屋上があまり使われていない場合、使えるようにきれいにリフォームするにはどうすればいいのでしょうか? また、屋上リフォームにかかる費用も知っておきましょう。屋上を新たに増築する方法も解説します。屋上リフォームの際に心がけたいことや注意点なども一級建築士の柏崎文昭さんに聞きました。
記事の目次
屋上をリフォームして使えるようにする
新築時に屋上をつくったものの、その後あまり使っていない、屋上付きの中古住宅を買ったが、古びているし雨漏りも心配なのでリフォームしたい、といった場合などのリフォーム方法を説明します。
屋上の床を防水工事し、安心して使えるようにする
屋上が経年変化で汚くなり、あまり使っていない場合に心配なのは、屋上の床面の劣化に伴う雨漏りです。
「屋上には防水層が設けられていますが、劣化したままにしておくと防水層にヒビが入って雨漏りの原因になります。RC造の場合、雨がコンクリートに染み込むと鉄筋が錆び、腐食していずれコンクリートを破壊します」(一級建築士 柏崎文昭さん、以下同)
防水層の塗膜が剥がれてきたりしているのを放っておいて、コンクリートがボロボロになるような事態になれば大変です。それを防止するためには、屋上の防水工事は定期的に行わなければなりません。
「屋上は5年~10年ごとに点検を行い、必要な補修や再施工を行うべきでしょう」
防水工事を行って、雨漏りを防ぐ。それが屋上を使えるようにする第一歩です。
ペントハウスを増築する
ペントハウスは最上階の見晴らしのよい住戸という意味もありますが、もう一つは屋上に設けた小さな建築物です。
ここでいうペントハウスは後者で、屋上に出るために設ける、塔屋(とうや)ともいわれ、屋上に上がる階段に続く建物です。
屋上に出入りするのに外階段を利用するケースもありますが、ペントハウスがあることで屋内から出入りできるようになり、屋上の活用がスムーズになります。
ただ、ペントハウスは新築時に将来設けることを前提に設計していればあまり問題なくつけられますが、後付けでは難しい問題があるようです。これについては後述しましょう。
1階に増築しルーフバルコニーを設ける
既存住宅に屋上がない場合、1階部分を増築してその上にルーフバルコニーを設ける手もあります。
通常の建物から突き出たバルコニーでは物足りない場合、建物の屋上なら2階の部屋から出入りできる広めのバルコニーが確保できるでしょう。ただし、増築部は建築面積、延べ床面積に算入されます。
木造住宅の屋根を屋上に変える
木造住宅の屋根を撤去して屋上を設けることもできます。
「ただし屋根を歩行できる屋上に変えることで、既存の屋根以上の積載荷重がかかります。構造を再検討し、行政の指示を受けましょう。場合によっては建築確認申請を行うことになります。いずれにしても大掛かりなリフォームになるでしょう」
行政の審査を受けて受理される必要があるわけです。リフォームとしては難易度が高くなるので、こうした工事の実績がある会社に相談してみることが大切です。
屋上リフォームの費用
屋上リフォームの費用を見ていきます。中には不確定な要素が多い工事もあるので注意してください。
ペントハウス増築の費用は3畳で約100万円~120万円
ペントハウスの建築費用は、水まわりを設けないとして坪単価で約65万円~80万円。3畳程度のペントハウスでざっと100万円~120万円になります。
階段がない場合、階段を新たに造作すると約25万円~30万円かかります。
これは屋上への出入口がもともとある場合の費用です。ペントハウス増築に伴う構造補強などの費用が別途かかる場合があります。
なお、ペントハウスの増築に際して構造補強を行う場合などは、行政に問い合わせをして建築確認申請が必要かどうかを確認しましょう。
部屋を増築して屋根をルーフバルコニーにする費用は、約240万円~300万円
この場合は1階に部屋を増築してその部分の屋根の代わりにバルコニーを設ける費用となります。
建物とバルコニーを合わせた増築費用はキッチンなど水まわり設備を導入しなければ、木造で坪単価約80万円~100万円と見ておきましょう。
床面積10m2(3坪)程度の増築だと、標準的な仕様で約240万円~300万円となります。増築費用は面積や内外装、バルコニーの防水仕様などのグレードによって増減します。
屋根を屋上にリフォームする費用はフルリフォーム同等
屋根を解体して屋上にする場合、建物を屋上の荷重に耐えられるようにするために構造の補強が必要になることなどから、費用はその住宅の状態などによって大きく変わってきます。家全体のリフォームになると思ってよいでしょう。
したがって、家の状態をよく見てもらい、屋根部分を屋上に変えることができるのかなども含めて相談した上で、可能となったら見積もりをもらって検討しましょう。
屋上・バルコニーの防水工事の周期と費用
「防水工事にはいくつかの種類があります。木造住宅に多く使われるのはFRP防水、金属防水、RC造ではシート防水やウレタン防水、大きいビルではアスファルト防水が多く用いられます」
それぞれの防水工事費は用いられる防水材料の違いです。
防水材料の違いによる耐久年数および施工費用の違いを見てみましょう。
FRP防水の寿命は約10年~15年
FRPはグラスファイバーで補強されたプラスチックです。FRP防水のトップコートのポリエステル樹脂等は紫外線や衝撃からFRPを保護する役割を果たしています。
耐久年数は約10年~15年、トップコート(表層の塗料)は約5年、工事費用の目安は1m2あたり約1万円です。一戸建て住宅のバルコニーの防水にもよく用いられます。
シート防水の寿命は約10年~15年
シート防水は、塩化ビニールや合成ゴムでできたシートを張り付ける防水工法です。
耐久年数は約10年~15年、工事費用の目安は1m2当たり約8000円~1万円です。地震の揺れなどによる変形に強い工法です。
ウレタン防水の寿命は約7年~10年
ウレタン防水は、ウレタン樹脂を塗って防水層を形成する防水工法です。下地をモルタルで保護した上から防水措置を行います。
耐久年数は約8年~10年、トップコートは約5年、工事費の目安は1m2当たり約7000円~1万円です。価格は安いですが、耐久性はFRP防水に比べるとやや劣るといわれています。
アスファルト防水の寿命は約15年~20年
アスファルト防水は、液状化したアスファルトを防水シートと交互に重ねるなどの方法で防水を行う工法です。耐久年数は約15年~25年程度、工事費用の目安は1m2当たり約1万2000円~2万円です。工事費は高いですが、耐久性が高く、屋上防水工事の頻度を少なくできるメリットがあります。工事中にはニオイがきついので住宅地では注意が必要です。
金属防水の寿命は約10年~30年
金属防水は、鋼板を張って防水する工法です。標準的には亜鉛メッキ鋼板を使用し、ハイグレードになるとステンレス鋼板が用いられます。標準的な仕様だと寿命は約10年、ハイグレードだと約30年です。雨漏りの少ない工法といわれており、ステンレスのハイグレード仕様だと30年保証のメーカーもあります。
金属防水はほかの防水工事より高額になります。また、扱っている会社も多くはないのでリフォーム会社に相談して扱っているかどうかを確認、その上で見積もりをもらいましょう。
屋根防水の保証期間は5年~10年
防水の保証期間は5年~10年になっていることが多く、保証期間内は雨漏りなどがあると無償で修理してもらえます。
保証期間や保証内容を確認しておき、期間内に点検して何かあれば補修または再施工するのがおトクです。
建ぺい率・容積率と屋上の増設
屋上にペントハウスをつくったり、1階を増築するに当たって知っておきたいのは、敷地の建ぺい率と容積率です。
建ぺい率は「敷地面積」に対する「建築面積」の割合です。
建築面積は建物を真上からみたときの面積のことで、ほぼ1階の床面積に相当します。
例えば敷地面積が100m2で建ぺい率が50%の場合、建築面積は50m2が限度です。
容積率は、「敷地面積」に対する「延べ床面積」の割合です。
延べ床面積は各階の床面積の合計のことです。
例えば敷地が100m2で容積率が100%の場合、延べ床面積は100m2が限度です。
屋上の増築が違法になるケース
第一種住居専用地域や商業地域といった言葉をご存じですか?
これらは「用途地域」といわれ、都市計画法に基づいて市街地を13種類に分けて、建築できる建物の規模や用途を指定しているものです。
さらにそれぞれの用途地域は都市計画に応じて、具体的に建物の規模を制限する建ぺい率と容積率を指定しています。
この面積制限のほかにも法規制があるので、ペントハウスなどの増築の際に気をつけることを見ていきましょう。
ペントハウスを増築する際の注意点
ペントハウスは、水平投影面積が建築面積の8分の1以内、かつ高さが5m以内で、居室でなければ建物の階数には算入されません。ただしペントハウスの床面積は延べ床面積に算入されます。したがってペントハウスの面積を足して面積の限度を超えないように注意が必要です。
またペントハウスは北側斜線制限や日影規制の対象になります。これらは隣地などへの日当たりを確保するための規制です。
増築をする際にこうした規制に触れないよう注意してもらいましょう。
また、既存住宅に屋上への出入口があるかどうかもペントハウスの増築に影響します。
「屋内から出入りするペントハウスは、既存住宅が屋内から屋上へ上がれる構造になっている場合は比較的つくりやすいですが、そうでない場合は、新たに出入口を設けなければなりません」
さらに、ペントハウスの増築が既存家屋の構造に与える影響も考慮しなければなりません。
「もともとないところにペントハウスが加わることで建物が受ける荷重が増え、構造補強が必要になる場合があります。ペントハウスの増築に備えて構造の負荷などを設計に織り込み済みの場合は問題ありませんが、そうでない場合はペントハウスを増築するには新たに構造計算をし、補強を行う必要があります」
増築で面積オーバーにならないよう注意
増築する際は既存住宅の建ぺい率・容積率チェックを怠らないようしましょう。
既存住宅の建ぺい率・容積率が限度いっぱいだった場合は、それ以上増築をすると面積オーバーで違法になってしまいます。
屋上・ルーフバルコニー増築工事の注意点
屋上・ルーフバルコニーを増築する際には、工事の面でも施工ミスが行われないように気をつけたいものです。ポイントは防水工事です。
防水工事をきちんとやってもらう
防水専門事業者を会員とする日本防水協会のホームページにはトラブル事例が紹介されています。
それによると、ウレタン防水の必要な重ね塗りの工程を省いたために劣化が早く進行した、シート防水の際にシート接合のために挿入するシーリング材を省いたため隙間ができて雨漏りにつながったなどです。
こうした施工ミスを未然に防ぐためには、雨漏りの原因を的確に見つけ出し、そのための解決ができる防水工事会社を選ぶことが大事としています。
依頼先を選ぶ際には、見積書をもらって工事内容をしっかり説明してもらい、納得してから会社を決めるのがいいでしょう。
屋上リフォームの実例
既存の屋上をリフォームし有効に活用した実例を紹介します。
※リフォーム費用は施工当時のものです。現在とは異なる場合があります。
屋上の防水工事と外壁のカバー工法を実施
1、2階をテナント、3階を住居として使っている建物ですが、屋上からの雨漏りが心配で、防水工事を行いました。また、外壁の劣化が気になり、既存の外壁の上からカバー工法で新しい外壁を張りました。
【DATA】
リフォーム費用(外壁、屋上):760万円(全体)360万円(屋上防水単独工事の場合)
築年数:30年以上
構造種別:一戸建て
工期(外壁、屋上):1カ月
家族構成:夫妻+子ども2人
設計・施工:OHKENハウス
1階を増築し屋上をルーフバルコニーに
1階に2部屋を増築し、その上をルーフバルコニーにしました。新築後間もない住宅でしたので、既存部分と違和感なくまとまりました。ルーフバルコニーは耐久性の高い金属防水で施工しました。屋上庭園として使っても心配のない防水性を誇ります。
【DATA】
リフォーム費用(増築):770万円
築年数:1~5年
構造種別:一戸建て
工期(増築):2カ月
設計・施工:サン建設
まとめ
- 屋上を有効利用するには、まず防水工事から始めます
- ペントハウスの増築は面積制限を守ることが必須です。また、あらかじめペントハウスを設けることを想定していない場合は、構造補強の必要があります
- 屋根を撤去して屋上に変える方法もありますが、難易度の高いリフォームとなり、費用もフルリフォーム並みにかかります
- 面積に余裕があれば、1階に部屋を増築して、その上を屋上として楽しむこともできます
- 屋上リフォームの依頼先は、防水工事をしっかり行ってくれる会社かどうかを見極めることが大切です
取材協力・監修/一級建築士 柏崎文昭さん(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/林直樹
イラスト/ふじや