著者: 辰井裕紀

僕は渋谷駅新南口のあたりに住んでいる。さらに2010年ごろから渋谷界隈で働いていたので、それ以来ずっと縁のある地域だ。
だから言いたい。「渋谷はみんなが思っているより、暮らしやすい」。
ハッキリ言ってみんなが想像する渋谷はハチ公口の騒々しいイメージだろう。だが新南口界隈は家賃が安く、閑静で人が住みやすい。それでいてすぐハチ公口にも出られるため、利便性にも事欠かない。
渋谷駅新南口界隈に住む。その大きな魅力をぜひ分かってほしい。
ハチ公口とは別世界、渋谷駅新南口
まず渋谷新南口を見てもらおう。若者の楽園・ハチ公口とは何もかもがちがう。

駅前はローソンとマクドナルドとドトールと予備校、そしてベローチェがある、質実剛健の店構えだ。大声で騒ぎそうな若者の姿もない。
僕はこの新南口から歩いて数分の渋谷区東に居を構える。
東は渋谷と恵比寿の間ぐらいの地域で、渋谷駅新南口から歩いて数分の場所だ。渋谷の中では唯一安く住める地域と言われており、月額4万~6万円台の手ごろな物件もある。
強力2大銭湯&究極の100円ショップ
渋谷に住んでいるとよく聞かれるのが「銭湯あるの?」。だがこの新南口界隈はすごい銭湯が2つもある。
まず銭湯マニアの間でホットなのが1916年創業の改良湯である。名前のごとく2018年12月にリニューアルオープンしたばかりの、若い夫婦が経営するピッカピカのニュータイプ銭湯だ。

サウナと水風呂、ぬるめのお湯があり、ボディソープとシャンプーは無料で使え、風呂上がりには乳液と化粧水がタダで使用できる。
さらに個人的にオススメの銭湯なのがさかえ湯だ。
ここはなんとハンドタオルとバスタオル、2つのタオルをタダで貸してくれる。さらにボディソープ、シャンプー、リンスもタダだ。何の用意がなくてもカラダひとつでひとっ風呂浴びられる。
風呂上がりの飲み物のバリエーションも豊富で、瓶牛乳やヤクルトなどに加えてミニサイズビールも2種類そろえるほか、Qooの60円ミニ缶だってある。

2軒はコインランドリーを完備し、特に改良湯は最新式の全自動ドラム式洗濯機もあり、洗濯も乾燥も洗剤・柔軟剤の投入もフルオートでやってくれる。
どちらもすばらしい銭湯だ。これだけの銭湯環境がある街は、実は日本でも有数なのではないか。
また僕のような貧乏WEBライターにとってスーパーヒーロー的な存在が、ザ・ダイソーローソンストア100渋谷店だ。
生鮮食品なども販売しているローソンストア100と、商品のおトク度が業界No.1レベルのダイソーが一緒になったお店で、ダイソーの商品が24時間買えるのも強み。お店もそこそこ広いので品ぞろえもバッチリ、最高である。
さらにうれしいのが、近くにスーパー・ライフがあることだ。繁華街付近なのにもかかわらず品ぞろえのいいスーパーで、生活を根底から支えてくれる。

ちなみにメインストリートの明治通り沿いのお店はこの並び。気兼ねなく入れるチェーン店が中心だ。

なおこの近くに私が250回ぐらい通い、人生でいちばん足を運んだラーメン店の檜家がある。コクのある家系ラーメンを出すお店だ。

いちばんの魅力は安さ。ごはんおかわり無料に加え、最近までグルーポンで500円チケットをずっと出してくれた。2019年7月現在も無料化したランチパスポートで月3回500円でトッピング付きラーメンを食べられる。
渋谷の裏ランドマークたち
そして渋谷のこちら側のランドマークといえば渋谷清掃工場の煙突である。高さは149m。

近くにある巨大な都営渋谷東二丁目第2アパートもおなじみの存在だ。
さらに新南口で地味に存在し続けるのが渋谷川である。唱歌「春の小川」の舞台だがいまはコンクリートに囲まれ、その面影はない。ちなみに大雨が降ったときはものすごい勢いで増水し、つい水の流れを眺めてしまう。


そしてこの地域といえば外せない存在がウインズ渋谷だ。休日になると馬券好きおじさんたちが大勢やってくるが、住民たちにあまり迷惑はかけないのでご安心を。
ハチ公口も僕らの庭だ!
渋谷駅新南口界隈の住民も、買い物や外食でハチ公口側にはよく行く。あくまで出かける場所と割り切ると楽しいし、実は普段づかいにすごくいいお店がたくさんある。
僕が100回以上通った博多天神は、博多ラーメンの東京ローカルチェーン店。500円で替え玉1つまで無料、卓上の高菜をこんもりとかけて食べると、十二分に満足できる。


なお渋谷のファッション店は貧乏人にもやさしい。まず大きめのGUがあり、ついこの前も190円の処分品のポロシャツをまとめ買いしてきたばかりだ。
さらにセンター街にある古着店ドンドンダウンがまたいい。

100~500円などの激安服もあり、さらに毎月29日は29%オフになるなどの割引セールもこれでもかと行い「服は着られればいい」人にも重宝する。

渋谷は富士そばとカラオケ歌広場の街
渋谷は「富士そばの街」でもある。ど演歌が流れる立ち食いそば屋と渋谷は一見ミスマッチだが、富士そば1号店が生まれたのはこの渋谷だ。
4人も入れば満員の激セマながらも、僕も含めた渋谷人たちに愛されたその店は、2016年1月31日をもって閉店した。
仕事場の近くにも並木橋店があった。新業態のつけそばメインの店舗になったのちに閉店してしまったが、何度も足を運んでいたお店だった。
本店と並木橋店がなくなったいまも渋谷には富士そばが5つもある。
富士そばの朝食メニューは激安。300円台でボリュームたっぷりの朝食に、たぶん100回はお世話になった。
ちなみに近くの恵比寿周辺にも3店あり、この界隈に住む人の多くは富士そばのお世話になっている。
オシャレなだけでなく、堅実なお店も多い渋谷を象徴する存在だ。
さらに渋谷は「歌広場の街」でもある。東京近郊で最安レベルのカラオケチェーン、カラオケ歌広場が8つもあるのだ。渋谷センター街本館はソフトクリーム食べ放題のおまけ付き。

しかも「平日限定ランチパック」は2時間歌い放題+ソフトドリンク飲み放題+フード1品で580円。さらにもう1品追加でも680円。一人になれる空間で昼休みを歌って食べて送れる、涙モノのサービスだ。
渋谷にないもの
この渋谷だが、街として欠けているものがあるのも事実。
まず本屋が少ない。特に駅の新南口界隈は深刻でほとんどない。前は24時間営業の山下書店とあおい書店渋谷南口店の強力タッグが存在したが、どちらも再開発により閉店した。
ハチ公口もパルコブックセンター渋谷店やブックファースト渋谷文化村通り店も閉店し、書店のラインナップは大規模繁華街としては貧弱だ。
ちなみに渋谷での頼みの綱は、東急百貨店渋谷本店にある「MARUZEN & ジュンク堂書店 渋谷店」である。広い百貨店をワンフロアぶち抜く品ぞろえで書店難民を救う。
次に駐輪場が少ない。以前は渋谷駅周りのあちこちにあった駐輪場が再開発によってもうめちゃくちゃ無くなっている。そのくせ新しい駐輪場はあまりつくられない。
また少しずつ新設されてはいるが、やや使いづらい場所にできているのと、これまでの「10~12時間100円」から「4~6時間で100円」と大幅値上げとなったのがネックだ。
またそもそも公園が少ない上に宮下公園も工事中なので、もはや公園がほとんどないことも頭に入れておこう。

僕ら渋谷駅新南口駅界隈の住民は、渋谷にないものの埋め合わせで恵比寿駅もけっこう使う。駐輪場も充実しているし、落ち着いたテイストのお店も幾分多い。
それでいてスーパーのピーコックストアもダイソーもキャンドゥもある。さらに吉野家、天下一品など外食チェーンも一通りそろう。
ただし激安居酒屋は一軒め酒場 恵比寿西口店ぐらいなので、ご所望な方は渋谷へ行こう。
金欠の庶民にとって、再開発の恩恵なし?
再開発の話がチラッと出たついでに話しておこう。キレイで大きい建物がたくさんできるのは壮観だが、いまのところあまり便利になった実感はない。
いまのところオシャレで高級な料理や商品を扱うスポットばかりできて、シビアな賃金で毎日を送る庶民たちがリーズナブルで普段使いできるお店があまりないのだ。

渋谷新南口側の新たな顔になったストリームはグルメのお店が多いが、軒並み値段が高く、下流以下の生活水準の人はほとんど行けない。

ちなみに再開発計画の皮切りとなった2012年完成のヒカリエにも、同じ理由でほとんど行かない。渋谷ブリッジに関してはいつも自転車で通るが、入ったこともない。
いまのところ再開発が生活のプラスになったと思えたのは少ないが、駅の周りにエスカレーターができて、川べりに広い歩道がつくられたのは好材料だ。
僕はまだ再開発の断片しか見ていないから、評価は全部できあがってからにしよう。今後には大いに期待している。
渋谷の貴重な飲み屋街、のんべい横丁
どうしても一人で飲みに行きたい夜がある。渋谷でそれをかなえてくれる貴重な場所がのんべい横丁だ。

相場はゴールデン街と同じぐらい。正直当たりのお店ばかりではないが、いい店もある。
眠れない夜に枕を抱えているよりは、ここに来たほうが人生の答えを見つけるのは早いかもしれない。
僕もたまに来るが、あまり期待しないぐらいで行ってみると楽しいところだ。ここで人間のいいところも悪いところも学んだ。自戒も込めて。
子どもの成長のように、再開発を見守る
再開発は住人にとっていいことばかりではないが、渋谷が新しく生まれ変わる過渡期に住んでいることは、ちょっと誇らしい。
たぶん僕は結婚しないし、そんな僕ら独身者は子どもの成長を見届けることはできない。しかしここでは、新しい渋谷ができる青春期を目の当たりにできる。

僕ら住人にとっての子どもは、もう見上げるばかりに育った。
長い間工事中で、その前を何百回も通ったストリーム。完成したときは、正直感動した。

どんどん成長していく様子を見守れたのは、渋谷に住むものだけの宝物だ。僕らは歴史の目撃者になった。

いつか「渋谷は誰にも愛されない街」というようなツイートがバズっていたことがあったが、それを見て僕は悲しくなった。そのとき僕は渋谷に愛していることに気づいた。
いつまでこの街にいるかは分からない。だけれども、人生で大切な時間を過ごしたのが渋谷でよかった。
酔っぱらった夜に、ホッと富士そばでひと息つける渋谷。
意外な住みやすさと、生まれ変わる街と一緒に成長する楽しさをぜひ見つけてほしい。

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