リフォームで壁紙を上手にコーディネートすれば、目的や用途、好みに合わせた理想の空間をつくることが可能です。今回は壁紙リフォームのポイントやコーディネートのコツなどを、サンゲツ スペースプランニング部門 ゼネラルマネージャー室 ショールーム課の銅直貴江さんに伺いました。壁紙リフォームのおしゃれな実例もご紹介します。

記事の目次
壁紙の耐用年数は使い方次第
壁紙の耐用年数は、5年~10年程。ただし、耐用年数は環境や使い方次第で変わります。
「湿気が多かったり、紫外線が当たりやすかったりという環境だと壁紙の劣化は早くなるため、同じ家の中でも、どこに張られているかで傷みや汚れが気になるタイミングが変わります。
また、壁紙は素材ごとにお手入れの方法が異なる上、水まわりと大人の寝室など、お部屋の用途によってお手入れの頻度も違います。使用場所やお手入れの方法、頻度など、それらの組み合わせによって、壁紙の寿命は変わってくると考えておきましょう」(サンゲツ・銅直さん、以下同)
ある程度時間がたって、剥がれやヒビ、傷み、変色などが見られる場合は、壁紙の張り替えリフォームを考えましょう。

リフォーム予算に合わせて壁紙のグレードを選ぼう
6畳程度の壁紙リフォームの相場は約5万~7万円
壁紙リフォームは1m2当たりの材工費(材料費+施工費)で見積もりをするのが一般的です。トイレや水まわりなど、狭いスペースのみを部分的に張り替える場合は、手間代も含めた一式の価格で見積もることもあります。
費用の目安としては、スタンダードなビニールクロス1m2当たりの材料費は1200円程度。それに施工費などがプラスされます。6畳程度の部屋の材工費を考えると、壁紙の張り替え費用の相場は約5万~7万円が相場です。もちろん、グレードの高い壁紙を選べば1m2当たり5000円を超えるものなどもあるため、選ぶ壁紙によってリフォーム費用はアップします。
リフォームでは厚手の壁紙が正解
既存の壁紙を剥がして新しい壁紙を張る場合、下地が整っていないと、新しく張った壁紙の上から下地の凹凸が目立ってしまうこともあります。下地処理に手間がかかったり、施工するのに技術が必要だったりする場合はリフォーム費用に影響することもあるため、下地をひろいやすい薄い壁紙よりも、リフォームの場合は厚手のクロスが安心です。
壁紙は家具や床の色と合わせて考えよう
家具や床の色とのバランスを考えて壁紙をコーディネートすることで、統一感のある空間をつくることができます。
「リフォームの場合は、床や建具などを既存のものをそのまま使うこともあると思いますが、そういった場合はその色調に合った色の壁紙を選ぶとまとまりのある空間をつくりやすくなります」
例えば、シンプルな白の壁紙を選びたいという場合も、実は薄いベージュや薄いグレー、グレージュなどさまざまなバリエーションの“白っぽい”壁紙があるものです。どのような“白”を選ぶかは床材などの色味と合わせて選ぶのが肝心です。
「ナチュラルな色味の床材は、真っ白な壁紙やアイボリーに近い明るめの白、また、黄味がかったものまで、幅広い色味の壁紙と比較的合わせやすいものですが、床材がダーク系の場合、真っ白というよりは薄くグレーが入っている壁紙の方が合わせやすくなります。
また、少し赤味の強いフローリングの場合は、青みがかったグレー系の壁紙などにすると、床も壁もくすんで見えてしまうので、黄みを帯びた色や、ベージュ系のものにするとなじみやすくなります」

部屋別・壁紙コーディネートのポイント
同じ住まいでも、場所ごとに用途や過ごす時間は違うため、クロスの選び方も変わります。ここからは、部屋や場所ごとの壁紙コーディネートのポイントをみていきましょう。
リビングの壁紙・色や柄の選び方
リビングは家の中でも家族みんなが長く過ごしたり、お客様を通したりする場所。そのため、誰にでも好まれるようなシンプルな白や落ち着いた淡い色味のクロスをコーディネートすることが多いものですが、壁の1面だけアクセントとして色や柄の壁紙を取り入れて、好みの空間をつくりたいというケースも少なくありません。
「リビングにアクセントクロスを取り入れる場合は、アクセントクロスを取り入れて壁紙が映えるような壁面があるかどうかがポイントです。大きな窓があったり、収納家具などが置いてある面ばかりで、アクセントクロスがあまり内装のポイントにならないという場合は、部屋の全面に色や柄の壁紙を入れるという選択肢を考えてもいいかもしれません」
リビングに色を取り入れる場合はインテリアになじみやすいナチュラルなカラーが人気で、最近ではくすみのある緑や黄色、テラコッタカラーなどで、優しい雰囲気の壁紙を選ぶ人が多いそうです。

空間のアクセントとして、“色”を取り入れるという以外にも、木目調や石目調など、自然素材のような表情を楽しめる壁紙をコーディネートする方法もあります。
「コロナ禍を経てステイホームが日常になって以来、家の中でも自然に近いものを感じたいという人も多く、木目調や石目調などの壁紙を取り入れたいというケースが増えています。
木目調や石目調などの壁紙を取り入れる場合も、床材や建具などと色調を合わせるという点は気をつけたいポイントで、例えば同じ木目調でも、いろいろな種類のものが同じ空間にあるとちぐはぐで落ち着かない雰囲気になってしまうこともあります。また、木目と石目など、素材が違うものを掛け合わせる場合も、ある程度色調をそろえると心地よい空間をつくりやすくなります」

寝室の壁紙・色や柄の選び方
プライベートな空間である寝室は、住む人の好みをより反映させやすい場所です。
「寝室の壁紙として選ばれる色柄は千差万別です。好みの色や柄の壁紙を大胆に取り入れる人も少なくありませんが、その場合はリネン類やカーテンなどとのバランスを考えてコーディネートするのがオススメです。
例えば、花柄が好きだからといって、壁紙だけでなく、リネン類やカーテンまですべてに花柄を取り入れてしまうと、落ち着かない空間になってしまうこともあります。柄物のクロスを使うのであれば、クロスの柄に合わせて、同じ柄でも色数の少ないものを合わせたり、無地のものを入れたりすることでまとまりがでます」
インテリアに色を取り入れる場合のコツとしては、色は3色程度までに抑えること。3色をバランスよく組み合わせることで、空間に統一感を出しやすくなるそうです。
例えば、壁紙や床材など、まず面積が広いところで1色。このベースカラーは70%~75%が目安です。さらに、ベースカラーを引き立てるアソートカラーを、寝室であればベッドカバーなどで15%~20%。あとはアクセントカラーとして差し色になるような色をクッションや絵画、小物類で5%~10%という具合に配分するとコーディネートがうまくまとまります。

広々とした明るい雰囲気が求められることの多いリビングとは対照的に、寝室はリラックスできるような雰囲気を出すために、あえておこもり感を演出できるような濃色のクロスを取り入れることもあります。
「天井に濃い色などを入れると天井が低く感じられたり、圧迫感が出ることがありますが、その分落ち着いた雰囲気を演出することもできます。寝室の場合は、あえて天井にも色を入れるというコーディネートにすることも多いです」

子ども部屋の壁紙・色や柄の選び方
結婚や子どもが生まれる時期に住まいを購入するケースは多いので、子どもが小学生の頃に壁紙リフォームのタイミングを迎える家庭も少なくありません。小学生くらいになると、子ども自身の好みや、部屋の使い方が幼児期とは変わるため、どのような壁紙を選ぶのがいいのか、頭を悩ますことも多いでしょう。
「子どもが小さかったり、これから生まれたりという場合は、いずれ壁紙を張り替える前提で、子ども部屋にはかわいらしい柄物のクロスなどを取り入れることもあります。一方、気軽に壁紙を張り替えることは難しいということであれば、北欧テイストのものなど、世代を問わないかわいらしい花柄やストライプなどを選べば、子どもが成長しても引き続き使用しやすく安心です。
また、部屋全体に子どもらしい柄物を使うことに尻込みしてしまうという場合は、扉を閉めてしまえば見えなくなるクローゼットの中などであれば取り入れやすいと思いますし、壁紙はベーシックなものを選び、取り換えやすいカーテンなどで子ども部屋らしい要素を取り入れるという方法もあります」


小学生になって部屋に学習机を置くなど、子ども部屋は成長に合わせて使い方が変化するため、レイアウト変更もよくあります。家具を移動したりするときに、キズが付きにくいような機能性壁紙や、学習にも役立つような黒板クロスを取り入れるのもオススメです。
「黒板のようにチョークで書いたり消したりできる壁紙は黒だけでなく、カラフルなラインナップがそろっています。」
黒板クロスはエンボス加工や表面のフィルムにより、チョークで書き消しできるようになっているため、リフォームの場合は下地の状態によっては施工が難しい場合もあるそうです。

キッチンの壁紙・色や柄の選び方
キッチンは水や油などで汚れが気になりやすいので、お手入れがラクになるような機能性壁紙を取り入れることも多い場所ですが、やはりキッチンにも色や柄にこだわった壁紙をコーディネートして楽しみたいということもあるでしょう。
しかし、キッチンは意外と壁紙が見える面が少ないケースが多いもの。色や柄の壁紙を取り入れたいということであれば、柄の大きさや施工する場所に気を付けるといいと言います。
「広々としたキッチンであっても、実際は冷蔵庫や収納棚などで壁紙が見える面積が少ないこともあります。その場合、あまり大きな柄の壁紙を取り入れても、柄が隠れて見えなくなってしまうので、大きな柄のものよりも、タイル柄など、細かい模様の壁紙の方がオススメです。また、あえてビビッドな色のクロスを入れて部分的にのぞかせるようにするのも効果的です。
そのほかにも、壁ではなく、キッチンカウンターのリビング・ダイニングから見える面にクロスを張ったり、下がり天井の部分にだけ木目調のクロスを張ったりするのも、インテリアのアクセントになってすてきです」


トイレ・洗面所の壁紙・色や柄の選び方
トイレや洗面所もキッチン同様、お手入れなどがラクになる機能性壁紙がよく選ばれる場所ですが、トイレも洗面所もプライベートな空間なので、機能性よりも好みの色や柄を優先して壁紙をコーディネートする人も多いようです。
「トイレはリビングなどに比べると過ごす時間が短いので、ある程度個性的な壁紙を取り入れても飽きるという心配が少なく、好みの色や柄を取り入れやすいと思います。最近はトイレの衛生陶器も白とは限らず、グレーやベージュなど色もさまざまなので、トイレだから白い壁紙ということではなく、全体的に濃い色の壁紙をコーディネートしたりするのもよいと思います。
また、洗面所などには、木目調とボタニカル柄をかけ合わせたり、柄の凹凸やラメ感、パール感などがある壁紙を取り入れたりするのも人気があります」
なお、トイレに濃い色の壁紙を取り入れることで、シックな雰囲気やおこもり感のある空間を演出することもできますが、全面に黒などの濃い色の壁紙をコーディネートしてしまうと水洗に使うリモコンが反応しづらくなることもあるため、リフォーム会社と相談の上選ぶのが安心です。


廊下の壁紙・色や柄の選び方
玄関から続く廊下は、シンプルな白い壁紙がコーディネートされているのをよく見かけますが、汚れたりキズがつきやすい場所でもあるので、汚れやキズが目立ちにくい壁紙を取り入れることで、安心感もおしゃれ感もアップすることができます。
「細長い空間を広く見せたいという場合は、白などの明るい色の壁紙を選ぶと開放感のある空間を演出できます。
一方、最近は土間や廊下を広く取って、自転車やベビーカーなどを屋内に置いているお家も多いと思います。そのような場合は、汚れやキズに強いタイプで、汚れたりキズがついても目立ちにくい壁紙を取り入れると安心です」
玄関土間や床などとの調和も考えて、木目調や石調などの壁紙を取り入れれば、空間をおしゃれな雰囲気に演出するだけでなく、キズや汚れも柄に紛れることで目立ちにくくなります。

また、廊下はあまり暗い雰囲気にならないよう、天井だけでも明るい壁紙にしておくといいそうですが、窓があるなど光が入る場合は、壁紙に凹凸があるようなものを選ぶと、光を効果的に使うことができます。
「タイルや天然素材を思わせるようなテクスチャー感のある壁紙は光が当たると陰影ができ、暗くなりがちな廊下に雰囲気を出すことができます」

壁紙リフォームの実例
ここからは、壁紙リフォームで実際にこだわりの空間を実現させた施工事例を見てみましょう。
【実例】ナチュラルなインテリアと調和するブルーグレーのアクセントクロス
オープンキッチンのある開放的なLDKの壁には空間を引き立てるシックなブルーの壁紙を採用。床や建具などのナチュラルデザインをブルーグレーのアクセントカラーが引き立てます。また、タイルや左官仕上げの壁など、異なる色や素材が上手くまとまり、居心地のよい空間になっています。
リビング隣の寝室のベッドヘッド部の壁にもアクセントになるデザインクロスを張り、リビングから見える内窓にクロスの模様が映る遊び心のある設計もポイントです。


【実例】落ち着いたグリーンのクロスで、LDKに温かみをプラス
3階建ての2階全体を広々としたLDKに変更。独立型だったキッチンは対面式のⅡ型キッチンにし、家族が集う開放感のあるLDKになりました。キッチンカウンターとリビング・ダイニングのアクセントクロスには深みのあるグリーンの壁紙を採用。木目調の天井やネイビーの扉など、インダストリアル調のインテリアともうまく調和しています。
3階には3つの洋室を配し、それぞれの部屋には用途や好みに合わせて異なる壁紙をセレクト。お気に入りのデザインに囲まれて日常を楽しめるような住まいになりました。


【実例】色や柄の壁紙を効果的に取り入れ、おしゃれとコストダウンを両立
ブルーグリーンやイエローのアクセントクロスを取り入れながら、手持ちの家具に合う落ち着いた色合いでまとめたLDK。レトロな雰囲気の既存の建具やガラス窓などをあえて残し、おしゃれとコストダウンの両方を叶えました。
構造上抜くことができない柱はデザインとして活かし、施主自らタイルで装飾。Rの下がり壁の奥のパントリーに張られたレトロなボタニカル柄の壁紙が、さりげなくインテリアのポイントになっています。


住まいの雰囲気は壁紙で大きく変わります。リフォームでは、用途や理想のイメージに合わせて、壁紙のコーディネートを楽しんでみてはいかがでしょうか。
【まとめ】壁紙リフォームでは、用途や好みのイメージに合わせてコーディネートしよう
壁紙の耐用年数は使用環境にも左右されますが、汚れや剥がれなどが気になってきたらリフォームを検討するタイミングです。リフォームの場合は、既存の壁紙を剥がして、新しい壁紙を張るため、下地の調整に費用や手間がかかることもあります。薄手の壁紙を選ぶと下地をひろいやすくなるため、リフォームの場合は厚手の壁紙の方が安心です。また、壁紙を選ぶときには、床や天井などの色調も考えてコーディネートすると空間に統一感がでます。既存の床や建具を活かすリフォームの場合は、そこに合わせて壁紙の色を選ぶのがオススメです。なお、リビング・ダイニング、寝室、子ども部屋、トイレ・洗面所、廊下などでは、過ごす時間や用途が異なるもの。それぞれの用途などに合わせながら、自分の好みも取り入れて上手にコーディネートすれば、壁紙リフォームで住まいを理想の空間にすることも可能になります。
構成・取材・文/島田美那子