倉庫を住宅にリノベーションすることはできる? メリット・デメリットやリノベ実例、費用相場も紹介!

使われなくなった倉庫をリフォームやリノベーションをして活用する倉庫リノベーションが注目されています。住宅へのリノベーションは可能なのでしょうか。費用はどれくらいかかるのでしょうか。一級建築士で建築再構企画代表の佐久間悠さんに話を聞きました。リフォーム会社が施工した倉庫リノベーションの実例も紹介します。

倉庫のイメージ

(写真/PIXTA)

記事の目次

倉庫はリノベーションでどんな活用ができる?

そもそも倉庫リノベーションとは何?どんな用途があるの?

「倉庫」は、ものの保管や貯蔵に使用するための建物。鉄骨造の大空間で、内部は鉄骨がむき出しになっている無骨な雰囲気の平屋建てをイメージする人が多いでしょう。ほかにも、石造りの倉庫や木造で漆喰(しっくい)が外壁に施されている蔵なども倉庫ですが、ここでは一般的な倉庫に多い鉄骨造(S造)を前提として解説していきます。

倉庫リノベーションとは、既存の倉庫、現在使われていない倉庫を、リフォームやリノベーションをすること。一般的には、倉庫ではない用途に変更(コンバージョン)して活用します。大空間を活かした個性的なデザインにしやすいことから、レストランやカフェ、ショップ、オフィスなどにリノベーションするケースがよく見られます。

住宅へのリノベーションが注目されているのはなぜ?

そして、最近は住宅へのリノベーションを検討する人も増えているとか。
「アメリカ西海岸のIT技術者などが、倉庫をリノベーションして自宅やSOHOにしているライフスタイルが、日本のメディアで紹介されることもあり、そのかっこよさが影響しているのかもしれません」(佐久間さん、以下同)
また、近年、材料費の高騰などで住宅の建築費がアップしているため、コストを抑えられそうな倉庫リノベーションを検討するというケースもあるでしょう。

倉庫を住宅にリノベーションできる?

結論からいえば、倉庫を住宅にリノベーションすることは可能です。多いのはオフィスや店舗などへの活用ですが、自宅として住んだり、賃貸住宅にしたり。また、厳密には倉庫ではありませんが、ガレージや物置、小屋などをリノベーションする例もあります。

しかし、そもそも人が暮らすために建てられてはいない建物ですし、後述しますが問題点やデメリットも多くあります。

倉庫をリノベーションして活用しているイメージ

倉庫をリノベーションしてショップやレストランなどに活用する例は各地で見られる(写真/PIXTA)※写真はイメージ

住宅に限らず、建物をリノベーションする際に、倉庫だから得られるメリットにはどのようなことがあるのか、見ていきましょう。

倉庫をリノベーションするメリットは?

広い空間の倉庫は個性的な間取りが実現しやすい

リノベーションを考えたとき、倉庫の最大のメリットは空間の大きさ。
「天井がなく、柱や間仕切りが少ない大空間の倉庫は、自由に間取りがつくりやすいのが倉庫の良さ。メリットといえると思います」

広さを活かして開放的な空間にしたり、天井の高さを活かしてロフトを設けたり、床面の高さを変えて間仕切りを設けなくても用途別にスペースを分けられるようにしたり。さまざまなアイデアで、空間をデザインすることができます。

また、広さや高さを活かして、オフィス兼住宅(SOHO)、店舗兼住宅などのプランも実現可能です。

倉庫スペースを、大空間を生かした住まいにリフォームした実例

倉庫スペースを、天井の高さを活かして開放感あふれる空間にリフォーム(写真提供/パナソニックリフォーム株式会社)

耐震補強や断熱工事がしやすい

「倉庫は内装が鉄骨むき出しになっていることが多いので、耐震補強用のブレース(鉄骨などでつくられた補強材。柱や梁(はり)で組まれた四角形の対角線上に設置することで建物に対する地震力などの横からの力に抵抗するための材料)の設置や、断熱施工がしやすいです。一般的なオフィスビルや住宅の場合、内装には仕上げ材が張られているため、施工するためには内装を剥がす必要がありますが、倉庫の場合は内壁の解体が不要な場合が多いです」

倉庫なら安く買えることも

同エリア、立地条件、同じ広さのビルや住宅よりも、倉庫なら安く購入できるケースがあります。リノベーションの費用も抑えられれば、トータルでコストを抑えられる可能性もあります。

倉庫の内部のイメージ

内装の仕上げがされていない倉庫は、断熱工事や耐震工事をする際に内装材の撤去が不要。解体費や廃材の処分費用が少なくできる(写真/PIXTA)※写真はイメージです

倉庫をリノベーションするデメリットは?

水道やガスなどの工事に費用がかかる場合も

倉庫には、もともと水道やガス、電気などのインフラが整っていないケースが多くあります。

「加工業で使用されていた倉庫で電気は通っているけれど、上水道・下水道は給排水管が細く、そのままでは使えないなどのケースも。また、立地が住宅地ではなく人が住むことを前提としていないことも多いため、公共下水道が使用できず浄化槽の設置が必要なこともあります。人が暮らせる環境を整えるため、大きな費用がかかる場合があります」

断熱材が入っていないなどそのままでは暮らしにくい

断熱材が入っていない、気密性が低い、窓が少なくて採光が不十分など、住居として使用するにはそのままでは快適性が低い空間の場合、断熱性、気密性、採光、通風などに配慮した工事が必要となります。

不便な立地にあることが多い

通常、駅前や駅から徒歩圏内などの立地には商業施設のある繁華街や住宅地がつくられていきます。

「倉庫は集客を目的とした建物ではありませんから、最寄駅がない、あっても徒歩ではアクセスしにくいなど不便な立地にあることが多いのです。そこに住むとなると都内でも車通勤が前提となります」

レストランやショップへのリノベーションなら、お客様用駐車場を確保すれば済みますが、暮らすとなると日常の買い物や通院、子どもの通学などで不便な思いをしそうです。

工業専用地域なら住居にできない

倉庫は、工業地域や準工業地域、準住居地域など建物の用途規制がそれほど厳しくない用途地域にあることも多く、その場合、オフィスやショップにする場合の制限が緩やかで、その点はメリットといえます。しかし、住宅にする場合、そこが工業専用地域なら住宅にすることができません。

倉庫街のイメージ

大小の倉庫が並ぶ港。駅周辺の住宅街と比較すると生活の利便性でデメリットがある(写真/PIXTA)

倉庫リノベーションにいくらかかるか、費用相場はケースバイケース

資材高騰と不足で、今はリノベーション費用が不透明な時代

倉庫をリノベーションするときに、いくらくらいかかるものなのでしょうか。倉庫の規模やどんな内装、間取りにするかなどのプランによってかかる金額は異なります。そうはいっても、以前は施工面積や施工内容別に費用の目安を出すことは可能でした。しかし今は、さまざまな要因で目安すら出すことが難しくなっています。

その背景にあるのがウッドショックやアイアンショック、円安による建築資材や住宅設備の高騰と不足。

「木材、金物や住宅設備などの価格がどこまで高騰するのかわからず、改善する兆しも見えません。人件費も増えていますし、倉庫リノベーションを含めて、住宅のリフォームやリノベーションの費用相場は不透明としかいえない状況です」

費用の目安を知りたいなら見積もりを依頼

倉庫リノベーションの費用を知りたい場合は、リノベーション予定の倉庫でどのようなリノベーションをしたいのかをリフォーム会社や設計事務所に伝え、見積もりを出してもらいましょう。その場合、どこまで居住性能を上げるのか、間取りや内装はどうするかなど、プランによって金額が大きく違ってきますから、自分のイメージを具体的に伝えること、または、リフォーム会社などから提案されたラフプランと見積もり内容の詳細を確認することが大切です。

建材と価格のイメージ

木材や金属、住宅設備などが高騰し、今後のリフォームやリノベーションにかかる必要の目安は不透明(写真/PIXTA)

倉庫を住居にした倉庫リノベーションの実例をチェック

1階倉庫、2階住居の建物。リフォームで1階をゲストルームに

使わなくなっていた1階の倉庫スペースをリノベーションして活用した実例です。施主は来客が多いため、ディナーから宿泊まで本格的なおもてなしができるゲストルームが希望でした。完成後、目を引くのはメインの空間となるLDKの開放感。4mの天井高を活かして、中2階にディスプレースペースが設けられています。また、シンプルな内装デザインに、照明が当たると深い陰影を生み出す珪藻土(けいそうど)の塗り壁がグレード感を演出。シックな色調の建具・家具など、洗練されたデザインが活きる空間です。風情のある和室や、本格的な防音仕様のシアタールームも実現することができました。

倉庫をリノベーションしてゲスト専用の部屋として活用している実例

倉庫だった1階はおもてなし用のゲストルームに。LDKは天井高約4mの大空間(写真提供/パナソニック リフォーム株式会社)

リノベーションして倉庫スペースが和室になっている実例

倉庫スペースだった1階には和室も設けている。宿泊のゲストがくつろげる落ち着いた空間(写真提供/パナソニック リフォーム株式会社)

【DATA】
リフォーム費用:約2907万円
費用概算: 仮設・解体工事、基礎工事: 126.5万円
大工・内装工事: 1380.5万円
設備関連工事: 530.3万円
サッシ関連工事: 313.2万円
電気・給排水工事: 244万円
その他諸経費など: 312.3万円
リフォーム内容:倉庫スペース→2LDK
リフォーム箇所:玄関、リビング・ダイニング、キッチン、洋室、和室、階段、浴室、洗面、トイレ、収納
工期:6カ月
リフォーム面積:107m2
住宅種別:一戸建て
築年数:10年
設計・施工:パナソニック リフォーム株式会社
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもの。現在の価格とは異なる場合があります。

縫製工場を仕事場兼自宅にリフォーム。開放感あふれる空間に友人や親戚が集う

実家が営んでいた縫製工場をリフォームして、住宅としてコンバージョンした実例。施主夫婦は自宅で仕事をするため仕事場も兼ねた住まいが希望でした。間取りは夫婦のコミュニケーションに配慮して、仕事場とキッチンを向かい合わせに配置。そのほか、玄関からキッチンに直結する動線、廊下がない開放的なLDKなど、家族の距離を大切に使いやすい住まいが実現しています。デザインにもこだわり、「白、黒、木」をテーマに、施主夫婦の好みをうまくミックスさせて全体をコーディネート。リフォーム後は、友人や親戚を招いてワイワイ楽しむ時間が増えたとか。

縫製工場をリノベーションしてできた住宅のLDKのイメージ

開放的なオープンタイプのペニュンシュラキッチン。コミュニケーションに配慮してキッチンと仕事場を向かい合わせに配置。できるだけ廊下を設けず、リビングからどの部屋にも行けるコンパクトな動線を確保することで使いやすい間取りにもなっている(写真提供/東京ガスリノベーション)

縫製工場をリノベーションしてできた住宅の寝室のイメージ

内装を落ち着いたトーンにした寝室。住居が仕事場も兼ねているので、仕事で疲れたときはすぐに横になれる(写真提供/東京ガスリノベーション)

【DATA】
リフォーム費用:1714万円
費用概算:解体・撤去・仮設工事: 184万円
木工事・木建材・木製建具工事: 541万円
鋼製建具工事: 73万円
家具工事: 70万円
タイル・石・内装工事: 121万円
設備機器工事: 272万円
電気・給排水・ガス・その他工事: 453万円
リフォーム内容:縫製工場→2LDK +S
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン、洗面所、トイレ、洋室、寝室、収納、その他
工期:約3カ月
リフォーム面積:118m2
住宅種別:一戸建て
築年数:40年
設計・施工:東京ガスリノベーション
※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもの。現在の価格とは異なる場合があります。

知っておきたい、考えておきたい注意ポイント

コストVS快適性。重視するのはどっち?

倉庫は新築時に、主に段ボールなどの物品を、いかに効率良く収納できるか考えて建てられたものです。人が住むために建てられたものではないため、夏の暑さや冬の寒さの対策や、日常生活に必要なインフラが整備されていません。

「大空間ですからエアコンが効かない、断熱がされていないため建物の中は外と同じ気温。そのままでは、快適な暮らしは困難です。そこで、断熱工事などで快適性をアップさせるのですが、鉄骨造の倉庫は一般的な住宅とは施工方法が異なります。例えば、2階建ての木造住宅を断熱リノベーション程度であれば、大工さんが脚立を使って施工可能です。しかし、天井高がある倉庫の場合は、足場を組む必要があり費用がかさみます。溶接工事や吹き付け断熱の施工など、専門の職人への依頼も必要です。倉庫を安く買えたとしても、居住性を考えるとリノベーション費用は大きくなります」

せっかく物件の購入費用が抑えられたとしても、リノベーションの費用を安く抑えるために居住性をあきらめるか、快適に暮らすためにお金をかけるか。安さと快適性のどちらを重視するかを考えておかないと、どちらにも満足できない住まいになってしまうリスクがあります。

立地によっては将来の利便性が悪化することがある

倉庫は利便性の良くない立地にあるケースが多いことはデメリットについての章でも触れています。商業地や住宅地にある小規模な倉庫の場合は心配ないかもしれませんが、注意したいのは湾岸沿いや郊外などにある倉庫。

「駅や街までのバス路線があったとしても人口減などで廃線になったり、場合によっては都市計画の変更で市街化調整区域になったりということもゼロではありません。市街化調整区域になると、建て替えが簡単にできなくなりますから、売却も難しくなりますので、資産として考えないほうがいいでしょう。もし、倉庫リフォーム、倉庫リノベーションをするなら、セカンドハウスや、店舗兼用住宅にするのが無難です」

倉庫リフォーム、リノベーションはどこに依頼すればいい?

倉庫の現状と、リノベーションして住みたいというニーズにはギャップがあります。設計・施工を行う会社には、住宅として使用するため建築基準法はクリアできるか、そもそも倉庫が適法化、倉庫の構造耐力は弱くなっていないかなどを見極めて対策をとる知識や技術が求められます。

倉庫リフォーム、リノベーションを検討するなら、倉庫の建築や改修、一般住宅の建築、リフォーム、リノベーションのノウハウがある設計事務所、建築会社、リフォーム会社を探すことからスタート。まだまだ施工例が少ない倉庫リノベーションだからこそ、設計・施工の経験が豊富な会社に出合うことが大切です。そして、できれば複数の会社にラフプランや見積もりの依頼をして、費用の目安や施工方法について詳細を確認するようにしましょう。

倉庫リノベーションの経験豊富な設計士のイメージ

倉庫をリフォーム、リノベーションして住宅として使用するなら、経験豊富な会社に設計・施工を依頼することが大切 ※写真はイメージ(写真/PIXTA)

まとめ

・倉庫をショップやレストラン、オフィスにする倉庫リノベーションが注目されている

・倉庫ならではの大空間を活用した個性的な空間にできるのが人気の秘密

・倉庫を住宅にリノベーションすることも可能

・倉庫を住宅にコンバージョンする場合、居住環境を快適にするための費用が大きくかかりがち

●取材協力
佐久間 悠(さくま ゆう)さん

1977年神戸市生まれ。一級建築士。京都工芸繊維大学大学院修了。株式会社建築再構企画 代表取締役。 建築設計及び内装デザインの設計・監理の経験を活かし、「建物の法律家」として違法建築、既存不適格の適法改修に高い専門性を有する。耐震改修をはじめ、カーテンウォールの設計や確認申請の提出を要する大規模改修も得意。個人住宅から上場企業の保有施設まで、幅広いクライアントに対してサービスを展開。第2回「これからの建築士賞」(2016年)受賞。著書に『事例と図でわかる建物改修・活用のための建築法規』(学芸出版社、2018年)、『知っておきたい!最新 図解 建築基準法と消防法のしくみ』(監修、三修社、2016年)

 

構成・取材・文/田方みき