小上がり和室を後付けする方法と費用相場。おしゃれな施工事例も紹介

リビングに小上がり和室があると、幼い子どもをお昼寝させたり、収納も付ければパッと片付けができるなど何かと便利。でも、小上がり和室は同じく畳を使う普通の和室と何が違うのでしょうか。リフォームで備える際の注意点は? 小上がり和室を数多く手がけているリフォーム会社、stylekoubou(スタイル工房)のプランナー・於保(おほ)さんに教えてもらいました。

和室のリフォームで、和風や和モダンの家に。小上がり、障子、縁なし畳の上手な取り入れ方

小上がり和室を後付けする方法と費用相場。おしゃれな施工事例も紹介

記事の目次

小上がり和室とは

小上がり和室とは、部屋の床面から一段高くした部分に畳を敷いた空間のこと。普通の和室が床と同じ高さなのに対し、床から一段高いことで、腰掛けるスペースとして活用できたり、床下に収納スペースを作れるなど、さまざまなメリットが生まれます。

小上がり和室はリビングの一角に設けられることが多いですが、和室や子ども部屋など、目的次第でさまざまな場所に設けることができます。

小上がり和室のメリット

小上がり和室のメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。

リビングを多目的に使える

かつては、来客時に使う「客間」のある住宅がいくつもありました。居間と分けることで、不意の来客があっても、家族が過ごす居間を散らかしっぱなしにしたままで対応できました。

「しかし、昨今の住宅事情を鑑みれば、家族が過ごす空間とは別に、いつ使うか分からない客間を用意するのは難しいと思います」(於保さん、以下同)。

とはいってもリビングで来客を対応するには、日頃から掃除しないといけないから大変、という人もたくさんいるはずです。

「そんな時に便利なのが小上がり和室です。不意の来客時でも見せたくないものを小上がり和室の収納にサッと仕舞うことができます。また小上がり和室が散らかったままでも、障子などの建具やロールスクリーンなどで仕切れば、お客様から見えることはありません」。

また、大人数の来客があった場合は、小上がりを椅子代わりに使えます。

それでいて、普段はリビングの一部として使えます。小上がり和室で子どもを昼寝させたり、洗濯物を畳んだり、寝室としても使うことができるなど、小上がり和室を作ると、使い勝手のいいスペースがリビングの一角に生まれることになります。

普段は開け放ち、必要に応じて仕切れる寝室
築22年のマンションに家族4人で暮らしていた施主。収納スペースが足りないことからリフォームすることにしました。まずリビングの隣にあった和室を小上がり和室に変更。その床下の収納に書籍や季節モノをたっぷりと 収納できるようになりました。そのほかにも、家族共用のウォークインクローゼットを新設するなどして、住まい全体の収納力を高めています。小上がり和室には3枚引き込み戸が備わり、普段は開け放してリビングとつながるオープンな空間として家族のくつろぎの場に、仕切れば施主夫妻の寝室にできます。

小上がり和室のあるリビング

リビングと従来の和室を一体化し、小上がり和室と、その隣にウォークインクローゼットを設けました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室兼寝室

小上がり和室は施主夫妻の寝室にも使えます(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

家族が自然と集まるように小上がり和室を設置
築40年の一戸建てで暮らしていた施主ですが、家族5人で過ごすにはLDKが狭く感じるようになりました。また3人の子どもたちの個室も作りたいと、リフォームを決意。LDKは、水まわりを移動させて、廊下を取り込むことで広々とした空間を実現しました。その一角に、小上がり和室を設置。いつでもごろりと寝転がってくつろぐことができるこのスペースは、家族みんなに好評で、自然と家族が集まるリビングとなりました。

家族が集まる小上がり和室

水まわりを移動して、廊下を取り込むことでリビングダイニングを拡張。そこに小上がり和室を設置しました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

収納付きの小上がり和室

小上がり和室には、畳を上げて出し入れするタイプの収納を備えています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

収納スペースを増やせる

小上がり和室は床下に収納を作れるのが、普通の和室と異なります。例えば、普段は小上がり和室で子どもを遊ばせているなら、オモチャなどを収納できるので、取り出すのも片付けるのも簡単です。

とはいえ、他のクローゼットなどと同等に使える収納かどうかは事前にしっかりと検討する必要があると於保さんは注意を促します。

「小上がり和室の収納は、住宅全体の収納計画をしっかり行った上で、プラスアルファの収納として取り入れるのがおすすめです。例えばクローゼットにずっと仕舞っておくにはなぁ、というものを収納するという活用法です」。

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幼い子どもの昼寝や遊び場に使いやすい

LDKのある間取りで、リビングの一角に小上がり和室を設けると、キッチンで調理や後片付けをしながらでも、小上がり和室で遊んだり、昼寝をしている子どもを見守りやすくなります。オモチャなどは小上がり和室の収納に収めておけるので、わざわざクローゼットから出し入れする手間も省けます。

小上がり和室で子どもが昼寝をしている横で、洗濯物を畳むなど、安心して家事をしやすくなるでしょう。

子どもの昼寝も見守れるように小上がり和室を設置
料理をしながらでもリビングが見渡せる、開放的なLDKをリフォームで実現した施主。またリビングには気軽に寝転んだり、小さな子どもがお昼寝したりできる小上がり和室の設置も実現しました。

LDKの小上がり和室

キッチンで作業をしながらでも小上がり和室やリビングダイニングにいる家族を見守れます(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室のデザイン

床材や壁の造作家具などは、小上がり和室とデザインのトーンを合わせています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

和の雰囲気を演出できる

小上がり和室には畳を敷きますから、空間に和テイストを加えたいときに便利です。また仕切りに使う引き戸や、小上がり和室の壁に吊り戸棚の扉など、建具でも和の落ち着いた雰囲気のさじ加減をアレンジできます。また、い草の畳なら香りでも和の気分を楽しめます。

「普通の和室と違い、高さがあるので視界に入ってきやすくなります。ですから空間のアクセントになりやすいのです」。

和室を小上がり和室にリフォーム
自然素材を活用した明るくナチュラルな空間という、希望のイメージがはっきりとしていた施主。リビングに隣接していた和室を、LDKと一体になるような小上がり和室に変更しました。また、LDKや小上がり和室の壁には漆喰を、造作部分にはナラ材などをふんだんに使い、希望通りのイメージの空間を実現しました。

小上がり和室で和の雰囲気

直線を基調のデザインや、畳や建具、床や天井材などの素材感で、シックで和の雰囲気が演出されたリビングダイニング(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

自然素材と小上がり和室の相性

リビングダイニングの壁は漆喰、床はオーク材、テレビボードはナラ材というように自然素材にこだわった空間は、小上がり和室との相性も抜群(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

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小上がり和室のデメリット

メリットの多い小上がり和室ですが、デメリットもあります。設置する前に確認しておきましょう。

スペースの制約がある

小上がり和室を設けるためには、十分なスペースが必要です。狭い部屋には設置が難しい場合があります。

「リビングに必要な家具を置いても、なお小上がり和室を設けられるスペースが必要です」。

さらに、単にスペースがあるから設置できる、というわけでもありません。無理をして設置すると、普通の和室より高さがある分、家具の配置によっては空間が狭く感じられることがあります。全体のバランスが大切です。

「また位置を決める際には、小上がり和室の使用目的が重要になります。例えば、遊ぶ子どもを見守りながら調理したいのであれば、キッチンから見える位置にないと意味がありません」。

リビングダイニングとのバランスを検討して広さを決めた
リフォームで、一番小さな子どもと一緒に寝られるスペースとして、LDKに小上がり和室を備えたいと思った施主。そこで、リビングは置きたい家具の幅に合わせて最小限に、また小上がり和室も家族3人が横になれる最低限のスペースにしました。さらに大きなカウンターを備えた対面式キッチンも、二列式にして、使いやすさを向上させながらスペースを効率化。こうして普段は開放的な空間の一部として、障子とロールスクリーンを閉めれば家族3人の寝室になる小上がり和室を作ることができました。

小上がり和室のあるLDK

マホガニー系の濃い色だった床を、明るいオークのフローリングに変更しました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

グリーンが似合う小上がり和室

施主所有の家具をベースに、グリーンをたくさんあしらった、ナチュラルテイストなインテリアに(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

障子戸とロールスクリーンのある小上がり和室

小上がり和室はモダンな障子戸とロールスクリーンの間仕切りが備わります(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

天井の梁の位置によっては設置できない

小上がり和室の位置を決める際、柱や天井の梁の位置にも注意が必要です。

小上がり和室は床から35cm〜45cmほど高くなります。例えば空間の天井高が2200mmなら小上がり和室の床から天井までは1750mm〜1850mmとなります。

「さらにマンションでは大きな梁のある場合がありますが、そのような梁の下に小上がり和室を作ると身長によっては、その高さで頭を打つ可能性もあります」。

それを承知の上で小上がり和室を設けることは出来ますが、上り下りには十分な注意が必要です。

子どもや高齢者には段差が危険な場合もある

小上がり和室の段差は椅子代わりにもなりますが、自分で上手く上り下りができないような幼い子どもの場合、小上がり和室から転落する危険があります。また高齢者の場合、高すぎると上がりにくいという可能性があります。

こうした危険があることを十分理解した上で設置するか、設置時期を考えたほうがよいでしょう。

介護が必要になった時に使いにくい空間になる

小上がり和室に置ける家具は限られるため、リビング側に家具が集中しがちになります。スペースにあまり余裕がないまま小上がり和室を備えると、将来車いすを利用する要介護者が暮らすことになった場合、リビングの家具が邪魔になり車いすでの移動がしにくいことも考えられます。

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ライフスタイルの変化に注意が必要

歳月の移り変わりで、子どもや高齢者にとっての危険の有無が変化するように、ライフスタイルの変化によって、小上がり和室が不便に感じることがあるかもしれません。

「実際、子育てが終わってあまり利用しなくなったので、小上がり和室を無くしたいというご相談もよくあります」。

一方で、子育てでの利用が終わったら、夫婦の寝室として利用したり、お茶を楽しむ場として活用するなど、先々の利用ビジョンがしっかりある人は長く使い続けているそう。

「もしも子育て時期だけ利用したいのであれば、最近は設置するだけで済むユニット家具がありますから、そちらをおすすめすることもあります。ユニット式なので、パーツをばらしてワークスペースの椅子に再利用したりすることができます」。

ライフスタイルの変化に応じた小上がり和室の使い方を、設置する前に検討してからリフォームするようにしましょう。

費用がかかる

小上がり和室をリフォームで後付けする場合、普通の和室よりも床を高めるための部材や大工仕事などが増えます。そのため和室をリフォームで備えるよりも材料費や工事費がかかります。希望する広さの小上がり和室を設けるには、いくらくらいかかるのか、事前に見積もりをもらって検討するようにしましょう。

小上がり和室を後付けする方法

ここからは、小上がり和室をリフォームで後付けする段取りを紹介します。

利用目的を明確にする

小上がり和室は、先々までの利用目的をしっかり考えておかないと、ライフスタイルの変化によって次第に使わない空間や、時には不便に感じる場所になりがちです。

また目的によって、必要な広さや高さ、位置、収納の種類などが変わります。

多目的に使える小上がり和室ですが、自分たちにとっての「多目的」の中身を、しっかり決めることから小上がり和室の後付けを検討するようにしましょう。

小上がり和室をリビングのソファや作業時のイスとしても活用
家族4人で暮らしやすい住まいにするため、施主は2階建ての一戸建てをリフォームすることにしました。2階の広いLDKの一角にある壁にはカウンターを設け、その一部をリモートワークなどの作業ができるデスクとして利用できるように。さらに、その壁から少し離して小上がり和室を設置しました。こうすることで小上がり和室をデスクの椅子として活用できます。もちろんリビングで寛ぐ際の椅子にも、寝転べるスペースにも利用できる多目的な小上がり和室です。

作業カウンターのある小上がり和室

小上がり和室の隣に、作業もできるカウンターと収納を造作でそなえました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

椅子代わりの小上がり和室

作業時の椅子代わりになるように、小上がり和室が壁から少し離されて設置されました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

空間のレイアウトを決める

使用目的が決まったら、どこに小上がり和室を後付けするか決めましょう。キッチンから子どもを見守れる位置にしたいのか、小上がり和室から寝転んでもテレビが見えるようにしたいかなど、目的によって小上がり和室の位置が決まります。

その際、リビングに置くテーブルや椅子、ソファなどが十分使いやすい場所に置けるかなどにも注意しましょう。

3畳/4.5畳/6畳など広さを決める

小上がり和室の広さは、使用する目的によって変わります。

「例えば夫妻2人の寝室として利用する場合、畳2畳にちょっと板の間を足したりします。もちろん、空間とのバランスも重要です」。

例えば小上がり和室を広くしすぎると、リビングやダイニングに置いた家具が移動の邪魔になる、なんてこともあり得ます。

使用目的と、普段の使い勝手を考えた空間とのバランスを考えて、何畳など数字にこだわらずに、小上がり和室の広さを決めましょう。

段差は30〜40cmを目安に検討する

小上がり和室の高さは、設置する位置にある梁や天井の高さをまず考慮する必要があります。場合によっては、それにより高さの上限が決まります。

次に使用目的に合わせて検討します。例えば来客時の椅子代わりにしたいのであれば、40cm〜45cmあたりでしょう。

「ただし40cm以上あると、小上がり和室に上がるのに『よいしょ』と一苦労する人が多いと思います。その場合は、小上がり和室に上がるためのステップを備えるといいでしょう。あらかじめ椅子でも何でもいいので、昇降したり腰をかけてみて、その段差が自分に合っているか確かめることをおすすめします」。

収納量を増やすために、なるべく高くしたいという人がいるかも知れませんが、毎日何度も昇降する場所になるので、収納量よりも昇降のしやすさを優先しましょう。

間仕切りを備えるかどうかで、見え方や使い勝手が変わる

小上がり和室とリビングなどを仕切る引き戸やロールスクリーンなどの間仕切りがあると、来客時に小上がり和室を隠すのが簡単になります。

逆に間仕切りがない場合は、和テイストを日常的に楽しみたいという人に向いています。

間仕切りなし_いつでも子どもの様子を見守れる
生まれたばかりの子どもをのびのびと育てたいと、間取りやリビングの素材などにこだわった施主。リビングの一角には小上がり和室を設けました。キッチンの正面にある小上がり和室には間仕切りがないので、畳の上で遊んだり眠ったりする子どもを見守りながら調理をすることができます。

間仕切りのない小上がり和室

間仕切りのあった和室を、間仕切りのない開放的な小上がり和室へリフォーム。天井や梁のカタチを整えてスッキリとした、開放的な空間になりました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室とタイルカーペット

幼い子どもがいるため、階下に配慮して従来のフローリングの上にタイルカーペットが敷かれました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

キッチンと小上がり和室の位置関係

キッチンに立ったときに、真正面に小上がり和室が見えるように配置が工夫されました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

間仕切りあり_吊り戸棚のふすまの柄や、梁の色にこだわった
シンプルな和モダンの雰囲気が好きな施主は、リビングの一角に間仕切りのある小上がり和室を設けました。その壁に備えられた吊り収納のふすまは、施主がこだわって選んだ紺色と白色のふすまが採用されています。引き戸を収納すれば施主好みに仕上げられたLDK空間を感じられますし、来客時など必要に応じて閉じることもできます。

吊り収納のある小上がり和室

小上がり和室にある吊り収納のふすまは、施主好みの色柄で仕上げられました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

垂れ壁のない小上がり和室

小上がり和室の引き戸の上は、開けた時により開放感があるように、あえて垂れ壁を作らず、開いたままにしています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

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小上がり和室を後付けする工期

家で暮らしながらリフォームで小上がり和室を備える場合、工事内容などにもよりますが、2週間程度はみておくとよいでしょう。

「弊社の場合、まず小上がり和室の台を作り、それを採寸してから畳を作ります。そのため、余裕をみて2週間程度はかかると思ってください」。

小上がり和室の収納方法と収納量

小上がり和室には収納を備えられますが、どんなものを入れられるのでしょうか。

小上がり和室の収納方法は主に2つある

小上がり和室の収納方法は、引き出しタイプと上に開けるタイプの2つあります。

「引き出しタイプはよく出し入れするものを収納するのに便利です。また、小上がり和室の奥側など、引き出しタイプが備えられない位置には、上に開けるタイプの収納を備えることができます。こちらは引き出しタイプより荷物の出し入れが少し手間ですから、捨てられないものなど、あまり頻繁に出し入れしないものを入れておくとよいでしょう」

基本的には小上がり和室全体に収納を作ることができます。ただし収納を備える分、コストがかかります。

小上がりの畳の下に引き出しタイプの収納
小上がり和室に引き出しタイプの収納を組み込んだ例です。引き出しは途中までで、その奥は、下記のような、上に開けるタイプも備えています。

小上がり和室の引き出しタイプの収納

引き出しの奥行きを長くすると、その分荷物の出し入れが面倒になります。そのため、手前に引き出しタイプ、奥に上を開けるタイプを備えています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がりの畳の下に上に開けるタイプの収納
ダイニングの椅子にもなる小上がり和室の例。上に開けるタイプの収納が備えられています。

小上がり和室の上を開けるタイプの収納

普段はダイニングの椅子代わりになっている小上がり和室。手前にダイニングテーブルがあるので、上を開けるタイプにしました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

収納量の目安

理屈の上では、それぞれの収納の内寸から体積を計算し、収納の数だけ足していけば収納量を算出できます。

とはいっても内寸は出来上がってみないと正確には測れません。事前に収納量をある程度把握しておきたいのであれば、小上がり和室全体に収納を備えた場合、小上がり和室の高さ×幅×奥行きの8割程度と見積もっておくとよいでしょう。

例えば3畳で高さ35cmの場合、35cm×220cm×220cmとして、その8割は1355.2Lです。2Lペットボトル×6本のケースを21Lとすれば、64ケース前後入る計算になります。

もちろん、収納スペースの作り方や形状、小上がり和室自体のカタチなどさまざまな要因で変わりますから、あくまでも目安として考えてください。

収納したいものを考えておく

確かに小上がり和室にはある程度収納力があります。だからといって、小上がり和室の収納を計算に入れて家の収納計画を立てることはやめたほうがいいでしょう。

「小上がり和室の収納に頼るのではなく、家全体で収納計画を立て、必要な場所に必要な大きさの収納を備えたほうが暮らしやすくなります」。

小上がり和室の収納は、あくまでも使用する時にサッと取り出せて便利なものや、クローゼットに入れるほどではないけれど、どうしても捨てられないものを入れておくなどで活用するのがよいでしょう。

小上がり和室を後付けリフォームする費用

小上がり和室をリフォームで後付けする費用は、広さや間仕切りの有無、畳の種類などでも異なります。また施工会社によっても異なりますので、下記はあくまで目安として考え、リフォームする際には、必ず見積もりをもらって比較検討してください。

3畳/4.5畳/6畳の小上がり和室を後付けするリフォーム費用

天面開口タイプの収納を備えた、シンプルな小上がり和室を後付けで備える場合、材料費と工事費を含めたリフォーム費用の目安は下記の通りです。

小上がり和室を後付けするリフォーム費用の目安
小上がり和室の広さ リフォーム費用(材料費+工事費)の目安
3畳 約50万円〜
4.5畳 約65万円〜
6畳 約75万円〜
※2025年3月時点でのリフォーム費用の目安です。

上記は天面開口タイプの収納がある場合ですが、引き出しタイプはそれよりも少し高くなります。費用の目安は下記の通りです。

引き出しタイプの収納を備えるリフォーム費用の目安
引き出しタイプの収納の数 リフォーム費用(材料費+工事費)の目安
1つ 約9万円〜
※2025年3月時点でのリフォーム費用の目安です。

間仕切りを設けた場合のリフォーム費用

間仕切りの種類や広さなどによって異なりますが、障子戸を備える場合のリフォーム費用の目安は下記の通りです。

3畳の小上がり和室に障子戸を備えるリフォーム費用の目安
障子戸の枚数 リフォーム費用(材料費+工事費)の目安
3枚 約15万円〜
※2025年3月時点でのリフォーム費用の目安です。

小上がり和室に敷く「畳」の種類でも費用が変わる?

小上がり和室に敷く畳によっては、上記の目安より費用がかかる場合があります。ちなみに、上記の目安では、縁のない半畳畳で、厚さが約15ミリで裏側がベニヤ板になっているスタンダードなタイプです。

小上がり和室ユニットの設置方法と費用

最近は、収納家具のように床に置くユニットタイプの小上がり和室があります。

「今はまだ先の小上がり和室の使い方がはっきりしていないという方の場合は、ユニットタイプの小上がり和室が便利だと思います。造作で作るより、将来的な可変性があります」。

一方で、造作なら床からの高さや広さ、空間にピッタリとはまる形状など、暮らす人に合わせて自由にカスタマイズできるのがメリットです。

ユニットタイプの小上がり和室の例

パナソニックの畳が丘

スペースの幅や奥行きに合わせて、複数あるボックス型のパーツを組みあわせることで、小上がり和室を作ることができます。いずれのパーツも収納スペースとして使え、和室を作りながら収納量も確保できます(画像提供/パナソニック「畳が丘」)

パナソニックの畳が丘の専用部材

専用部材(カットフリーボード)で壁面とのすき間を埋めることも可能です(画像提供/パナソニック「畳が丘」)

おしゃれなモダンデザインの「小上がり和室」施工事例

小上がり和室を作るには、使用目的をしっかり考えることが大切です。デザインとともに、先輩たちがどんな目的で小上がり和室を設けたのか、ぜひ参考にしてください。

食事の際には椅子になり、映画鑑賞時は鑑賞席になる
子どもの成長に伴い、施主は自宅を全面的にリフォームすることにしました。ダイニングの壁にはプロジェクター用の壁紙を張って、家族で映画を楽しんだり、キッチンで動画を見ながら作業ができるように。そこに椅子と、収納としての役割を兼ねる小上がり和室を備えました。さらに、納戸だった洋室も、小上がり和室のある施主夫妻の寝室にリフォームしています。

ダイニングの小上がり和室

小上がり和室が食事や映画鑑賞時の椅子になり、ダイニングの収納スペースも兼ねています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

障子風内窓と小上がり和室

窓には障子風の内窓を備えて、空間のテイストを揃えるとともに断熱性能も高めています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室の寝室

納戸になっていた洋室をリフォームで小上がり和室のある寝室に(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

仕切りのない2階LDKに小上がり和室と収納階段
施主は自宅をリフォームして、2階の間仕切り壁や収納を撤去して広々としたLDKを実現。その一角には、家族みんなのくつろぎの場になるよう、小上がり和室を備えました。さらに小上がり和室からは本棚も兼ねた箱階段を、ロフトへの階段として設置。小上がり和室で寛いでいても気配がわかるロフトは、子どもたちのかっこうの遊び場になっています。

ロフト下の小上がり和室

小上がり和室の上は、小窓の備わるロフトスペースになっています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室のあるLDK

間仕切りや収納を撤去した2階に、小上がり和室のある広々としたLDKを設けました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室を備えて収納力アップ
子どもが生まれたのを機に、施主は築17年のマンションのリビングを広くして、収納を増やすためにリフォームすることにしました。独立していたキッチンは移動させて、そこに小上がり和室を設置。あわせて住まい全体の収納計画を見直し、収納量を増やすことができました。

小上がり和室で収納力アップ

小上がり和室の床下はすべて収納に。加えてキッチンの横や各部屋にも収納スペースを作ることで、収納力が高められました(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室の収納

小上がり和室の手前側は引き出しタイプの、奥は上に開けるタイプの収納が備えられています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

縦格子で奥の水まわりを目隠ししつつ、広いリビングのアクセントに
施主がリフォーム前提で購入したのは、家族3人で暮らすには十分な広さのある一戸建て。1階には約22畳の広々としたLDKを設け、その一角に小上がり和室を設置しました。畳の下が大容量の収納スペースになるのはもちろん、広いLDKのアクセントにもなります。さらに奥の水まわりの目隠しになる縦格子を備えて、和の趣を演出しています。

アクセントになる小上がり和室

従来の15畳と7.5畳の空間をまとめて1つのLDKにリフォーム。シンプルでナチュラルな空間に小上がり和室がアクセントの1つになっています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

格子戸のある小上がり和室

格子戸は空間のアクセントになるとともに、その向こうにある水まわりを隠す役割もあります(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

小上がり和室のアクセント

格子戸以外にも、小上がり和室や造作収納の面材を揃えたり、キッチンの横にタイルを張るなど、所々にアクセントが加えられています(画像提供/stylekoubou(スタイル工房)

まとめ

収納スペースとして、椅子代わりとして、くつろぎの場としてなど、多目的な用途に使える小上がり和室。そう考えると便利な空間なのですが、利用目的を明確にしておかないと、ライフスタイルの変化などで無用の長物と化すケースもあります。

まずは、小上がり和室をどのような目的で使用したいのか、この先までずっと使い続けられるのか、といったところをしっかりと検討してから、どんな小上がり和室を備えるか考えるようにしましょう。

また、収納スペースとして十分活用できる小上がり和室ですが、住まい全体の収納計画を十分練った上で、小上がり和室に収納するのは何がいいかと考えたほうがいいでしょう。

リビングと和室をつなげて広々LDKを実現するリフォーム方法と費用。施工事例も紹介

取材協力/stylekoubou(スタイル工房) 於保(おほ)さん
取材・構成・文/籠島康弘

執筆・取材/籠島 康弘
雑誌「カーセンサー」編集部を経てフリーライターに。中古車からカーシェアリング、電気自動車までクルマにまつわる諸々の記事執筆を手がける。最近は住宅雑誌の記事も執筆していて、自分が何屋なのかますます分からなくなってきた。