リノベーションとリフォームの違いは? 工事の種類や費用相場、メリット・デメリットを解説!

リノベーションとは何か、リフォームや建て替えとの違い、どこに依頼すればいいかを解説します。リノベーションの種類別の費用の目安や、メリット・デメリット、段取りや諸費用についてもまとめました。

リノベーションのイメージ

(写真/PIXTA)

記事の目次

リノベーションとは? リフォームとの違いは?

リノベーションとは何か。リフォームとの違いは

住宅の「リノベーション」という言葉をよく耳にしますが、よく似たものに「リフォーム」という用語もあります。両者にはどんな違いがあるのでしょうか。

まずリフォームについては住宅設備の交換や壁紙の補修といった簡単な工事から、間取り変更や増築を伴う大規模なフルリフォームまで幅広い工事が含まれます。一言で言うなら「住宅の機能を維持・改善するための工事」という意味になるでしょう。

これに対しリノベーションは全面的な模様替えや間取り変更など、規模の大きな工事に限定されるのが一般的です。さらに単なる補修工事にとどまらず、耐震性や省エネ性、長寿命化などの「性能向上を含む大規模な改修工事」といった意味合いになります。

リノベーションのイメージ

(写真/PIXTA)

リノベーションと建て替えの違い

古くなった家を新しくする場合、リノベーション以外にも「建て替え」という選択肢があります。どちらかを選ぶためには、それぞれの違いを知る必要があるでしょう。

まず工事にかかるコストですが、建て替えは古い家をすべて解体して一から建て直すことになるので、コストは高めになります。これに対し、リノベーションは基礎や柱、外壁など構造部分を残して工事をすることが通常なので、建て替えに比べるとコストは抑えられるでしょう。

間取りの自由度については、建て替えの場合は敷地面積の範囲内で好きなように建てられるので、自由度が高いといえます。一方、リノベーションは構造部分が以前のままになるので、壁の位置や窓の大きさなどに制約があります。

建て替えは家を新築するのと同じなので、内装や設備はすべて新しくすることが可能です。一方のリノベーションも建物の内部はすべて入れ替えることができるので、内装や設備は新築並みといえるでしょう。

また建物の性能については、建て替えであれば新築と同様に高めることができます。これに対し、リノベーションも省エネ性や耐震性などは向上が可能ですが、構造部分が古いままなので耐久性は制約されることになります。

■リノベーションと建て替えの違い
  リノベーション 建て替え
コスト 低め 高め
自由度 制約がある 高い
内装・設備 新築並み 新築と同じ
性能 耐久性が制約される 高められる

リフォームと建て替えの違いは?費用・工事期間・性能・間取りの自由度を徹底比較!メリット・デメリットや施工事例も紹介

リノベーションでできること・できないこと

リノベーションにはできることとできないことがあります。できることはたくさんあるので、ここではできないことを確認しておきましょう。

まずマンションですが、専有面積を変えることはできません。なぜなら壁や床のコンクリートは共用部分なので、壊して面積を広げることはできないからです。

玄関ドアや窓も共用部分なので、ドアの室内側を塗り替えることは可能なケースが一般的ですが、ドアや窓を丸ごと交換することはできません。またバルコニーも共用部分なので、物置など固定物を置くことは管理規約で禁じられているケースがほとんどです。このほか上下階を貫通する共用配管は室内であっても動かせないなど、共用施設には手を加えることはできません。

一方、一戸建ても構造部分を大きく変えることはできないケースが一般的です。そのため、外壁や窓の位置や大きさを大幅に変えるのは難しいでしょう。また室内でも建物を支える耐震壁は原則として壊せませんが、補強することで撤去が可能な場合もあります。

■リノベーションでできないこと
マンション ・専有面積を変える
・壁や床のコンクリートを壊す
・玄関ドアや窓を交換する
・バルコニーに固定物を設置する
・共用配管や共用施設に手を加える
一戸建て ・外壁や窓の位置や大きさを大幅に変える
・室内の耐震壁を壊す(補強すれば可能な場合も)

リノベーションはどこに依頼すればいい?

リノベーションを依頼できる会社はいくつか種類がありますが、代表的なのはリフォーム会社でしょう。リフォーム会社の多くには設計部門があり、リノベーションのプランを提案してくれます。また工事の手配や監督もしてくれるので、ワンストップで依頼することが可能です。また部材や設備を安く仕入れるルートや、大工などの職人を確保しているなど、工事費がリーズナブルなケースも少なくありません。

工務店や設計事務所(建築家)に依頼する方法もあります。工務店は主に新築を手がける会社ですが、リノベーションを請け負う会社も多いようです。ただ、リノベーションが専門ではないため、コストがリーズナブルかどうかは一概には言えません。また設計事務所がリノベーションを手がけるケースもありますが、工事費のほかに設計費が別途かかります。

リノベーションは中古住宅の購入時に同時に行うケースも多いため、不動産会社に依頼する場合もあります。工事を手がけるのは別の工務店などになりますが、窓口が不動産会社に一本化されるので手間を省ける点がメリットです。ただし不動産会社が提携する工務店などにより、プランや仕様が制約されることも少なくないでしょう。

■依頼先の区分と特徴
区分 特徴
リフォーム会社 ・ワンストップで依頼できる
・コストがリーズナブルな場合が多い
工務店 ・リノベーション、新築を扱う
・コストはケースバイケース
設計事務所(建築家) ・比較的規模が大きな工事を扱う
・設計費が別途かかる
不動産会社 ・中古購入と同時に依頼できる
・プランが制約される場合も

リノベーションの種類と費用の目安

リノベーションにかかる費用は、どのような種類の工事を行うかによって左右されます。工事の種類ごとに、かかる費用の目安を確認していきましょう。

間取り変更

リノベーションでは間取りの変更を伴うケースが少なくありません。その場合、床や間仕切り壁などを解体し、新たに間仕切り壁をつくって間取りを変更します。

間取り変更に必要な費用は住宅の広さや内装・設備のグレードなどによりさまざまです。SUUMOが2019年4月に行ったリフォーム実施者調査によると、中心費用帯は一戸建てが1200万円〜1500万円、マンションが600万円〜900万円となっています。

費用に幅が出る大きな理由の一つに、浴室やキッチン、トイレなど水回りの移動の有無があります。水回りを移動させるには配管の位置も変えなければならず、そのためのスペースの確保も必要です。特にマンションの場合は排水管に勾配を付けて共用部分の配管に接続しなければならないため、共用部分の配管から遠い位置に水回りを移動させる場合は床下の高さを上げる工事も必要になります。

逆に水回りを移動させずにそのほかの間取りだけ変更するのであれば、リノベーション費用を抑えることができるでしょう。

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間取り変更のイメージ

(写真/PIXTA)※写真はイメージです

設備の取り替え

リノベーションで設備を取り替える場合、主なものは水回り設備です。まずキッチンはシステムキッチンの型によって交換の費用が変わり、コンロとシンクが一列に並んだI型の壁付けタイプは50万円〜100万円程度ですが、キッチンが壁から独立しているアイランドキッチンの場合は100万円〜200万円程度が相場になります。

浴室はユニットバス(システムバス)のサイズによって費用相場が変わります。マンションで一般的な0.75坪タイプは60万円〜120万円程度、一戸建てで主流の1坪タイプは80万円〜160万円程度、広めの1.25坪タイプは90万円〜280万円程度です。

このほかの水回り設備としては洗面室とトイレがあります。いずれも設備のグレードによって費用が左右されますが、床材や壁紙の交換も伴うのが通常なので広さによっても費用が変わります。前述のSUUMOによる調査によると、中心費用帯はどちらの設備も20万円〜40万円となっています。

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水回りリフォーム打ち合わせのイメージ

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耐震リノベーション

大きな地震が起きても建物が倒壊しないためには、建築基準法で定められた耐震基準を満たす必要があります。現行の耐震基準は1981年6月に施行されたものなので、それ以前の基準で建てられた住宅は耐震診断を受け、必要な改修を行うことが必須です。

1981年6月以降に建築確認を受けた建物でも、リノベーションの際に構造躯体(くたい)をチェックし、必要に応じて耐震補強をすることが望まれます。特に木造一戸建てについては2000年6月にも耐震基準が強化されているので、それ以前に建てられた住宅であれば耐震診断を受けておきたいところです。

さて耐震リノベーションの費用相場ですが、SUUMOの調査によると、一戸建ての場合の中心費用帯は1800万円〜2100万円となっています。これはリノベーション全体の費用ですが、耐震補強だけの費用を平均すると、木造一戸建ての場合で150万円程度でしょう。

耐震リノベーションのイメージ

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断熱リノベーション

住宅の断熱性を高めると、夏も冬も快適で健康的に過ごすことができ、冷暖房費を抑えられるなど大きなメリットがあります。現在の断熱基準は1999年に策定されましたが、義務化されていないこともあり、1999年以降に建てられた住宅でも基準を満たしていないケースは少なくありません。

断熱性を高めるには、床や壁、天井の断熱材を張り替えたり、窓ガラスを二重構造の複層ガラスにする方法が有効です。このうち断熱材を張り替える費用は部位や広さによって変わりますが、延べ床面積120m2程度の木造一戸建ての場合で200万円〜300万円程度です。

また窓ガラスについては、既存の窓サッシの室内側に新たな窓サッシを設置する「内窓」が、室内で工事が施工できて簡易なこともあり広く普及しています。内窓の設置費用は、一般的な腰高窓の場合、1カ所当たり7万5000円〜9万円程度、バルコニーなどの掃き出し窓の場合、1カ所あたり17万5000円〜20万円程度です。

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断熱工事のイメージ

(写真/PIXTA)※写真はイメージです

 

スケルトンリノベーション

スケルトンリノベーションとは、建物の骨組みや躯体だけを残して、そのほかの部分をすべて入れ替える工事のことです。マンションであればコンクリートの躯体を除き、内部を解体して間仕切りや設備、内装工事を行います。一戸建てでは基礎や柱、梁(はり)などの骨組み以外を解体し、設備や内装を入れ替えます。

スケルトンリノベーションは大規模な工事になるので、間取りの変更や耐震性・断熱性の向上などもまとめて実施することが可能です。ただし一戸建ての場合は室内の柱や壁も撤去できないことが多いので、間取り変更が制約されるケースが少なくありません。またマンションの場合は躯体が共用部分になるので個人で手を加えることができず、耐震改修は管理組合が行うことになります。

スケルトンリノベーションの費用相場はマンションか一戸建てかによって大きく異なります。まずマンションは間仕切りや設備、内装を解体して新たに工事することになるので、主に設備や内装のグレードと広さで費用が変わります。専有面積別の費用相場は60m2〜70m2で約600万円〜約1000万円、70m2〜80m2で約800万円〜約2000万円、80m2〜90m2で約1000万円〜約3000万円といったところです。

一戸建ての場合は設備・内装のグレードのほか、構造補強をどの程度実施するかによって費用が左右されます。延べ床面積別の費用相場は80m2〜100m2で約800万円〜約2000万円、100m2〜120m2で約1500万円〜約3000万円、120m2〜150m2で約2000万円〜約4000万円が目安になるでしょう。

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スケルトンリノベーションのイメージ

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リノベーションのメリット・デメリット

リノベーションは住まいを一新する手段の一つですが、ほかにも建て替えや分譲住宅への住み替えといった選択肢があります。それらの中でリノベーションを選ぶメリットについて考えてみましょう。

メリット1 建て替えるより費用を抑えられる

リノベーションでは内装や設備をすべて新しくできるので、その点では建て替えとほとんど変わりません。それでいて、工事費用は建て替えに比べて抑えることができます。建て替えの場合は基礎や躯体も解体して一から建て直す必要がありますが、リノベーションはその分の解体費用や工事費用を省略できるからです。

ただし、基礎や躯体が古いままだと耐久性に問題が出ることも考えられます。その場合、せっかくリノベーションをしても躯体が早く傷んでしまい、次に建て替えるまでの期間が短くなってしまいかねません。リノベーションする場合は基礎や躯体の傷み具合をチェックし、必要に応じて補修や補強をしておく必要があります。

基礎のイメージ

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メリット2 環境にやさしい

家を建て替えるには古い建物を解体しなければならず、廃棄物が大量に発生します。リノベーションの場合も壁や床、天井を解体しますが、建て替えに比べて廃棄物が少なくて済むので環境にやさしい工事ということができるでしょう。

また、まだ利用できる建材などは解体後に再利用することも可能です。デザイン的にあえて残しておきたい古い床材や、子ども時代の思い出が残る壁などをそのまま利用すれば、廃棄物をさらに減らすことができます。

もちろんエネルギーの消費やCO2の排出などはリノベーションした後の暮らし方にも左右され、それは住宅の断熱性能によって大きく影響を受けます。環境への負荷を減らすのであれば、断熱材の補強や複層ガラスの導入など、断熱性を向上させるリノベーションも検討したいところです。

リノベーションのイメージ

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メリット3 デザインに好みを反映できる

リノベーションでは建物の基礎や骨組みを残すといっても、それ以外の内装や設備は交換するため、自分の好みのものを選ぶことができます。一戸建てであれば外壁や屋根などの外装も変えられるので、元の家とはまったく印象の異なる外観の家にすることも可能です。

既存の躯体を残すので間取りプランはある程度制約されますが、デザインを選べるという点は注文住宅と変わりません。設備も最新のものを導入できるので、新築と同様の快適な住空間をつくることができるでしょう。

ただし、内装や設備のグレードを上げれば当然コストも高くなります。予算がオーバーしてしまう場合は、部材のグレードを下げたり、既存の内装や外装を活かすといった工夫も必要です。予算に応じてお金をかける部分と節約する部分を選びやすい点も、リノベーションのメリットといえるでしょう。

リノベーションのイメージ

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デメリット1 すぐに入居できない

リノベーション工事は大がかりになるため、小規模なリフォームのように住みながら工事することは難しくなります。そのため完成物件の購入のようにすぐに入居することができず、工事中は仮住まいが必要です。

新築工事とは異なり、リノベーション工事では着工前の地鎮祭や工事中の上棟式といった儀式は省略されるのが一般的です。とはいえ、マンションでは短くても1カ月前後、一戸建ての場合は数カ月かかるケースが少なくありません。

仮住まいの期間中は費用負担も発生します。賃貸住宅を借りるのであれば家賃などがかかり、往復分の引越し費用も払う必要があります。そうした仮住まい費用も忘れずに準備しておきましょう。

リノベーション工事のイメージ

(写真/PIXTA)※写真はイメージです

デメリット2 ローンの金利が高くなる場合がある

リノベーションは工事費用が1000万円前後になるケースも多いため、ローンを利用する人も少なくないでしょう。リノベーション用のローンとしては、各金融機関が提供している「リフォームローン」を利用するケースが一般的です。

リフォームローンは住宅ローンとは異なり、土地や建物に抵当権を設定する必要のない「無担保ローン」が通常です。無担保ローンは金融機関による審査の期間が短いなど気軽に借りられるメリットがありますが、最大のデメリットは金利が高めなことです。超低金利が続いている近年では住宅ローンを1%未満の金利で借りられるケースも多くなっていますが、リフォームローンの金利は2%〜3%程度が標準です。金利が高ければそれだけ利息が多くなり、返済負担が重くなります。

またリフォームローンは借入限度額が低めで、1000万円程度が上限となる場合が少なくありません。ローンだけで費用がまかなわれない場合は、自己資金で補うことになります。このほか返済期間も住宅ローンより短めで、最長10年〜20年程度が一般的です。返済期間が短いとトータルで支払う利息は少なくて済みますが、月々の返済額が多くなるので注意が必要です。

一方でリフォームローンのメリットとして借入費用が少ない点が挙げられます。有担保の住宅ローンでは抵当権設定費用や保証料などで数十万円かかるケースが通常ですが、リフォームローンは契約時の印紙税や手数料などでせいぜい数万円程度。ネットで手続きするタイプならほとんど費用がかからないケースもあります。

なお、リフォームローンの中には有担保で住宅ローン並みの条件で借りられるタイプもあります。またリノベーション費用を住宅ローンで借りられるケースもあるので、工事の依頼先や金融機関と相談してみましょう。

  リフォームローン※ 住宅ローン
金利 高め(2〜3%程度が一般的) 低め(1%未満のものも)
借入限度額 低め(500万〜1000万円程度) 高め(5000万〜1億円程度)
返済期間 短め(最長10年〜20年程度) 長め(最長35年が一般的)
費用 低め(ほぼかからない場合も) 高め(数十万円程度)
審査期間 短め(1日〜数日程度) 長め(1週間〜2週間程度)

※リフォームローンは無担保の場合

【FP監修】リフォームローンの種類や金利と選び方。審査、住宅ローンとの違いなどを解説 - リフォームタイムズ【SUUMO】

リノベーションの段取りと諸費用

ここではリノベーションを実施する際の段取りについてみていきましょう。併せてリノベーションにかかる諸費用についても確認していきます。

依頼先(物件)探し〜プランニング

リノベーションを実施するには、まず依頼先を探す必要があります。前述のようにリノベーションの依頼先にはリフォーム会社や工務店、設計事務所などがあるので、インターネットで検索するなどして好みに合いそうな会社を探しましょう。

良さそうな会社が見つかったら、コンタクトをとって希望を伝え、ラフプランニングと工事費の見積もりを依頼します。担当者が自宅を訪ねて現状を調査し、どのようなリノベーションを希望しているかを聞き取るケースが一般的ですが、最近はweb会議システムなどを利用してリモートで実施する場合も少なくないようです。

たいていの会社は無料で見積もりを出してくれるので、比較のために複数の会社に依頼して相見積もりをとることが大切です。あまり多くても時間がかかって選ぶのに迷ってしまいがちなので、3社程度に絞って依頼することをおすすめします。

打ち合わせのイメージ

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契約〜着工

ラフプランと見積もりを比較して、希望に合う依頼先を選んだら、契約(工事請負契約)を結びます。契約書は細かい取り決めを記載した契約約款とセットになっているのが通常なので、すべて熟読して理解してから印鑑を押すようにしましょう。

契約書(契約約款を含む)で特にチェックしておきたいポイントは、工事期間や請負代金、支払い方法です。工事の修了時期を明確にしておくことは、遅延が起きたときの違約金にも関係します。また工事の規模が大きく1000万円前後の金額になるケースでは、着手金や中間金など数回に分けて工事費を支払う場合もあるので、支払いが滞らないよう確認が必要です。

工事中に工事の変更や追加が発生することは少なくありません。その場合、変更・追加工事の内容や工期の延長などについて依頼先と協議し、合意した内容を書面で取り交わすことが大切です。

契約書には契約に適合しない場合の取り決めについて記載されています。これは引き渡し時に分からなかった不具合が後で見つかった場合の保証について定めたもので、保証期間は引き渡しから2年間とするのが一般的です。ただし設備機器や家具などはメーカー保証に合わせて1年間とするケースが多くなっています。

このほか、契約の解除はどのような場合に可能なのか、遅延損害金はどのようなときにいくら発生するのか、などを確認します。また紛争が生じたときの管轄裁判所が物件の所在地の裁判所かどうかも確認しましょう。もし物件から遠い依頼先の本社所在地などになっていた場合、万が一裁判が必要になったときに負担が大きくなってしまうからです。

なお、中古住宅を購入してリノベーションする場合は、中古住宅の売主から物件の引き渡しを受けてから工事請負契約を結ぶことになります。購入の引き渡しからリノベーションの契約までの期間が長くなると、住宅ローンと家賃を二重に支払う負担が増えるケースもあります。可能であれば売主と交渉して、引き渡しの前にリノベーションの調査をさせてもらうとスムーズに工事を始められるでしょう。

■住宅リフォーム工事請負契約書および契約約款のチェックポイント
項目 チェックポイント
工事期間 いつからいつまでか、日付を確認
請負代金 工事価格と消費税額
支払い方法 いつ、いくら支払うのか
契約に適合しない場合 引き渡しから一定期間(設備機器などを除き2年間が標準)の保証があるか
契約の解除 どんな場合に契約を解除できるか
遅延損害金 違約金の規定について
紛争の解決 管轄裁判所が物件の所在地か

工事〜完成後

リノベーション工事が完了したら、依頼主も立ち会って竣工検査を行います。工事がプランどおりに行われているか、大きなキズや汚れ、建具や設備の不具合などはないかをチェックし、必要に応じて手直しを依頼しましょう。

竣工検査に問題がなければ引き渡しです。この際、すでに支払った着手金や中間金以外の、残代金を支払います。ローンを利用する場合は支払いのタイミングで実行してもらえるよう、金融機関と相談しておきましょう。

入居後に不具合が見つかった場合は前述のように一定期間の保証がありますが、依頼先によっては独自に点検や補修が受けられるアフターサービスが受けられる場合もあります。どのようなサービス内容なのかを引き渡し時に確認しておきたいところです。

営業担当者と施主のイメージ

(写真/PIXTA)※写真はイメージです

リノベーションの諸費用

リノベーション工事には、工事費用のほかに諸費用もかかります。まず工事請負契約を結ぶときには、工事金額に応じて1000円〜1万円の収入印紙を契約書に貼り、印紙税を納めます。

ローンを借りるときは、無担保のリフォームローンであれば手数料が無料の場合もありますが、有担保の住宅ローンの場合は融資手数料のほか登記費用や保証料などがかかります。金額は金融機関によりますが、借入額の3%前後が目安です。

中古住宅を購入してリノベーションをする場合は、売買契約時の印紙税や仲介手数料、住宅ローン借入費用なども必要です。金額は住宅価格の6%〜10%程度が一般的でしょう。

このほか、仮住まいが必要な場合は家賃などの費用のほか、往復分の引越し費用などもかかります。

これらの諸費用は現金で支払うのが原則です。金額が大きい費用もあるので、忘れずに準備しておきましょう。

■リノベーションにかかる諸費用
種類 金額の目安
契約時の印紙税 1000円〜1万円程度
ローン借入費用※1 借入額の3%前後
物件購入費用※2 住宅価格の6〜10%
仮住まい費用 数十万円程度
引越し費用 十数万円〜数十万円程度
※1 住宅ローンの場合
※2 中古住宅を購入する場合

リノベーションのおしゃれな施工事例

リノベーションと一言で言っても、行う理由はさまざまです。その中から、デザインにこだわったアイデアいっぱいの施工事例を紹介します。
リフォーム費用は施工時のもの。現在とは異なる場合があります。

築38年の和テイストの家が、南仏・プロヴァンス風に

リフォーム後の写真

(写真提供/サンヨーリフォーム)

孫の誕生をきっかけに、3世代が集い、快適に過ごせるようにリノベーションを決めたSさん。特に老朽化していたのは、キッチン、洗面所、トイレ、浴室などの水回り。雑貨が好きなSさんは、南フランスのプロヴァンス風のデザインをリクエストしました。
リフォーム会社の女性スタッフがチームを組み、理想のイメージに合うマウント型レンジフードや框(かまち)の扉、ハンドメイド感のある表情豊かなタイルなど丁寧にパーツを選定。古材柄クロスを張った腰壁、装飾のある扉やペンダントライトなど、Sさんの好みが詰まったかわいらしいキッチンが完成しました。
調理スペースや収納としても利用できるアイランドカウンターは、空間に合わせて板張りに。ダイニングキッチンと居間を分断していた間仕切りの壁は、耐震性を考慮し、必要不可欠な柱と筋交いを残して取り払い、一体感のある広々とした空間にリノベーション。白を基調としたナチュラルなLDKは、淡いブルーの扉が空間のアクセントになっています。日当りや風通しも良くなり、居心地の良いリビングルームに生まれ変わりました。お気に入りの雑貨が映える空間で、3世代が心地よく過ごされています。

【リフォーム前】

リフォーム前の間取図

【リフォーム後】

リフォーム後の間取図

【DATA】
費用:990万円
建物種別:一戸建て
築年数:38年 リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、浴室・バス、トイレ、洗面所、収納、和室、玄関、廊下、その他
工期:3カ月
設計・施工:サンヨーリフォーム

アンティークの照明や鏡に合わせてデザインしたレトロモダンな家

リフォーム後の写真

(写真提供/リフォーム工房)

Mさん夫妻は共働きで多忙な日々を送っており、東京での拠点として中古の一戸建てを購入しました。1階にLDK、2階に洗面室・浴室の間取りでしたが、リノベーションにより、LDKの場所に書斎、寝室、洗面室&浴室を配置。書斎は壁一面に収納や2方向の窓などを設け、機能性と快適性を重視しました。2階にあった洋室や洗面室・浴室などは、間仕切りを取り払い、LDKへと一新しました。
天井を上げて吹き抜けを設け、西側に新たにバルコニーと掃き出し窓を設けることで、開放感をアップ。階段の位置も変更して使い勝手を向上させ、1階から2階、そしてロフトまで続く階段の壁一面には本棚を設置しました。キッチンは2人でスムーズに作業できるように、回遊動線を確保するため、シンクとコンロを並列に配置しています。収納スペースを充実させ、キッチンをいつも整頓された状態に保つことができるようになりました。
「耐震性の面でも構造の状態を丁寧にチェックし、購入した照明や鏡に合わせてインテリアをデザインするなど対応も柔軟でした」とご夫妻も笑顔。Mさんお気に入りのシャンデリアやアンティークが映えるレトロな雰囲気のインテリアが実現しました。

【リフォーム前】

リフォーム前の間取図

【リフォーム後】

リフォーム後の間取図

【DATA】
費用:2480万円
建物種別:一戸建て
築年数:25年
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、寝室、書斎、階段、浴室、洗面室、トイレ、収納、玄関、外壁・屋根、その他
工期:3カ月
設計・施工:リフォーム工房

リゾートホテルのようなレジャーや仕事に使える多目的施設

アパレル会社を経営しているBさんは、海の近くにある中古マンションを宿泊可能な多目的施設にフルリノベーションしたいと希望しました。施工会社が提案したテーマは、「リゾートホテルの非日常感」。
2LDKの間取りをワンルームに。明るく開放感にあふれたLDKはホワイトカラーでまとめられており、リゾートホテルを思わせる石張りの壁やフロアタイル、漆喰(しっくい)塗りの天井、ナチュラルな家具など、温かみのあるインテリアで非日常的かつリラックスできる空間になっています。リビングのオーダーメイドベンチはベッドとしても使用できるため、家族が気軽に宿泊できます。ベンチ下には大容量の収納スペースが確保され、アウトドアグッズや寝具なども整頓できるようになっています。ハワイアンテイストのスタイリッシュな空間が生まれ、撮影スタジオとしても活用できるようになりました。
さらに、サーフボード用のスタンドや屋外シャワーなど、海で気軽に遊べる工夫も取り入れられています。バルコニーは耐久性の高いヒノキやヒバ材を使用してウッドデッキと温水シャワースペースに変身。海で遊んだ後、すぐに体やサーフボードを洗うことができます。室内をできるだけ広く開放的に使うため、スチームサウナをガラス張りにして、トイレは壁を設けず、オープンに。Bさんが指定したこだわりのスチームサウナで、疲れた体をリフレッシュできます。

【リフォーム前】

リフォーム前の間取図

【リフォーム後】

リフォーム後の間取図

【DATA】
費用:1000万円
建物種別:マンション
築年数:46年
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、収納、浴室・バス、バルコニー・エクステリア、その他
工期:3カ月
設計・施工:フレッシュハウス

回遊キャットウォークで愛猫が伸び伸び暮らせる家に

リフォーム後の写真

(写真提供/東京ガスリノベーション)

Tさんご夫妻は県外から千葉県のお母様の家に住み替え&同居するためにリノベーションを行いました。猫を2匹飼っているため、リビングに回遊できるキャットウォークを設け、寝室と廊下の間に猫窓も採用し、愛猫が快適な環境をつくりました。
「私の一番のお気に入りはお風呂です」とTさん。以前の浴室は狭かったため、施工会社は、Tさんの身長に合わせて広い浴槽を提案しました。広さを確保するため、周辺の間取りをミリ単位で計画し、細かく調整していったそうです。
和室はあまり使用されていなかったため撤去し、その場所に広いウォークインクローゼットとキッチンからアクセスできるパントリーを計画。2重床(フリーアクセスフロア)に変え、床と床の空間を利用して断熱材を敷き詰め、底冷え対策をしました。天井には木目のクロス、柱はグレーのアクセントクロスで装飾し、キッチンはアイランドタイプに。既製品になかった奥行きの深いキャビネットを造作して収納力を兼ね備えた理想の空間に仕上がりました。ダイニングは、お気に入りのダイニングテーブルを中心に、空間全体をコーディネート。ダクトレールにつけた照明を工夫し、壁に飾ったスワッグに当てて、雰囲気づくりをしています。

【リフォーム前】

リフォーム前の間取図

【リフォーム後】

リフォーム後の間取図

【DATA】
費用:1166万円
建物種別:マンション
築年数:49年
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、浴室・バス、洗面室、収納、廊下、玄関、その他
工期:2カ月
設計・施工:東京ガスリノベーション

 

リノベーションとリフォーム、建て替えの違い、費用相場やメリット・デメリットを解説しました。自分たちの希望や予算を確認し、リノベーションで新築同様の快適な住まいを手に入れましょう。

【2024年版】リフォームで使える補助金と減税制度。対象のリフォーム・リノベーション、補助金額や申請方法・期限は?

構成・取材・文/大森広司、内田優子

 

 

執筆/大森 広司
住宅系記事を主に手がけるライター・エディター。バブル最盛期のころから『住宅情報』に記事を書き始めて10ン年。激動の住宅市場をかい潜りつつ、つねに購入者の『困った』を解決すべく取材活動を続けてきた(つもり)