高気密・高断熱の家とは?メリット・デメリットや断熱工法を解説

最終更新日 2025年06月23日
高気密・高断熱の家とは?メリット・デメリットや断熱工法を解説

家を建てるにあたり、高気密・高断熱住宅を検討する方は多いだろう。しかし、何となく省エネで暖かそうな高性能なイメージはあるものの、具体的な性能・効果やメリット・デメリットがわからない方も多いのではないだろうか。

そこで本記事では、高気密・高断熱の家の基礎知識やメリット・デメリット、実際の暮らし心地などについて紹介する。

高気密・高断熱の家(住宅)とは

高気密・高断熱の家とは、「気密性・断熱性を高めて外気温の影響を抑えた住宅」を指すが、そもそも気密性・断熱性とは何なのだろうか。まずは、それぞれの言葉の意味や違いについて確認しておこう。

高気密や気密性とは

住宅における「気密性」とは、隙間からの空気の出入りを防ぐ性能を指す。そして「高気密」とは、より空気が出入りしにくくなるよう隙間をふさぎ、気密性を高めた状態をいう。

昔ながらの住宅、例えば、古民家などは、時がたてば天井や壁、床、窓枠などに、わずかな隙間が空いてしまうものもある。隙間風を感じるほどではないにせよ、目に見えないほどの隙間から空気が出入りする。

そのため、冬は冷たい外気が入りこみ、室内のあたたかい空気は外へ出ていく。夏は逆に、暑い外気が室内に入りこむ。エアコンで冷やした涼しい空気が外へ逃げていく。この隙間が多くなるほど、冷暖房が効きにくい家となってしまうのだ。

一方、高気密な家とは、防湿シート、気密テープ、シーリング、コーキングなどを使って、徹底して隙間が生まれないようにして建てられる。室内と屋外の空気の出入りを無くすため、空気の漏れを無くすことで室温を一定に保ちやすい。

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高断熱や断熱性とは

住宅における「断熱性」とは、室内と屋外の熱移動を防ぎ、暑さ・寒さの影響を受けにくくする性能を指す。そして「高断熱」とは、断熱材などを用いて熱移動を防ぎ、より高い断熱性を実現していることをいう。

外の空気の温度、輻射(ふくしゃ)熱等は、屋根、壁、床下や窓をとおして家の中に伝わってくる。断熱、遮熱性能が十分でない家が冬に寒く、夏に暑いのはこのためだ。

高断熱の家では、外壁と内壁との間に断熱材を入れたり、断熱性が高い窓を用いたりして断熱性能を高めている。そのため、冷暖房により快適な温度となった室内の空気が逃げにくく、外の寒さ・暑さの影響も受けにくい。効率よく暖めたり冷やしたりできるため省エネになり、光熱費を抑えることも可能だ。

また、家の広さや間取りによって変わるが、エアコンや暖房器具の台数を少なく抑えられる場合もある。例として、北海道の冬は気温がマイナス10度に達することも間々あるが、最近ではストーブ1台で家中が暖まるほど、エネルギー効率に優れた家が珍しくない。(極寒では、ヒートポンプがうまく作動しない)

高気密と高断熱の違い

高気密と高断熱は、いずれも外気の影響を受けにくくするものだが、以下のような違いがある。

・高気密:家の隙間を塞いで空気の出入りを減らすこと
・高断熱:断熱材などを用いて、外気温の影響による室温の変動を減らすこと

つまり、高気密は「空気」、高断熱は「温度」に関する性能を表している。なお、室温が一定に保たれた快適な環境を維持するには、高気密と高断熱の両方が必要だ。気密性を高めて家を密閉し、断熱性を高めて家を保温するのだ。

どんな効果がある?高気密・高断熱の家のメリット

高気密・高断熱の家にすることで、具体的にはどのような効果が得られるのだろうか。ここでは、高気密・高断熱の家の主なメリットを紹介する。

年中快適な家で過ごせる

高気密・高断熱の家は、先述したように外気温の影響を受けにくく、空気の出入りも少ない。真夏や真冬でも冷暖房効率がよく、一定の室温を保てるため快適に過ごせるだろう。

光熱費の負担を軽減できる

冷暖房効率がよい高気密・高断熱の家では、頻繁に冷暖房の温度を変更する必要がない。また、冷暖房が効きにくいからと、過度に温度を上げたり下げたりする必要がないため、光熱費の節約につながる点もメリットのひとつだ。

冬はヒートショックの防止にもつながる

「ヒートショック」という言葉をご存知の方も多いだろう。これは急激な温度変化にさらされた際、血圧が乱高下して体に影響をおよぼし、脳梗塞や心筋梗塞などにつながる現象のことだ。

あたたかいリビングから寒い玄関へ行ったとき、寒い脱衣室から急に高温のお風呂に入ったときなどが危険。高気密・高断熱の家は、部屋ごとの温度差が少ないため、ヒートショックの防止につながる。

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遮音・防音性が高い

高気密・高断熱の家は、音漏れの原因となる開口部の隙間が少ないうえに、断熱材などによって壁の層が厚くなるため、自然と遮音・防音性も高くなる。
最近の家はかつてより、高気密高断熱化が進んで性能が高くなっているが、一部の断熱材の中でも重量のあるセルロースファイバー、インシュレーションボードには、さらに吸音、遮音防音の効果がある。

後悔することもある?高気密・高断熱の家のデメリット

省エネで快適な環境を保ちやすい高気密・高断熱の家だが、いくつかデメリットも存在する。建ててから後悔することがないように、高気密・高断熱の家の主なデメリットについても知っておこう。

結露やカビが発生する場合がある

高気密・高断熱の家のデメリットとして、まず結露やカビの発生が挙げられる。

結露は、あたたかい空気が冷たい部分に接触して急激に冷やされることで発生する。そのため、室温の変化が少ない高気密・高断熱の家は、結露が発生しにくいと考えられがちだ。

しかし、施工時に壁と断熱材の間に隙間が残ってしまうと、そこに温度差が生じて、壁内結露が発生することがある。しっかりと室内が換気されていれば結露は発生しにくくなるが、換気が不十分だと結露が発生しやすくなり、場合によってはカビが生えることもある。
また、施工不良により、断熱材内側の防湿層に亀裂や隙間が生じると、室内の湿気を帯びた暖かい空気が、断熱材を通り抜け、冷たい外壁の内側で結露を発生させる。ここの通気層があり、乾燥空気が流れれば、結露した水分は蒸発し、カビの発生などは防げる。

シックハウス症候群のリスクがある

高気密・高断熱の家は、「シックハウス症候群」になるリスクがある点にも注意が必要だ。シックハウス症候群とは、家を建てる際に使用された建材や塗料、接着剤などから揮発した化学物質、カビ、菌類を吸い込むことで引き起こされる病気を指す。

高気密・高断熱の家は空気が移動しにくく、化学物質がたまりやすいため、シックハウス症候群になるリスクが上がるのだ。シックハウス症候群になると、以下のような症状が出る可能性がある。

・頭痛
・吐き気
・鼻水
・目がチカチカする
・気持ち悪い、気分が悪い など

建築基準法改正によって、ホルムアルデヒドを使った建材がほぼなくなったため現在ではシックハウス症候群になるリスクは軽減されているが、それでも定期的に換気するなどの対策は必須だ。

エアコンなどの空調設備で室内が乾燥しやすい

室内が乾燥しやすいことも、高気密・高断熱の家におけるデメリットのひとつだ。これは外気が入りにくい構造によって、外からの湿気の流入も減るためである。

とくに冬場は、もともと空気中の湿気が少ないうえに、エアコンなどの空調設備で空気が暖められることで、より乾燥しやすくなる。

乾燥肌や粘膜の乾燥による健康への影響が気になる場合は、暖房の温度を下げられず、加湿器を置いたりといった乾燥対策が必要だ。ただし、加湿器は結露の原因になる。結露する場所、サッシ面など冷たいところを、カーテンやフィルムを張るなど、工夫して、結露の原因をなくすことだ。対応できなければ、施工会社などに相談したほうがよいだろう。

建築費用が高くなりやすい

高気密・高断熱を実現するためには、隙間を塞ぐ資材や断熱材などが必要となる。それに加えて、通常より工事工程も増えるため、建築費用が高くなりやすい。一般的な住宅でも、一定水準の断熱気密は当たり前になっている。ハイレベルなものでは、どれくらい費用が高くなるかは施工会社によって異なるので、しっかり見積もりを取って確認することが大切だ。

高気密・高断熱の家で冬の結露や夏の暑さを対策する方法

気密、断熱、換気のバランスを取って冬の結露を防ぐ

先述のとおり、高気密・高断熱の家では、壁内結露やカビが発生することがある。住まいの大敵である結露やカビを防ぐには、あたたかい空気に含まれる余分な湿気を、換気で排出することが重要だ。2003年施行の改正建築基準法(シックハウスですね)によって、住宅への24時間換気システムの設置が義務化されている。(結露を起こす冷たい場所をなくす努力が肝要で、お金のかかる設備は積極的に空気の温湿度を調整し、より快適性を高めるもの。)

しかし、気密性が高くなければ換気はうまくいかない。また、気密性が高くても窓の断熱性が低いと、冷えたガラスやサッシが結露する。

結露やカビが生じにくいのは、適切な湿度に保たれた、家の中に温度ムラがない環境だ。そして、そのカギを握るのが「気密」「断熱」「換気」のバランスである。これらのバランスをどう取るべきかは、家を建てるエリアの気候により変わるため、建築を依頼するハウスメーカーや工務店などに確認してみるとよいだろう。

デメリットというほどのことではないかもしれないが、気密性の高い家の場合、暖房器具選びにも制約が出る。例えば、開放式の石油ストーブは炎の熱で部屋を暖める都合、室内の二酸化炭素濃度を高めてしまうため、定期的に窓を開けて換気する必要がある。それにより冷たい外気が室内へ入りこみ、結果的に暖房効率を損ねてしまうのだ。

なお、FF式ファンヒーターの場合は、外気を吸い込んで燃焼し、排気ガスは外へと放出するため、二酸化酸素濃度が上がる心配はない。人がいるだけでco2濃度は上がるので、回数は変わっても換気はとても大事。

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開放型の石油ストーブ。気密性の高い家で使用すると室内の二酸化炭素濃度が上がる危険がある

遮熱性の高い窓ガラスで夏の暑さを防ぐ

高気密・高断熱の家なら基本的に、夏でも涼しく過ごせるだろう。ただ、暑さの厳しいエリアで、かつ南側に大きな窓のある日当たりがよい家などの場合、窓から入った太陽の熱が室内にこもってしまうケースもある。(基本的に、夏の日は庇で抑える。高断熱の家に大きな窓は勧められない。性能の良い小さい窓でよい。閉鎖的な家が向いている。性能の良いガラスは暗い)
これは、ガラスをとおった日射(光)が熱になって室内を暖めるためだ。断熱性の高い窓ガラスは熱を外へ逃さないので、部屋の中に熱が溜まってしまう。夏の暑さを防ぐためには、日射を反射させる遮熱性能が備わった窓ガラスを選ぶのも方法のひとつだ。

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夏の暑さが厳しいエリアでは、遮熱性の高い窓で部屋に熱がこもるのを防ぐ

断熱にはどんな工法がある?

主な断熱工法は「内断熱」と「外断熱」

一般的な木造住宅で使われる主な断熱工法には、「内断熱」という充填断熱工法と、「外断熱」という外張り断熱工法の2種類がある。

内断熱とは、断熱材を外壁と室内の壁の間や、天井の上、床下などに詰める方法を指す。断熱材の厚さや種類にもよるものの、材料費や施工費などのトータルコストは、外断熱に比べて抑えやすい。

一方、外断熱とは、構造材の外側を断熱材でくるむ方法を指す。内断熱と比べるとコストは高めだが、家全体をくるむため、外からの熱を伝える箇所が少なく断熱性に優れる点、気密性を確保しやすい点がメリットだ。

どちらの工法でも、断熱性と気密性を確保する丁寧な施工が必要となる。最近は、それぞれのメリットを活かして、内断熱と外断熱を併用するケースが増えている。

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詳しくは次項で述べるが、断熱材にはセルロースファイバーやグラスウールなど、さまざまな素材のものが用いられる。

断熱材の主な種類

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高気密・高断熱の家に欠かせない断熱材だが、種類が多く、迷う方もいるだろう。そこで以下では、断熱材の主な種類と特徴を解説する。

無機繊維系

「無機繊維系断熱材」とは、ガラスや鉱物を原料とする断熱材を指す。主な無機繊維系断熱材としては、「グラスウール」や「ロックウール」が挙げられる。

グラスウール

グラスウールは、ガラスを原料とした無機繊維系断熱材だ。主にリサイクルガラスが使われており、環境にも配慮されている。絡み合ったガラス繊維の間に含まれた空気で熱を遮断するのが特徴で、燃えにくく耐久性が高い。

ロックウール

ロックウールは、岩石を原料とした無機繊維系断熱材だ。高温で溶かした岩石を繊維状に加工しており、熱や火に強い特徴をもつ。また、湿気や騒音にも強く、空港などの施設で使われることがある。

木質繊維系

「木質繊維系断熱材」とは、木材や古紙などの自然素材を原料とする断熱材を指す。主な木質繊維系断熱材としては、「セルロースファイバー」や「インシュレーションボード」などが挙げられる。

セルロースファイバー

セルロースファイバーは、古紙を主な原料とした木質繊維系断熱材だ。古紙を裁断・攪拌して空気を含ませ、熱を遮断する。グラスウールよりも吸音性能が高く、調湿性・防火性・防音性なども備えているのが特徴だ。

インシュレーションボード

インシュレーションボードは、木材などを原料とした木質繊維系断熱材だ。廃木材を使うことも多く、エコな断熱材として知られている。軽量で加工しやすく、蓄熱性、防音効果も期待できる。

発泡プラスチック系

「発泡プラスチック系断熱材」とは、気泡を閉じ込めたプラスチックを原料とする断熱材だ。主な発泡プラスチック系断熱材としては、「硬質ウレタンフォーム」や「フェノールフォーム」、「ポリエチレンフォーム」などが挙げられる。

硬質ウレタンフォーム

硬質ウレタンフォームとは、ポリウレタン樹脂に発泡剤を混ぜて作られる発泡プラスチック系断熱材だ。ボード状の断熱材のほかに、充填式(現場発泡)のものもある。断熱性・耐久性が高いのは魅力だが、費用がやや高めな点はデメリットだ。

フェノールフォーム

フェノールフォームとは、「フェノール樹脂」という合成樹脂に発泡剤を混ぜて作られる発泡プラスチック系断熱材だ。耐火性が高く、燃えても有害物質が発生しにくい。長期間、安定的に断熱効果が得られるのも特徴だ。費用は高め。

ポリエチレンフォーム

ポリエチレンフォームとは、ポリエチレン樹脂に発泡剤を混ぜて作られる発泡プラスチック系断熱材だ。耐火性は低いものの、断熱性・防水性が高いのが特徴だ。また、柔軟性があるため狭い場所での使用に向いている。

天井や壁をリフォームして断熱性能を上げる

気密性をリフォームで向上させるのは難しいが、断熱性の向上はあとからでも可能だ。壁内の断熱材を増やしたり、より断熱性能の高い窓に交換したり、内窓を設置したりするなどの方法がある。暮らし始めてから冬の寒さを感じた場合は、断熱リフォームを検討してみるのもよいだろう。

性能は施工に左右される!依頼先選びのポイント

気密性も断熱性も、施工の出来に結果が左右される。つまり、肝心なのは依頼先選びだ。
断熱性能は省エネルギー対策等級4相当をクリアしていることが快適性の目安になる。

「等級4の基準より上の施工を目指している」「高気密・高断熱の家づくりに力を注いでいる」「実際に住んでいる人からの評価が高い」といった会社を探そう。

高気密・高断熱の家の効果は、換気とのバランスや施工の精度によって決まる。そのメリットが発揮されれば、住みよい環境を得られるだけでなく省エネにもなる。新築・購入の際は、高気密・高断熱にも配慮しよう。

まとめ

高気密・高断熱の家とは、空気の出入りや外気温の影響を抑えて、一定の室温を保てる快適な住宅のこと

年中快適な環境が維持できる、光熱費が節約できる、遮音・防音性が高いなどのメリットがある

結露やカビが発生することがある、建築費用が高いなどのデメリットもある

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取材・文/田方みき イラスト/梶谷聡美 写真/PIXTA
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