クセの強い街「大阪」に生まれて|文・ヨッピー

著: ヨッピー

大阪の風景写真

僕がまだ大学生で、生まれ育った大阪に住んでいたころの話である。

インターネットで知り合った東京の友達が、大阪で開催されるオフ会に参加する、と言うので大阪駅まで迎えに行った。「初めて行くので大阪を案内してほしい」とのことで、オフ会の時間まで梅田や難波といった代表的な大阪の街を案内する事にしたのだ。

大阪駅の写真

友達は夜行バスで東京から来たため、朝早い時間に合流した。疲れただろうし、と喫茶店に入って休憩しつつモーニングコーヒーなんかを飲んでいたのだけど、東京から来た友達はのっけからテンションが高かった。

「大阪の人って全員ボケとツッコミをやるんでしょ?」
「おばちゃんがアメちゃんくれるとか」
「知らない人ががんがん話しかけてくるって本当?」

などなど。

「大阪人」という人種(?)は全国的にも独特のポジションというか、変なバイアスがかかって見られがちだというのはひとりの大阪人としてヒシヒシと感じるところがある。それはマスコミが誇張気味に放送する「典型的な大阪人のイメージ」や、テレビで活躍する芸人さんたちのイメージとリンクし、形成される部分が大きいのだろう。

もちろん大阪にはごくごく普通の人たちもたくさん居て、大人しい人だってたくさんいる。僕の父親も母親も、どちらかと言うと真面目で物静かなタイプだ。

だから、そのときも友達に「全部が全部、おしゃべりで、せっかちで、おせっかい焼きな大阪人ばかりではない」という事を力説したのだけど、その直後に喫茶店で隣の席に座っていたおばちゃん二人組が、「お兄ちゃん、東京から来たん?」と話しかけてきた。

「東京から来たん?なんやさっきから言葉が違うもんねえ」
「いやー、東京の人はお顔もシュッとしてはるねえ。これからどこに行くん?」
「いつまでおるん? どこに泊まらはるん?」
「あー、そこ行くんやったら〇〇がええねえ。早めに行かんと並ぶよ」

などとひととおりまくしたて、最後には「これ、持っていき」と飴玉をふたつくれた。

東京から来た友達は「すげえ!大阪って本当にこんな感じなんだ!」とテンションがゴチ上がりで、それに反比例して「さっきの僕の力説はなんだったんだ」とひとりで憤慨した。

この問題の難しさは、「大阪人のイメージは誇張されがちではあるけれども、あながち全部がウソというわけではない」という部分にある。

大阪が苦手な理由とは?

その後、大学を卒業して上京し、30歳を過ぎてサラリーマンを辞め、フリーライターとして全国各地を飛び回る生活を送るようになった。

そこでヒシヒシと感じたのは、「どうも他の地域の人に比べて、大阪はクセが強い」という事である。人のクセもそうだし、街のクセもそうだ。この「クセ」というのは良い意味でも悪い意味でもあって、そしてその「良い意味」「悪い意味」は受け取る人の好みによっても変化するのでなおさら難しくもある。ある人にとっての「大阪人の良い部分」は、ある人にとっては「大阪人の悪い部分」でもありえるからだ

具体的には、冒頭に出てくるおばちゃんとのやりとりなんかがそうだ。喫茶店で静かに二人だけで話したい人には、こういうおばちゃんの干渉と詮索は煩わしく「大阪人の悪い部分」に当たるのだろうけど、にぎやかなのが好きな人にとっては「大阪人の良い部分」だったりする。

そんな風にクセのある大阪の人がつくった大阪の街も、激辛のラーメンなんかと同じで、「好きな人は好き、嫌いな人は嫌い」というのが大きな特徴であり醍醐味だと思っていて、その結果はこういったアンケートにも如実に出ている。

地域別マップ画像 東西でここまで違うとは...…。
「苦手な都道府県といえば?」地域別マップが興味深いより

いや大阪苦手な人多すぎるやろ

首都であり情報の発信地であり巨大な人口を抱える東京に票が集まるのはともかく、その東京に肩を並べる勢いで全国的に大阪が苦手だと思われているのはすごい。綺麗に西日本の人は東京が苦手で、東日本の人は大阪が苦手、という傾向にある。

一応言っておくけど、このアンケートは東京・大阪・京都といった主要都市から選んで投票するのではなく、47都道府県全てに投票できるようになっているのにこの結果である。

そのくせ「好きな都道府県」を聞いたアンケートでも結局大阪が上位に来たりするので、このへんにも「大阪のクセの強さ」が如実に表れている気がする。「合う人には合うけど、合わない人には合わない」というのが大阪の大きな特徴なのかもしれない

ちなみに表の中の唯一の緑、つまり「山口県が苦手な福島県」は戊辰戦争の遺恨によるアレです。千葉が京都を苦手な理由についてはよくわからない。

さておき、今回そんな大阪の特徴を踏まえて、「街」「食」「暮らし」「人」についてそれぞれ書いてみようと思う。

街:ゴチャゴチャして雑多な街並み

先に述べたように、大阪の街にはクセがある。パッと見からして「なんか、他の地域と違う」と感じられるような独特な街並みが、これほど広範囲に、かつ観光地ではなく「普通の街」として存在する地域は、(これはまったくの主観だけど)京都・大阪・沖縄くらいしか無いんじゃないかと思っている。

梅田商店街の写真 梅田の商店街の写真。どう考えても情報過多である

具体的にはゴテゴテして自己主張が強い看板、やたらと発達した地下街とアーケード、そこかしこで走る自転車、現役そのままの昭和レトロがそうだ。その全部が「ゴチャゴチャして雑多」という大阪の街のイメージを形成する一翼を担っている。

地下街とアーケード

例えば、大阪の街の特徴として、梅田、難波、天王寺など、大きなターミナル駅には必ず地下街とアーケードが存在する点がある。

これらを駆使すれば「デパートで服を買い、喫茶店で休憩したあとに映画鑑賞、その後ご飯を食べてから居酒屋で泥酔して帰る」みたいな行程が、大雨の日でも一切雨に濡れることなく遂行できるので大変便利なのだが、僕の勝手な予想では「せっかちで面倒臭い事が嫌いな大阪人」は、雨の中、傘をさす事がとてつもなく嫌いで、傘をささなくて済むように地下街とアーケードを発達させたんじゃないかと思っている。

そんな風に発達したアーケードにゴテゴテした看板が張り出すんだからそりゃあ雑多な雰囲気にもなるわ、と言う感じだ。

大阪の看板写真1

大阪の看板写真2 自己主張の強い看板の例。電気代どうなってんだ

しかも、「動く歩道」も「どれくらい待てば青に変わるのか表示される信号」も設置1号は大阪だ。大阪人のせっかちぶりが如実に表れた結果ではなかろうか。

そこかしこを走る自転車

やたらと自転車が幅をきかせているのも大阪の特徴で、これもまた雑多なイメージに拍車をかけている。「大阪市」は面積が狭い上(東京23区の3分の1程度)、大きな坂が上町台地周辺にしか存在しないため、自転車があればだいたいどこにでも行けるのだ。

大阪の路上自転車の写真

なので、大阪人はやたらと自転車に乗る。僕も中学~高校くらいまでは自転車でどこへでも行った。自転車で奈良まで行こうとして生駒の山を自転車で超えている最中は流石に後悔したけど。

そうなると「やたらと自転車に乗るのに、雨が嫌いなら雨の日はどうするの?」という疑問が出てくると思います。ご安心ください。大阪にはこういう商品があります。

さすべえの写真

「さすべえ」である。これは「こいつに傘を持たせると傘をささずに自転車が漕げるぜ!」というシロモノで、僕の母親の自転車にもこれがしっかりついていたのだけど、この「さすべえ」は大阪以外の地域でぜんぜん売れてないらしい。やっぱり大阪人の雨嫌いは異常なんじゃないか。

かく言う僕も上京してきて自転車を買い、「雨の日も便利なように」と、この「さすべえ」をつけようと思ったのにどこにも売ってなくて驚愕した覚えがある。

ちなみに2015年に道路交通法が改正され、「傘スタンドに傘を取り付けた場合、傘の幅が(自転車の幅より)0.3mはみ出したり、高さが2mを超えたりすると違反」とされたことから、「さすべえが使えないのか!」と大阪のおばちゃんたちが激怒したらしい。

しかしながらざっと見た感じ、2021年になった今でもママチャリの3割~4割くらいにはこの「さすべえ」が取り付けられている印象だ。大阪府警も「さすべえ」については取り締まりを諦めてるのかもしれない。

大阪の商店街写真

ちなみにあまりにも自転車が生活になじんでいるので、アーケードでも気にせずに自転車で通り抜けて行くおっさん、おばはんが大阪にはけっこういる。全然褒められた話ではないけど。

色濃く残る昭和レトロ

そして大阪の街の大きな特徴として「昭和っぽさがいまだに、現役バリバリで残っている」という部分がある。いわゆる「レトロなお店」「レトロな街」というのは、もちろん日本全国各地にまだまだ残っているけど、実際の所お客さんがそれほど入っておらず、閑散としている所が多いのが現状だ。

大阪の喫茶店写真1

それなのに、大阪のレトロな喫茶店、飲食店なんかは今でも普通に繁盛していて近所のおばちゃんが集まってあーだこーだとやかましくしゃべっている。「おしゃべりが好き」という大阪人の特性が、こういった古いタイプの喫茶店を今でも存続させているのかもしれない。

大阪の喫茶店写真2

最近、この「昭和レトロ」が若い女性なんかにも「可愛い」と流行りつつあって、クリームソーダやフルーツパフェなど、古き良き喫茶店のメニューをInstagramにアップしたりするのが定番なのだけど、大阪の場合はそういう喫茶店にも普通に地場のおっさんが入り浸っていたりするので、おっさんが競馬新聞を開いている隣で若い女の子がプリンアラモードの写真を撮る、というあまり他の地域では見られないような光景が広がっている。

大阪の喫茶店写真3

この日も向かいの席の女子大生っぽい集団がフルーツパフェの写真を熱心に撮っている中、レジでおっさん二人組が「ほな、1500万な!」と言いながら1500円払って喫茶店を出ていった。実に大阪らしいエピソードである。

僕の知人で日本中のレトロなお店を巡るのを趣味にしている人も「古さ×活気×規模の掛け算だったらやっぱり大阪が一番だと思う」と発言していたし、実際僕もそう思う。沖縄なんかにも活気のあるレトロな街並み、お店がまだまだあるけど、これほど広範囲かつ普遍的に昭和レトロが存在するのはやっぱり大阪ぐらいなのではなかろうか。

大阪の風景写真2

つまり、

  • 派手な看板がゴテゴテ張り出してるアーケード
  • 地下に張り巡らされた地下街
  • そこかしこを走る自転車
  • あちこちに残る昭和レトロな風景
  • そこをひっきりなしに往来する、歩くのが早い人々

が組み合わさって「雑多な大阪」「ゴチャゴチャした大阪」のイメージが構成されているのだ。根底にあるのは、「派手好きで、せっかちで、おしゃべりが好き」という大阪人の特性ではなかろうか。

大阪にもシュッとした街はある

もちろん大阪にもシュッとした街、というか特にゴチャゴチャしているわけでもない街は存在するので一応覚えておいてほしい。それも書いておかないと大阪の人に怒られそうだし。

大阪の風景写真3

都心で言えば中之島のあたりや御堂筋、京橋の大阪ビジネスパークのあたりなんかがそうだ。この辺なら派手な看板が張り出したりしてないし、歩道も広めなのでゆったり歩ける。オシャレなカフェなんかも多く、「雑多な街は苦手」という人はこういう所に出かけると良いんじゃないかと思います。

大阪の風景写真4

ただしこういった地域はやっぱり大阪市内においては例外で、大阪で人が集まるような所はだいたいゴチャゴチャしてると思った方が良いかもしれない。歴史が古く、昔から人がたくさん住んでいたのだから仕方ない部分もある。

冒頭で言った「大阪には合う人と合わない人がいる」という言葉の内、「合わない人」というのはこういった雑多な街が好きになれない、という人も多数含まれているのではないかな、と思っている。

東京で言えば代官山や白金あたりの落ち着いた街が好きな人には決定的に大阪が合わないだろうと思うからだ。そういう人が転勤になって大阪に住まなくてはいけない事情ができたときは豊中市、吹田市など大阪府の「北摂」と呼ばれるような地域、もしくは阪神間の西宮市や芦屋市に住むと良い。

その辺なら大阪都心にも通いやすいし、街並み自体も落ち着いている。住んでいる人たちもそこまでせかせかしてない印象があるので選択肢として覚えておくと良いかもしれない。実際、都心に通勤する人の中でそこそこお金を持っている人は市内ではなく、そういった少し遠方の落ち着いた住宅街に住むことも多い。

逆に、東京で言えば高円寺や中野、上野や浅草、赤羽に立石といったゴチャゴチャした地域、下町っぽい所が好き、という僕みたいな人はたぶん大阪の事を好きになれる。

高山社長の写真

これは中野・高円寺で年間360日飲み歩いていて、「中野を心から愛している」と豪語する友達なのだけど、試しに大阪に連れて行ってみたら「大阪最高!」「マジで良いですね!」「大阪に住みたい」を連発し、「定期的に大阪に来れるように、大阪の会社に営業に行きましょう」という事で知人が経営する大阪の広告会社に「大阪の仕事をください」と一緒に飛び込み営業に行った。営業先で漫画を読むな。

食:美味くて安いうえに「早い」

街について解説したあとは、食べ物である。この「大阪の食」の特徴も、根底にあるのはやっぱり大阪人が持つ特性である。

はなだこのたこ焼きの写真1

代表的なのがたこ焼き、うどん、串カツやお好み焼きなどのいわゆる「粉モン」で、「名物に旨い物なし」とはよく言うけれど、大阪に関しては例外でだいたい全部美味しいし、地元の大阪人もこれらの粉モンをよく食べる。

はなだこのたこ焼きの写真2

名物は「観光客向けにつくられた名物」と「地元民に愛された結果としての名物」に分かれると思っているのだけど、大阪に関しては明確に後者である。

これらの大阪名物は「美味い・早い・安い」を基本にしていて、これらの特徴は大阪人の持つ特性と完全にリンクしている。美味い、安い、はともかく、今回はこの「早い」という部分に注目してみたい。

串カツの写真

例えば、すっかり全国区になった串カツも、有名チェーン店が着席スタイルで提供している事から元々ああいうものだと思われがちなのだけど、大阪では立ち食いスタイルの方が実は多いんじゃないかと思っている。

大阪の風景写真5

「おーい」とのれんをくぐって、1本100円の串カツを3本頼み、1杯350円のレモンサワーを2杯飲んで1000円払ってパッと出る、みたいなスタイルで楽しめる串カツ店も多い。「早い」とはつまり、こういう意味だ。

うどんの写真

ちなみにうどんも同じく、パッと頼んでパッと食べてパッと出る、という感じである。素うどんなら200円前後、きつねを足すと+50円が相場だ。「美味い・早い・安い」を体現するような食べ物である。

たこ焼きもそこらへんで買って食べ歩きするものだし、大阪名物は圧倒的にファストフード感のあるものが多い。せっかちな大阪人だからこそ、ファストフードを愛するのである。「早い」の理由はここから来るのだ。

「でも、お好み焼きは流石にゆっくり食べるよね?」っていう声もあると思います。もちろん鉄板の上で焼くお好み焼きは流石に落ち着いてゆっくり食べますが、「お好み焼きだってパッと食べたい」というせっかちな大阪人によって進化したお好み焼きの亜種があります。

お好み焼きの写真1

お好み焼きの写真2

イカ焼き、キャベツ焼き、洋食焼き、などなど。パッと買ってパッと食べられるお好み焼きっぽい食べ物が大阪にはたくさんある。値段はどれも200円以下で食べられるので大阪に来たら是非食べてほしい。串カツ1本100円、たこ焼き6個で300円、洋食焼きが1枚200円という感じでどれも美味い。つまりは「美味くて、安くて、早い」のが大阪の食である。

こうしたファストフードが幅をきかせているせいか、大阪の高級店なんかも東京に比べるとかなりリーズナブルな値段で食べられるらしい。東京と比較した場合の家賃の安さもあるのだろうけど。

暮らし:家賃が安く、周辺へのアクセスも良好

長々と書いてしまっていて恐縮だけど、「大阪に住む」という事の利点についてもアレコレと書いておきたい。

家賃の安さ

最初に言っておきたいのは家賃の安さだ。

大阪の風景写真6

これは正直、「大阪が安い」と言うよりは「首都圏が高すぎる」という事になるのだと思うけど、梅田、難波など東京のターミナル駅に引けを取らないような都心から徒歩圏内の物件でもかなり安い*1 。

とは言え、大阪の都心部には最近ゴツい高級タワーマンションがボコボコ建ってて、そういった物件は確かに目玉が飛び出るような値段のものもある。ただ、築10年以上たってるようなマンションなら首都圏の人からすると「安っ!」って思うくらいの家賃相場が主流である。

更に、大阪は電車網も発達しているので多少都心から離れた所でも特に不便はない。僕が生まれ育った地元は大阪市の東の端っことは言え、難波まで地下鉄で10分、梅田まで1回乗り換えで20分という距離感の街なのだけど、その辺まで出てくれば更に相場が安くなる。

試しにその実家の最寄駅で検索してみたら、今僕が東京で住んでいる家と同じ家賃で、「豪邸」と言ってもぜんぜん差し支えが無いような、駐車場付きの一軒家がバチコンと出て来て驚愕した。

他府県へのアクセスの良さ

そしてこれも「大阪の良いところ」なのだけど、電車網が発達しているので大阪から京都、大阪から神戸、大阪から奈良など、大阪から近隣の都市に簡単に行ける。そして大阪の近くには「たくさんの良い場所」があるのだ。

京都の風景写真

例えば、大阪駅から新快速に乗ればわずか30分で京都駅に着く。神戸の中心である三宮駅までは20分と少しだ。ちなみに新快速は国内最速の在来線で、最高速度130kmを誇る。これもせっかちな大阪人が「もっと早く」を追及した結果の産物ではなかろうか。

この新快速のおかげで、「京都のお寺にでも行くか」と思えばすぐだし、「神戸に中華を食べに行こう」と思ってもすぐだ。奈良で鹿と戯れても良いし、和歌山に海を見に行っても良い。なんなら伊勢神宮や名古屋も割と日帰りで行ける距離である。大阪に住んでいれば週末に「どこ遊びに行こうかな~」と思ったときの選択肢はかなり多い

神戸の風景写真

逆に言えば神戸から大阪、京都から大阪、奈良から大阪も割とすぐである。さっきも言ったとおり、大阪が「合わない」と思った人は大阪そのものに住むのではなく、その近隣の街に住むと良いかもしれない。

京都は京都で人も街もけっこうクセが強いな、と思うのだけど、神戸や奈良であれば「落ち着いた所に住みたい」という人でも満足できるんじゃないかと思う。

人:根っこにあるのは「サービス精神」

そして最後に書いておきたいのが大阪名物、大阪人である。大阪の街も大阪の食も、結局はこの「大阪人が持つ強いクセ」が派生して出来上がった結果なので、やっぱり根底にあるこの大阪人の特性、クセの強さについて書いておきたい。

味園ビルの写真

冒頭でも言ったとおり、全部が全部、がさつで、おしゃべりで、せっかちで、おせっかい焼きな大阪人ばかりではない。大人しい人もいれば人見知りな人だって当然いる。親切な大阪人もいれば「これだから東京モンは~」みたいな事を平気で言う大阪人もいる。

なので十把一からげに「大阪人は、こう」と決められない難しさはあるのだけど、やはり傾向としては「調子乗りで、おしゃべりで、おせっかいで、せっかちな人が多い」くらいは言っても良いんじゃないかと思う。要するにクセが強いのだ。

大阪の風景写真7

ここでひとつ主張しておきたいのが、この大阪人の「クセの強さ」は「外部の人に対して、より強力に出てくる」という変な特性がある事だ。

大阪人が大阪人同士で固まっている間はごくごく自然にふるまっているのに、これが東京に出てきた大阪人が東京の人と話す場合や、逆に大阪に来た、関西圏以外の人と話す場合に「無駄に大阪人らしくふるまってしまう」みたいな悪癖を見せてしまう大阪人がけっこういるのだ。

前述のとおり、大阪及び大阪の人というのは全国的にもある種のバイアスがかかったような目で見られることも多いため(少なくとも自分たちはそう見られていると思い込んでいるため)、「そういう風に見られてるなら、期待通りにふるまってあげなきゃ」みたいな正体不明のサービス精神みたいなものが出てくるのである。

例えばテレビ番組で、「大阪人は指で『バーン!』ってやると『ウッ、やられた……!』とリアクションを取ってくれるのは本当か?」みたいな検証をしていて、道頓堀でレポーターの人が通行人を「ちょっとお時間いいですかー?」みたいに引き留めたあと、「バーン!」ってやるとたいていの人が「ウッ……!」ってリアクションをして「噂は本当だった!」とかやるのだけど、あんなもんはテレビカメラの前だから、かつ「大阪人はそうすると思われている」から「じゃあ期待通りやってあげなきゃ」と思ってリアクションを取っているだけで、大阪人同士の集まりで同じことをやっても「は? 頭沸いてんのか?」の一言で終了である。

他にも、カラオケで阪神タイガースの応援歌である「六甲おろし」を熱唱する、みたいなこともやりがちなのだけど、あれも「大阪の人はやっぱり六甲おろしを歌うんだ!さすが大阪人!」っていう賞賛を求めた結果、必要以上に大阪人ぶろうとした結果の所業である。大阪人同士で行くカラオケではまずやらない。たぶん。

ちなみに、「ノリが良い」「図々しい」「せっかち」みたいな、大阪人に対する代表的なバイアスを快く思っていない大阪人もたくさん居るし、僕もどちらかと言うとそっち寄りの考えではあるので、

  • 大阪の人はみんなノリが良いんでしょ?
  • 大阪のおばちゃんはみんなヒョウ柄着るんでしょ?
  • 大阪人ならなんか面白い事言ってよ

みたいなある種の偏見に対しては「いや、そんなことないから! 別に普通の人もたくさん居るし!」って日ごろから反論しているのだけど、その横から「おっ、外部の人がおるやん!」と調子に乗った別の大阪人が飛び出して来て「そうでおま~~! 大阪人はノリがよろしおまんのや~~!お好み焼きでご飯も食べまっせ~~!」みたいにやりがちだからややこしいのである。

大阪人に対して生まれた偏見は、それを苦々しく思う大阪人もいる一方で、それを良しとして助長するタイプの大阪人も居る。ただし、そういう調子に乗った大阪の人たちの行動の根っこはやはり「サービス精神」みたいなものから出ているので、暖かい目で見てあげてほしいな、と思う所存です。

そしてあなたが大阪に慣れるにつれて、「外部の人により強く出がち」という大阪人のクセは徐々に収まっていくと同時に、あなたの大阪に対する耐性も強くなってなんとなく大阪の街と大阪の人になじんでゆくものなのかなぁと思っている。

大阪の風景写真8

大阪の良いところまとめ

長々と書いてしまった。そんな風にクセの強い大阪の人と街ではあるけど、大阪は日本有数の都市だし、好むとも好まざるとも、進学や就職、転勤で大阪に住むようになる人も多いだろう。

そんな人たちの事を思いながら自分なりに大阪の人と大阪の街についていろいろと書いてみたのだけど、「クセが強い」だのなんだのと、褒めてるのかけなしてるのかよくわからない感じになってしまった。これを見て「大阪に行ってみたいな」とか「大阪に住んでみたいな」と思ってくれる人が増えてほしいな、と思って書き始めたのにこのままでは本末転倒なので、「大阪の良いところ」について改めてまとめておく。

食べ物

文中でも書いたとおり大阪の食べ物は「美味い、安い、早い」が基本、かつ別に大阪名物以外の食べ物でも総じてレベルは高いように思う。渋谷や新宿にたくさんあるような、「立地が良いだけでまずいし高い」みたいなお店にはあんまり出くわさない。東京で本当に美味しいものを食べようと思ったら、「たくさんお金を出す」もしくは「めっちゃ並ぶか気合いで随分前から予約する」の2択になってしまうことも多いけど、大阪だと割と適当に入ったお店でも普通に美味いし安い、みたいな事が往々にしてある。これは福岡なんかも同じだ。

暮らし

クセが強い、とは言え大都会ではあるので、あらゆる意味で便利である。大阪市内であれば徒歩圏内にお店は一通りそろっているだろうし、電車網も発達しているので車が無くても普通に生活ができる。その割に東京・首都圏ほど家賃が高くないので、「都会には住みたいけど、コストが高いのは困る」という人にとっては「都会の割に家賃が安くて車社会でもない大阪」はかなりコスパの良い街と言えるのではなかろうか。

娯楽

これも同じく一通りそろっていて、梅田や難波に出てくればだいたいの遊びはできる。そして文中にも書いてあるとおり休日に「どっか遊びに行こうかな~」と思ったときの選択肢は国内随一かもしれない。ただし、イベントや勉強会といったものについてはやっぱり東京の密度の高さにはかなわないので、アイドルのライブが好き、みたいな人は大阪だと物足りなさがあるかもしれない。とは言え、東京以外の都市と比べたらそれでもかなり充実している方ではあると思う。


その上で、冒頭にも書いたとおり「合う人には合うし、合わない人は合わない」というのが大きな特徴だと思っているので、「大阪、合わない!」と思った人は素直に記事中でも書いたように、北摂のあたりや阪神間の落ち着いた街に住むのが良い。

結論として、ハマる人にはぴったりハマるのが大阪であって、そういった人にとっては唯一無二の街である。僕はゴチャゴチャした街並み、おしゃべりでうるさい人たちに揉まれる事でなんとなくエネルギーみたいなものを貰えるという変わった性質をしているので、生まれ育った街、という身内びいきがあるからかもしれないけど、やっぱり世界中のどの街より大阪が好きなのである。知らんけど。


著者:ヨッピー (id:yoppymodel)

ヨッピー

大阪出身のライター。「オモコロ」「SPOT(スポット)」など、さまざまなWebメディアで活躍中。週に8回銭湯に行く。

ブログ:ヨッピーのブログ
Twitter:@yoppymodel

編集:はてな編集部

*1:梅田を擁する大阪市北区のワンルーム平均家賃は5.6万円 ※SUUMO関西版を参照