たまたま京都で暮らしている漫画家のスケラッコさんに、お気に入りの場所を案内してもらった

文章と写真: 玉置標本 イラスト:スケラッコ

お盆を繰り返す町の不思議な物語『盆の国』(リイド社)、ネコだけが暮らす世界に迷い込む『みゃーこ湯のトタンくん』(ミシマ社)、うどんから生まれたネコが大活躍(?)する『どどんと!うどん!ねこ』(ポプラ社)シリーズ、本人がしょうゆさしとして描かれるエッセイ料理漫画『しょうゆさしの食いしん本』(芳文社)シリーズなど、様々なジャンルの漫画を意欲的に描かれているスケラッコさんは、新卒で就職した会社が京都だったという理由で移り住み、漫画家になってからもずっと京都で暮らしているそうだ。

関東出身の人間からすると、どうしても修学旅行などで行く観光地というイメージが強い京都。そこでのリアルな暮らしぶりをスケラッコさんに伺った。

古都への憧れとかではなく、就職先の会社が京都だった

私が京都を訪れたのは、異常ともいえる酷暑真っ最中の8月下旬。この日も帽子なしには外を歩けない厳しい暑さだった。

高い建物があまりない京都で独特の存在感を示す京都タワー、千葉県の外房にある市じゃないほうの鴨川、シャシャシャシャシャと元気に鳴くクマゼミ、住宅街に溶け込んでいる和菓子屋さんなどに感心しながら、スケラッコさんの仕事場へと向かう。

スケラッコさんはまだ京都タワーに登ったことがないそうだ。デザインが宇宙の建物っぽくて好き

鴨川に架かる橋の上から眺めたコイの群れは涼し気

その姿は見つけられなかったが、埼玉ではほとんど聞くことのないクマゼミの鳴き声がよく聞こえた

 

ところで私がスケラッコさんを知ったのは、2017年に大阪のシカクという主に同人誌(ZINE)を扱う書店で開催された、『谷口菜津子×スケラッコ2人展 ~ごはん、お酒、漫画だよ!~』で、この期間中に私がシカクの2階で製麺のワークショップをしていて、そこにスケラッコさんが参加してくれたのである。

それ以来、私の本にイラストや漫画を描いてもらったり、作りすぎたラーメンを送ったりしている。つい先日はじまった私の新連載『もったいないから食べてみよう 自給率1%からの野良食材採集生活』でもイラストをお願いさせてもらったところだ。


谷口菜津子×スケラッコ2人展より。右側のしょうゆさしがスケラッコさんの自画像

 

スケラッコさんのInstagramによく出てくるかわいいネコに逃げられつつ、京都に住むことになった理由、そして漫画家になった経緯などを伺った。

仕事場を見学させていただいた。ネコが隠れているのがわかるだろうか

驚かせてすみませんね

――スケラッコさんの出身は名古屋ですよね。

スケラッコ:「そうです。東山動物園のある辺り。高校が美術科だったので、その流れで多摩美術大学のグラフィックデザイン学科に進みました」

――高校が美術科ということは、もう中学生の頃から漫画家になりたいと思っていたのですか。

スケラッコ:「そんなそんな。でもうっすらくらい。絵はずっと好きですよ。それで上京して、大学は八王子だったけど住まいは神奈川県の橋本でした。学校が東京と神奈川の境目みたいなところなんですよ」

――リニア中央新幹線の駅ができるという橋本。

スケラッコ:「学生時代は漫画を描いていなくて、絵本創作研究会というサークルに入っていました。年に一回自作の絵本を展示するというのはあったけれど、部室に集まって熱く語り合うとかはなくて。なんかふんわりした集まりでしたね」

――漫画研究会みたいなところで当時からガンガン描いていたんじゃないんですね。

スケラッコ:「だから普通に就職活動をしたんですけど、当時の就職先として多かったのが広告かゲーム関係のデザイン職。ゲームは全然しなかったけど、広告は絶対違うと思ったのでゲームかなあと。それで京都のゲーム会社に採用していただきました」

――ゲームをしないけどゲーム会社に就職ですか。

スケラッコ:「してなかったです。今もあんまりしない。仕事は3DCGでモデリングをしたりしていました。

今の学生はみんなやっているんでしょうけど、当時はまだ授業とかではやっていなかったから、会社の研修でみっちりやって、すぐに実戦でもりもりやる。全然上手じゃなかったけど」

――スケラッコさんが仕事で3DCGをやっていたとは。そういえば『みゃーこ湯のトタンくん』の原画展で、漫画の背景を3Dモデルで作成しているというのを知ってびっくりした覚えがあります。そういうバックボーンがあってこそだったんですね。

スケラッコ:「結局手作業でトレースするんですけど、それをしておくと建物内のパースとかが楽になるんですよ」

『みゃーこ湯のトタンくん』のイラストと『どどんと!うどん!ねこ』の原画。仕事場の壁より

会社を退職して漫画家の道へ

――会社員としての仕事をしつつ、個人としての創作活動もしていたのですか。

スケラッコ:「いや、あくまで趣味レベルでしたね。コミティア(同人誌即売会)とかに仕事とまったく関係ない同人誌をちょっと出すくらい」

――じゃあ漫画家に専念するため、満を持して退職されたという訳ではない。

スケラッコ:「まったく。そのゲーム会社には8年間勤務したのですが、やっぱり年齢と経験を重ねると取り仕切る系の仕事が増えていくじゃないですか。それが向いていないなあ、この先どうなるだろう、長く働けるだろうかと思ってしまって」

――会社員として管理職になっていくよりも、創作活動の現場にいたいと。

スケラッコ:「でも一回就職したのはすごくよかったなと思っていて。会社勤めを経験してからフリーランスになったから、仕事の進め方とか請求書の書き方とかもわかるじゃないですか。今でも怪しいもんですけど、ちょっとは違うかなって。メールは早めに返そうとか思うし、タイピングが早くなったし」

――3DCGも覚えたし。スケラッコさんと仕事をしたという知り合いが、返事は早いし納品物が完璧だと唸っていましたよ。私も会社員を経由してライターになりましたけど、学生からいきなりフリーだと、社会常識を身につける期間がないですよね。

この家にネコは三匹いて、こちらはちょっとだけ相手をしてくれた。うりという名前の三毛だが、スケラッコさんは「ポンちゃん」と呼んでいた。呼び方が安定しないのはネコあるあるとのこと

――退職後はどういう流れで漫画家になったのですか。

スケラッコ:「最初は描く場所がなにもなかったので、自主制作で描いてコミティアに出すとか、コミティアの出張編集部に持ち込みをしたりしていました。

商業デビューの直接のきっかけは、2014年に講談社が募集していたpixiv(イラストや漫画を中心としたSNS)の企画に『大きい犬』という短編を応募したことです」


『大きい犬』のイラスト。仕事場の壁より

――あの話、すごく好きです。犬がすごく大きくて。

スケラッコ:「その流れで『ITAN』という講談社のコミック誌で短編をいくつか描いたんですが、なかなかネームが通らなくて。その時期は結構大変でした」

――漫画は掲載されないと原稿料がまったく入らないから、連載が始まるまでが辛いとよく聞きますね。

スケラッコ:「初めての連載はリイド社の『トーチ』というウェブサイトで、『盆の国』という京都が舞台の話です。コミティアの会場でトーチの編集者の方に会ってもらい、こういう話を描いてみたいんですよと話をしたら、それがするりと通って。タイミング的にウェブに掲載する漫画をたくさん求めていた時代だったのかも。

だから単行本になったのも、短編集の『大きい犬』(2017年8月)よりも『盆の国』(2016年7月)のほうが先なんです」

初連載となった『盆の国(トーチコミックス)』と短編集『大きい犬(トーチコミックス)』(リイド社)の単行本

スケラッコ:「『盆の国』がフリースタイルというカルチャー誌の『THE BEST MANGA 2017 このマンガを読め!』の1位、宝島社の『このマンガがすごい! 2017 オンナ編』でも20位になってくれて、すごくうれしかったですけど、これだけ読んだという人も多いんじゃないかな」

――スケラッコさんは作品の幅が広いですよね。『平太郎に怖いものはない』(リイド社)は『盆の国』とちょっと似た世界線ですけど、『しょうゆさしの食いしん本』は料理エッセイ漫画だし、『マツオとまいにちおまつりの町』(亜紀書房)は子ども向けの絵本。『バー・オクトパス』(竹書房)は寡黙なタコがマスターで大人向け、『みゃーこ湯のトタンくん』はネコの世界に迷い込むし、『ここは鴨川ゲーム製作所』(竹書房)はちょっと青春っぽい。

ものすごくお腹が空く料理エッセイ漫画『しょうゆさしの食いしん本(芳文社コミックス)』、独特のテンポで話が進む『平太郎に怖いものはない(トーチコミックス)』

スケラッコさんが描くキャラクターが詰まったイラスト。仕事場の壁より

――そして児童書の『どどんと!うどん!ねこ』シリーズ。これはどういう経緯でスタートしたんですか。

スケラッコ:「宮沢賢治の『注文の多い料理店』の文庫版イラストをポプラ社で描いたのをきっかけに、声を掛けていただいて。

子どもの頃によく読んでいた『こまったさん』シリーズとか『アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ』のシリーズが大好きで、そういう作品を描いてみたかった。児童書ってシリーズでズラッと並ぶじゃないですか。その景色に憧れていたし、長く読んでもらえるし」

――仕事場の壁に子どもからのファンレターが貼られていますね。

スケラッコ:「編集部に届いたものをいただきました。サイン会とかにも親子で来てくれて、うちの子どもがずっと何度も読んでいますとか、うどん屋さんで『この店にはうどんねこがいそう』とか言っているという話が聞けて、すごくうれしいですね」

――そういえば12月に発売予定の第四弾はスケラッコさんの地元である名古屋名物、みそ煮込みうどんが出てくるとか。今から楽しみです!


どどんと!うどん!ねこ 4巻『うどんねこ まほうのことば、ミソニコミ!』©スケラッコ/ポプラ社

――ところでこのシリーズは、うどん屋さんが生地を捏ねていたらネコが誕生するというところから始まっていますが、これはどういう発想だったのでしょう。

スケラッコ:「最初は漠然とネコが出てくる話を考えていて、ただのネコとお店の話だったんですけど、ある日うどんの生地をコネコネでネコになるっていうのを思いついて」

――コネコネ……ネコと突然閃いた。

スケラッコ:「これが物語のフックだ!って頭がピシャーンとなった。小さい子どもってうどんが好きだし、私もうどんが好きだから、ちょうどいいじゃないかと」

――創作にはそういうきっかけが大事なんでしょうね。

スケラッコ:「『平太郎に怖いものはない』のときもそれがあって。これもよく覚えているんですけど、最初は主人公が漫画家を目指しているみたいな設定で考えていたけど、ある日バスに乗っていたら、『あ、お好み焼き屋じゃない?』ってなって。それもピシャーンとなりましたね」

――ピシャーン。

自画像がしょうゆさしの謎

――最後に一つ。スケラッコさんのエッセイなどに登場する自画像が「しょうゆさし」なのはなぜですか。聞かれても困ると思いますが。

2017年の二人展で販売されていた同人誌の『しょうゆさしのフェイバリ飯』

スケラッコ:「造形としてのしょうゆさしがよかったんですかね。そんなにしょうゆさしに対する愛はないんですけど。

私は全然覚えていなかったんですけど、最近になって判明した妹の記憶によると、しょうゆさしを最初に書いた話で、たまたま私が赤いTシャツを着て、黒いズボンをはいていたからではないかとのことです(※ちなみにスケラッコさんの漫画で、妹は白こんにゃく、母はネコ、父はクマ、同居人はビッグフットで描かれている)。

それ以外の理由としては、同居しているビッグフットくんがよくしょうゆさしを描いていたのもあるのかな。本人はパクられたって言っています」

――しょうゆさしの絵をよく描く同居人!

気になる京都の住み心地

個人的な興味もあってかなりの長話になってしまったが、スケラッコさんが京都に住むことになった経緯を聞いた後、お気に入りの場所を案内してもらいつつ住み心地などを伺った。

まず訪れたのは誠光社という渋い書店。原画展などでお世話になっているそうだ

漫画家という職業柄もあり、波長の合う本屋の存在は心強い味方なのだろう

わたしの同人誌も扱ってくれている素敵な本屋さんです

続いてホホホ座浄土寺店という書店にも連れてきていただいた

選書に特徴のある本屋は何時間でもいられる心安らぐ場所だ

スケラッコさんの『バー・オクトパス』が、さりげなく呑んべえベロベロコーナーに置かれていて笑った

テレビの街ブラ番組で岡崎体育さんが購入したという、スケラッコさんデザインのTシャツも販売されていた

スケラッコさんはイラストレーターとしても多忙で、最近発売された『昭和女たちの食随筆』(中央公論新社)もスケラッコさんのイラストだ

スケラッコさんのおかあさん(ねこざ)の文章に、スケラッコさんが絵を描いた同人誌も販売されていた

ホホホ座のすぐ近くから大文字焼きの文字が見えて興奮した。京都市民にとっては当たり前の景色なのだろう。地元の人は大文字焼きとは呼ばず『(五山の)送り火』と呼ぶそうだ

――京都という場所に憧れて引越してきた訳ではなかったということですが、住んでみて京都はどうでした。

スケラッコ:「京都といっても広いので、なにをもって京都というか。京都府で言えば北側の舞鶴とかは日本海に面していて、この辺りとは全然違う。

京都市も北側はほとんど山地なので、みんながイメージするような京都とはちょっと具合は違いますね」

――この取材の前にグーグルマップを眺めていたら、京都市が琵琶湖よりも広くてびっくりしました。京都の中心地は京都御所が一条で、南に向かって十条まであって、それを囲むように北大路、東大路、西大路という大通りがあるんですよね。

スケラッコ:「七条と八条の間に京都駅があるのかな。ここからここのエリアじゃないと住みたくないなんて話もたまに聞きます。私は全然関係ないけど。

そういうのにこだわらず住んでいるのは、やっぱり他所から来たからかな。京都で最初に住んだのは、京都市のすぐ南側にある宇治市だったし」

昼酒に最高だという渋い定食屋を案内してもらった。私は焼き飯定食、スケラッコさんはウインナー炒めと炊き合わせをつまみに昼ビール。これが俺の京都旅行だ!

さすがに暑すぎたので近くの銭湯で休もうとしたら定休日だった。スケラッコさんの「もうお風呂に入る肌になっているのに!」という表現がおもしろかった。唐揚げを食べる口みたいなやつである

――京都での暮らしはどうですか。旅行でしか来たことがないから、どうしても観光地というイメージなんですけど。

スケラッコ:「でもそれは意外と京都の一部であり、普通に生活の場所もありますよ。大学時代にバイト先の偉い人から『せっかく京都に行くんだから、お寺とかちゃんと見なよ』って言われたけれど、お寺巡りは一回もしていない」

――そうなんだ。ええと、じゃあご趣味は。

スケラッコ:「京都に来て一番長く続けられている趣味は、飲酒と盆踊りだけかもしれない」

――飲酒と盆踊り、かっこいい。

スケラッコさんはまったく乗り気ではなかったが、せっかくなので銀閣寺にも行ったのだが、「どの建物が銀閣寺?」というダメな会話を二人でしていた。こんなにも毎日暑いのに苔が見事で感動した

小川沿いの哲学の道はちょっとだけ涼しかった

スケラッコ:「飲酒って言っても家では全然飲まなくて、外でだけ飲みます。私が飲み歩くのは市内のいろいろな場所で、北のほうとか西のほうとか、電車やバスで向かいます。

お店の数で言ったら東京や大阪にはかなわないけど、そんな別に全部に行く訳じゃないから、ちょうどいいのではないでしょうか。たまに東京に行くと広すぎて、『ここからこの店まで歩けるかな?』って聞くと笑われるし」

――東京は選択肢もエリアも広すぎますよね。京都は確かにコンパクトだけど、その密度がすごいから、この範囲だけでも一生楽しめそう。京都暮らし、いいなあ。

飲酒が趣味のスケラッコさんと、京都で昼酒ができる貴重な店のたつみへ

ハイリキ、万願寺唐辛子、水茄子という、私が考える京都らしさ全開の注文をさせてもらう

ハモの天婦羅も食べちゃう。この記事を書きながら、このときの自分が心底羨ましいなと思った

――京都といえばオーバーツーリズムの問題をよくニュースで見かけますが、暮らす上で観光客の存在はどうでしょう。

スケラッコ:「住んでいる場所にもよりますかねえ。例えば京都はバスの路線がいっぱいあるんですけど、観光地を通るバスは絶望的に混んでいることも多い。特に桜の季節とか旧正月の時期とか。でも生活に根差したルートを通るバスを選べば、そこまで混まないですよ。

私は自転車に乗るのがすごい下手だから乗らないけれど、あればちょっとした移動なら全然困らないと思うし」

――なるほど。ニュースだとキャッチーな部分が切り取られがちですが、そういう面もあるという話なんでしょうね。

京都の路線バスはちょっと複雑に思えるが、使いこなせばとても便利なのだろう

バスの路線図に五山の送り火の山が描かれていて、これが京都市民にとってのランドマークであることを実感

江州音頭の盆踊りで踊り続ける

――飲酒と並んで盆踊りも趣味なんですね。事前に聞いていたので、今回の取材は盆踊りの日に合わせて来ました。

スケラッコ:「子どもの頃から好きだったという記憶はなくて、社会人になって京都を歩いていたら、ふと小さな盆踊りをやっていて、そこでウワってなって」

――ピシャーンですか。

スケラッコ:「ピシャーンだったかもしれません。そこからハマりました」

江州音頭フェスティバル京都大会にやってきた。滋賀の踊りだからか、琵琶湖への感謝を込めて踊るらしい

スケラッコ:「名古屋でやっていた盆踊りだと、太鼓はあるけど曲はテープだった。それが関西だと生で歌ってくれるんですよ」

――埼玉の盆踊りもテープでしたね。会場の中央にやぐらが建って、そこから東京音頭とか炭坑節とか、アラレちゃん音頭とかドラえもん音頭とかを流す。夏が近づくとアニメのエンディングの曲が音頭になる。だから東京で大阪スタイルの盆踊りをやる『すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り』は衝撃的でした。

スケラッコ:「大阪は河内音頭、京都だと主に江州音頭(ごうしゅうおんど)がメインですね。江州音頭は滋賀の音頭なんですけど、京都は滋賀から近いので。

河内音頭だと踊り方が何種類かあるみたいですが、江州音頭は一種類をエンドレスに踊るスタイル。だからうまい人を見つけて真似していれば、すぐ踊れるようになります。

音頭取りさん(歌う人)は途中で代わるんですけど、踊り自体は休憩なしで一時間とか二時間とか、ぶっ通し。曲の切れ目がないんですよ。ずーっと同じ曲だから飽きるかも。でもそれがいいんですよ」

やっぱり生歌の盆踊りは最高だ。私も見よう見まねで踊ってみたが、7秒弱がワンセットの短い踊りを延々とループするからこその高揚感が確かにあった


すぐに踊れるようにはなるけれど、うまい人と初心者の差はやっぱり歴然だ。浴衣を着た外国人の姿も多かった

――盆踊りは年に何回も行くのですか。

スケラッコ:「今年は岐阜の郡上(ぐじょう)おどり、滋賀の高島おどり、大阪の河内音頭、家の近所の盆踊り、それに今日の江州音頭フェスティバル京都大会だけなので全然です」

――ワンシーズンで5回でも全然。

スケラッコ:「まだまだ。意外と盆を過ぎてからもあるんですよ。大阪中心部とか奈良でも。それもいけたらいいな。富山のおわら風の盆は自分が踊るというよりも見るタイプですが、あれもまたいいんですよ。

まだ行けていない踊りもたくさんあって、秋田の西馬音内の盆踊(にしもないのぼんおどり)は顔が見えない状態で踊るらしくて、これはぜひ行ってみたい。盛岡さんさ踊りも気になりますよね。青森のねぶたとかねぷたもいいなあ」

琵琶湖への感謝を込めて売店で鮒寿司を購入。賞味期限が長いのをいいことにまだ食べていない。不安と楽しみが半々だ

スケラッコさんは会場で合流した妹の白こんにゃくと一緒に、演奏が終わるまでずっと元気に踊っていた。本当に盆踊りが大好きなのだろう。

京都で好きな場所は鴨川

――たまたま住むことになった京都ですが、今となっては京都が好きなんじゃないですか。

スケラッコ:どこでもできる漫画家なので、京都に住み続けないといけない理由もないけれど、ずっとここにいる訳だから好きなのではないかと。特に好きな場所は、鴨川ですかね」

――鴨川が好きというのはすごくわかります。私は京都をちょっとウロチョロした程度ですけど、なんらかの物語の舞台になる力を鴨川からすごく感じました。

鴨川デルタと呼ばれる賀茂川と高野川の合流点。ここから下流が鴨川になるらしい

鴨川で水遊びをするという夢が叶ってうれしい。とても暑い日だったので最高だった

スケラッコ:「大阪まで京阪電車か阪急電鉄に乗ればすぐだし、琵琶湖もすぐ近くだから毎月第3日曜日の浜大津こだわり朝市にいったりもできるし、京都はすごく良いところなのかもしれません」

――京都、いいなあ。ちなみに京都土産はなにがおすすめですか。

スケラッコ:「私は阿闍梨餅をよく買っていきます。友達が京都に来たときは、京都駅にある伊勢丹のデパ地下で野菜を買っていくって言ってました」

――旅先で地元のスーパーは必ず行きますけど、デパ地下は盲点でした。ありがとうございます!

 

こうしてスケラッコさんに京都の街をじっくりと案内してもらったことで、よく考えれば当たり前の話なのだが、京都といっても神社仏閣や観光地ばかりではなく、住宅地に商業地、飲み屋街に学生街、そして山も川もあるというのがよくわかった。

盆踊りからの帰り道、会場からちょっと離れた街中にあるホテルへと一人で徒歩で向かいながら、自分が京都の会社に就職していたら、あるいは京都の大学に進学していたら、どのエリアに住んで、どんな仕事をして、どんな生活をしていたのだろうかと、たっぷりと妄想してしまった。これぞ最高に贅沢な時間である。

この取材で聞いた話を踏まえて、またゆっくりとスケラッコさんの作品を読み返したいと思った。

 

以下余談

せっかくなので載せきれなかった写真もどうぞ。

イカミミになったスケラッコさんのネコ。ごめんなさい

京都市内を散歩していて、たまに京都タワーが見える瞬間がとても愛おしい

出町橋にある鯖街道口の石標。日本海側からここまでサバが運ばれてきたのだ

出町橋から大の文字がよく見えた

鴨川デルタのすぐ近くにある、今日も元気な出町商店街

アマダイ、サバと京都らしい魚が並んだ出町商店街のプレート。スーパーに入ったら確かにアマダイやサバが売られていた

四条大橋から眺める鴨川


川原にせり出した鴨川納涼床が楽しそう

夜に訪れたらカップルが等間隔に並んでいた

盆踊りからの帰り道、一人でプラプラと歩いた夜の鴨川がまた最高だった。この川沿いにマンションが欲しい

河原町あたりは大都会。なんだか寝るのが惜しくてずっとウロウロしていた

取材翌日の午前中は一人で京都散策。せっかくなので修学旅行以来となる新京極へやってきた

インバウンド向けに神戸ビーフのウニのせなどを出す店が並ぶ中、昔ながらの川魚専門店『のとよ』を発見

ホンモロコ、小鮎、鮒寿司、えび豆という、琵琶湖の恵みがあってこその最高のラインナップ

お手頃価格のちょっと小ぶりな天然鮎の塩焼きをいただいた。店内の水槽を泳ぐ活鮎だ

小さい鮎だからこそ頭からバリバリいける。もし可能であれば何度も通ってじっくりと取材をしたい名店だった。やっぱり京都は奥深い

今回の取材のついでに、『どどんと!うどん!ねこ』シリーズの出版記念として、私が製麺機でうどんを打つという謎のコラボイベントも行われた。会場はスケラッコさんが看板を描いたハイキングという素敵なお店

スケラッコさんと私のコラボうどん。うどんから飛び出したうどんねこの顔部分は、この場でスケラッコさんが描くという贅沢な仕様。製麺ワークショップで知り合ってから7年後の伏線回収である

ハイキングで食べた『万願寺唐辛子とちりめんじゃこを炊いたん』が素晴らしかった。完熟の甘味がある万願寺唐辛子の奥深さたるや

ハイキングの常連さん、スケラッコさんのファン、そして私の読者が相まって、とても素敵な空間が生まれて泣きそうになった

イベント後に京都へ行く機会があったのでご挨拶に行ったら、スケラッコさんのイラストが飾られていた

 

■スケラッコさんのInstagram

 

著者:玉置 標本

玉置標本

趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺づくりが趣味。同人誌『芸能一座と行くイタリア(ナポリ&ペルージャ)25泊29日の旅日記』、『伊勢うどんってなんですか?』、『出張ビジホ料理録』、『作ろう!南インドの定食ミールス』頒布中。

Twitter:https://twitter.com/hyouhon ブログ:https://blog.hyouhon.com/