天井のリフォームにはどのようなものがあるのでしょうか。模様替えのほかにも、雨漏りの補修や天井を高くするリフォームなど、目的によって必要な工事や費用も変わります。今回は天井リフォームの種類や、工事の注意点などについて、数多くのリフォーム・リノベーションを手掛けるstylekoubou(スタイル工房)に聞きました。おしゃれな天井のアイデアや天井リフォームの施工事例も併せて紹介します。

記事の目次
天井リフォームを行うタイミング
汚れや傷みなど表面の劣化が気になる
天井の汚れや傷みが気になるようになったら、天井リフォームのタイミングです。天井はなかなか掃除もしにくいので、落ちない汚れなどを見つけたらリフォームがおすすめですが、実際には自分自身で天井の汚れに気付くことは少ないといいます。
「寝室などは天井も視界に入りますが、自分の家の天井の状態を日々意識しているような人は少ないと思います。そのため、天井の状態が目についたり、傷んでいるかもしれないと感じるようになった時点で、それはある程度内装に手を入れるべきタイミングだと判断してもいいかもしれません」(stylekoubou(スタイル工房)、以下同)
雨漏り
汚れなどは目につきにくい天井ですが、雨漏りが発生したら気が付くもの。その場合はすぐに補修が必要です。また、雨漏りが発生していなくても、シミを天井に見つけた場合は、天井裏で雨漏りが発生しているかもしれないので、放置せずに確認するようにしましょう。
「クロスが剥がれてきていたり、ヒビが入っていたり、色が変わっていたり、シミがあったりという場合は、表面だけではなく、天井裏に何か問題が生じている可能性もあります。また、一戸建ての場合だけでなく、マンションの最上階住戸などでも同じようなことは起こる場合があるので注意が必要です」

住まい全体のリフォームやリノベーション
家全体のリフォームを行うときは、天井リフォームも同時に検討したいタイミングです。天井は部屋の雰囲気を左右するため、クロス選びなどによっては住まいの雰囲気を一新することができ、さらに、天井の断熱リフォームなどを行えば快適性もアップすることができます
「大規模なリフォームやリノベーションの場合、天井リフォームの要望で多いのは小屋裏を活用したいというケースです。そのほかにも、“和室をつなげたい”、“キッチンの向きを変えたい”という要望を叶える上で、天井リフォームも検討した方がよくなるというケースも少なくありません」
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天井リフォームの種類
天井クロスの張り替え・塗装
ちょっとした天井の汚れが気になったり、気分を変えたいという場合、比較的低予算で行えて手軽な方法として選ばれるのは、クロスの張り替えや塗装といった方法です。
また、天井のリフォームにあまり費用をかけたくないという人も、住まい全体のリフォームやリノベーションを行う場合は、クロスの張り替えや塗装程度の工事はするというケースが多いものです。
「天井のクロスの張り替えも、壁のクロスの張り替えと同じような価格で施工できます。リフォーム会社やクロスのグレードなどによって費用は異なりますが、1m2当たりの材工費の相場は1700円~2000円程度が目安です。
塗装については、下地の処理などに手間がかかることもあったり、塗装の種類にもよるため幅はありますが、1m2当たりの費用の目安は、2400円~3300円程度です」
天井の板張り
木材を使って板張りをする場合は、クロスの張り替えや塗装などよりも高額にはなりますが、板張りならではの重厚な雰囲気を楽しむことができます。また、板張りの場合は無垢(むく)材などを使用すると、さらにコストはアップすると考えておきましょう。
「既存の天井にボンドなどで上張りすることもできますが、本物の無垢材の板などに張り替える場合は、下地からしっかりとつくり変えていく必要があります。そのため、クロスの張り替えよりも費用はかかり、材料にもよりますが、1m2当たり9000円~1万7000円以上というのが費用の目安になります。
また、内装制限がある場合は、不燃・準不燃などの材料を使用しなければいけないので、マンションの場合などは注意が必要です」
なお、天井を板張りにするのは意匠的な目的の場合が多いそうですが、板張りにすることで空間をゾーニングしたり、アクセントにしたりすることもできるそうです。
「勾配天井や天井の中央の部分が一段高くなっている“折り上げ天井”の上の部分などを板張りにすることで、空間のアクセントにすることができます。また、キッチンなどでダクト配管を隠しながら天井の一部分を下げた“下がり天井”にすることもありますが、そのような場合も、部分的に板張りにすることで空間をゆるやかにゾーニングすることもできるので、天井を板張りにするケースも少なくありません」

キッチンの天井を板張りにしたい場合は通常不燃材を使うことになりますが、最近では木の質感に近いクロスなども豊富です。板張りは気になるけれど、内装制限があったり、コストが気になるという場合は、木目調のクロスを選択肢に入れて検討してみるのもいいでしょう。
天井を高くする
天井を高くするリフォームをすれば、開放的な空間をつくることができます。
天井を高くするリフォームには、天井を取り払って吹き抜けをつくるようなケースのほかにも、マンションの場合は二重天井の表面の天井を取り払って圧迫感を解消するというリフォームもあります。
「1階の天井を取り払い、2階の一部を使って吹き抜け空間をつくるというリフォームのほかにも、2階の天井を取って、小屋裏の屋根の形で天井を高く見せたり、梁を現しにするようなリフォームもあります。
マンションの場合も、天井裏の空間に余裕がある場合は、天井を高くするようなリフォームをすることもありますが、天井裏にあまり余裕がない場合は、費用をかけても2~3cm程度しか天井を高くできないということもあります。また、そのようなリフォームを行うことで、ダウンライトなどの取り付けが難しくなることもあるので、その場合はリフォーム会社ともよく相談して判断するのがいいと思います」
また、天井を高くするリフォームの場合、リフォームの内容によっては構造への影響に配慮する必要があります。さらに、吹き抜けをつくる場合などは、空間が広くなるため、冷暖房効率は下がります。開口部を計画的に設けて日差しを取り入れたり、空気を循環させるようシーリングファンを設置したり、床暖房を取り入れるなど、吹き抜けをつくる際には、同時に対策をするようにしましょう。

天井の断熱リフォーム
天井の断熱リフォームをすることで、住まいの断熱性をアップすることができます。断熱材の種類によっては、費用も高くなりますが、断熱リフォームをすることで住まいの快適性もアップします。
「一戸建てのリフォームなどで、天井を解体してつくり変えるような場合は、通常断熱材も入れ替えることになります。例えば、屋根なり天井(勾配天井)にする場合などは、断熱や換気という部分をおろそかにすると結露など不具合が生じることもあるので、リフォームする場合はセットで考えることが必要です」
天井リフォームでおしゃれに快適に!施工事例と費用
実際に天井のリフォームをすると、住まいのリフォームにはいくらぐらいかかるのか、またリフォームすることで、どのような部屋にすることができるのか、気になりますよね。
ここからは、天井リフォームを実際に行った実例を見ていきましょう。
※費用は住まい全体のリフォームにかかった費用の概算。施工当時の価格で現在の価格とは異なります
【実例】天井は鉄骨造のデッキプレートを現しにして、白く塗装
鉄骨造3階建ての実家の2階部分をリノベーションしました。建物は下町の長屋のような細長いつくりで、もともとは南側と北側が中央の階段室を挟んで分断されているような間取りだったため、緩やかに曲がりくねる細い路地をイメージした回廊を中央部に設け、空間をつなげながら使いやすくゾーニングし、暮らしやすい間取りを実現しました。
内装仕上げには、無垢材や珪藻土などの自然素材を使いたいという希望があり、床はクリア仕上げのナラ無垢フローリングに、壁の一部には珪藻土を採用し、自然素材ならではのぬくもりや心地よさが感じられる空間になっています。
リビング・ダイニングの天井は鉄骨造のデッキプレートを現しにして、壁の色にマッチする白に塗装。空間に広がりをもたせました。


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【DATA】
費用:1770万円
リフォーム面積:約96m2
【実例】板張り風の下がり天井で、メリハリのある空間に
フルリノベーションを行ったのは築21年のマンション。一番長く過ごすLDKは、どこからでもお気に入りのパークビューが楽しめることを意識してプランニングしました。
もともとキッチンは壁付きのL型でしたが、「キッチンからもパークビューが見える」というこだわりを叶えるため、当初は窓向きの対面キッチンを検討したそうです。しかし、マンションの構造上、配管部の床が上がるため断念し、窓に対して横向きのオープンスタイルを採用しました。結果的には、そのようなキッチンのレイアウトにしたことで、玄関からシューズインクローゼット、パントリーからキッチンに続く回遊動線を実現することができ、夫妻での料理もしやすくなったそうです。
また、LDKは和室や廊下の一部を取り込むことで、広々とした空間に。キッチンから続く下がり天井の部分は、木目調にすることで、メリハリのある空間になっています。


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【DATA】
費用:1470万円
リフォーム面積:73m2
【実例】キッチンの天井にLDの壁と同じアクセントクロスを採用
中古マンション購入を機に、リビング・ダイニングやキッチンを部分的にリフォーム。壁紙はキッチンや照明と調和するよう、リビング・ダイニングのアクセントクロスとキッチンの天井を同じ壁紙で仕上げ、キッチンが引き立つような、統一感のあるLDKになりました。
キッチンのブラックのペンダントライトや、シーリングファンなどもアクセントになり、部屋の雰囲気を引き立てています。

【DATA】
費用:457万円
リフォーム面積:- (リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチンの部分リフォーム)
【実例】壁を減らした分、天井の梁(はり)に金物を掛けることで耐震補強
購入した築72年の古民家は壁が多く、光も風も入りにくかったため、リフォームで間取りを一新。大開口にして、インナーテラスを設け、窓を開ければ外と中が一体化するような、心地よさが感じられるような空間になっています。
広々としたLDKをつくるために壁を減らしましたが、天井の梁の部分に金物を筋交いのようにクロスに掛けて耐震補強を実施。梁や柱を残しつつ、しっかりとした耐震補強と断熱を施すことで、住まいの性能も確保しています。


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【DATA】
費用:2000万円
リフォーム面積:164.28m2
天井リフォームの注意点
壁や床とのトータルコーディネートを忘れずに
天井のリフォームを行う際、天井だけをきれいにすると、今まで気にならなかった壁や床の汚れが気になることもあります。さらに、養生の手間などを考えると、天井と壁や床は同じタイミングでリフォームした方がコスト的にも抑えられる可能性が高くなるので、同時に検討するのがオススメです。また、クロスの張り替えなどの場合は、天井だけが浮いてしまわないよう、壁や床とのバランスを考えて色を選ぶと安心です。
「天井を重い色にすると、天井が低く感じられるので、基本的には、床、壁、天井の順に明るくしていくと、空間を広く感じられます。一方、トイレや書斎、寝室などは天井にあえて濃い色を入れて、空間を引き締め、落ち着いた雰囲気を演出するという方法をとることもあります。
また、天井と壁は同じ色でそろえるケースが多いですが、少しゾーニングをしたり、アクセントをつけたい場合は、部分的に天井を板張りにするというのもオススメです。板張りを取り入れる場合は、床のフローリングと同じ方向に張るのか、直交して張るのかで雰囲気が変わるので、板を張る向きについても注意してプランニングするといいでしょう」
間接照明を取り入れる場合、クロスなら厚手のものが安心
最近はインテリアに間接照明を取り入れる人も多いですが、その場合は天井に光がどのように当たるのかを念頭にプランニングする必要があるといいます。
「左官仕上げや板張りの場合はそれほど気にする必要はなく、特に左官仕上げの場合などは光が当たることで塗りの質感が強調されて、すてきな雰囲気を演出することもできます。一方、クロスの場合は照明が当たると継ぎ目やシワが目立ったり、光の反射で影が気になったりすることがあります。薄いクロスを使用してしまうとそのようなことが起こりやすいので、照明が当たる天井をクロスにするのであれば、厚手のものを選ぶようにしましょう」
DIYが可能な場合も、自分でやるより仕上がりはプロが安心
クロスの張り替えや塗装などの天井リフォームであれば、自分でできないことはありません。しかし、天井の場合は高さもあり危険なので、ひとりで行うのではなく、必ず人手を確保するようにしましょう。
また自分で行うDIYは費用を抑えられても、仕上がりについては満足できないことも考えられます。出来栄えを考えるとプロに依頼するのが安心です。

天井は普段あまり気にしない部分ではありますが、住まいの雰囲気や快適性を左右する部分でもあります。雨漏りなどの不具合がある場合はもちろんですが、住まいのリフォームの際には、どのような天井リフォームを行うか、ぜひ、ほかの部分のリフォームや住まい方に合わせて検討してみてください。
【まとめ】天井リフォームにはクロスの張り替えや塗装のほか、天井を高くするなどのリフォームもある
クロスが剥がれてきていたり、ヒビが入っていたり、色が変わっていたり、シミがあったりと気になる症状がある場合は、天井の内部に何か問題がある可能もあるので注意が必要です。また、天井について特に気になる部分がなくても、住まいのリフォームの際に内装工事を行うのであれば、天井も一緒にリフォームするのが一般的です。
クロスの張り変えや塗装などは、比較的コストを抑えながら室内の雰囲気を一新することができます。板張りにするリフォームは、張り替えの場合はコストがかかりますが、板張りならではの雰囲気を楽しむことができます。
吹き抜けをつくるなど、天井を高くするようなリフォームの場合は、冷暖房効率が下がることもあるので、開口部のリフォームや空気を循環させる方法なども併せて考えておくと安心です。
●取材協力
stylekoubou(スタイル工房)
●画像協力
イズホーム
構成・取材・文/島田美那子