マンションのリノベーション。おすすめの間取りや費用の目安は? 実例も紹介!

リノベーションで間取りを変更することで、長く住んできたマンションや、中古で購入したマンションを暮らしやすい住まいにすることができます。そこで、おすすめの間取りや今人気の間取り、プランニングの際の注意ポイントについて、リフォームやリノベーションを手がけるフレッシュハウスの樋田明夫さんに取材。理想の暮らしが叶う、リノベーションの参考にしてください。

※記事内に掲載したリフォーム内容は契約時のもの。費用は概算。建物の状態や契約時期によって費用は変動します。掲載した費用、工事内容などはあくまでも参考としてください。

リノベーションでおしゃれな空間になったマンションのイメージ

(画像提供/フレッシュハウス)

記事の目次

時代によって人気の間取りは違う?

時代によって人々のライフスタイルは変わってきています。かつては、マンションはLDK(リビング・ダイニング・キッチン)のほかに、子どもが勉強したり眠ったりする個室、夫婦の主寝室があり、来客用に和室があると便利、と考える個室空間重視の間取りプランが主流でした。キッチンはリビングやダイニングから中が見えない独立型が多かった時代を経て、ダイニングと空間がつながる対面式が人気になりました。

しかし、最近はリビングに子どものスタディースペースや親のワークスペースを設けて、家族が集まる空間であることを重視したり、キッチンは間仕切りをなくしてできるだけオープンな大空間にしたりなど、好まれる間取りが変化してきています。

「最近は、『部屋数は少なくていいから、リビングを広く』というご要望がとても多いです。施主である親御さんと、子どもたちが仲良くつながれる間取り、というのが今のトレンドだと感じます。そのほか、玄関を広くしたい、家族で使えるウォークインクローゼット(ファミリークローゼット)を設けたいというご希望も多いです。コロナ禍で大きく変わったのが在宅ワークに対応できる間取りにするケースでしょう。また、さまざまな施工事例をSNSなどで見ることができることもあり、内装デザインや間取りへのご希望は多彩になってきています」(樋田さん、以下同)

では、最近人気の間取りプランには、どのようなものがあるのか、実現するにはどのような注意点があるのかなどを、実例を交えながらご紹介していきましょう。

マンションリノベーションでおすすめ&人気の間取りは?実例でチェック

広々としたリビング

リビングは、家族で集まって一緒に映画やテレビを見たり、ゲームをしたり、おしゃべりをしたりなど、団らんをするだけの場所ではありません。今のリビングは家族が自由に過ごす空間。スタディーコーナーやワークスペースがあれば子どもは勉強や読書を、大人は在宅ワークをする場所にもなります。長い時間を過ごすのであれば、やはり広々とした空間が欲しくなります。

「リビングを広くしたいというご要望は多いです。しかし、マンションは増築ができませんから、リビングを広くすると部屋数が減ったり、リビング以外のスペースが狭くなったりします」

では、広く感じるリビングを実現するには、マンションの専有面積はどれくらいあればいいのでしょうか。

「何畳なら広いと感じるかは家族の人数と、個人の感覚によって異なります。一例ですが、4人家族がのびのびと過ごせるリビングをつくるなら、住戸全体で76m2以上は欲しいところです」

リフォームやリノベーションでリビングを広くする場合、リビングに隣接する部屋との間仕切りを撤去し、ひとつの空間にする方法があります。部屋数は減ることになりますが、リビングの広さは確保できます。

●実例1

リビング隣接の和室をなくして、南向きの16畳のLDKに

広々としたリビングにリノベーションした実例

(画像提供/フレッシュハウス)

キッチンと和室の壁を取り払い、広々とした16畳のLDKにリフォーム。南向きの窓から部屋全体に太陽の光が届く明るい空間になりました。落ち着いた青いアクセントウォールが、実際以上の奥行きを感じさせています。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、洗面所・脱衣所、書斎
リフォーム面積:46.00m2
工期:1カ月
費用:297万円
設計・施工:フレッシュハウス

●実例2

4LDKを1LDKにリノベーション。広さと高さのあるLDKに

広さと高さを最大限に生かした広々リビングの実例

(画像提供/フレッシュハウス)

寝室以外の南面の2つの部屋を集約して広々としたLDKに。天井高も最大限に上げることで、より広々とした空間に仕上げられています。扉を天井高と同じ高さで揃えることで人の動きとともに空気が対流するように配慮されています。

【DATA】
間取り:[ Before ] 4LDK → [ After ] 1LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、寝室、洋室、廊下
リフォーム面積:97.00m2
工期:3カ月
費用:925万円
設計・施工:フレッシュハウス

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オープンなキッチン

キッチンは、もう長い間、リビングやダイニングから分離された独立型よりも、リビング・ダイニングとつながっているオープンな対面式のキッチンが人気です。料理をしながら家族や来客と会話ができますし、リビングのテレビを見ることもできます。子どもが小さいうちは、リビングで遊んでいる様子を見ることができるため安心です。

しかし、最近はシンクやコンロが壁側を向いている壁付きタイプのキッチンを選択する人も多いのだとか。

「床面積が限られたマンションの場合、壁付けタイプのキッチンにするとLDKで使える床面積が広くなるため、大きなテーブルを置いたりすることができます。壁付けタイプはキッチンがリビング・ダイニングから見えることになりますが、最近はデザイン性の高い家電も多いですし、キッチンをオーダーでつくることでリビングのインテリアと統一感のあるおしゃれな空間にもできます」

●実例3

シルバー×ブラックでクールな印象に仕上げたキッチン

壁付けタイプのキッチンを採用したリフォームの実例

(画像提供/フレッシュハウス)

壁付けタイプのキッチンは面材やレンジフード、調理家電の色をブラックで統一。シルバーの冷蔵庫や、ステンレストップに仕上げたテーブルなど、クールな印象の空間が完成。タモ材で造作したテーブルや窓の上のキャットステップが空間に温かみをプラスしています。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3DK → [ After ]1LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、寝室、書斎
リフォーム面積:47.01m2
工期:2〜3カ月
費用:800万円以上
設計・施工:フレッシュハウス

●実例4

コンロを壁付けに、シンクはアイランド型にした機能的なキッチン

リノベーションした実例

(画像提供/フレッシュハウス)

コンロ側は壁付けタイプにして窓側に天井までの収納を造作。シンクはリビング・ダイニングが見渡せるアイランドタイプにした2列型のキッチン。シンク側の隣にはダイニングテーブルを並べています。調理や収納、配膳、片付けなど短い動線で効率的に家事ができます。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、洋室、廊下
リフォーム面積:69.36m2
工期:3カ月
費用:1620万円
設計・施工:フレッシュハウス

●実例5

独立タイプのキッチンをオープンな対面式に

独立タイプのキッチンを対面式のキッチンに間取り変更した実例

(画像提供/フレッシュハウス)

独立タイプだったキッチンを対面式に変更。前面に吊り戸棚を設けないことで、リビングの様子が見渡しやすいオープンな間取りになりました。キッチンのあった写真奥のスペースは大型のパントリーに。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、書斎、洗面所・脱衣所、収納、洋室、玄関、その他
リフォーム面積:57.60m2
工期:2カ月
費用:769万円
設計・施工:フレッシュハウス

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たっぷりの収納

・ウォークインクローゼット
今は共働き世帯が多い時代です。家事動線を効率的にするためにも、収納が充実していることは大きなポイントになります。例えば、家族で使えるウォークインクローゼット(ファミリークローゼット)があれば、洗濯をした後に、各部屋へ洋服を片付けに行く手間が省けます。

「最近はインテリアショップや収納家具メーカーから、さまざまなサイズの収納家具やパーツが出ています。世帯によって必要な収納のスタイルは違いますから、リフォームの際に棚などの細かなプランは立てずに、少しずつ自分たちでカスタマイズしていくと満足度が高くなるのではないかと思います」

リノベーションやリフォームで収納スペースを設けるときに、考えておきたいのは湿気対策。

「ウォークインクローゼットやシューズクローク、パントリーなどはカビの発生の原因になる湿気や、ニオイへの対応策をとっておくと快適です。換気扇が設置できない場合は、ニオイや防カビに効果のある空気清浄機の設置、調湿効果のあるクロスや漆喰(しっくい)を壁に施工するのもおすすめです」

・パントリー
最近はキッチンをオープンな空間にするために、吊り戸棚は設けないケースも。また、壁付けタイプのキッチンも背面収納がない分、収納スペースが不足することがあります。LDKの広さに余裕があれば、キッチンの端に目隠しになる壁を設けてパントリーにするのもいいでしょう。冷蔵庫や電子レンジなども収納できれば、キッチンの見た目もすっきりします。

・土間収納
玄関から続く土間収納はキャンプ道具や自転車、サーフボード、スノーボードなどを収納したり、フリースペースとして使ったりできる空間です。

「若い世代の方を中心に、玄関に土間収納を設けたいという方は多くいらっしゃいます。土間収納は便利ですし、リノベーション後の満足度も高くなると思います。しかし、土間収納をつくるために玄関側の洋室が一つ使えなくなったりします。4人家族で60〜70m2のマンションの場合は、居住スペースが土間にとられて後悔することも。収納と床面積の広さのバランスに注意することが大切です」

●実例6

リビングと寝室をつなぐウォークインクローゼット

リビングと寝室の間にウォークインクローゼットを設けた実例

(画像提供/フレッシュハウス)

リビングと寝室の間に、引き戸でつなげられたウォークインクローゼットを設けました。急な来客時にもリビングにあるものをサッと片付けるのにも、起床時や就寝時に着替えをしながら寝室へ移動するのにも便利です。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、寝室、玄関、洋室、廊下
リフォーム面積:75.00m2
工期:2カ月
費用:627万円
設計・施工:フレッシュハウス

●実例7

キッチンの大型収納は引き戸、半透明で使いやすく

リノベーションでキッチンに大型収納を設置した実例

(画像提供/フレッシュハウス)

キッチンに設けた大型収納は、扉が家事動線の邪魔にならないよう引き戸に。戸を閉めたままでも中がわかるように半透明になっています。また、カウンターを2列型に配置したことで、家電やごみ箱を目立たないように収納することができました。

【DATA】
間取り:[ Before ] 4LDK → [ After ] 3LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、玄関、子ども部屋、洋室、廊下
リフォーム面積:92.00m2
工期:2カ月
費用:1000万円
設計・施工:フレッシュハウス

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畳や小上がりの和のスペース

最近の新築マンションは和室が設けられていない間取りが主流です。でも、畳の空間が欲しいという人もいるはず。リフォームやリノベーションの際に、もともとある和室を生かしたり、新たに和室を設けたりするケースはあるのでしょうか。

「純粋な和室を新たにつくることは今はほとんどありません。マンションで和のスペースを設けつつ空間を有効活用するなら、下部が収納になった小上がりをリビングの一角に設けるといいでしょう。畳3枚分の小上がりならかなりの収納スペースになります」

収納付きの小上がりは扇風機や除湿機、季節外の衣類や布団など、頻繁に出し入れしないものをしまっておくのにぴったりです。小上がりのリビング側が引き出しに、奥側が床下収納のように畳を持ち上げてしまうタイプになっていると、畳の下全てを有効活用できます。

また、畳縁のない琉球畳を部屋の一部に設ける和のスペースは、洗濯物を畳んだり、ちょっと横になったりするのに便利です。

●実例8

畳コーナーを設けて寝転がれるリビングに

リビングに畳コーナーを設けた実例

(画像提供/フレッシュハウス)

LDKと隣接した和室をつなげて17.84畳の広々とした空間に。床は杉の圧密フローリングを採用し、一部に琉球畳を納めています。畳はソファ代わり。ゴロリと寝転がることができるリラックススペースになりました。

【DATA】
間取り:[ Before ] 2LDK +S → [ After ] 1LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、玄関
リフォーム面積:63.30m2
工期:2カ月
費用:837万円
設計・施工:フレッシュハウス

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在宅ワークや趣味のスペース

在宅ワークが広がることで、リフォームやリノベーションの際に要望が増えたのがワークスペースです。そのほか、趣味のためのスペースや書斎をつくりたいという希望も多いそうです。

「住戸内にほかの部屋から完全に独立した小さなワークスペースをつくった場合、通風が確保できなかったりすると、夏は暑くて仕事どころではなくなります。多いのは、家族がいるリビングの一角を少し仕切ってワークスペースにしたいというご要望。その場合も、仕切られたスペースに通風を確保して快適な環境にすることが大切です。エアコンは、排水を出すドレンホースを室外に出すために窓側に設けられるのが一般的ですが、住戸内の壁や床を撤去したところからスタートするリノベーションの場合、配管を床下にまわして洗面所の排水管を利用するなどの方法もあります。リノベーションなら、エアコンの設置場所も自由度が高くなるので、相談してみてください」

せっかくお金をかけるのですから、どうすれば快適な空間になるかを提案してくれるリフォーム会社に依頼することが大切です。

●実例9

LDKに設けたワークスペース。扉付きの収納で見た目もすっきり

リノベーションでリビングにワークスペースを設けた実例

(画像提供/フレッシュハウス)

ダイニングの横にワークスペースと食器棚を造作で設け、リモートワークや読書などのスペースに。ワークスペースの上には扉付きの収納を設けることで、すっきりとした状態をキープしやすくしています。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、洋室
リフォーム面積:70.75m2
工期:約2カ月
費用:750万円
設計・施工:フレッシュハウス

リノベーションだからこそできる便利、安心、個性的な間取りは?

間取り変更など規模の大きな改修を行うことで、住戸の価値を高めるリノベーション。より便利に、快適に暮らすためのさまざまなアイデアや希望を実現することができるのがリノベーションの魅力です。

スケルトンリフォームで自由な間取りを実現

スケルトンリフォーム(スケルトンリノベーション)とは、住戸内の天井や壁、床を撤去した状態にして、間取りからつくり直すリノベーションのこと。既存の間取りと関係なく、自由な間取りプランができるだけでなく、キッチンや浴室など水回り設備の移動も自由度が高くなります。また、古いマンションでは、排水管が通る浴室や洗面室が一段高くなっていたりするケースがありますが、それをフラットなバリアフリーにしたり、天井高を上げることで開放感をアップさせたりも可能。

「マンションは新築時の間取りでは、意外なところにデッドスペースがあったりします。例えば給排水管が通るパイプスペースは、壁を撤去してみると配管の周りにかなりの余裕が設けられていることがあります。これを最小限にすることで使用できる床面積が広がり、収納スペースを増やしたり、システムバスをワンサイズアップさせたりなど、できることが多くなります」

●実例10

スケルトンリノベーションで梁(はり)を補強。ハンモックを吊るせる住戸に

スケルトンリフォーム、スケルトンリノベーションで梁を補強しハンモックを設置した実例

(画像提供/フレッシュハウス)

居住中のマンションをスケルトンにして全面リフォーム。リビング・ダイニングに隣接した和室をつなげて、引き戸を開放すれば広いLDKに。引き戸を閉めれば寝室兼趣味のスペースになります。梁を補強することでエアリアルヨガのハンモックを吊るすこともできました。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、寝室、洋室、廊下
リフォーム面積:51〜70m2
工期:3カ月以上
費用:800万円以上
設計・施工:フレッシュハウス

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家電が活躍しやすい工夫で家事をラクに

・お掃除ロボットが広範囲に動けるプラン
最近は、お掃除ロボットを活用する人が多くいます。できるだけ広範囲が自動で掃除できるよう床に段差のないバリアフリー仕様にするほか、家具や家電にも工夫をするとさらに便利になリます。

「家具の裏や床との隙間、家具と床の境目にはホコリがたまります。そこで造り付けの収納家具やテレビ台は壁に付けて床から浮くようにすると、その下をお掃除ロボットが通れるようになります。キッチンも排水管は床とつながりますが、キッチンカウンターが床から浮いている仕様を希望される方もいらっしゃいます」

フラットな床面を最大限に広くすることで、ホコリのたまりにくい室内になり、掃除の手間が減らせます。壁面にコンセントのある凹んだスペースを設けてお掃除ロボット充電コーナーにすると、歩くときにも邪魔になりません。

・空気清浄機の設置場所を考えておく
日当たりの悪い場所や、洗面室や寝室など繊維が多く舞う場所、湿度が高くなりがちなコンパクトな子ども部屋などは、カビの発生が心配。

「除湿機能もある空気清浄機を置くのがおすすめです。間取り変更を伴うリフォームをするなら、室内をすっきり見せるためにも、空気清浄機を置く凹んだスペースをつくっておくといいですね」

室内窓で通風を確保する

マンションの共用廊下に面していて窓を開けにくい部屋や、住戸の中央に配置された窓のない部屋は、どうしても室内の空気がこもりがち。雨の日や梅雨時期は湿気やカビ、ダニなどの発生も心配です。スケルトンリノベーションなら、空調のダクトやエアコンを設けることができます。もっと手軽に通風を確保するなら、間取り変更の際に間仕切り壁を天井まで伸ばさずに上部を空けるようにしたり、室内窓を設けたりする方法もあります。

●実例11

室内窓で住戸の中央にある部屋の通風を確保

室内窓をつけて住戸の中央にある部屋の通風を確保した実例

(画像提供/フレッシュハウス)

外や共用廊下に面した寝室は静かで落ち着ける空間です。窓がないことで空気がこもらないよう、廊下との間仕切り壁の上部に横長の室内窓を設置。自然に空気が流れる快適な空間になりました。

※実例11は、前出の実例3と同じ実例です。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3DK → [ After ]1LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、寝室、書斎
リフォーム面積:47.01m2
工期:2〜3カ月
費用:800万円以上
設計・施工:フレッシュハウス

誰もが安全に暮らしやすいバリアフリーに

部屋と部屋の境目や水回りなど、家の中の床に段差がないことは今では一般的になっています。今、そして将来、安心・安全に暮らせるためには、リノベーションの際にどう準備しておけばいいのでしょうか。

「バリアフリーへの関心度は施主によって異なります。若い世代の場合は、バリアフリーに興味があるわけではなく、バリアフリーであることが当たり前と思っていらっしゃる傾向が強いです。具体的に老後に備えることを考えられるのは、60代後半くらいから。床がフラットであること、必要な場所に手すりが設置できることなどを気にされます」

老後にも備えるリフォーム、リノベーションをするなら、リビングからトイレ、洗面室、浴室までは自分で移動できるよう廊下や開口部に幅があると安心。

「例えば洗面室の出入り口は車椅子で通れる幅900mmの引き戸で、洗面室の奥にはトイレも付いていると使いやすいですね。洗面化粧台やトイレのデザイン、内装デザインを考えれば、ホテルライクなおしゃれな空間にできます」

●実例12

万が一に備えて空間にゆとりを持たせたトイレと洗面室

車椅子でもアクセスしやすいよう水回りをリノベーションした実例

(画像提供/フレッシュハウス)

間取り変更はすぐにはできないため、万が一に備えた間取りプランに。介助者と二人で入れ、車椅子でもアクセスしやすいよう、トイレ前には扉を設けず、洗面脱衣室と一つの空間に。ゆとりある広さで安心です。

【DATA】
間取り:[ Before ] 2LDK +S → [ After ] 2LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、寝室、玄関、廊下
リフォーム面積:78.39m2
工期:75日
費用:1082万円
設計・施工:フレッシュハウス

個性的なプランで新築マンションにはない満足感

キッチンやシステムバスを自分好みの機能やデザインのものにしたり、間取りを自由に変更したり。マンションのリノベーションはオーダーメイドの空間づくり。新築マンションを購入するときとは異なる楽しさがあります。

リノベーションは、予算という制約はありますが、キッチンや洗面台をオリジナルのデザインでオーダーする、床をムク材のフローリングにする、壁の一面だけを周囲と違う色にするアクセントウォールにして空間に奥行きを出すなども自由です。SUUMOや、各リフォーム会社のWEBサイトにはさまざまな実例が掲載されていますから、参考にしてみましょう。

●実例13

快適性にもデザイン性にもこだわったリノベーション

断熱性能や遮音性能、デザイン性にこだわったリノベーションの実例

(画像提供/フレッシュハウス)

玄関ホールに洗面カウンターを設置した実例

(画像提供/フレッシュハウス)

すべての窓に内窓を設置して断熱性能をアップ。床はむく材のヘリンボーン模様の床にするため、二重床にして遮音性能を確保しました。床が上に上がった分、天井を抜いて高さを出しています。快適性もデザイン性も満足度の高い仕上がりになったリノベーションプランです。玄関ホールには帰宅後、すぐに手洗いやうがいが済ませられるよう洗面カウンターを設置。洗面ボウルの左右にカウンターを広く取っているため、二人並んで支度をしても狭さを感じません。

【DATA】
間取り:[ Before ] 3LDK → [ After ] 1LDK
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、浴室・バス・ユニットバス、トイレ、洗面所・脱衣所、収納、寝室、玄関
リフォーム面積:64.00m2
工期:2カ月
費用:1050万円
設計・施工:フレッシュハウス

●実例14

リゾートホテルを思わせる開放的なワンルームにリノベーション

リゾートホテルを思わせるワンルームにリノベーションした実例

(画像提供/フレッシュハウス)

壁のないオープンな空間にリノベーションしたトイレとシャワーブースの実例

(画像提供/フレッシュハウス)

「リゾートホテルの非日常感」をテーマに、海のそばの中古マンションをリノベーション。2LDKの間取りを開放的なワンルームに。明るく開放的なLDKはリゾートホテルを思わせる石張りの壁やフロアタイルに、漆喰(しっくい)塗りの天井やナチュラルな家具などでぬくもりをプラスしています。室内をできるだけ広く、開放的に使うため、スチームサウナとトイレは壁のないオープンな空間に。疲れた体をリフレッシュできます。

【DATA】
間取り:[ Before ] 2LDK → [ After ]その他
リフォーム箇所:リビング・ダイニング、キッチン・システムキッチン、収納、浴室・バス、バルコニー・エクステリア、その他
リフォーム面積:47.7m2
工期:3カ月
費用:1000万円
設計・施工:フレッシュハウス

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マンションでできる間取り変更とできない間取り変更

水回り設備の移動には制約がある

マンションは、住戸の内側(専有部分)は、その住戸の持ち主(区分所有者)がリフォームやリノベーションをすることができる範囲です。管理規約などのルール上、コンクリートの躯体(くたい)や玄関ドアの外側、バルコニーなどの共用部分を変更することはできませんが、専有部分は自由に間取り変更が可能です。

とはいえ、どんな間取りにでもできるかというと制約があります。注意したいのは水回り設備の移動です。

「キッチンを壁付けタイプから対面式に変更する、浴室を少し広くする、といった変更なら、ご要望に添えることがほとんどなのですが、大幅な移動となると難しいケースが出てきます。キッチンや浴室、トイレは、排水のための排水管には2%以上の勾配をつける必要があるためです。ただし、マンションの最初の間取りプランというのはよくできていて、水回りを極端に移動させると、全体を見たときにあまり使いやすい間取りにならないものなのです。そのため、結局は、既存の水回りの位置をベースにした間取りプランに落ち着きます」

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わが家にぴったりの間取り、どうやって発見する?

暮らしに合う間取りは、家族やライフスタイルによって変わっていく

住む人や家族が快適に暮らせる間取りというのは、どうすれば見つけることができるのでしょうか。家族構成やライフスタイルの変化によって、暮らしやすい間取りも変化していきます。例えば、3人家族が広いリビングに集まって過ごす間取りにしたいと考えて、子ども部屋や主寝室は広さも数も最低限にしたとします。当初は快適でも、数年後、2人目の子どもが生まれ、それぞれに個室を欲しがるようになるかもしれません。

「現在のライフスタイルや家族構成から、ベストな間取りを考えても、将来、その間取りでは暮らしにくくなることも多くあります。とはいえ、何年後まで見据えてプランニングすればいいのかはとても難しい問題ですし、将来のライフスタイルが思い描いた通りに変化するとは限りません。あまり、将来のことばかり考えたプランでも、今の暮らしに合わなければ楽しいリノベーションではなくなってしまいます」

セカンドリノベーションも視野に入れた間取りを考える

「今も、将来も暮らしやすいリノベーションをするなら、『今』のリノベーションで予算のすべてを使ってしまわずに、資金にも空間にも少し余力を残しておくことがおすすめです」

つまり、十数年後、数十年後に今の間取りが合わなくなったときのために、セカンドリノベーションを視野に入れておくということ。例えば、子どもが増える可能性があるなら、最初のリノベーションでは子ども部屋は広めにしておき、将来、分けられるようにしておく。個室を増やしたときにエアコンをつけられるよう電源や配管について準備しておく。介助が必要になったときにトイレを広くししやすいよう、トイレの隣は収納スペースなど汎用性のある空間にしておく。など、将来、あまり費用をかけずに変更できるような提案を、リフォーム会社、リノベーション会社からもらえるよう相談しておくといいでしょう。

「セカンドリノベーションに備える資金的な余力も大切です。今のリノベーションをして終わりではなく、将来のメンテナンスやリノベーションに備えて資金を積み立てていくといいと思います」

費用はどれくらい?マンションの間取り変更

リフォームの費用はケースバイケース

リフォームにかかる費用はケースバイケース。設備・材料費や人件費、諸経費がかかりますが、それぞれリフォームの内容や施工面積、採用する設備や内装材などのグレードによって幅があります。工期が長くなれば人件費もかさみます。いくらかかるかは依頼先の会社によっても異なります。

スケルトンリノベーションは1m2当たり15万〜20万円が目安

設備交換のみのケースから全面リフォームまで、規模に幅があるリフォームは、費用がケースバイケースのため目安を出すのは難しいのですが、床や壁、天井を撤去してスケルトンにしてからつくり直す場合は、おおよその費用感が出しやすいそう。

「ここ数年で設備機器や撤去費用、廃材の処分費用などさまざまなものの価格が高騰しているため、スケルトンリノベーションの費用も上がっています。おおよその目安は、今は1m2当たり15万円から。70m2のマンションだと約1050万円からということになります」

ただし、実際は1m2当たり20万円程度になるケースも多いとか。その場合、70m2のマンションなら1400万円程度ということになります。

「同じ広さのマンションのリノベーションでも、数百万円の差が出ることになります。この差は何から生まれるかというと、デザインや素材、設備へのこだわり。例えば、床はむく材がいい、洗面台やキッチンを既製品ではなくオリジナルのものをオーダーしたい、システムバスをグレードの高いものにしたい、といった希望を積み重ねていくと費用は上がっていきます」

費用がケースバイケースのリフォーム同様、リノベーションやスケルトンリノベーションも、リフォーム内容によって金額が異なります。金額の相場を知るためにも、リフォームへの希望を同じ内容で伝えて、複数のリフォーム会社、リノベーション会社から見積もりを取るようにしましょう。

●取材協力
フレッシュハウス

構成・取材・文/田方みき