古民家をリフォーム・リノベーションするときの外観、内装のポイントやメリット、費用相場は?実例も紹介

土間や縁側があるような古い日本家屋や、おおよそ築50年を超えるような古い木造住宅などを、リフォームやリノベーションで再生し、現代の暮らしに合うような空間にするケースが多くあります。古民家リフォーム・リノベーションにはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。また、注意すべきポイントは何でしょうか。一級建築士で建築再構企画代表の佐久間悠さんに話を聞きました。

古民家リノベーションのイメージ

(写真提供/住友林業のリフォーム)

記事の目次

古民家とはどんな家? 外観や内装にはどんな特徴があるの?

昔話に出てくるような日本家屋が古民家?

古民家には公式な定義はありません。一般的には、下記に当てはまる家が古民家といわれています。
・伝統的な建築工法の木造軸組構法で建てられている
・藁葺きなどの草葺き屋根や日本瓦葺き屋根、土間、太い柱と梁を持つ
・築年数が50年以上たっている

茅葺き屋根や瓦屋根で、玄関の引き戸をガラガラと開けて中に入ると広い土間があり、その奥に畳敷の座敷がある、そんなどこか懐かしいイメージの建物が古民家。

「実際に見たり、住んだりしたことはなくても、アニメや昔話の絵本などで目にする機会が多いため、昔ながらの日本家屋は日本人の心に原風景として残っているのでしょう。ですから、古民家というと、そんな昔話に出てきそうな古い家が思い浮かびます」(佐久間さん、以下同)

古民家のイメージ

(写真/PIXTA)※写真はイメージです

古民家風リフォームにも活かせる、古民家らしさを生む外観や内装のポイント

心の中の原風景が、実際に目の前に現れるのが古民家の魅力。その古民家らしさを醸し出しているのは、どんなところなのでしょうか。

外観は、茅葺きや瓦葺きの屋根で縁側があるような伝統的な日本家屋であること。
「内装は、現代ではあまり使われない材料や柄などに古民家の特徴が出ます。左官仕上げの塗り壁や、最近はあまり見かけない柄や色の壁紙、模様のついたすりガラスも最近はあまり生産されていないため、空間にヴィンテージ感が生まれます。また、古い日本家屋が現代の家とは空間のスケールが異なります。1mを単位としたメーターモジュールではなく、尺貫法で910mmが1単位の尺モジュールが使われています。そのため、扉や襖(ふすま)の高さは1820 mmで現代よりもちょっと低めです。天井高も低く、こぢんまりとした空間になります。見慣れたスケール感とは違う落ち着きを感じるのではないでしょうか」

古民家をリフォームしたり、リフォームで古民家風の家にするときは、このような外観や内観の特徴を残したり、再生したりすることで、古民家ならではの空間を手に入れることができそうです。

古民家の古い建具のイメージ

古民家には今では入手が難しい素材や意匠の建具が残っていることも(写真/PIXTA)※写真はイメージです

古民家のリフォーム・リノベーションにはどんなメリットがある?

新築にはなかなか出せない趣のある住空間にできる

古民家リフォーム・リノベーションでは、その古民家が建てられた当時の柱や梁をうまく使うことができれば、新築の建材にはない味わいのある空間に仕上がります。でも、古い建材は品質的には大丈夫なのでしょうか?

「木は湿気を吸ったり吐いたりして伸び縮みを繰り返しています。そうして年月とともに変形や劣化をしていくのですが、うまく年月を重ねていった場合、それ以上の変化をしなくなり、安定した建築資材として使えるようになります。今はなかなか手に入らない柱や梁などを活かせるのが古民家をリフォーム・リノベーションする良さといえます」

趣のある古民家リノベーションのイメージ

既存の住宅の立派な梁を活かしたLDK(写真提供/住友林業のリフォーム)

リノベーションなら建て替えよりも安くできる

古い家を建て替える場合に比べると、リフォームやリノベーションの方が費用を抑えることができます。

「建て替えとなると、一般的な木造2階建てで150万〜200万円程度の解体費用がかかります。また、基礎をゼロからつくるには数百万円が必要です。リノベーションの場合、建物を解体して更地にする費用がゼロ。また、基礎を全てつくり直すケースも稀です。これらの費用がまるまる不要なのがリノベーションのメリットです。耐震補強の必要があるケースでも、リノベーションの方が安くなるでしょう。床面積40坪〜50坪の木造2階建てでは、建て替えや新築よりもリノベーションの方がトータルで500万円以上くらいの費用メリットが考えられます。ただし、2階建ての古民家を3階建てに増築するなど、プランによっては費用がかさむこともあります。とはいえ、一般的に新築より高くなることはまずないでしょう」

建て替えできない古民家でもリフォーム、リノベーションならOK

現在、立っている住宅の中には、建て替えができない「再建築不可物件」というのがあります。例えば、建築基準法では、都市計画区域・準都市計画区域内では「敷地が幅4m以上の道路に面している」「道路と敷地が2m以上の間口で接している」という条件をクリアしない土地に家を建てることができません。これを「接道義務」といいます。この接道義務が規定された現行の建築基準法の施行された昭和25年以前に建てられた家は、現在の法律では建て替えができないルールになっているケースが多くあるのです。また、現状の基準よりも容積率や建蔽率がオーバーしている家を建て替える場合は、現在の容積率、建蔽率に合わせる必要がありますから、建て替え前よりも小さな家にしなければなりません。

このように建て替えられない、または建て替えると狭くなるというケースでも、リフォームやリノベーションなら現状の規模を維持したまま改修することができます。

建築資材が不足し高騰している中、資源保護にもつながる

現在、不安定な世界情勢や円安の影響を受けて建築資材が不足、高騰しています。使用できる建築資材を再利用できるリフォームやリノベーションは、コストダウンだけでなく、資源保護という面でもメリットがあります。

古民家リフォーム・リノベーションのイメージ

骨董品店で購入した引き戸を古民家リフォームに活用(写真提供/住友林業のリフォーム)

古民家リフォーム・リノベーションにデメリットはある?解決法は?

耐震性や断熱性などの性能に不安がある

古民家でも、その家を建てた大工さんの知識や技術によって耐震性に心配がないケースはありますが、耐震補強が必要な古民家も多いでしょう。また、もともと断熱材が入っていない、うまく固定ができていなかった断熱材が壁内の下の方に落ちてしまっている、ということも多くあります。

「古民家のリノベーションは、断熱工事をやり直すことが多いですね。ただし、一番多く見られる問題点は漏水です。室内に影響していなくても、外壁を開けてみると内側に雨水が浸入していて、断熱材全てにカビが生えていたり、木材が腐っているということがあります。断熱工事のやり直しや腐った木材の入れ替えのほか、防水処理も必要になります」

住宅ローンが希望通り借りられないことがある

希望の金額を借りられるかどうかは、住宅ローンを申し込む人の返済能力(年収や年齢、勤続年数など)で審査されます。しかし、古民家リフォーム・リノベーションの場合は、条件によっては思い通りにいかないこともあります。

例えば、建て替えができない再建築不可物件の場合、建物の担保価値が低いためリノベーションだとしても希望額が借りられなかったり、返済期間が短く設定されたりすることもあるのです。

なお、親の土地に建つ実家や離れなどをリノベーションする場合、親が土地を担保にすることをOKしてくれて、連帯保証人にもなってくれるなら金融機関に融資の相談をしてみるといいでしょう。

予想よりも費用がかかることがある

床下や壁の中など見えない部分の不具合は、解体してはじめてわかることが多くあります。補修工事や補強工事が発生して、当初の見積金額よリも工事費が多くかかるリスクを覚悟しておきましょう。

古民家リフォームと見積もりのイメージ

(写真/PIXTA)

実例で紹介。いくらでどんなリフォーム、リノベーションをしているの?

リフォームやリノベーションは、費用もプランもさまざま。元の古民家の雰囲気を最大限に活かしたり、モダンなテイストへと大胆なリノベーションを試みたり。5つの実例から、古民家リフォーム・リノベーションをした施主の想いや工夫を感じてみましょう。

なお、紹介する実例のリフォーム・リノベーション内容は契約時のもの。費用は概算。建物の状態や契約時期によって費用は変動します。費用や使用する設備の内容などはあくまでも目安としてください。

両親がこだわって建てた家だからこそ建て替えよりリフォームを選択

築32年が経過した住まいは、両親がこだわって建てたという住まい。壊したくないという思いと、太い立派な梁が通っているなどしっかりしたつくりを活かせることから建て替えよりもリフォームで快適にすることを選びました。老朽化した水回りや北側の暗いダイニングキッチン、使いにくい家事動線などの不満を、間取り変更と設備機器のリニューアルで一新。新設した坪庭も印象的です。

古民家リフォームで明るく暖かくなったLDK

以前は北側にあった暗くて寒いダイニングキッチンを、南側に移動。明るく暖かな26畳のLDKに(写真提供/住友林業のリフォーム)

古民家リフォームで設けた中庭

玄関からつながるスペースに風情あふれる坪庭を設けた(写真提供/住友林業のリフォーム)

【DATA】
リフォーム費用:4500万円
工期:230日
リフォーム面積:約267m2
築年数:32年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:住友林業のリフォーム

購入したのは築109年の家。旧家とモダンの融合で生まれた個性的な空間

中古の旧家を購入してリフォーム。旧家らしい梁や柱、建具にモダンなキッチンを組み合わせるなど、センスが絶妙な空間に仕上がった。ポイントは、旧家の雰囲気に偏りすぎないよう、家具や照明でバランスをとったこと。新旧が融合した空間が個性的です。庭の景色を取り込むために、窓は大きな掃き出し窓に変更。全ての窓に複層ガラスを採用したことで、断熱性も向上し快適な住まいになりました。

古民家らしい立派な梁を現しにしたリビング・ダイニング

古民家ならではの立派な梁のある空間に、モダンなステンレスキッチンや照明器具が映える(写真提供/住友林業のリフォーム)

リノベーション後も古民家の雰囲気が残る家の外観

古民家の持つ雰囲気を壊さずに、現代の住まいへとリフォーム(写真提供/住友林業のリフォーム)

【DATA】
リフォーム費用:約901万円
費用概算:仮設・解体工事: 41万円
電気・給排水工事: 50.2万円
木工事: 141.1万円
その他工事・諸経費等: 165.7万円
内装工事: 47.4万円
建具工事: 183.3万円
住宅設備機器: 272.2万円
工期:1カ月
リフォーム面積:57.40m2
築年数:109年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:住友林業のリフォーム

歴史ある建物の味わいを活かしながら、住み心地をアップした古民家再生

古民家再生で生まれ変わったのは築140年の歴史ある住まい。使用していない部屋が多く、室内の暗さや冬の寒さが悩みでした。そこで、外装や間取り、設備の変更に加えて、耐震補強や断熱改修など、住み心地をアップするためにトータルなリフォームを実施。大黒柱や床柱、鴨居などの再利用で古民家の趣を残しつつ、機能的+快適な住まいを実現しています。

古民家の風情を残しながら明るい空間に仕上げた古民家リノベーション

天井を上げて梁を露出させたリビング。壁は白いクロスで明るい印象に(写真提供/パナソニック リフォーム株式会社)

景観に配慮してリフォームした古民家の外観

昔ながらの閑静な街並みに立つ住まい。外壁タイルをはがして白壁にし、木製の格子を設置するなど景観に配慮した(写真提供/パナソニック リフォーム株式会社)

【DATA】
リフォーム費用:2100万円
工期:2カ月
リフォーム面積:111.06m2
築年数:140年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:パナソニック リフォーム株式会社

通り土間を活用して、伝統建築とモダンが融合したダイニングが実現

築80年の伝統的な古民家は、通り土間が広い面積を占めていました。そこで、古民家の風情を残しながらリフォームするため、通り土間の北側半分は、ホワイトモダンが主役のダイニングを設け、南側半分は古民家の面影を残す玄関としました。家の歴史を感じる欄間と、新設した縦格子の引き戸が、異なる2つの空間をゆるやかに融合させ、趣のある仕上がりです。

古民家リフォームの良さが感じられるリビング・ダイニング

既存の欄間(らんま)を生かし、縦格子の引き戸は新設。伝統とモダンが融合した上品な空間に仕上がった(写真提供/ミサワリフォーム)

古民家の風情を残した玄関のリフォーム

先代が遺したケヤキ材を框(かまち)に使用し、化粧直しに床面タイルと漆喰(しっくい)塗りを施した玄関(写真提供/ミサワリフォーム)

【DATA】
リフォーム費用:970万円
費用概算
仮設・解体工事: 29万円
内装工事: 450万円
鋼製建具・ガラス工事: 42万円
左官・塗装工事: 70万円
給排水・設備工事: 125万円
電気工事: 79万円
その他工事・諸経費: 104万円
消費税: 71万円
工期:2カ月
リフォーム面積:58m2
築年数:80年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:ミサワリフォーム

断熱性向上とバリアフリー化で暮らしやすい快適な住まいに

築103年の木造建築はすきま風や底冷えのほか、暗さや段差が気になる家でした。そこで、段差を極力なくし、玄関にはスロープを設置。梁を活かした吹き抜けから明るさを確保。床、壁、天井には断熱材を入れて、床暖房と複層ガラスのサッシで暖かさを実現しています。代々守り続けてきた梁や大黒柱の趣と、現代の建材の機能がマッチする快適な住まいに再生されました。

古民家の雰囲気が残るキッチン

リビングとつながる吹き抜けで明るい空間になったキッチン(写真提供/サンヨーリフォーム)

バリアフリーリフォームを行なった玄関までのアプローチ

和風建築の雰囲気を活かしながら、白と黒のメリハリのある外観に。玄関まではシルバーカートや車椅子でも利用しやすいゆるやかなスロープを設置(写真提供/サンヨーリフォーム)

【DATA】
リフォーム費用:4895万円
費用概算
仮設・解体工事: 460万円
基礎工事: 390万円
造作・内装工事: 1115万円
左官・塗装工事: 470万円
建具工事(内・外): 560万円
設備工事 (エアコン含む): 535万円
住宅設備機器工事: 335万円
外構工事: 165万円
屋根工事: 580万円
その他・諸経費: 285万円
工期:約6カ月
リフォーム面積:166.3m2
築年数:103年
住宅の種別:一戸建て
設計・施工:サンヨーリフォーム

古民家リフォーム・リノベーションっていくらかかるの?費用相場を聞いてみた

資材高騰と不足で、今は費用が不透明な時代

古民家リフォーム・リノベーションをするときに、いくらかかるのか、費用の相場はとても気になります。以前なら、施工面積や施工内容によって、これくらいの費用が目安になります、というお話をすることも可能でした。しかし今は、さまざまな要因で目安を試算することが難しい状況です。

日本では住宅建築に使う木材の多くを輸入材に頼っています。しかし、新型コロナウィルス拡大やロシアのウクライナ侵攻、円安などを背景に、資材不足、価格高騰が続いています。そう、ウッドショックです。米国、欧州、北洋からの輸入価格は2021年秋ころから下落、または横ばいで推移していますが国内価格は依然高水準が続いています。

「木材だけでなく、金物や住宅設備などもどこまで高騰するか先が見えず、改善する兆しが見えません。また、資材・設備そのものが不足し、納期がいつになるかわからないケースも多くあります。短期間で効率的に施工をすることができず、物が入るたびに大工さんや電気工事会社・設備工事会社の職人さんたちに、現場に足を運んでもらうため、人件費も増えていきます。費用相場は不透明としかいえない状況なのです」

費用の目安が見えない場合、資金計画はどう立てる?

リフォームやリノベーションの費用が見当もつかない場合、困るのは資金計画。予算内で希望のリフォームやリノベーションができるのか、住宅ローンを利用する場合はいくら借りればいいのかがわからないからです。

そこで、まずはリフォームやリノベーションの会社に希望を伝えて、見積もりを出してもらいましょう。同じ希望を伝えても、施工方法や使用する建材や内装材、設備機器などによって見積もり金額は会社によって異なります。複数の会社に見積もりを依頼して、現在の相場観をつかむことが大切。また、解体してみて補修や補強が必要とわかった場合、どれくらいの費用が加算されるか、今後の建材や設備機器が値上がりに備えてどれくらいの予備費を考えておけばいいかなど、細かく相談しておくことがおすすめです。

リフォームやリノベーションで利用できる補助金・助成金制度 をチェック

耐震補強で利用できる補助金・助成金

古民家リフォーム・リノベーションで耐震補強工事を行う場合、その古民家がある自治体に利用できる補助金制度はないかを確認しましょう。例えば東京都の場合、23区のほか、13市町村で耐震補強工事関連の補助金制度があります。耐震改修(耐震リフォーム)に対する補助金と、耐震診断に対する補助金の両方を用意している自治体も多いですから、自治体のホームページで調べたり、リフォーム会社に相談をするといいでしょう。

下は、耐震リフォームに関連する制度の例です(東京都東久留米市の場合)。補助金を利用するための条件や補助金額など、詳細は各自治体によって異なります。

・東京都東久留米市の耐震リフォームに関連する補助金
【東久留米市木造住宅耐震診断助成制度】

昭和56年5月31日以前に建築された市内の木造戸建て住宅が対象。耐震診断にかかった費用(税抜)の2分の1以内で5万円を限度に補助

【東久留米市木造住宅耐震改修助成制度】
昭和56年5月31日以前に建築され、居住しているなど要件を満たした住宅の、耐震改修にかかった費用(税抜)の3分の1以内、かつ60万円を限度に補助

断熱改修やバリアフリー工事などさまざまな工事にも補助・助成制度がある

耐震リフォームだけでなく、古民家リフォームでは行われることが多い断熱改修(断熱リフォーム)や高断熱サッシの設置といった省エネリフォーム、バリアフリー化、アスベスト除去工事、空き家活用などさまざまなリフォームに対しての補助金・助成金があります。制度によってはすでに居住している住宅が対象だったり、その市町村内の施工会社による工事であることが必要だったり、さまざまな条件が設けられています。制度の内容を確認することが大切です。

・そのほかにもこんな制度がある
【東京都東村山市 住宅修改築補助制度】

バリアフリー化、省エネルギー化(窓・壁などの断熱化工事)、環境対策(水洗トイレ改修)などに、契約金額の5%、最高10万円の補助金。

【東京都国立市 国立市住宅省エネルギー化補助事業】
省エネ設備の設置が対象。窓の断熱改修の場合は工事費用の20%(上限あり)

申請は契約前。早めにリフォーム会社に相談をしよう

リフォームやリノベーションに対する補助金や助成金は、工事の契約前に申請を行うことが条件になっていることがほとんどです。その場合、着工後や完成後は申請しても補助や助成を受けることはできませんから要注意。また、その年度の予算を使い切ると募集停止になることもあるので、早めに準備をしましょう。

古民家再生の支援制度が活用できる自治体もある

古民家が多く残っている自治体の中には、町並みや景観の保護、伝統的な木造建築技術の継承などを目的として、古民家再生を支援する事業を行っているところもあります。例えば、兵庫県の「古民家再生促進支援事業」では、築50年以上経過している歴史的建築物で、素材や工法などの条件をクリアしている場合、建物調査や再生提案の支援、地域活性化につながる施設や賃貸住宅として再生する場合は改修工事費の助成が行われます。長野県の「ふるさと古民家再生支援事業」のように、古民家再生の専門家による調査や修繕・再生の可能性や維持管理法のアドバイスを行うことで支援を行う制度もあります。制度の有無や内容は自治体によってさまざまです。

・古民家再生支援事業を行っている自治体の例
【兵庫県 古民家再生促進支援事業】

条件をクリアした築50年以上経過している歴史的建築を、地域活性化につながる交流拠点や賃貸住宅に再生する場合、改修工事費を助成。

【長野県 ふるさと古民家再生支援事業】
原則昭和20年以前に建築された、工法や素材などの条件をクリアした住宅が対象。古民家再生の専門家を派遣して、『古民家調査』と『古民家再生提案』を実施。※2022年度の募集は終了しています。

リフォームに関連する補助金や助成金について問い合わせるイメージ

補助金や助成金の制度が受けられるか、早めに各自治体に問い合わせておこう(写真/PIXTA)

古民家を買ってリフォーム・リノベーション。家探しのポイントは?

土地と立地選びは慎重に行おう

古民家を購入して住む場合、リフォームやリノベーションで建物を変えて暮らしやすくすることはできますが、自分の力で変えられないのが立地や土地の形です。下記のような場合は、増築ができない、将来の売却がしにくいなどさまざまな制約がありますから避けた方が無難でしょう。

・接道義務を満たしていない土地に建っていないか
都市計画区域内では建物を建てる土地は、原則として幅員4m(特定行政庁が幅員6m以上を道路として取り扱う区域は6m以上)の建築基準法上の道路に、2m以上接した敷地(土地)でなければなりません。しかし、建築基準法施行以前(昭和25年より前)に竣工した古民家で、下のような旗竿地に建っていると、リフォーム、リノベーションはできますが建て替えはできません。周辺の土地を購入して道路に接する土地の幅を広げるなどの対策が取れなければ、将来の建て替えや売却が困難になります。

接道義務を満たしていない土地に建っている古民家の例

古民家が建っている土地。道路と接している土地部分の幅が2m以上に満たないため建て替えができない(図作成/SUUMO編集部)

・市街化調整区域にたっていないか
物件探しの際、古民家が「市街化調整区域」に建っている場合は要注意です。市街化調整区域とは、無秩序な市街地の拡大を防ぐために設けられた地域のことで、あまり市街地開発がされません。市街化調整区域に古民家が建っていると、建て替えや増築をする場合は、基本的に自治体の開発許可が必要になるほか、壁の位置(壁面後退)や建蔽率、容積率、用途などにさまざまな制限がかかります。そのため、リフォーム、リノベーションは可能でも、将来、住宅や宅地として売却するのは不利になるでしょう。

・浸水や地震による地盤の液状化の可能性は高くないか
古民家に限らず、住宅を建てる土地や建売戸建、マンションを購入する際には、洪水や土地災害、高潮などその土地の自然災害によるリスクの高さをチェックしておくことが重要です。各自治体のホームページなどでハザードマップを確認できるほか、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でも全国の災害リスク情報をチェックできます。

・古民家や蔵をカフェのある家にリノベーションする場合、用途地域に注意
古民家や蔵の一部をカフェにして、おしゃれな家カフェにリノベーションするのもすてきです。ただし注意したいのは用途地域です。

建物内で住宅部分と店舗部分が行き来できる「店舗兼用住宅」は、工業専用地域以外ならOKですが、内部で行き来ができない「店舗併用住宅」は、第一種低層住居専用地域では建築することができません。

また、住宅ローンを利用してリノベーションする場合、居住部分の床面積が建物全体の1/2以上あることが必要です。

古民家カフェのイメージ

(写真/PIXTA)※写真はイメージです

見れば予測できる建物の不具合を知っておこう

古民家を購入する場合、建物のどこに気をつければいいのでしょうか。
「よく聞かれることなのですが、古民家の場合、100%大丈夫な家を探すのは無理。解体しなければわからない部分がたくさんあるため、相当な目利きでも見極めは難しいものです」

後から不具合が見つかったら直せばいい、というくらいの心構えで購入するのがおすすめ。その上で、下記のような点には注意しておくといいでしょう。

・基礎が割れていないか
家の周りを一周して、コンクリート基礎の古民家であればその状態を見てみること。
「古民家では基礎が割れていたりすることがあります。その原因は地盤沈下によることが多く、建物を修繕することで改善できるものではありません。中には、基礎にずれが生じるほどの割れ方をしていることがあります。その場合は、購入を避けた方がいいでしょう」

すでに家が建っている場所の地盤補強はコスト的に難しく、建て替えた方が安くすむくらいの費用がかかる場合もあります。地盤沈下によって建物に傾きやヒビ割れが発生するほか、地下に埋設されたガス管や給排水管の破損の原因にもなります。

基礎のひび割れのイメージ

基礎に地盤沈下によるヒビ割れが入っていたら購入は避けるのが無難(写真/PIXTA)

・増築を繰り返していないか
古民家が建てられてから数十年間、さまざまなタイミングで増築が重ねられていないかを確認しましょう。耐震性を担保した上で増築するのは技術的に難しく、施工の時期や工法が違うことで地震の際の建物の揺れ方が異なり建物にダメージを与えることも。増築によって防水の性能が落ちていることもあります。

・周辺の家に比べて家が大きすぎないか
「住宅地で敷地いっぱいに建てられていたり、周囲の家と比べて明らかに大きな家だったり。そういうケースは避けた方がいいでしょう。容積率や建蔽率がオーバーしている可能性がありますし、違法な増築を重ねている可能性があります」
広くてお得な感じがしたから買ってみたら、実は建蔽率などを無視して増築した違法建築だったということもあるのです。

設計図が残っている古民家がおすすめな理由

取材に協力してくれた一級建築士の佐久間悠さんが、古民家選びの際に薦めるのが「設計図が残っている家を選ぶ」こと。

「昔の木造住宅は、最初から設計図無しで、大工さんの力量に任せて建ててしまっていることが多いのです。それなのに設計図があるということは、工事業者に任せっきりにせずに、図面で確認をした上で家を建てたいという施主の判断があった家ということ。そして、何十年も保管されているのは施主やその家を引き継いだ人に、設計図が家に関わる大切なものだという認識があるということ。このような施主の家づくりには、きちんと建てようという職人さんが集まるのではないかと思います。そして、施主も、その後の住人も家をきちんと手入れして住んでいたことがイメージできます」

家は、建てたときの大工さんの力量や、住んでいる人がどれくらい手入れをするかによって、数十年後の劣化具合が異なります。設計図の有無は、施主や住んでいる人の家に対する姿勢を物語るといえます。購入するなら、そんな歴史のある家が安心でしょう。

古民家の設計図を確認するイメージ

(写真/PIXTA)

古民家リフォーム・リノベーションが得意な施工会社はどう探す?

必ず複数の会社に問い合わせる

建物の状態によって補修や補強が必要になるリフォーム・リノベーションは経験豊富な会社に依頼するのが安心。古民家の施工例が多いか、こちらの希望するデザインテイストをわかってくれるかなどを確認しましょう。必ず、施工例や価格帯、デザインの傾向などを比較したうえで、気になる複数の会社に見積もりを依頼することが重要です。

●取材協力
佐久間 悠(さくま ゆう)さん

1977年神戸市生まれ。一級建築士。京都工芸繊維大学大学院修了。株式会社建築再構企画 代表取締役。 建築設計及び内装デザインの設計・監理の経験を活かし、「建物の法律家」として違法建築、既存不適格の適法改修に高い専門性を有する。耐震改修をはじめ、カーテンウォールの設計や確認申請の提出を要する大規模改修も得意。個人住宅から上場企業の保有施設まで、幅広いクライアントに対してサービスを展開。第2回「これからの建築士賞」(2016年)受賞。著書に『事例と図でわかる建物改修・活用のための建築法規』(学芸出版社、2018年)、『知っておきたい!最新 図解 建築基準法と消防法のしくみ』(監修、三修社、2016年)

 

構成・取材・文/田方みき