12万㎡超の敷地と多彩な共用施設を活用し24クラブが活動中
「太陽と緑と笑顔の街」
そんなキャッチフレーズがつくサンシティが誕生したのは約40年前。竣工当時、大きな話題となったのは破格のスケール感だ。
敷地面積は東京ドームの3倍にあたる約12万5000㎡。樹齢約250年のスダジイをはじめ約5万本もの樹木が茂り、その緑を囲むように14の住居棟がゆったりと立ち並んでいる。
ゆとりある敷地から共用施設も充実している。集会室・談話室は大小合わせて全11室。バーベキュー広場、アスレチックジムのある冒険広場、テニスコート仕様の運動広場、さらに屋外プールまで設置されている。
なかでも珍しいのは“カルチャーセンター”と呼ばれるクラブ活動用の共用施設だ。住居棟とは別に建てられた平屋の建物は、どこか学校の部室のよう。ここを拠点にして、木工クラブ、染色クラブ、陶芸クラブの3団体が活動している。ほかにも、テニス、ダンス、囲碁、絵画、茶道、写真、コーラスなど、マンション内に立ち上げられたクラブの数はなんと24団体!大規模マンションでは共用施設を活用してサークルや教室を開くケースはよくあるが、これほどバラエティに富む物件はそうないだろう。
木工クラブはマンション内の設備の製作もするクラフト集団
クラブ活動の様子を見学させてもらおうと、まず訪ねたのは木工クラブだ。創立されたのは竣工とほぼ同時期の1980年。現在は40代から80代まで20名ほどが在籍している。
カルチャーセンターの一角を占める年季入りの木工室にお邪魔すると、目に飛び込んできたのは金槌、のこぎり、かんななどの本格的な工具。電動の機械工具もずらりと並び、木工店さながらの充実ぶりだ。
「道具は各自で持ち寄ったものや、部費で買ったものなどいろいろです。近所の作業所が閉じるときに、機械を安く譲ってもらうこともあるんですよ」
こう教えてくれた代表の和田義智さんは竣工時からの居住者であり、ベテラン部員の1人だ。
和田さんによれば、木工クラブでは活動日を特に設けず、自分の都合のつくときに自主製作するのが基本。ただし、夏休みに開催する親子向けの木工教室や、秋のサンシティ祭で販売する竹と木製品の製作などクラブとしての活動があるほか、管理組合からマンション内の設備を発注されることも少なくない。
例えば、昨年、リニュールしたバーベキュー広場のテーブルと椅子は部員が共同製作したもの。広場に点在するベンチもやはりクラブで手づくり。どちらも玄人はだしの見事な出来映えだ。
「我々がつくれば、費用は業者に依頼した場合の半額以下。管理費の支出を抑えることができます。カルチャーセンターは本来マンションの居住者全員の持ち物。そこをクラブが優先的に使わせてもらっているので、感謝の気持ちを込めて協力しています」(和田さん)
月1回、土曜日に木工室をマンション住民に開放するのも全住民に使用する機会を増やしてほしいという意図から。置いてある工具は自由に使うことができ、使い方などは部員がレクチャーしてくれる。ふと家具の自作を思い立ったときなどに、木工室を利用できるのはありがたいだろう。
商業棟のクリスマスイベントをクラブ員が盛り上げる
そんな木工クラブの活動に、5年前から加わったのがクリスマスの子ども向けイベントの設営だ。トナカイが引く木製のソリに乗ってサンタさんと一緒に写真撮影をしよう!という夢いっぱいの企画である。ソリや星がきらめく背景パネルなどは、部員が製作したのだという。
開催日はクリスマス前の土日の2日間。当日、足を運んでみると、会場は親子連れで大にぎわい。開始早々に、ソリ乗車を待つ人たちの列ができ始めた。
クリスマスイベントの会場になるのは、マンションに併設された商業棟「サンゼリゼ」の中央広場。竣工当時、この商業棟にはスーパーとともにおもちゃ、本、鮮魚、青果などの個人商店や飲食店が入り、その利便性の高さも魅力の一つとして謳われていた。
だが、長い年月を経て居住者の年齢層が上がったことや、ネットショッピングが身近になったことなどから徐々に利用者が減少。当初の商店や飲食店が軒並み撤退して、かつての活気が薄れつつあったという。
そこで10年前に立ち上げられたのが商業棟活性化プロジェクトチームだ。魅力的な商店を誘致するのと同時に、商店街のPR活動として数々のイベントを開催。クリスマスイベントもPR活動の一環で始められたという。
この活動にひと肌脱いだのが木工クラブだ。電気関係の仕事に就く人や洋画家など多才なメンバーを擁すことから、初年度には電動のソリや背景パネルなどをわずか3カ月で作成。現在も会場の設営などに部員たちが活躍している。
5年目を迎えたクリスマスイベントに参加した人たちは、2日間で約400人。マンションの住民だけでなく、近隣住人も楽しみにする恒例イベントになったものの、ソリの耐用年数やメンバーの高齢化を考えて今回で終了することになっている。なんとも残念だが、ソリに乗った楽しい思い出は子どもたちの心に残っていくことだろう。
マンションに住む熟練職人が手描友禅染めを指導
同じくカルチャーセンターで、週1回金曜日に活動しているのが染色クラブだ。女性部員8人が伝統工芸の手描友禅染めを中心に、草木染め、藍染めなどに取り組んでいる。ポーチのような小物だけでなく、孫の七五三や娘の成人式の着物まで染めたというメンバーもいて、こちらもかなり本格的。それもそのはずで、創立から40年来、指導にあたる山上貞雄さんは、キャリア66年のプロの友禅師。このマンションに入居した縁で染色クラブを立ち上げ、特別に教えているそうだ。
そもそも手描友禅染めの教室は都内でも数えるほどしかなく、マンション内で習えること自体が希少。それ以外にもマンション内クラブには数え切れないほどのメリットがあると部長の佐藤佳子さんはいう。
「一番、ありがたいのは近さですね。マンション内だから“通う”という感覚がないんです。しかも、道具は染色室に置けるので、手ぶらで行って作業ができる。出来上がった作品はサンシティ祭で展示発表できるので、それも励みになっています」(部長の佐藤佳子さん)
サンシティ祭では部員たちが手づくりした友禅のポーチなども販売。艶やかな小物はどれも大人気だとか。
気軽に参加できて仲間も増えるから長続きする!
一方、スポーツ系のクラブも充実している。その一つ、テニスクラブは、2面のテニスコートがある運動広場をメインに週4回活動中だ。部員数は30代から80代までの男女35名。上級者がコーチ役も請け負っているそうだ。
代表を務める土肥良幸さんは18年前、リタイアを前に入部。テニスを始めてから体が引き締まり、健康維持にも役立っているという。
「家の玄関を出て徒歩3分の場所にコートがあるから続けやすいんです。コートを借りる費用も外の施設では1時間1300円ぐらいしますが、マンション内のコートは1時間でわずか300円。年末の忘年会は部員の家族も交えて集まるので、マンション内に知り合いも増えました」
土肥さんがそう語るように、気軽に参加できて費用も安く、なにより世代を超えた交流を広げられるのがマンション内のクラブ活動の魅力。資産価値につながるコミュニティの醸成にもひと役買っていることは言うまでもないだろう。
さらに、サンシティの場合、各クラブがさまざまな形でマンションライフの充実に貢献している。例えば、テニスクラブでは木工クラブ同様に、夏のこども祭で子ども向けのテニス教室を開催。このとき陶芸クラブによるこども陶芸教室や、広場を会場にした写真クラブの“森の写真展”も開かれるほか、模擬店を出すクラブも多い。加えて、スキークラブでは毎年冬に居住者なら誰でも参加できる日帰りスキーツアーを実施している。単に自分の楽しみにとどまらないところがこのマンションのクラブ活動の先進性といえる。
竣工から約40年経った現在、居住者の顔ぶれには子育て世帯が再び、増え始めている。自分が育ったこのマンションに子世帯が戻り、マンション内で親との近居をするケースも少なくないそうだ。
そうした変化は、今後、クラブ活動を支えていく力になり、一方で、クラブ活動を通じて異世代の交流もますます活発になっていくはずだ。
人生100年時代と言われる今、それを謳歌できるのはサンシティのようなマンションなのだろう。