わが国の防衛の要に隣接するシャープなタワーマンション
唐突だがまずはクイズをひとつ。東京スカイツリー、東京タワーに次いで、東京都内で3番目に高い電波塔は?
答えは東京・市ヶ谷にある防衛省本省に立つ通信鉄塔で、高さは220m。下の写真の左端の塔がそれで、見覚えのある方も多いかもしれない。
今回訪ねたザ・センター東京は、この防衛省薬王寺門のすぐ横に立つ、地上38階建て、高さおよそ130mのタワーマンション。JR山手線のほぼ中央にあたる新宿区の市谷本村町の立地であることがマンション名の由来という。
ちなみにマンションの立地の歴史をひもとくと、明暦2年(1656年)、徳川御三家のひとつである尾張徳川家第二代の光友公が第四代将軍家綱公より五万坪を拝領し、市ヶ谷台に上屋敷を築いたという史実にたどりつく。マンションが立つのは、この歴史ある土地の一部なのだ。
最寄りの都営新宿線曙橋駅から5分ほど歩くとエントランスに到着。ここまで来る間に、防衛省の自衛官なのか、あるいは防衛省に隣り合う警視庁機動隊の隊員なのか、マッチョな雰囲気の男性が集団でランニングする姿を目撃した。この場所ならではの風景だろう。
こうした環境に融合させるためかは分からないが、マンションの外観デザインは、濃いめのグレーとホワイトのタイルで格子状に覆われており、シャープな印象を放つ。築13年目を迎えているが、中古流通価格は坪単価300万円台~800万円台をキープし、新築分譲時よりも直近の中古販売価格のほうが高い住戸や、億ションも多数含まれている。資産価値の高いハイグレードマンションなのだ。(2020年2月現在。複数の仲介会社の情報からSUUMO編集部が推計)
災害発生後の住人共助も促す「お知り合いになりましょう!」会の意義
そうしたマンションにはどんな人が暮らしているのか…ちょっと緊張しながら、竣工時から住んでおり、変遷をつぶさに見守ってきた高木管理組合理事長にお話をうかがうと、こんな言葉が返って来た。
「『お知り合いになりましょう!』会の皆さんに活躍いただいているおかげで、マンション内には良いコミュニティがつくられていると思っています」(以下コメントはすべて高木さん)
「お知り合いになりましょう!」会は、多彩なイベント、行事を通じて、文字どおり、マンションに暮らす住人同士の顔見知りを増やすことを目的にした会。住人有志がボランティアで運営しているそうだ。ストレートで分かりやすいネーミングに気分がほっこりする。
「大体2カ月に一度のペースで、節分や七夕、ハロウィーンなど、季節の行事・イベントを開いてくださっています。共用施設にキッチンスタジオがあるのですが、そこを使ってホットドッグやカレー、ビールパーティーなど食事を交えたイベントを開いていただくことも多いですね。昨年4月30日には『改元パーティー』を開き、160名が集まって大盛況でした。居住者の高名な書道家による『令和』のご揮毫のパフォーマンスがあり、子どもたちの書き初め展示もあり。大人はグラス片手に交流の輪が広げながら、平成最後の夜を楽しみました。
また、『お知り合いになりましょう!』会の皆さんは、イベントに加えて第4木曜日朝8時~9時マンション周辺の清掃、共用ガーデンの花壇・植栽の手入れなどもやってくださっていて、本当に頭が下がります」
さらに、「お知り合いになりましょう!」会の活動によって、マンションの防災力も向上していると思います、と高木さん。
「会のそもそもの意義は、顔見知りが増えることで、万が一の災害が発生した際、互いに助け合える関係を築くことなんです。昨年7月7日の七夕の会では、私から防災に関する講話をさせていただき、楽しいご近所づきあいと共助関係の両立を促しました。また、防災にひもづけて普段は見る機会のないマンション内の非常用発電機を見てもらおうと“探検ツアー”と銘打って多くの親子連れに参加いただきました」
首都直下地震は、今後30年の間に70%の確率で起きるといわれている。東京都は在宅避難を推奨しており、万が一の際、マンション内にとどまって被災生活を送ることになる人は増えるだろう。その意味で、「お知り合いになりましょう!」会の存在は非常に有意義だ。ボランティアの輪がさらに広がって、末永く継続してほしい。
時代とニーズの変化に応じて共用施設を続々アップグレード
住人交流を促して、万が一の災害にも備える。そうした取り組みの一方で、時間の経過とともに変わる住人のニーズに対応し、できるだけマンション暮らしを快適にしようとする動きも。
「その役割は管理組合が担っています。成果が上がった活動のひとつが、共用施設のリニューアルですね」
リニューアルした施設は複数。まずは、暖炉のあるコージーラウンジだ。以前は靴を脱がないと入れず、靴の脱ぎ履きを面倒に感じる住人が多かったため、フロアまわりを更新して土足OKに。すると利用者が増加に転じたそうだ。
また、ラウンジの隣のライブラリーにはデスクを10台設置し、勉強や仕事ができるスペースをしつらえた。デスクはパーティション付きで独立性が高く、集中しやすいと評判を呼び、学生からビジネスパーソン、趣味の調べ物をする中高年の住人など、幅広い年代が集まるようになったそうだ。
ちなみにコージーラウンジとライブラリーには「曙橋カフェ」というカフェが併設されており、お茶や軽食、お酒も愉しめるのだが、コージーラウンジとライブラリーのリニューアル後、人が集まるようになって売り上げが伸びたとのこと。
「ほかにもEV充電器の後付け、竣工当初、外部委託の保育士さんが運営していたキッズルームの用途変更、マンション前の公開空地に新宿区のシェアサイクルポートを誘致、防犯カメラ増設、フィットネススタジオのマシーンリニューアルなどを実施しました。新築マンションではほぼデフォルトのEV充電設備導入で資産価値の維持をはかったり、少子高齢化に対応したりなど、社会の変化にきちんと対応できたと自負しています。この方針は次世代の管理組合にも受け継いでもらうつもりです」
高木さんによると、管理組合の理事には、弁護士、医師、ゼネコン、不動産関係、さらには多様な企業の社長など自身の専門性を活かして働いている人が多いという。
「理事会活動やプライベートの付き合いを通じて、自分の仕事ではほぼ接点がない業種の人から刺激をもらえるのが楽しく、理事としてのモチベーションアップにもつながっています」
「お知り合いになりましょう!」会によって住人交流が促進され、多士済々の理事会活動では互いに刺激をもらいあえる。ザ・センター東京は、「東京の中心で、互いに助け合える関係を築く」マンションなのだ。