モーニング娘。'24・野中美希と弓桁朱琴の上京物語

取材・編集: 小沢あや(ピース株式会社) 構成: 結井ゆき江 撮影: あべあさみ

モーニング娘。'24のメンバー・野中美希さんと弓桁朱琴さんは、ともに静岡県静岡市で育ちました。上京後もブログを通して静岡の魅力を発信したり、地元愛が止まらないお二人。幼少期から上京するまでの思い出話や帰省したら立ち寄るお気に入りの場所を伺いました。

品川駅から約1時間の好アクセス・静岡で育った2人


野中美希さん
―― 野中さんは2014年、弓桁さんは2023年にモーニング娘。への加入を果たし、その後上京されました。東京に来てから、改めて感じた静岡の良さは?

野中:東京からのアクセスがめちゃくちゃいいところですね。新幹線に乗れば品川駅からあっという間です。ひかりなら1時間、こだまでも1時間半程度で到着するし、車で移動しても遠いわけではありません。自然豊かで落ち着ける場所があって、静岡市内には商業施設がぎゅっと集まっている。私は10歳までアメリカに住んでいたんですけど、車がないとスーパーにも行けない田舎で暮らしていたので、静岡に来てから「夢みたいに便利な場所だな〜」って感動しました。


弓桁朱琴さん

弓桁:私は浜松生まれの静岡育ちなんですけど、静岡市は山、浜松市は海が近くて、山の幸も海の幸も両方楽しめるところが最高です。静岡の全部が大好きなんです!

野中:同じ県だけど、実は静岡と浜松って印象が違うよね。人の性格も、静岡はおっとりしていて、浜松は名古屋寄りだからアグレッシブなイメージがあるかも。

弓桁:そうですね。私は小さい頃に引越したから静岡市にすぐに染まったけど、違いはあるかもしれません。私の性格は、静岡市と浜松市の両方から遺伝子を受け継いでいるなと思います。

地元民が「マチ」と呼ぶ、商業施設が並び活気があふれる静岡駅エリア


―― 静岡市の10代は、どういうところで遊ぶんでしょうか。

野中:私がまだ静岡にいた頃は、静岡駅の近くに「SHIZUOKA109」(2017年に営業終了)があったんです。やっぱり10代にとって109って憧れの場所で、「渋谷まで行かなくても、109へ行けるんだ!」とうれしかったですね。休日になるとSHIZUOKA109の「SPINNS」でアクセサリーなんかを買いました。

弓桁:SHIZUOKA109が閉店した後に「静岡東急スクエア」(2023年に営業終了)ができて、私はそこによく遊びに行きましたね。地下にあるプリクラ機で撮影した後に、クレープの店「ディッパーダンクレープ」でおやつを食べて、上の階で買い物をして、「新静岡セノバ」で映画を観る流れです。今はその静岡東急スクエアも閉館して、「けやきプラザ」に変わりましたけど。

野中:静岡駅周辺で遊ぶのって、ちょっとしたぜいたくだったよね。静岡駅周辺を「マチ」って呼んで、「マチで遊ぶ!」とはしゃいでいたなー。

―― モーニング娘。のオーディションに挑んだ勝負服も、マチで購入したんですか?

弓桁:どこだろう……。あんまり覚えてないけれど、変な柄の服を着て行っちゃった気がします(笑)。

野中:私は当時できたばかりの「MARK IS静岡」か「ららぽーと磐田」のどちらかで買った服を着て行ったと思います。憧れのブランドが入っていたんですよ。静岡から磐田は少し遠いんですけど、父が運転する車でららぽーとによく行っていました。タワーレコードではハロー!プロジェクトのDVDを買って、待ち切れなくて帰りの車の中で見ていましたね。

―― 当時からハロー!プロジェクトが大好きだったんですね。今、夢をかなえて東京でモーニング娘。として活動されているお二人ですが、静岡にいた頃は、東京に対してどんな印象を持っていましたか?

野中:憧れの場所でした。小学校高学年の頃、きゃりーぱみゅぱみゅさんを筆頭に原宿カルチャーがすごく流行したので、「原宿ってどんなところなんだろう」と想像して、夢を見ていました。

弓桁:「東京は芸事でトップの世界なんだ」って思っていたし、憧れました。静岡でミュージカルスクールに通っていたんですけど、やっぱり上手な子はどんどん東京へ出ていくんです。「私も、いつか東京でミュージカルやアイドルの芸事ができるように頑張ろう!」と自分を鼓舞していましたね。

静岡の小学生はみんな知ってる「横断バッグ」と「お茶フライ」って?


―― 小中学生の頃の「静岡あるある」はなんですか?

弓桁:静岡の小学生は黄色い横断バッグを持って登下校するのですが、あのバッグを持つのは静岡独特の文化みたいですね。最近、横断バッグを模した小さなポーチが売っていたので、懐かしくなって「買いました〜!」とブログに書いたら、ファンの方から「知らない……」ってコメントが来たんですよ。それで初めて「横断バッグがあるのは静岡だけ」って知りました。


横断バッグ(画像提供/『横断バッグ』のミヤハラ.,)

野中:えー! 知らなかった! あれって、静岡あるあるだったんだ……! 登校する時間帯は地域の人がボランティアとして道に立って交通整理をしてくれたよね。静岡の小学生として、いろんな方のお世話になりました。

弓桁:曜日ごとにメンバーが変わるんですよね。静岡の小学校は給食も印象的で、お茶フライがあるんですよ。魚にもお肉にもお茶が使われていて、「はんぺんのお茶フライ」とか「サワラのお茶フライ」とかがありました。最初は「お茶……?」と不思議に思うかもしれませんが、小学生の頃から食べている私は大好きなんです。

野中:あー、出たかも! 「黒はんぺん」もよく給食に出ていたよね。あと、懐かしいのは静岡のスーパーやお土産屋さんで売られている「のっぽパン」 。長いパンにミルククリームが挟んであっておいしいんです。お母さんにおねだりして、よく買ってもらっていました。東京では売ってないんですよ。

弓桁:パンでいうと、私は静岡浅間神社の浅間通り商店街にある、無添加パンのお店ですね。家庭的な雰囲気のパンがたくさんあって、特にスイートポテトのパンが大好きでした。

県民はみんな見ている? 静岡ローカルの情報番組


―― テレビ番組にも地域の特色が現れますよね。思い出深い番組はありますか?

弓桁:夕方の情報番組の『ただいま!テレビ』(テレビ静岡)ですね。部活動の関係で下校時間が早かったので、ちょうど帰宅する頃に始まるんです。「たーだーいーまー」というテーマ曲が聴こえると「始まった!」ってうれしくて、毎日見ていました。

野中:私は小さい頃から見ていた『とびっきり!しずおか』(静岡朝日テレビ)です。静岡朝日テレビでお仕事をいただいたときに、セットを見学したことがあるんです。「いつかこの席に座りたい!」と思いました。

弓桁:実家に『とびっきり!しずおか』の番組名が入ったレンゲもありますよ。番組の視聴者投稿コーナーに採用されたらプレゼントされる非売品なんです。私の母の投稿が番組で紹介されたことがあって。

野中:えー! すごい、今度見せて!

自然も目いっぱい楽しめるスポットがたくさん


―― 静岡で、お二人が幼い頃から通った思い出の場所はどこですか?

弓桁:私はお祭りのステージでよく踊っていたんです。衣装も振り付けもすべて自分たちで考えて、みんなの意見がまとまったら、衣装は静岡東急スクエアへ買いに行きました。本番終了後は、屋台を見てから静岡おでんのお店「大やきいも」に立ち寄るのが定番でしたね。

野中:お祭りだと、私は「清水みなと祭り」が印象的だな。アメリカから一時帰国した時に初めて訪れたのが清水みなと祭りで、金魚すくいやヨーヨー、スーパーボールすくいを初めてやりました。あと、「登呂遺跡」や「三保の松原(構成資産一覧では「三保松原」)」も思い出がいっぱい。三保松原は2013年に富士山世界文化遺産の構成資産に登録されたくらい、絶景です。学校行事でよく行きました。

弓桁:私の通っていた学校では、「久能山」へ登って頂上で集合写真を撮って、イチゴ狩りをして帰るのが定番でした。学校行事以外でも、久能山には友達ともよく行きましたね。

―― 自然を目いっぱい楽しめる場所がたくさんあるんですね。

弓桁:「浜名湖ガーデンパーク」「はままつフラワーパーク」「はままつフルーツパーク時之栖(ときのすみか)」の3大パークも有名です。私自身も、幼稚園へ通う前にほぼ毎日通った場所。小さい頃のアルバムは、パークで撮った写真ばかりです。ガーデンパークとフラワーパークは季節ごとに花が変わるし、フルーツパークは旬のフルーツが味わえる。今でも、当時を思い出しながらよく行く場所ですね。

野中:少し前、ブログにも書いていたよね。げったー(弓桁さんのニックネーム)のブログに出てきたスポットといえば、浜松餃子が有名な中華料理店「五味八珍」は私にとっても思い出深いお店だなー。日本で初めてラーメンを食べたのが五味八珍。紹介したブログをお店の公式アカウントがリポストしてくれたのも驚きでしたね。SNSを通して思い出のお店とつながるなんて、幸せだなと思いました。

ローカルチェーンからお土産まで食も大充実


―― お二人が今でも静岡へ帰ったら立ち寄る場所はありますか?

野中:静岡伊勢丹の地下にある「フレッシュジュース 静岡伊勢丹店」ですね。他の地域にもあるお店だと思うんですけど、妹と初めてけんかした思い出の場所なんです。メロンジュースがおすすめ。あとは「エスパルスドリームプラザ」にもよくショッピングに行きます。

弓桁:私は「げんこつハンバーグの炭焼きレストランさわやか」に行きますね。私のさわやかデビューは周りと比べると少し遅めで中1だったんですけど、すごくおいしくて……! 静岡に帰ったら家族で食べに行って、ブログに載せるのがルーティンです。

野中:レストランさわやかは、「創業価格フェア(現・げんこつおにぎりフェア)」で安い時を狙っていました(笑)。

―― 静岡に来たら立ち寄ってほしいと思う、ファンの方にもおすすめの場所は?

野中:「パスタ屋1丁目」です。中でも「ポテトベーコン」と「ミルクティー」のセットがすごくおいしいんです。ずっとこのお店を推しているから、ライブの時はファンの方も食べに行ってくださるそうで、とってもうれしいです。

弓桁:私は先ほど挙げた静岡おでんの「大やきいも」ですね。静岡名物の黒はんぺんのおでんもおいしいし、かき氷や大学芋も最高です。店内でおばあちゃんたちがおにぎりを握ってくれるんですよ。静岡はおでん屋さんがたくさんあるから、それが当たり前だと思っていたんですけど、東京はおでん屋さんが少ないんですね。驚きました。

―― コンサートがあるときに、楽屋の差し入れに持っていく静岡名物は?

野中:静岡はお茶が有名なので、ケータリングと一緒に楽しめるようにお茶漬けを持っていったら、とても喜ばれました。

弓桁:私は静岡市内で展開しているフライドポテト専門店「CHERRY BEANS POTATO」のポテトですね。去年加入したので、まだモーニング娘。として静岡ではコンサートをしていないんです。けど、ミュージカルスクールに通っていた時、ゲネプロ(リハーサル)の日にみんなで食べた思い出の味ですね。風味が独特なんですけど、癖になるし、大きな袋で買ってもすぐになくなるんですよ。ここはハンバーガーもボリューミーでとってもおいしいです。

野中:おいしいよね〜。あとは「田子の月もなか」ですね。幼い頃から大好きなお菓子でよく買うんですけど、なんとライブの時に田子の月さんから差し入れをいただいたんです。「小さい頃から大好きなお菓子屋さんから差し入れをいただけるなんて!」と感動しました。いつか店舗へ行ってごあいさつしたいな、と思っています。

―― 静岡と東京間は新幹線移動も多いと思いますが、お二人が新幹線に乗る時につい買ってしまうものは?

弓桁:静岡茶はよく買いますね。静岡駅の売店やホームの自販機で、ホットとアイスの両方が売っていてすごくおいしいんです。さすが、お茶の名産地静岡ですね。

野中:私は「東海軒」の幕の内弁当が好きなんです。ちょうど2日前に母が静岡から買ってきてくれたので、堪能しました!

―― それぞれのお気に入りがあるんですね。静岡〜東京間って、1時間程度であっという間ですよね。お二人は、新幹線では何をして過ごすんですか?

野中:やっぱり、モーニング娘。の楽曲を聴いて過ごします。とくに加入したての頃、移動中にもよく聴いた曲『女が目立ってなぜイケナイ』は、数年ごとに聴こえる音の数が増えて、耳がよくなった実感がわくんです。この曲を聴くと、自然に新幹線の風景を思い出します。場所と音楽って、記憶の中でリンクしますよね。

弓桁:わかります! オーディションを受けるために初めて1人で新幹線に乗った時、寂しくて辛い気持ちになっちゃったんです。今でも当時聞いていた音楽を聴くと泣いちゃうんですよね。だから新幹線では、ブログを書くようにしています。そうすると、夢中になっているうちにいつの間にか駅に到着しちゃうので。

それぞれのオーディションと上京ストーリー


―― モーニング娘。に加入した時、友達の反応はどうでしたか?

野中:オーディションを受けたことは誰にも伝えていなかったのですが、合格するといつの間にか声をかけられるようになりました。ほかの学年の生徒も、私のクラスまで見に来てくれたりして。私が上京する時は、新幹線のホームまで仲の良い友達が何人か見送りに来てくれたんです。新幹線が走り出したらお互いに全力で「バイバイ」って手を振りました。アニメの一場面みたいでしたね。

弓桁:私も黙って受けたんですけど、合格した翌日には数名の同級生が気付いてくれて。校内ですれ違った時に肩をたたいて「おめでとう」と声をかけてくれました。翌々日くらいには学校中にうわさが広まって、話したことのない後輩から「サインをください」と声をかけられたりしましたね。

―― 大騒ぎだったんですね。やっぱり、地元からアイドルが誕生するのはすごいことでしょうね。

弓桁:でも、2週間くらいしたら、「過ごしにくくなるといけないから、いつも通りにしよう」と仲の良い友達が提案してくれて、あとは普段通りでした。静岡の中学校へ通いながら仕事を続けたので、欠席した授業は学校の先生が個別に対応してくださいました。学校生活に終わりが来ることを意識していたので、宿題をする時間すら楽しかったですね。

―― 弓桁さんは今年の3月に中学校を卒業して、上京しましたね。東京に行く時には、お友達とどんなやりとりがありましたか?

弓桁:みんな高校生活の準備で忙しいだろうから、私からは何も言わなかったんです。「いつ上京するの?」と聞かれても、「まだわからないけど、絶対に静岡へ帰ってくるから、その時は遊んでね」と答えていました。上京当日は、母が駅のホームまで来てくれたんです。すぐ会えるのに、やっぱりバイバイした時はたくさん泣きましたね。

―― 家族だけで、静かに上京当日を迎えたんですね。

弓桁:はい。でも先日、Instagramで「高校生になりました」と報告したら、小中学校からの友達が「おめでとう」と連絡をくれました。しばらく連絡をとっていなかった子もいたけど、すごく励みになったし、これからも地元のみんなに恥じない姿でありたいと思いました。

―― 決意の上京だったんですね。モーニング娘。に加入してからは、野中さんも弓桁さんも、グループメンバーとすぐに打ち解けていた印象です。

野中:静岡の人はどんな場所でも適応能力が高いかもしれませんね。流行に敏感で、なんでも試してみるタイプが多いんです。

弓桁:私がリラックスできたのは、同郷の先輩・野中さんがいたからこそですね。共通の話題がありますし。

野中:すごくうれしい! 初めての会話は「静岡のどこ出身なの?」だったよね。あとからげったーは浜松にも縁があるって知って、そこからまた話題が広がりました。今でも「ここ、知ってる?」とよく静岡トークをしています。

―― 仲がいいんですね。野中さんは地元・静岡でのコンサートも経験されていますが、凱旋公演の思い出は?

野中:静岡市民文化会館でコンサートをした時には、私のニックネームの「ちぇる」を冠した「ちぇるおかえり大作戦」というキャンペーンを地元の方々が自主的に開催してくださったんです。商店街のお店で、限定メニューを販売してくださったりして……。ファンの方だけでなく、街全体が「おかえり」と言ってくれている気がしました。「温かい場所で育ったんだな」と本当に感動して、私も地元に何か恩返しがしたいな、と思いました。

弓桁:私もそのライブをファンとして見に行ったんです。ちょうど、モーニング娘。のオーディション合格が言い渡される2日前でした。ライブ会場が野中さんのメンバーカラーであるパープルでいっぱいで、ちぇるコールもたくさん聞こえてきて……。最高のライブでした。商店街を歩いたら「ちぇるおかえり」というのぼり旗が立っていて、「温かい街だな。この人たちと仕事ができるように頑張るぞ」って思いました。

―― ありがとうございます。最後に、お二人がこれから静岡でかなえたい夢を教えてください。

野中:今年は『内藤剛志の静岡グル飯りとり旅』(静岡朝日テレビ)でナレーションのお仕事をいただきました。今後ももっと静岡にかかわるお仕事をしていきたいです。あとは、今年はプロバスケB2リーグの「ベルテックス静岡」の試合を見に行きたいですね。マスコットキャラクターの「ベルティ」がすごくかわいいんですよ。Bリーグのマスコットキャラクター大賞「MASCOT OF THE YEAR」では、ベルティに投票したくらい。ベルティに会いたいです。

弓桁:友達や学校の先生から「ライブに行きたい」と声をかけてもらうので、私はコンサートツアーで毎回静岡公演ができるようになりたいです。もっとモーニング娘。'24のことを静岡の人たちに知ってもらいたいですね。


お話を伺った人:

野中美希

1999年10月7日生まれ。10歳までアメリカアラバマ州とイリノイ州で過ごした後に、静岡県で育つ。2014年にモーニング娘。へ12期メンバーとして加入。ニックネームは「ちぇる」。

弓桁朱琴

2008年7月8日生まれ。静岡県出身。2023年5月にモーニング娘。へ17期新メンバーとして加入。ニックネームは「げったー」。

2024年8月14日には2人が所属するモーニング娘。'24の『なんだかセンチメンタルな時の歌/最KIYOU』がリリースされる。

編集:小沢あや(ピース)