つくり手と住み手の想い繋がる、多摩川沿いの名作マンション

緑に囲まれたパークハウス多摩川の外観

物件名:
パークハウス多摩川
所在地:
東京都 大田区
竣工年:
1993年
総戸数:
575戸

伝説のマンションに負けない。三菱地所のカラー際立つマンション

新築マンションは、複数デベロッパーが連携をして、共同事業として企画されることがある。いわゆる「JV」(Joint Venture)だ。競合相手同士が手を携えるのは、一社では対応しきれない開発でも資金調達や建設スケジュールが円滑に進めやすいことや、各社の得意分野が活用できるなどのメリットが理由とされている。

では、一社単独でマンションをつくるメリットは何だろう。やはりその売主のモノづくりの考え方やこだわりをダイレクトに反映しやすく、デベロッパーの「カラー」が際立つことが挙げられる。

今回ご紹介するのは、そんな単独事業ならではのこだわりが活きた、パークハウス多摩川。総戸数575戸、敷地面積約3.4万平米という広大な空間すべてで、売主のこだわりを表現している。

パークハウス多摩川分譲当時のパンフレットの1ページ

単独開発としては当時あまり例のない大規模プロジェクトだった(分譲当時マンションパンフレットより)

物件が立つのは東京都大田区の多摩川沿い。

実はこのマンションを企画する背景には、三菱地所も参画した日本を代表する名作ヴィンテージ・マンション、広尾ガーデンヒルズへの強い意識があった。当時すでに伝説となりつつあったガーデンヒルズ竣工直後の、三菱地所単独プロジェクトとして、同社の世界観をそのまますべて投影しよう、というこだわりが非常に強かったそうだ。

筆者はこのマンションの販売に携わった三菱地所レジデンス第二販売部SR副部長の前田昇さんに話を聞くことができた。「何しろ30年近く前のことなので、どこまで覚えているか…」と前置きしながらも、前田さんの口調はよどみない。当時はまだ入社3年目だったそうだ。(以下コメントはすべて前田さん)

三菱地所レジデンス第二販売部SR副部長の前田昇さん

パークハウス多摩川は当社にとって特別なマンションと語る前田さん (撮影:SUUMO編集部)

企画時の資料を元に説明する

取材用に当時の詳細な資料もご用意いただいた (撮影:SUUMO編集部)

「物件の特徴はいくつかあります。例えば地下駐車場。総戸数575戸に対して約600台用意し、そのうちのほとんどが地下に埋設されています。敷地が広いのだからいくらでも地上につくるスペースはあるのですが、あえてそれをせず、その代わり地上には豊かな植栽や散策路を設けました。歩車が完全に分離され、安全、快適に歩いていただくことができます」

緑豊かなパークハウス多摩川

全面的に地下に駐車場を入れたおかげで地上は緑が生い茂る散策路に
パークハウス多摩川の敷地内にある噴水
パークハウス多摩川の敷地内にある日本庭園
敷地内には、噴水や日本庭園も。美しく整備されている(庭園の写真提供:住人管理組合)

「100年経っても恥ずかしくない」住戸プランと仕様の数々

では、パークハウス多摩川ならではのオリジナリティは何か。前田さんに質問をぶつけてみた。

「掲げたコンセプトは『世代を超えて住み継がれるマンション』『東京で最善のマンション』。
そこで平均的な間取りを約100平米の3LDKとし、リビングダイニングは20畳超、主寝室は9~10畳に設定しました。一部60㎡台の住戸もあり、近年であれば2LDK、3LDKだったりもしますが、ここでは1LDKに。3LDK同様のゆとりあるリビングダイニング、主寝室の確保にこだわったためです。特に玄関スペースは住まいの顔でもあることから、住居の広さにかかわらずできる限りスペースを広く取りました。これらのゆとりある空間づくりへのこだわりは、現在三菱地所レジデンスがつくるハイエンドマンションにも継承されています」

パークハウス多摩川の各部屋の様子が掲載されている当時のパンフレットその1
パークハウス多摩川の各部屋の様子が掲載されている当時のパンフレットその2
ゆとりある20畳超のリビングダイニングや9-10畳の主寝室がスタンダード(いずれも当時のマンションパンフレットより)

また、緑と水が豊富な多摩川沿いの環境もここならではだ。

「そのストロングポイントを活かすため、多摩川に面した高層棟のバルコニーはガラス手摺にして開放感を向上。窓ガラスは桟を極力細くしたワイドスパンで、リビングに居ながらにして多摩川や富士山方面の眺望を楽しめるようにしています」。ちなみにバルコニー奥行きは2m。最近の新築では一般的だが、当時は非常に贅沢な設計だった。

窓ガラスが大きく開放的なパークハウス多摩川の部屋が掲載されている当時のパンフレット

ワイドスパンの住戸の左右いっぱいに広がる窓ガラスから多摩川方面の眺望を望むことができる(マンションパンフレットより)

マンションからの眺めた多摩川

マンションから多摩川を見下ろす風景

ほかにも細かい部分ではあるが、エアコン室外機や配管を表に出さずに建物外観の美観に配慮しているほか、バルコニー周りもしっかりタイル張りに。さらに住宅棟別にラウンジのアート作品やソファを変えている上、玄関ドアも住宅棟別に特注した。こうすることで大規模マンションでも、“ここにしかない我が家感”が増し、住む人の愛着が深まったのだ。

「敷地内の散策路には彫刻などのアートワークが展示されていて、マンションにお住まいの方はもちろん、近隣住民の皆さんの目も楽しませています。三菱地所は1972年に『その場を訪れるあらゆる人に対して心地よい空間を演出する』という目的で、丸の内仲通りで複数の彫刻やオブジェを配する取り組みをしていますが、パークハウス多摩川の散策路の彫刻も、共通の考えで設置されていると思います」

パークハウス多摩川のラウンジ

クラシカルな印象のラウンジは清潔に管理され、今なお高級感を保っている

パークハウス多摩川の敷地内に点在するアートワーク。女性の像

多摩川堤防に面した敷地内の散策路に点在するアートワーク

歳月を経て多摩川の自然と一体化。住民のカスタマイズも

前田さんがパークハウス多摩川の案件に携わったのは、1989年~1993年の約4年間。販売開始当初はバブル絶頂期で人気住戸は約約100倍を超える競争率になったこともあったが、その後のバブル崩壊で大幅な販売計画の見直しを迫られた経験もしたという。

三菱地所レジデンス第二販売部SR副部長の前田昇さん

新人時代の青春をささげました、と往時の記憶を滔々と語る前田さん (撮影:SUUMO編集部)

「まさに激動の時代に重なっていましたね。
その後、別の高額マンションの販売担当をすることもありましたが、異動先のモデルルームでセカンドハウス購入や買い替えのためにお越しいただいたパークハウス多摩川の居住者様と“再会”する機会が何度かありました。懐かしくお話をしながら、皆さまが当社のこだわりを強く反映したパークハウス多摩川の住民であることに誇りをもっていただけていること、だからこそ三菱地所の物件をリピートで購入検討いただいていることを実感しました。デベロッパー冥利に尽きましたね」

筆者はマンション理事会で住民の皆さんにも話を聞いた。
そのうちの一人は「直接歩いて行ける多摩川河川敷の水、緑もマンションと一体になっている感覚ですね。しかも堤防沿いは桜並木が続くお花見の名所。住民交流の場にもなっています」と満足そうに話してくれた。

パークハウス多摩川と、その前の桜並木

マンション前の樹木が桜並木。物件前には車が入れる道がなく、安心して散策やジョギング、サイクリングなどが楽しめることもパークハウス多摩川の強みだ

取材の終わり際、前田さんはこんな打ち明け話もしてくれた。

「実はこの取材をお引き受けするにあたり、久しぶりにパークハウス多摩川の現地を見に行ってみたんですよ。植栽が順調に成長して、多摩川との一体感が増していましたね。また、地上の植栽部分にたくさんのLEDライトが巡らされているのを発見しました。夜間にライトアップされているんでしょうね。時を経てこうして、住人の皆さまに活用していただけるのは本当にうれしいことです」

つくり手の想いが歳月を経て、住人に受け継がれていることが推し量れるエピソードだ。マンション内での親子近居や住み替えの事例も多数あるというパークハウス多摩川。多世代に住み継がれる“まち”へと成熟している。

パークハウス多摩川の緑豊かな敷地内を歩く家族

パークハウス多摩川を俯瞰。緑豊かなことがわかる

竣工から30年弱。植栽は順調に成長中。周囲の住宅地とも融合しているようだ

構成・取材・文/保倉勝巳 撮影/中垣美沙

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