キッチンをリフォームするとき、タイルを取り入れることで、キッチンをおしゃれな空間にしてみませんか?キッチンに合わせたタイルの選び方や張り方、コーディネート術について、スタイル工房のプランナーの和田さんに伺いました。
記事の目次
キッチンタイルとは
タイルは板状の焼きもので、壁や床の仕上げなどに使われる材料です。キッチンタイルは色やデザインも豊富なので、組み合わせ方次第で、ほかにはないオリジナルのキッチンをつくることができます。
タイルの特徴
タイルはデザインが豊富で、火や熱、水にも強い
タイルの魅力はなんといっても、そのデザイン性の高さです。色や質感、柄などのバリエーションが豊富で、取り入れるだけでおしゃれな雰囲気を演出することができます。
「お部屋に対してキッチンがどのようにレイアウトされているかにもよりますが、リビングからキッチンの壁が見えるようなプランの場合、キッチンのインテリア性も重要になります。
キッチンに好きな色を取り入れて好みの空間にしたいという場合、システムキッチンの扉などに色を取り入れる選択肢もありますが、設備は価格も高いものなので、個性的なカラーのものを選ぶと飽きがくるのではと、尻込みしてしまうという人も少なくありません。
そのような場合、カラーもデザインも豊富なタイルはおすすめの選択肢のひとつです。好みの素材感や色味のタイルをキッチンに取り入れることで、キッチンのインテリア性を高めることができます」(スタイル工房・和田さん、以下同)
また、タイルは主に陶器や磁器、ガラスといった素材のため、火や熱、水などに強く、キッチンに使用しても安心です。コンロ近くの壁面などに施すこともできます。
「タイルは耐熱性、耐水性があり、硬い素材で耐久性もあります。ツルツルした表面のタイルであれば、汚れもさっと拭き取ることができるのでお手入れも簡単です。
表面がざらざらしたタイルの場合は雑巾等の繊維が引っかかりやすいので、汚れを拭き取ることは難しくなりますが、経年のくすみなども独特の風合いとして楽しめるので、あまり気にせず長く使っていただけると思います。
なお、タイルは耐久性がある素材ですが、衝撃には弱く、割れたり、欠けたりということもあります。特にガラスモザイクタイルなどは割れやすいので、カットが不要な割り付けにしたり、ものがぶつかったりする場所に施工するのは避けた方がいいでしょう」
お手入れに関しては、目地の部分の汚れなどは放置しておくと汚れが染み込んで落ちにくくなるので、汚れがついたときにはすぐに拭き取るなど、こまめなお手入れを心がけておくと安心です。
キッチンタイルの種類
タイルは色だけでなく、形やサイズも多種多様です。キッチンの内装で使われる代表的なタイルには、サブウェイタイル、モザイクタイル、デザインタイルなどがあります。
サブウェイタイル
長方形のシンプルなタイルでサブウェイタイルと呼ばれるものは、キッチンのリフォームでよく採用されるタイルです。
「サブウェイタイルの定番の色は白ですが、グレーや黒などもあります。シンプルな色味のものが多いサブウェイタイルですが、例えば同じ白でも、光沢のあるものやマットなものなどさまざまなものがあるので、イメージに合うものも見つけやすく、どんなインテリアにも合わせやすいのが特徴です」
モザイクタイル
タイルの1辺が小さく、組み合わせ方次第でさまざまなデザインを表現できるのがモザイクタイルです。
「モザイクタイルは焼きもののタイル以外にも、ガラスに色をつけたガラスタイルなどもあります。鮮やかな色のものから淡い色、メタリックなものなど質感もさまざまです。
キッチンにモザイクタイルを取り入れる場合、あえてレトロな雰囲気のあるタイルをセレクトして、ヴィンテージ感を演出するようなケースもよく見かけます」
デザインタイル
デザインが施されたタイルというとメキシカンタイルのようなエキゾチックで鮮やかな柄のものが思い浮かびますが、そのほかにもさまざまな柄、色、形のものがあります。デザインタイルは個性的なスタイルのキッチンを演出するのにピッタリです。
「海外の職人によるハンドメイドのタイルなどのほかにも、最近ではタイルにデザインをプリントした木目調や石目調、ファブリック調などさまざまなデザインのタイルがあります」
キッチンタイルの張り方
キッチンタイルは張り方によっても仕上がりの雰囲気は大きく変わります。
「タイルを張るときは、タイル自体のサイズと施工する場所に合わせて、そのタイルを一番美しく見せるために何枚のタイルを何㎜の目地でどのような張り方で張るかという割り付けを行います」
まっすぐ並べたり、ずらしたり、斜めにしたりと張り方にはバリエーションがあるので、主な張り方について見ていきましょう。
芋張り(通し目地、芋目地)
芋張りとは縦も横も目地をそろえて一直線に張る張り方です。通し目地、芋目地などとも呼ばれます。
「縦横のラインがそろっている張り方になるので、計画的にきちんと張られている整った印象になります」
馬張り(破れ目地、馬目地、馬踏み目地)
段ごとに半分ずつずらして張るのが馬張りです。破れ目地、馬目地、馬踏み目地などと呼ばれることもあります。
「馬張りは縦にずらして張るか、横にずらして張るかでも表情が変わります。芋張りよりもアクセントのある張り方なので、広い面積に採用する方が張り方の特徴がわかりやすく効果的です」
そのほかにも、タイルを斜めに張る四半目地やヘリンボーンなどの張り方などもありますが、斜めに張る場合はタイルの端を必ずカットする必要が出てきます。
「タイルを斜めに張る張り方はタイルを張った部分が主役になるような個性的なスタイルにすることができます。
ただし、斜めに張る場合は施工現場で職人がタイルの端をカットする処理などが必要になるため、施工費が高くなってしまうこともあります」
目地の幅や色
タイルの張り方によって目地の見え方に違いが出てきますが、それだけでなく、目地はその幅や色をどうするかで仕上がりの印象に大きな差が出てきます。
「目地の幅は数㎜違うだけで印象は変わり、例えば目地が細いとよりシャープでスマートな印象に、逆に目地が太くなると柔らかくカジュアルな雰囲気になります。
さらに、目地は幅だけでなく、その色も仕上がりの印象を左右します。よく使用されるのは白やグレーですが、製品によってはカラフルな選択肢の中から選べるものもあります。
目地とタイルの組み合わせの例をあげると、濃い色のタイルと白い目地でメリハリが強くつきすぎてしまうのが気になるという場合は、目地の色もタイルの色と同じような濃い色のものを選ぶと、タイルと目地の雰囲気を馴染ませることができます。逆に白いタイルにあえて黒い目地を組み合わせてコントラストをつけるようなケースもあります」
タイル自体の色と目地の色の組み合わせで無数のパターンがあるので、イメージに合わせてコーディネートを楽しむことができます。
キッチンタイルのコーディネートのポイント
キッチンにどのようにタイルを取り入れるとイメージ通りのおしゃれな空間になるのでしょうか。コーディネートのポイントを見ていきましょう。
ポイント1 キッチンタイルを張る場所
キッチンにタイルを張る場合、キッチンの壁全面にタイルを施すこともありますが、カウンターキッチンの背面の壁や腰壁、コンロ周りなど、部分的に取り入れるケースも少なくありません。タイルをキッチンのどこに取り入れるかによって、タイルの存在感や醸し出す雰囲気も変わります。
「カウンターキッチンの背面に飾り棚などがある場合は、タイルを棚に合わせてコーディネートするとリビング・ダイニングからも見える位置になるので、キッチンのインテリアのポイントになります。木の棚とタイルは相性もピッタリです」
「腰壁にタイルを張る場合は、キッチンの背面に張るよりもリビング・ダイニングとの距離が近くなるので、タイルの存在感はより強調されます。タイルの装飾性をより身近に感じたい場合は腰壁にタイルを張るのもおすすめです。
腰壁の全面でなくても、腰壁にニッチを設けてニッチの内部にタイルを施すなど、壁に絵を飾るような感覚で好きな色のタイルなどを張るとインテリアのアクセントになって素敵だと思います」
キッチンの背面の壁や腰壁と違い、コンロ周りや腰壁の内側などはリビング・ダイニングからは見えにくい場所ですが、キッチン内で作業するときによく目に入る場所です。リビング・ダイニングへの影響は少なくても、好きな色柄のタイルを取り入れることで、さりげないおしゃれを楽しむことができます。
ポイント2 キッチンタイルを張る面積
タイルを張る面積が広いほど、タイルの存在感は大きくなります。
「シンプルな白いタイルなどは張る面積が広くても、それほど主張は強くなりませんが、デザイン性のあるタイルや個性的な張り方をする場合は、広い面積になるほど、その特徴もわかりやすくなります。
また、タイルの場合は一枚一枚の形や色が微妙に違っていたり、独特の風合いやクラフト感があるため、デザイン性のあるものや濃い色のタイルを広い面積に張っても、ふぞろいな形がよい味となり、それほど圧迫感を感じません。空間全体の雰囲気に合わせて目地の色をコーディネートすることで、インテリアに馴染ませることもできます」
ポイント3 色の取り入れ方
キッチンには白など清潔感のあるタイルを採用する以外にも、カラフルなタイルをポイントとして取り入れることも少なくありません。タイルの場合はどのような色でも、一枚一枚の色の揺らぎや光の反射の仕方などで強すぎる印象になることはないので、比較的自由に好きな色を取り入れやすいといいます。
「キッチンに取り入れるタイルのカラーは、好きな色を自由に取り入れるのがいいと思いますが、色選びに悩む場合はブルー系の色味のタイルなどはどのようなインテリアにも馴染みやすくおすすめです。ブルー系のタイルは水回り向きなだけではなく、リビング・ダイニングのフローリングなどの木質感とも相性がよく、広い面積に取り入れても、まとまりのある空間をつくりやすいと思います」
また、インテリアのテイストによってはタイルで色を取り入れたくても、タイルの質感がインテリアのイメージと合わないのではと思うこともあると思いますが、どのようなテイストのインテリアでもタイルで色を取り入れるのは難しくないといいます。
「例えば、都会的なシャープなイメージのインテリアの場合などでも、ゴージャスな雰囲気が演出できるようなラメが入ったデザインのものやシックな色味のタイルであればうまく調和します。上品な色味のモザイクタイルの中にメタリックなタイルをポイントで入れたりするのも、モダンな空間のアクセントになるのではないでしょうか。
どのようなインテリアのテイストであっても、タイルは色や質感のバリエーションが豊富なので、そのインテリアに合う好みの色のタイルは見つかると思います」
キッチンにタイルで色を取り入れる場合、複数の色を取り入れたい場合もあると思いますが、その場合はキッチンだけでなく、リビング・ダイニングと合わせた空間全体でどう見えるかという点を注意しておけば、多色使いをしてもまとまりのある空間をつくることができるといいます。
「ダイニングとつながる壁には黒いシックなタイル、コンロ近くのお手入れしたい壁には白い艶のあるタイルというように、全く違う色や質感のタイルを取り入れても、例えばLDKの空間全体でデザインテイストをまとめると、統一感が出るのでちぐはぐな印象にはなりません。
キッチンに複数の色を取り入れる場合は、リビング・ダイニング全体とのバランスを考えるのが肝心です。
ただし、強い色のタイルを何色も使いたいとなると難易度は高くなるので、そのような場合はグレーやベージュなどの中間色もミックスして、空間に馴染ませる工夫をするのがいいと思います」
ポイント4 キッチンタイルの選び方
たくさんある種類の中からタイルを選ぶには、まずは自分のキッチンのイメージに合うのはどのようなタイルなのか、カタログやインターネットなどでタイルが施工されたキッチンの画像を見て、自分の好みのイメージを具体的にしておくのがいいそうです。
また、タイルは写真で見るのと、実際に触れたり、並べて張ってあるのを見たりするのでは印象が違うものです。自分のキッチンに張るタイルのイメージが具体的になったら、ショールームなどで実物を確認するのが安心です。
「ショールームに足を運んで、ある程度広い面積に張ったときに、どのように見えるのかという所まで確認して選ぶのが理想です。ショールームで確認するのは難しいという場合は、カタログを参照するだけでは実際の色味はわかりにくいので、サンプルを何種類か取り寄せて確認するのがいいと思います」
DIYするなら手軽さが魅力のタイルシートという手も
タイルを張るリフォームは、職人の技術やプランニングによって仕上がりも異なります。プロにお任せするのが安心ではありますが、壁紙などに比べると、材料費も高くなる傾向があり、DIYでタイルを張る方法も検討したいという人もいるのではないでしょうか。
しかし、DIY初心者がタイルを一枚一枚張るのはなかなか技術的に難しいので、DIYの場合は、タイルシートを使うというのも一つの方法です。
タイルシートは裏面がシール状になっているもので、カッターなどでカットして壁紙の上などにも簡単に張ることができ、価格も本物のタイルよりも比較的安価です。
なお、タイルシートは気軽にDIYで取り入れられる一方、見た目はタイルでも耐火性や耐熱性がないものもあります。火事の恐れもあるので、耐火性や耐熱性のないタイルシートは、火気の近くには絶対に使用しないようにしましょう。
リフォームでキッチンにタイルを取り入れることで、リビング・ダイニング、ひいては住まい全体のおしゃれ度をワンランクアップさせることができるかもしれません。今回ご紹介したタイルの取り入れ方も参考に、ぜひ自由にコーディネートを楽しんでみてください。
【まとめ】キッチンタイルはデザイン性だけでなく、機能性も魅力。組み合わせ次第で、ほかにはないオリジナルな空間づくりが可能
タイルは板状の焼きもので、耐火性、耐熱性、耐久性がある素材です。火や水を使うキッチンには適した材料で、色や柄、大きさや形のバリエーションも豊富。組み合わせ方次第で、空間のインテリア性を自分好みに叶えることができるのが魅力です。
タイル自体だけでなく、組み合わせる目地の色や幅などによっても仕上がりの印象が変わり、タイルを施す面積や場所によっても、空間のイメージは左右されます。
タイルは写真で見るのと実物では印象が異なることもあるので、選ぶときはショールームなどで実際に張られた状態のものを確認するのがおすすめです。
また、DIYでタイルを取り入れるのは技術的に難しい面もありますが、タイルシートを使うという方法もあります。タイルシートを使う場合、耐火性や耐熱性のないものをコンロの近くなどに施工するのは危険なので、性能についてきちんと確認するようにしましょう。
●取材協力
スタイル工房
構成・取材・文/島田美那子