コストパフォーマンスのよい、格安なリフォームを実現するにはどうすればいいのでしょうか。リフォームはしたいけれど、あまり費用はかけたくない……。でも、激安なリフォームというのも不安があるものです。今回はリフォームの費用を抑えるポイントや、激安リフォームの注意点について、JSリフォーム(日本総合住生活)に伺いました。

記事の目次
格安でリフォームは実現可能?
リフォーム費用を安くする方法はある
リフォームにはいわゆる定価というものがなく、さまざまな要素によって費用は左右されます。見積もりをとってみたら、イメージしていた予算よりも費用がかかるということもあるでしょう。
「大規模なリフォームを検討している人の場合は、予算のイメージを持っていても、かなり大まかな金額で検討をはじめる方が多いものです。リフォームにかかる費用は工事費だけではなく、仮住まい費用なども発生します。工事費用以外に発生する諸費用を具体的に考えていくと、リフォーム費用にまわせる予算が思っていたよりも少ないということもありがちです」(JSリフォーム(日本総合住生活)、以下同)
しかし、予算オーバーだからといって、リフォーム自体をあきらめる必要はありません。予算内でも“格安”と思えるような金額でリフォームを行うことは可能です。
格安リフォームを行うためには、優先順位の整理が必要
費用以上の満足が得られれば、そのリフォームは格安だと感じられるものです。つまり、費用に対して、自分の希望通り、または希望以上の満足感が得られるようなリフォームになるようにプランニングを行うことが、格安リフォームを叶えるための重要なポイントになります。
そのためには、リフォームで住まいをどうしたいのか、自分の希望をリストアップするなどして、優先順位をつけておくことが不可欠です。優先順位が整理されれば、費用が必要になる部分だけでなく、費用をかけなくてもいい部分が見えてきます。お金をかけなくて満足できそうな部分についてコストを見直せば、格安リフォームを行うことも夢ではなくなります。

リフォーム費用を安くする方法
優先順位を整理したら、あとはどのようにメリハリをつけて費用をかけていくかということになります。リフォーム費用を安くするにはどのような方法があるのか、具体的に見ていきましょう。
既存の使えるものや設備を活かして再利用する
何もかも新しくとなると、その分費用はかさむものです。既存のもので活かせるものがあれば再利用するという方法をとれば、新しく導入する費用に加え、廃棄処分の費用もカットできます。
「キッチンのガスレンジ、ガスコンロやレンジフードなど、また、トイレの温水洗浄便座などは再利用する方も多い設備です。数年前に取り換えたばかりで、まだ十分使えるといったものがあれば、リフォーム会社に相談してみるとよいでしょう」
一方で、まだ使えると思って設備や内装などをそのまま残した結果、新しくきれいになった家の中で、残した古いものや部分が気になって、結局新たに買い替えるということもあるものです。本当に残して再利用した方がいいのかは、慎重に検討するようにしましょう。

上張り工法を取り入れる
可能であれば上張り工法(カバー工法、重ね張り工法)を取り入れるというのも、費用を抑える有効な方法です。
例えば、床のリフォームの場合、新しいフローリングに張り替えるとなると、既存の床を剥がす必要があります。一方、既存の床の上に上張り(重ね張り)をするリフォームでは、既存の床の解体が不要になり、その分費用は安くなります。既存の床の状態が悪くなければ、上張り工法を検討することで費用を抑えられるので検討するのもいいでしょう。
また、このような工法は床だけでなく、屋根や外壁などでも行うことができます。ただし、屋根や外壁のリフォームをカバー工法で行うと自重が少し大きくなるため、建物によってはアンバランスになることもあります。古い建物の場合などはカバー工法が適さないこともあるので、注意が必要です。
| 内装リフォームの種類 | 費用相場 ※15畳程度のリビング・ダイニングの場合 |
|---|---|
| 床の上張り(重ね張り) ※複合フローリング |
約15万円~20万円 |
| 床の張り替え | 約40万円~80万円 |
| 外壁外装リフォーム方法 | 費用相場 ※延床面積120m2程度の一戸建ての場合、足場工事代含む |
|---|---|
| 上張り(重ね張り) | 約150万円~300万円 |
| 張り替え | 約200万円~500万円 |
| 屋根リフォーム方法 | 費用相場 ※延床面積120m2程度の一戸建ての場合、足場工事代含む |
|---|---|
| 重ね葺き | 約100万円~200万円 |
| 葺き替え | 約150万円~300万円 |
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設備の仕様やグレードを見直す
設備や建材は、選ぶものの仕様やグレードで価格に幅があるため、商品の選び方次第でリフォーム費用は安くなります。
「設備などの仕様やグレードというのは金額を調整しやすいポイントです。例えば、リフォーム会社によって、得意なメーカーの商品であれば、コストを抑えられるということもあるので、強いこだわりがないのであれば、リフォーム会社に相談してみるといいでしょう。
また、設備は機能がシンプルなものの方が価格は抑えられます。ショールームなどで最新の機能がついた商品を目にすると、欲しくなってしまうこともあると思いますが、やはりコストアップにつながってしまいます。機能がたくさんついている設備を採用しても、使わなくなってしまったらもったいないので、自分にとって本当に必要なものかは、慎重に見極めるようにしましょう」
設備だけでなく、フローリングの床材なども材質を変えることでコストを抑えることができます。
「フローリングにする場合、一般的な複合フローリングではなく、むく材を使用すると費用はアップします。また、フローリングではなく、カーペットやフロアタイルにすれば、一般的な複合フローリングよりも費用は安くなります。
もともとの住まいでフローリングの上にカーペットを敷いて生活しているような場合は、材質をどうするかだけでなく、本当にフローリングにする必要があるのかも含めて考えてみてもいいかもしれません」

水回りのリフォームなどをまとめて行う
部分リフォームを何度も行うよりも、気になる箇所が複数ある場合は、まとめて全体的にリフォームを行ってしまった方が、長い目で見ると、トータルのコストは少なく済みます。
「全体的なリフォームとまでは行かなくても、水回りのリフォームだけはまとめてやってしまうなどでも、長い目で見た場合のトータルコストには差がでます。
また、構造に関わらないような水回りのリフォームや表層替え、設備交換などの部分的なリフォームのみであれば、専門に行う業者などに依頼すると、コストの節約になることもあるでしょう」
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足場を組む工事をまとめて行う
外壁や屋根のリフォームを行う場合は、足場が必要になります。
「一般的な一戸建てのリフォーム工事で足場を組む場合、大きさにもよりますが、足場代として20万~40万円程度かかります。工事の度に足場はつくる必要があるので、外壁も屋根も同時にリフォームを行えるのであれば、まとめてやってしまった方がいいでしょう」
足場や養生費など、部分的なリフォームでも全体的なリフォームでも必ず必要になるものは、リフォームの回数を減らすことで、出費も減らすことができます。将来的にまたリフォームをする可能性がある部分がほかにあるのなら、まとめて行った方が別々に行うよりも費用は抑えられると覚えておきましょう。
リフォーム面積を減らしたり、工期を短くする
何度もリフォームを行うよりもまとめて工事をしてしまった方が長い目で見たトータルコストは抑えられますが、その1回のリフォームの費用や満足度を考えるのであれば、思い切ってリフォーム面積を少なくしてしまうというのも、格安リフォームにつながる方法です。リフォームの工事範囲が少なくなれば、その分工期も短くなるため、意外と費用が必要になる仮住まいの費用なども減らすことができます。
「せっかくリフォームするのであれば、“ここも一緒にやってしまおう”ということもあるでしょう。しかし、その分本当にやりたいことを諦めてしまったり、こだわりたい部分のグレードを下げてしまうと、満足度が低くなってしまうということもあります」
不要なリフォームを減らすことで、気になる部分にはその分費用をかけることも可能になるので、満足度のアップにもつながるでしょう。
とはいえ、無理に施工箇所を減らしてしまうと、結局近い将来またリフォームが必要になり、結果的に余計に費用がかかることもあります。施工箇所については、住まいの将来的なメンテナンス計画も考慮しながら、リフォーム会社としっかり相談して計画を立てるのが安心です。

リフォームの前に家の中を片付ける
部屋を広くしたい、収納スペースを増やしたい、家事動線をよくしたいなど、リフォームの希望はさまざまあると思いますが、リフォームを行う前に、まず家の中を片付けることは、リフォーム費用を抑えるのに有効だといいます。
「リフォームを行う前に、まずは家の中を片付けて要らない物は処分してしまうことをオススメします。今不便に感じていることの原因が“ものが多すぎる”とか、“家が散らかっている”という可能性もあるので、そこをまず排除してみましょう。
家の中にあるものを整理してみると、必要だと思っていた収納をつくる必要がなくなったり、間取り変更が不要になったりすることもあります。
また、ものを減らしておけば、仮住まいへの引っ越し費用を減らすことにもつながります」

自分でできることはDIYで
すべてをリフォーム業者に頼まずに、自分でできることはDIYリフォームをすることでリフォームの費用を抑えることできます。ただし、DIYの場合はプロと比べると仕上がりに差が出てしまうこともあるので、リフォーム後の満足度も考えて、慎重に判断しましょう。
また、施工はプロに任せるものの、材料や設備などを自分で調達するという“施主支給”という方法もあります。
自分で発注をして、取り付けはプロに頼むことを施主支給といいますが、施主支給にすれば、商品によっては安く調達でき、コストを抑えることができる場合もあります。ただし、自分で探す手間や時間がかかり、取り付け費用なども合わせると、逆に高くなってしまうこともあります。また、施主支給がNGなリフォーム会社もあるため、可能かどうかは事前に確認をするようにしましょう。

減税や補助金制度を利用する
リフォームの種類などによっては、リフォーム減税や補助金などが対象になるケースもあります。耐震、省エネ、バリアフリーなどのリフォームは対象となることが多いので、事前に確認をするようにしましょう。
「選ぶ商品によっては、補助金が使えない場合もあります。補助金制度などを活用するのであれば、早めにリフォーム会社に相談して進めていくと安心です」
| リフォーム補助金 | 耐震、断熱、省エネ、バリアフリーなど、特定の住宅リフォームなどにかかる費用の一部を国や自治体が給付するもの。各自治体のホームページや窓口で、対象となる制度や制度の内容について確認できる。 なお、2024年は国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携の「住宅省エネ2024キャンペーン」がスタート。3つの補助事業が創設され、住宅の断熱性の向上や高効率給湯器の導入など、住宅省エネ化を支援する補助金制度をリフォームでも活用できる。 |
|---|---|
| リフォーム減税 | 特定のリフォームを行うことで受けられる減税制度。対象の改修工事や要件については国土交通省のホームページなどで確認できる。 |
【2024年版】リフォームで使える補助金と減税制度。対象のリフォーム・リノベーション、補助金額や申請方法・期限は?
複数のリフォーム会社に見積もりをとる
どのリフォーム会社に依頼するかも、格安と思えるリフォームを実現するには重要なポイントです。1社だけに見積りをとってリフォームを行うこともありますが、比較検討するためにも、複数社に見積りを依頼すると安心です。見積り金額を比較検討することで、無駄な出費を削ることができる可能性もあります。
ただし、見積もりで一番安いからという理由だけで会社を選ぶのは危険です。後から追加請求がきたり、粗雑な工事でトラブルになったりというケースもあるので、相見積りでは見積りの内容や、リフォーム会社とのやりとりを通して、信頼できるリフォーム会社を選ぶようにしましょう。
見積りを通して、きちんとコミュニケーションをとれるパートナーかどうかを見極めることが、リフォームの満足度を上げることにつながります。

激安リフォームの注意点
相見積りをして、その中に“激安”な見積り結果があった場合、どうしても魅力を感じてしまうものですが、安易に飛びついてしまうと、後悔の残るリフォームになりかねません。リフォーム費用が激安になる場合に、覚えておきたい注意点について紹介します。
安い理由を理解しておく
出してもらった見積り金額が、他社の見積り金額よりも安くなっているということは、安い理由があるということを理解しておく必要があります。
まず、金額が安い理由の一つとして、設備や建材などを低いグレードで見積りをしていることが考えられます。そのような場合は、機能やデザインを好きなものに変更すると、一気にコストアップすることもあるので、どのような商品で見積り金額を算出しているのかなど、見積書に書かれている詳細をしっかりと確認するようにしましょう。
また、工期を短く見積もって金額を抑えているというケースもあります。
「同じお風呂の交換工事をするというリフォームでも、A社は1日、B社は3日、C社は1週間など、想定している工期が異なることはあり、工期の違いは見積り金額にも影響します。
例えば、マンションのリフォームの場合は管理規約で工事を行える時間帯などが決まっているのですが、そのようなルールを無視して工期を短くしたり、無理やり1日で終わらせようとして、雑な工事を行うようなリフォーム業者がいないとも限りません。工期が短く済めばその分費用も抑えられますが、そのような業者をパートナーに選んでしまうと、トラブルにもつながりかねません。
見積りの際は、どのような材料を使うのか、工期がどの程度かかるのか、見積り金額の根拠について担当者がきちんと説明をしてくれます。担当者とのコミュニケーションがきちんととれておらず、金額だけを見てリフォームを依頼してしまうと、後悔につながることもあるでしょう」
目先の金額に惑わされず、契約前に、なぜ見積り金額が安くなっているのか、理由をきちんと確認しておくことが必要です。
追加料金が発生しないか確認する
見積り金額は最終的に支払う金額とは限らず、追加費用が発生することがあります。
「リフォームの場合は解体してみないとわからない部分もあり、追加費用が必要になることもありますが、通常、追加費用が発生する可能性がある部分などについては、担当者から事前に説明があるものです。
ただし、担当者とのコミュニケーション不足などで見積りの精度が低く、見積り金額は安かったのに、工事がはじまってから追加工事が増えてしまい、結局最終的に支払う金額が高くなってしまったというケースもあるものです。追加費用については見積りの時に必ずきちんと確認しておきましょう」
また、見積書には特記事項として、別途発生する費用などについても記載されています。わからないことや気になる部分があれば、遠慮せず、担当者に確認しておくと安心です。
保証やアフターサービスも要チェック
リフォームの後で不具合が発生するということもあります。リフォーム会社を選ぶ際には、保証制度やアフターフォローの体制がどうなっているかという点も気にしたいポイントです。
激安リフォームを提案するリフォーム業者の中には、アフターフォロー体制が整っていないケースもあります。リフォームはやって終わりではなく、その後の暮らしが一番大切です。リフォーム後もリフォーム会社とはお付き合いが続いていくものと考えて、頼れるパートナーを選ぶようにしましょう。

自分の優先順位を忘れない
安さに目がくらんで、本来のリフォームの目的を忘れてしまったら本末転倒です。コストがリフォームの最優先事項である場合を除いて、ただ費用を抑えられるだけの激安リフォームでは、価格に見合った満足度の高いリフォームを実現するのは難しいかもしれません。
満足度の高いリフォームを、できるだけ費用を抑えて行いたいのあれば、コストカットを考える場合、自分がなんのためにリフォームを検討したのかを忘れないことが肝心です。
例えば、施工箇所を減らしたり、設備や資材のグレードを落としたりするのであれば、優先順位の低い、自分があまり重視しない部分についてのみにするのが安心です。費用ばかり重視して、コストカットしすぎると、後悔にもつながり、リフォーム後にまた追加でリフォームをしたり、設備などを買い替えたりすることにもなりかねません。コストの調整をする際は、常に自分の優先順位を考えて判断するようにしましょう。
リフォーム費用を抑える方法は色々とありますが、リフォームの金額が高いと感じるか、低いと感じるかというのは、その家に暮らすことになる人の価値観によるところが大きいものです。格安リフォームを叶えるためには、費用を抑える方法を取り入れることも大事ですが、自分の満足度をいかに上げるかというのが非常に大事なポイントです。
リフォームの過程で、不満や不安を感じてしまうようなリフォーム会社をパートナーに選んでしまうと、せっかくリフォームした住まいなのに、マイナス面ばかり目についてしまうということもありますが、メリハリをつけてコストコントロールをしながら、リフォームを楽しむことができれば、リフォーム後の住まいへの満足度もアップするものです。
リフォームは大きな出費ではありますが、激安リフォームに安易に飛びつくのではなく、今回ご紹介したリフォーム費用を抑える方法なども参考に、ぜひ満足度の高いリフォームを実現してみてください。
【まとめ】格安リフォームを叶えるポイントは、メリハリをつけた予算のコントロール
リフォームは大きな出費になるため、できるだけ費用は抑えたいと考える人は多いものですが、いざ見積りを取ってみると、イメージしていた予算をオーバーしてしまうということも少なくありません。限られた予算の中でも、かけた費用以上の満足が得られるような格安リフォームを叶えるには、自分の優先順位に合わせて、メリハリをつけたコストの調整が必要になります。再利用できるものを活用したり、上張り工法を採用したり、施工面積を減らしたりするなど、さまざまな方法がありますが、どの方法も無闇に取り入れるのではなく、優先順位の低い部分で検討するというのが満足度の高いリフォームにつながります。また、費用を抑えたいからと、激安リフォームに飛びついてしまうと、想定以上に追加料金が発生したり、リフォーム後に不具合が起きてもきちんと対応してもらえないなどのトラブルのリスクもあります。目先の金額にとらわれ過ぎず、信頼できるリフォーム会社に依頼するのが安心です。
●取材協力
JSリフォーム(日本総合住生活)
構成・取材・文/島田美那子