり、『ペパカフェフォレスト』でランチをしたり。『ペパカフェフォレスト』は、オープンカフェなので新緑の季節は特にオススメです。コロナ禍では運動をするために、井の頭公園でよく散歩をしていました。身近に自然が感じられる場所があるのは、とても助かりましたね」

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エスニック料理が楽しめるペパカフェフォレスト

――公園内でもお気に入りのスポットはありますか?

「池にかかる『弁天橋』がとても好きです。平日は人が少ないので、よく1人で来ています。弁天橋からは『井の頭弁財天』や噴水を眺めることができます。なかでも、橋から見る木々は好きな景色です。四季が感じられ、東京とは思えないような静けさがあるんですよ。頭の中を整理したいときや、心を落ち着かせたいときには決まって訪れています」

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左に見える橋が弁天橋。秋には紅葉も楽しめる 写真提供:久保田涼子

――他に好きな街中の景色はありますか?

「『吉祥寺サンロード商店街』から東急百貨店までの一本道があって、その場所から見る夕焼けが好きです。東急百貨店の裏に夕日が沈んでいく様子はとても綺麗です。通りがけに見えたときは、すかさず撮影しちゃいます」

いつまでも残ってほしい、お気に入りの個人店

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――吉祥寺は住みたい街ランキングでも常に上位にランクインしています。久保田さんは、人気の理由についてどうお考えですか?

「都会でもなく、田舎でもない、程よい住環境が整っているので人気なのは頷けますね。吉祥寺は駅周辺にスーパー、八百屋、薬局、病院、家電量販店などが集まっています。そこまで移動せずに必要なものがそろうので、生活に不便はないですね。駅の徒歩圏内には『PARCO』『コピス』『アトレ』『東急百貨店』などの商業施設が充実しています。今はもうなくなっちゃいましたけど、大学生のころは『伊勢丹』でアルバイトしていました」

――そうだったんですね!何のアルバイトを?

「最上階にあった、ファミリーレストランでバイトをしながら、大学に通い、プロの歌手を夢見ていました(笑)。お金もあまりなかったので、賄いが本当にありがたくて。なんだか懐かしいですね」

――学生時代の思い出ですね。今でも当時から通っているお店はありますか?

「はい。落ち着いた喫茶店『くぐつ草』、モーニングが人気の『チャイブレイク』などは学生時代から通っているお店です。吉祥寺は良くも悪くも移り変わりが激しい街なので、行きつけだったお店のいくつかはなくなってしまいました。ただ、個性的なお店が続々とオープンしているので『吉祥寺ファンページ』や『キチナビ』という情報サイトを参考にして、日々お店の開拓をしています。最近のお気に入りは、食事ができる古道具店『四歩』です」

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チャイブレイクのモーニング 写真提供:久保田涼子

――吉祥寺は店主の個性を感じるお店が多いイメージです。

「そうですね。地元に帰ったような気持ちになる定食屋『コペ』は、元気なお母さんたちが切り盛りしているお店です。とにかく味、値段、ボリューム、どれをとっても大満足です。お気に入りの『鳥とネギの玉子とじ定食』を食べながら、みんなでニュースを見ながら、ああだこうだとしゃべる時間がすごく好きです」

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久保田さんの定番メニュー「鳥とネギの玉子とじ定食」

――そういう肩肘張らなくていい空間っていいですよね。他にお気に入りのお店はありますか?

「『CafeBar Bloomoon』ですね。何を食べても美味しいし、店内でイベントが企画できます。コロナの前は、他にも飲食店の中でライブが出来る場所が沢山あったイメージです」

――久保田さんも「CafeBar Bloomoon」でライブをされたことはあるんですか?

「2018年と2019年に2回ライブをさせていただきました。とても協力的な店長さんで『当日限定メニュー』などを一緒に考えてくださいましたよ。スペースを貸すだけではなく、人対人でかかわるところが吉祥寺らしい魅力だと思います。ライブを機に仲良くなって、今ではカウンターに座って悩み相談をするくらい仲良くなりました(笑)」

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CafeBar Bloomoonで行ったライブ風景

住民から街への愛が感じられる

――個性的なお店が多いからか、街に多様性と活気がありますよね。

「そう思います。活気ある街の雰囲気は、住んでいる人たちや吉祥寺を訪れている人たちがつくっていると感じます。コロナ前は秋祭りやイベントも多くありました」

――印象に残っているイベントはありますか?

「私もアーティストとして参加した『吉祥寺音楽祭』です。いつもGW中に行われているのですが、ライブハウスや駅前広場につくられたステージなど、吉祥寺のあちこちでライブが行われるんです。個人的にも新しい視点で音楽活動ができるようになったので、とても好きなイベントの1つです」

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――地域の方ともつながれたのでしょうか?

「実行委員会の中には、吉祥寺でお店を営んでいる方もいらっしゃったので、音楽祭をきっかけに遊びに行ったことがあります。地域の方々と仲良くなれるきっかけがあるのは嬉しいですよね」

――同じ場所で暮らす人とつながりをもてるのは、刺激的ですし、ワクワクしますよね。

「はい。気さくな方が多いので、人と人がつながりやすいのかもしれません。買い物の利便性や自然の豊かさ、都内へのアクセスなどは、住みたい街で上位にランクインする理由の1つだと思いますが、『街は人がつくる』と思うので、吉祥寺に集まる人たちが、街自体の魅力や居心地の良さをつくっているのではないでしょうか。

サンロード商店街で子ども食堂をしているカフェや、地元の小学校の先生たちが主催して人をつなげているコミュニティなどを見ていると、“私もこの街で何かしたい”という気持ちになります。今、南口にあるWEBデザインスクールに勤務しているので、スクールの受講生と地元のお店をつないで、クライアントワークを行うのもいいかもしれませんね(笑)。これからも、ずっと住み続けていきたいです」

インタビューと文章: 小野洋平(やじろべえ)

 小野洋平(やじろべえ)

1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服がつくれず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。Twitter:@onoberkon 50歳までにしたい100のコト