子どもが考える実家のリフォーム。どこを工事する?費用相場や贈与税、住宅ローンでの注意点は?

高齢になった両親が暮らす実家。そろそろリフォームをした方がよさそうだけど、どこをリフォームすればいいのでしょう? また、引退した両親には大がかりなリフォームをする経済力はないため、資金面での心配もあります。この記事では、古くなった実家を活かすリフォームのノウハウを解説。さくら事務所プロホームインスペクター・安富大樹さんに聞きました。

古くなった実家のリフォームを検討する子世帯夫婦のイメージ

(画像/PIXTA)

記事の目次

古くなった実家リフォームの3大目的は?

親が住んでいる実家をリフォームするきっかけはさまざまですが、大きく分けると次の3つの目的があります。

高齢の両親が快適・安全に暮らすために実家をリフォーム

実家の親がまだ元気な頃に建てた家も、年月と共に老朽化してきます。古い家であれば、最近の家よりも断熱性や耐震性で劣るケースも多いでしょう。親も、若い頃とは違って、ささいなきっかけで転んだり、つまずいたりします。立ったり座ったりの動作にも難儀をしているかもしれません。高齢になった親が、快適に、安全に暮らせるようにするためのリフォームです。

親世帯と子世帯が気兼ねなしで同居するために実家をリフォーム

実家を離れて暮らしていた子世帯と、高齢になった親世帯が同居をスタートさせることがきっかけで、実家をリフォームすることも多くあります。親世帯が自立した生活ができるなら、生活スペースを分けた間取りに変更した方がお互いに気兼ねせずに暮らせます。

子世帯が実家を引き継いで暮らすために実家をリフォーム

親が住み替えをしたなどの理由で空いた実家に、子世帯が引っ越してくる場合、古い間取りや設備の実家は今のライフスタイルに合わないことも。子世帯が暮らしやすいようにするためのリフォームです。

親世帯と子世帯が実家をリフォームして幸せそうなイメージ

同居するしないにかかわらず、親も子も安心・快適に暮らせるようにするのが実家のリフォーム(画像/PIXTA)※写真はイメージ

予算には限りがある。まずは、建物の状況を確認

水回りや間取りのプランニングの前に、建物の劣化状況を把握しよう

子どもが社会人として独立している年代なら、親が暮らしている実家は築25年〜40年といった、築年数が古い家であるケースが多いでしょう。建物の劣化が進んでいる可能性が高いため、リフォームの目的にかかわらずチェックしておきたいことがあります。

「リフォームというと、キッチンや浴室を新しくしたり、内装をきれいに張り替えたりといったプランから考え始めてしまうもの。でも、設備の入れ替えのために床や壁を解体したり、壁紙を剥がしたりすると、補修した方がいい建物の劣化が見つかることがあります。修繕費用がかかることで資金が足りなくなり、思い描いたリフォームにならないことがよくあります。まずは、住宅の状態を把握し、不具合を直した上でどんなリフォームができるか考えていくのがおすすめです」(安冨さん、以下同)

住宅診断のイメージ

ホームインスペクション(住宅診断)は、建物の傾きや、床下や天井の状態をチェックすることで住宅を解体せずに状態を把握することができる(画像提供/さくら事務所)

古い家は給排水管の劣化や雨漏りなどに注意が必要

古い家でありがちな建物の劣化部分はどこなのでしょうか。

「目立つのは給排水管の劣化による水漏れです。キッチンや浴室の設備交換をしていても、給排水管は古いままというケースは多くあります。また、雨漏りも多いのですが原因の特定が難しく、少量の雨漏りでは気がつかないこともあります。雨漏りはしていなくても、壁に雨染みがあれば要注意です。壁内の断熱材がカビていたり、構造材の腐食の原因になったりします。外壁にヒビ割れがあれば、そこからの浸水が建物に影響しますから、補修する必要があります」

一戸建ての外壁にヒビが入っている画像

外壁のヒビは見た目が悪いだけではない。亀裂から雨水が入ると、壁内の劣化につながる(画像提供/さくら事務所)

古い実家は耐震性も確認したい

実家をリフォームする際には、耐震性能が十分かも確認することが重要です。
「1981年6月以降に建築確認申請された物件は、それ以前の旧耐震基準よりも厳しい新耐震基準で建てられています。旧耐震基準は震度5程度の地震までは建物の倒壊を防ぐことができる構造基準。新耐震基準は震度6程度なら建物にある程度の被害が出ても、倒壊や崩壊には至らないという基準です。ただし、設計通りに施工されているか、新耐震基準の耐震性能が維持されているかは物件によって異なります。リフォーム会社の設計士さんに、耐震性能に問題がないかも確認してもらってから、間取りや住宅設備のプランニングをスタートするといいと思います」

建物の傾きは原因を調査した上で対処する

床に傾きがある場合は、その原因を確認しましょう。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、中古住宅の傾きの許容レベルは6/1000(距離3mで約2cmの高低差)未満とされています。
「築40年など、古くなってくると、床の傾きが6/1000を超えているケースは珍しくありません。ホームインスペクションで訪問したお宅で、傾きが6/1000以上ある部屋では床の傾きを強く感じます。中を歩き回っているうちに気持ちが悪くなってくることもあります」

傾きのある空間にいることで、めまいや頭痛、睡眠障害など健康に支障をきたすともいわれています。

「傾きの原因はさまざま。地盤が影響して傾くこともありますし、木材の構造部分が雨漏りで腐っている場合や、シロアリの被害で構造材の一部がたわんでいることが原因のことも。補修をすることが可能なケースもありますから、床下に入っての調査をしてもらうことは大切だと思います」

親世帯が快適・安全に暮らすためにはどんなリフォームが必要?費用の相場は?

現在の建物に必要な補修・修繕を行うことを前提に、快適性をアップさせるために必要なリフォームは「バリアフリーリフォーム」「断熱リフォーム」「耐震リフォーム」です。

バリアフリーリフォームで転倒などを防ぐ

「階段やトイレ、浴室に手すりを設置し、室内の段差を解消するのが主なバリアフリーリフォーム。高齢者が誰かに頼らずに自分で家の中を移動し、入浴やトイレができるのは、ご本人にとってとても大切なこと。元気な時間を長く過ごしてもらうために、バリアフリーに配慮したリフォームは必要だと思います」
2019年4月時点でのSUUMOのリフォーム実施者調査では、バリアフリーを目的としたリフォーム費用の相場は、一戸建ての場合300万円未満、マンションの場合は900万円〜1200万円が中心価格帯でした。

バリアフリーリフォームの費用相場

そのほか、リフォーム内容別の価格相場は下記を参考にしてください。

・手すり設置費用 約3万円〜20万円
トイレや浴室は工事費込みで手すり1本1万5000円程度から。廊下の手すりは下地補強込みで5m程度であれば約5万円〜10万円が目安。階段は廊下の倍程度の約10万円〜20万円を見ておくといいでしょう。手すりはデザインによっても費用が異なります。

・洗面室の床の段差の解消 約2万円〜3万円
洗面室の床と浴室の床の段差を解消するため、洗面室の床を張り替える場合は、クッションフロア採用のケースで約2万円〜3万円。和室と洋室の段差をなくすなど、広い面積の場合は床材や面積によって費用は大きく異なります。

・浴室のドアを引き戸に変更 約10万円〜15万円
既存の浴室のドアを引き戸に変更する場合、工事費込みで約10万円〜15万円程度。システムバスを交換する場合は、引き戸にできるオプションの付いたタイプを選ぶといいでしょう。

※費用相場は2019年4月にSUUMOリフォームで実施したリフォーム実施者調査から算出した値です。表示されている情報は当時のもので現在とは異なる場合があります(以下同)

浴室に手すりを設置するイメージ

浴室を交換しなくても、手すりを設置するだけで高齢の親にとっての使い心地は格段にアップする(画像/PIXTA)※写真はイメージ

断熱リフォームでヒートショックを防ぐ

気温の変化で血圧が急激に上下することで起きるのがヒートショック。暖かいリビングから寒い玄関に出たときや、暖かい部屋から冷えた浴室、熱い浴槽のお湯へと移動したときなどに起こりやすい症状です。防ぐためには家の中の温度ムラをなくすことが大切。そのために考えたいリフォームが断熱リフォームです。

「古い一戸建ての断熱状況は、物件によって大きく異なります。家全体の断熱工事は数百万円の費用がかかりますから、予算的に難しい場合は、窓に内窓を付けるだけでも夏の涼しさ、冬のあたたかさを感じるはずです」

断熱リフォームの費用相場については、下の記事で詳しく解説しています。
断熱リフォームの方法と費用相場。床・壁・天井など部位ごとに解説!

内窓を設置する工事のイメージ

古い住宅はシングルガラスの1枚窓のケースが多い。内窓を設置するだけでも断熱性のアップが体感できる(画像/PIXTA)※写真はイメージ

耐震リフォームで地震被害のリスクに備える

リフォームで耐震補強を行う際には、現行の建築基準法による耐震基準以上の耐震性をもたせることが必要です。まずは耐震診断を受け、耐震補強が必要だとわかったら、耐震補強を行います。後述しますが、多くの自治体で耐震診断や耐震補強に対する補助金・助成金制度が設けられています。ただし、着工後の申請や耐震診断をせずに行う工事は対象外になるのが一般的ですから、補助金・助成金制度の利用を考えるなら、早めに施工会社に相談することがポイントです。

耐震リフォームの費用相場は、平均約151万円ですが、下の表のように築年数が古くなるほど高くなります。

■築年数別の耐震リフォーム平均額(木造軸組構法の場合)
築年数 耐震リフォーム平均額
築19年以下 94万9853円
築20~29年 130万8624円
築30~39年 169万9827円
築40年以上 189万9074円
全体 150万8929円
※2013年8月発表、対象3351件、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合調べ(図表作成/SUUMO編集部)

実家を二世帯住宅に。気兼ねなく暮らすためにはどんなリフォームが必要?費用の相場は?

親世帯と子世帯では生活時間帯や食の好みも違っています。現在、親世帯が自立した生活が送れているなら、親世帯と子世帯のスペースは分けて暮らすのが、お互いに気兼ねがなくていいでしょう。その場合、間取り変更や水回りの増設をするリフォームが必要になります。

二世帯の間取りは主に3通り

二世帯住宅は大きく分けて3タイプの間取りがあります。リフォームにかかる費用が最も多くなるのは完全分離型。次に一部共用型、完全同居型という順になる傾向がありますが、二世帯住宅へのリフォームは、予算で選ぶのではなく、自分たちの暮らし方や、世帯同士のつきあい方を考えて決めるのがいいでしょう。

■二世帯住宅の3タイプ
完全分離型 完全分離型
親世帯と子世帯のスペースを完全に分離させたタイプ。実家のリフォームでこのタイプにするのであれば、玄関やキッチン、浴室、トイレなどを増やす必要があります。
一部共用型 一部共用型
例えば、玄関や浴室は供用にして、それ以外は親世帯、子世帯で分けるなど、住宅内の一部を一緒に使うタイプです。このタイプにリフォームする場合、共用にする設備を何にするかで予算を調整することができます。
完全同居型 完全同居型
住空間や住宅設備を全て一緒に使うタイプ。予算に余裕があれば間取り変更を行い、就寝時間が早い親世帯の寝室はLDKや浴室から離すなど、お互いにストレスが生まれない配慮をするといいでしょう。
(図表作成/SUUMO編集部、イラスト/いらすとや)

完全同居型の二世帯住宅のイメージ

完全同居型の二世帯住宅でも間取りの変更などで親世帯と子世帯が気兼ねなく暮らせるようにしたい(画像/PIXTA)※写真はイメージ

二世帯住宅へのリフォームの費用相場は?

二世帯住宅にリフォームする場合、大がかりな間取り変更を伴うのか、水回り設備は増やすのかといった工事内容によって費用は大きく異なります。全体をリフォームするのか、1フロアだけをリフォームするのか、2つの例を見てみましょう。

・二世帯同居をきっかけに家全体をリフォーム 約1500 万円〜4000万円
二世帯分の設備を整えるため、単世帯のリフォームよりも費用は高めです。築年数が古いほど給排水管の交換や断熱リフォーム、耐震リフォームなども必要になります。

・2階を子世帯の住まいにするためリフォーム 約300万円〜1500万円
2階にトイレやキッチンを新設して内装を変更するだけなら、300万円〜400万円程度からが目安。しかし、浴室や洗面室も子世帯専用のものを付け、間取り変更も行うと、費用は1000万円を超えるケースもあります。

二世帯住宅へのリフォームを相談しているイメージ

実家を二世帯住宅にリフォームして暮らすなら、各世帯の暮らしやすさを考えてプランニングしよう(画像/PIXTA)※写真はイメージ

実家を子世帯が引き継いで暮らすならリノベーションをする選択肢もあり

親がマンションなどに住み替えたり、子どもが実家を相続したりなど、リフォームした実家で子世帯だけが暮らすケースもあるでしょう。その場合、大幅な間取り変更や住宅設備の一新、住宅性能のアップなどを行う「リノベーション」という選択もあります。

建て替えよりも低予算でマイホームを実現できる

注文住宅を建てる場合、一般的には土地の購入費用と建物の建築費用がかかります。しかし、実家を引き継ぎリノベーションするなら土地の取得費用は不要です。また、建て替えを選択すると、解体費用や廃材の処理費用がかかります。リノベーションの場合もかかる費用ですが、使える基礎や柱、梁(はり)などは活用するのがリノベーションですから、解体費用・処理費用は建て替えよりも少なくてすみますし、基礎をつくる費用がかからないのもコスト的に大きなメリットです。

リノベーションで全体の費用を抑えてもいいですし、費用が浮いた分を住宅設備のグレードアップに回すのもいいでしょう。実家の趣きを残したリノベーションなら、思い出も引き継げる良さがあります。

実家のリノベーションを検討する夫婦のイメージ

実家を引き継ぐなら建て替えよりもリノベーションの方がコストがかからないケースが多い(画像/PIXTA)※写真はイメージ

実家のリフォームで利用できる補助金や減税制度

耐震リフォームは耐震診断や耐震補強・改修工事に補助金

リフォームをする際に国や市区町村から、補助金や助成金がもらえることがあります。その内容や条件は自治体によって異なりますが、着工前の申請が必要になるのが一般的ですから、実家をリフォームする場合、どのような補助金制度、助成金制度の対象になるかを施工会社に相談しましょう。

多くの自治体で実施しているのが耐震診断や、耐震補強・改修工事に対する補助金です。多くの場合、制度の対象になるのは1981年5月末日までに建築確認を受けた木造住宅、つまり旧耐震基準で建てられた木造住宅です。実家がこの条件に当てはまるかをまずは確認しておきましょう。

なお、一般的には行政による耐震診断を受けた後、耐震補強の計画書や設計書を提出し、申請手続きを行う必要があります。

■耐震リフォームにかかわる補助金の例
実施地方公共団体 制度名 支援内容例
東京都台東区 木造住宅等耐震診断助成 補助割合:木造住宅は10/10、非木造住宅は1/2
木造住宅等耐震改修工事等助成 補助割合:重点地域は2/3(限度額200万円)、その他の地域は1/2(限度額150万円)
東京都杉並区 杉並区木造耐震診断士派遣事業 補助対象は簡易診断(無料で診断士を派遣)、精密診断に要する費用のうち11万円を限度額として補助
杉並区木造住宅耐震改修助成制度 補助割合:1/2(限度額100万円)※特定地域による割増あり
東京都八王子市 八王子市木造住宅耐震診断補助金交付事業 補助率3/4(上限額15万円)
居住環境整備補助(木造住宅耐震改修工事・木造住宅簡易耐震改修工事) 改修:補助率2/3(上限額100万円)
簡易改修:補助率1/2(上限額25万円)
耐震リフォームに対する支援方法や補助割合、対象住宅などは実施地方公共団体によって異なる。表の内容は2022年11月14日現在。内容は時期によって変更されることがある(図表作成/SUUMO編集部)

バリアフリーリフォームには介護保険か自治体の助成金がある

リフォームをする人が要介護認定で要支援、または要介護認定を受けている場合、リフォーム費用の一部が介護保険から支給される場合があります。対象になる工事は手すりの取り付けや段差の解消、床や通路の滑りにくい床材への取り替え、開き戸を引き戸や折れ戸などへの取り替えなどです。支給条件を満たすと、工事費20万円を上限に、リフォーム費用の7〜9割(介護保険自己負担割によって異なる)が支給されます。

また、自治体によっては独自の補助制度が用意されています。介護保険と併用できるケースもありますから、詳しくはケアマネジャーに相談するといいでしょう。

実家の親が要支援認定を受けているイメージ

要支援、または要介護認定を受けている人のバリアフリーリフォームは、要件を満たせば介護保険給付が受けられる(画像/PIXTA)※写真はイメージ

壁や窓の省エネ・断熱リフォームで補助金がもらえる

省エネにかかわるリフォームへの補助金・助成金制度は多くの自治体で独自に設けられています。高断熱仕様の窓やドアへの交換や壁などの断熱工事のほか、太陽光発電システムの採用、高効率給湯器の採用などで費用の一部が支給されるケースが多くあります。

■省エネリフォームにかかわる補助金の例
実施地方公共団体 制度名 支援内容例
東京都 東京都既存住宅省エネ改修促進事業 ・窓、壁などの断熱化工事、省エネ設備の設置で、戸建住宅の補助率は工事費用の23%
災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業 ・既存住宅の高断熱窓工事の補助率は1/3(上限額100万円/戸)
・既存住宅の高断熱ドアの補助率は1/3(上限額16万円/戸)
東京都品川区 住宅改善工事助成事業 ・窓、壁などの断熱化工事、省エネ設備の設置で、個人住宅の補助率は工事費用の1/10(上限額20万円)
太陽光発電システム・蓄電池システム設置助成事業 ・太陽光発電システム:発電1kWあたり3万円で上限9万円
・蓄電池システム:蓄電1kWhあたり1万円で上限5万円
東京都杉並区 杉並区木造耐震診断士派遣事業 補助対象は簡易診断(無料で診断士を派遣)、精密診断に要する費用のうち11万円を限度額として補助
杉並区木造住宅耐震改修助成制度
(新耐震基準)
補助割合:1/2(限度額100万円)*特定地域による割増あり
※省エネリフォームに対する支援方法や補助割合、対象住宅などは実施地方公共団体によって異なる。表の内容は2022年11月14日現在。内容は時期によって変更されることがある(図表作成/SUUMO編集部)

そのほか、国からの補助金が受けられる「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」や「次世代省エネ建材の実証支援事業(次世代建材)」があります。

「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」は、高性能な断熱材や窓などを使った、一定以上の効果が見込める断熱リフォームが対象です。補助金額は一戸建て住宅の場合で、1住戸当たり120万円が上限です。

「次世代省エネ建材の実証支援事業(次世代建材)」は、高性能な断熱材や蓄熱・調湿などの次世代省エネ建材を使ったリフォームが対象。補助金額は最大400万円(2022年度の場合)。登録された製品を使用するなどの条件があります。

長く建物を残すなら長期優良住宅化リフォームも補助金の対象

耐久性や耐震性、省エネ性が高い「長期優良住宅」にリフォームする場合も、国の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」から補助金がもらえます。一定の条件を満たすと、補助金額は補助対象リフォーム工事費等の合計の1/3(長期優良住宅認定を取得すると1戸当たり200万円が上限)。さらに、「三世代同居対応改修工事」を実施するとさらに最大50万円/戸が補助されます。

補助金額の大きな制度ですが、長期優良住宅への認定は費用も手間もかかります。今後も長期にわたって住み続けたい、将来、売却する際に少しでも有利にしたいという人が、この補助金の利用を検討するといいでしょう。

実家のリフォームで節税につながる制度もある

リフォームをすると所得税などが節税できることがある

バリアフリーリフォームや省エネリフォームなど、対象になるリフォーム工事を行うことで、所得税や固定資産税が控除されることがあります。また、住宅ローンやリフォームローンを借りた場合も、条件を満たすことで所得税の節税が可能です。実家の親に収入があり、所得税などを納めている場合や、実家に子世帯が同居してリフォーム費用を子どもが負担するなどの場合はメリットがあります。どのような減税制度があるか、下にまとめました。

・住宅ローン、リフォームローンを借りたとき
「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」

返済期間10年以上のローンを借りてリフォームをした場合、一定期間(中古住宅の場合は10年間)、年末ローン残高の0.7%が、納めた税額を上限に所得税や住民税から控除される

 

・バリアフリー、省エネ、耐震、長期優良リフォームなどを行ったとき
「リフォーム促進税制」
自己資金でリフォームを行なった場合、標準的な工事費用相当額の10%を、その年の取得税から控除

「固定資産税の軽減」

リフォーム工事完了の翌年度分の固定資産税を減額。軽減される税額はリフォーム内容によって異なる(耐震リフォーム:固定資産税額の1/2、バリアフリーリフォーム:固定資産税額の1/3、省エネリフォーム:固定資産税額の1/3、長期優良住宅化リフォーム:固定資産税額の3/2)


減税対象になるかは、リフォームの内容などさまざまな条件を満たす必要があります。詳細は所得税については税務署、固定資産税については市区町村役場に問い合わせましょう。

実家のリフォーム。費用は親が出す?子どもが出す?注意点を解説

親所有の実家。リフォーム費用を親が借りて払う場合の注意点

親が所有し、これからも住み続ける予定の実家。リフォーム資金を親が自分自身で負担する場合、親が現金で支払えるのであればいいのですが、注意したいのは借り入れが必要なケースです。

・年齢によっては短期返済になる
住宅ローンは申し込み時の年齢に上限があるのが一般的。何歳まで借りられるのかは金融機関によって異なりますが、おおむね70歳未満、場合によっては65歳が上限となっています。実家の親が50代〜60代ならリフォーム費用を住宅ローンで借りる際に、年齢が問題になることはありませんが、返済期間が短くなります。完済時年齢は80歳とされているケースが多いので、60歳で借りる場合は最長20年、50歳で借りる場合は最長30年。同じ金額を借りても返済期間が短いほど毎月返済額は大きくなりますから、返済が負担にならないか、慎重に決めることが必要になります。

・団体信用生命保険に加入できないと借りられない
住宅ローンを借りる際には、団体信用生命保険(団信)への加入が条件になっていることが多く、持病があるなど健康に問題がある人は審査に通らないこともあります。審査の際、問題とされる疾病の種類やレベルは金融機関によって異なります。

・親に安定した収入がなければ借りられない
住宅ローンの審査では借りる人の返済能力が審査されます。親が住宅ローンを借りようとしても、すでに現役を退いていて収入が少ない場合、借り入れ希望額によっては審査に通るのは難しいでしょう。

・親子リレー返済は子どもの返済能力も審査される
親が定年退職まであまり年数がない、でも、長期返済で住宅ローンを借りたい場合には、将来、子どもが返済を引き継ぐ親子リレー返済(親子リレーローン)の利用で長期返済にし、毎月返済額を低く抑えることが可能です。ただし、子どもは、親の連帯債務者となるため、子どもの返済能力も審査されます。子どもが住宅ローンや車のローンを返済中で完済まで時間がかかる場合、過去に滞納履歴がある場合などは親子リレー返済を利用できない可能性が高いことを知っておきましょう。

・リ・バース60
テレビCMなどで「リ・バース60」という言葉を聞いたことがあるでしょう。これは、住宅金融支援機構がつくった、民間金融機関などが取り扱う60歳以上向けのリバースモーゲージ型住宅ローンのこと。借りたお金は住宅の購入やリフォーム資金、ローンの借り換えなどに利用でき、毎月の支払いは利息部分だけです。これなら、年金収入だけの親世帯でも返済ができそう。しかし、残ってしまうローンの元金部分は借りた人が亡くなったときに住宅を売却して返済する仕組みです。つまり、子どもには実家は残らないということ。買い戻しは可能ですが、子どもに経済的負担を残すことになります。

親所有の実家。リフォーム費用を子どもが出す場合の注意点

「親が快適に安全に暮らせるなら」と、実家のリフォーム費用を払いたいと考える人も多いでしょう。注意したいのは贈与税。年間110万円を超える贈与は、たとえ親子間であっても贈与税の課税対象になるのが原則です(相続時精算課税制度を利用する場合は2500万円まで贈与の段階では非課税)。

親名義の実家を子どもが買う場合の注意点

実家を子どもが買うor親が子どもに贈与する、どっちがいい?

将来、引き継ぐ予定の実家のリフォーム。親名義のまま子どもが費用を出すと贈与税がかかるかもしれないのであれば、早めに子どもの名義にしてしまえば贈与税はかかりません。親が生きているうちに子どもの名義にするには、「実家を子どもが親から買い取る」「実家を親が子どもに贈与する」といった方法があります。

実家を子どもが親から買い取る場合、親はまとまったお金を老後資金に充てることができます。ただし、相場よりもあまりにも安い価格での売買は、通常の相場よりも安い差額分を「親が贈与した」とみなされて、贈与税の課税対象となる場合があるので注意しましょう。

親が子どもに生前贈与する場合は贈与税が発生します。しかし、築年数の古い住宅の場合は、贈与税額を算定するための固定資産評価額が低く、贈与税が発生しても少額であるケースが多いといえます。

実家を子どもが買うか、贈与してもらうか、どちらがいいかはケースバイケースですが、将来、親が残す遺産の内容によっては、相続人の間でもめごとが起こることがあります。買い取るにしても、贈与してもらうにしても、ほかの親族に相談して同意を得ておくことが重要です。

子どもへの名義変更はどのタイミングがいい?

実家のリフォームをきっかけに、子どもへの名義変更も考える場合、そのタイミングはそれぞれです。親が費用を出してリフォームをした場合、名義はそのままの方が親に節税などのメリットがあるなら、名義変更は先でも問題ありません。しかし、子どもが費用を出す場合、住宅や土地を担保にして住宅ローンを借りるなら子どもの名義になっていた方がスムーズです。また、住宅ローン控除など節税になる制度を活用することもできます。どのタイミングがわが家にとってベストなのかは、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

親から子へ一戸建ての実家を引き継ぐイメージ

親から子への実家の名義変更は、節税になるタイミングも考えて行おう(画像/PIXTA)※写真はイメージ

実家をリフォームした成功実例を紹介!

実家のリフォームにはさまざまなケースがあります。ここでは、将来の安心を考えて、ひとり暮らしの実家で二世帯が暮らせるようリフォームした実例を紹介します。

ひとり暮らしの実家に、娘世帯が同居。子世帯用のセカンドリビングを新設

水回り設備や内装の老朽化が進んでいた築25年のひとり暮らしの実家。隣に住んでいた娘世帯が、二世帯で暮らすことを選択。住み慣れた間取りは大きく変えず、掃除ができずに困っていた高い吹き抜けをふさぎ、子世帯のためのセカンドリビングを新設しました。洗面台やトイレも、新しい家族のライフスタイルに合わせて一新。親世帯も子世帯も快適に、安心して暮らせる家になりました。

リフォーム後のキッチン

システムキッチンはお孫さんがセレクトしたネイビーカラー。長期間、掃除が不要なレンジフードや、汚れてもサッと拭き取れる人工大理石の天板など家事ラク機能いっぱいのキッチン(画像提供/サンヨーリフォーム)

末長く暮らすための外壁と屋根のリフォームのイメージ

耐久性を高めるために、外壁と屋根の塗装を実施。タイル張り部分は高圧洗浄後、コーティングで保護している。長く安心して住むために大切なリフォーム項目だ(画像提供/サンヨーリフォーム)

吹き抜けを塞いだ廊下の画像

高い吹き抜けは照明や壁の掃除がしにくい。ふさいでしまうことで、2階の床面積を拡げた(画像提供/サンヨーリフォーム)

幅広カウンターで使いやすいリフォーム後の洗面台

上下階ともに新しいシステム洗面化粧台を採用。写真は5人家族の子世帯がスムーズに身支度できる幅広カウンターの洗面化粧台(画像提供/サンヨーリフォーム)

リフォーム前の間取り図

リフォーム前の間取り(間取図提供/サンヨーリフォーム)

リフォーム後の間取り図

リフォーム後の間取り(間取図提供/サンヨーリフォーム)

【DATA】
リフォーム費用:1608万円
工期:7カ月
リフォーム面積:190m2
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、収納、寝室、階段、玄関、外壁・屋根、洋室、廊下
築年数:25年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:サンヨーリフォーム
※リフォーム内容は契約時のもの。費用は概算。建物の状態や契約時期によって費用は変動します。掲載した費用、工事内容などはあくまでも参考としてください。

建物の状態を把握し将来を考えたリフォームを行うことで、古くなった実家もまだまだ長く住むことができます。「広すぎて間取りも使いにくい」「段差でつまずきそうで怖い」「地震が心配」などの声が親から聞こえてきたら、実家のリフォームを考えてみましょう。

<取材協力>
さくら事務所 プロホームインスペクター 安富大樹さん
日本ホームインスペクターズ協会 公認ホームインスペクター。大手リフォーム会社にて、木造一戸建て住宅リフォームの営業・設計・工事監理に従事。工務店で新築木造住宅の設計を経験し、設計事務所設立。木造住宅を中心とした新築・リフォームの設計及び監理を行う。一級建築士、既存住宅状況調査技術者、マンションリフォームマネジャー、福祉環境コーディネーター2級。

<資金計画監修>
菱田雅生さん
ライフアセットコンサルティング株式会社 代表取締役
ファイナンシャル・プランナー(CFP)。独立系FPとして講演や執筆を中心に活動。資産運用や住宅ローンなどの相談も数多く受けている。近著に『お金を貯めていくときに大切なことがズバリわかる本』(すばる舎)。YouTube「ひしだまさおの『お金の増やし方』チャンネル」も開設

構成・取材・文/田方みき