一戸建ての物件を中古で購入し、リノベーションによって間取りや内装・外装を自分好みに変更。新築よりも安価に理想の住まいを手にいれることができるかもしれません。中古戸建のリノベーションに詳しいゼロリノベの取締役・セールスマネージャーの市野瀬さんと設計部チーフプランナーの川島さんに取材し、リノベーションを前提とした中古一戸建ての選び方や後悔しないための注意点をうかがいました。中古住宅リノベーションの実例も紹介しています。
好みや生活スタイルにピッタリ合った家づくりに、誰もが一度は憧れるものではないでしょうか。実現の仕方にはさまざまな方法がありますが、中古の一戸建てを購入してリノベーションする方法は、特に価格、立地、自由度に魅力があります。
中古物件は、同じような新築物件より価格が安い傾向にあります。中古物件ならではの使用感などは、リノベーションによって新築同然にすることも可能です。
次に、中古戸建を選択肢に入れることで、広々とした間取りの庭付きといった希少性の高い土地に出会える可能性が高まります。当然ながら、新築戸建は空いている土地にしか建てられませんから、新しく土地を購入して家を建てようとすると、立地の選択肢が少なくなってしまいます。
最後に、リノベーションの自由度です。同じ中古物件でもマンションの場合は、専有部分しかリノベーションできなかったり、マンションの大規模修繕などの予定に合わせてタイミングを考えたりする必要があります。戸建なら、一軒の家を丸ごと好きなようにリノベーションできますし、タイミングも自由に選べます。
せっかく購入するのなら、少しでも資産価値が落ちにくい土地を選びたいもの。立地の良さと土地の広さは多くの人が価値を感じる要素です。人気のエリアで、最寄り駅へのアクセスが良く、周辺施設が充実していれば、立地が良く資産価値が下がりにくいと言えるでしょう。
既存不適格建築物とは、古い法律の基準で建築されており、現行法では不適格な部分がある物件のこと。違法建築にはあたらないため建て替えたりする必要はありませんが、不適格な部分のリノベーションをするのなら、現行法に適合させなければいけない場合があります。
増改築や構造の変更を含むような大規模なリノベーションを行いたい方は、既存不適格部分を現行法に適合させる必要があるかどうか、事前にリノベーション会社などの専門家に相談しましょう。
「検査済証」とは、建物が建築基準法の規定に従って建てられたことを証明する公的な書類です。「確認済証」は、建築計画が法律に適合していると行政庁や検査機関が確認した際に発行される書類で、工事着手前の段階で得られます。
購入したい戸建物件にこれらの証明書があると、建物が法的な要件を満たしていることが保証されます。
いざリノベーションをしようとしたときに、構造的な問題や違法建築にあたる部分が発覚……といったリスクを避けることができます。
「検査済証や確認済証は、あるに越したことはありませんが、なかったからと言って避ける必要もありません。
国土交通省の『検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を 活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン(平成26年に策定・公表) 』によると、検査済証の交付を受けていない建築物が、平成11年以前では半数以上を占めていたとのこと。検査済証や確認済証を取得していない物件を避けると、選択肢が大幅に減ってしまいます。
物件を購入するタイミングで検査をし、検査済証を新たに取得することも可能です。その場合、規模や内容にもよりますが0~20万円の申請料と、1ヶ月ほどの取得期間がかかります」(川島さん)
土地の形や接道状況によって、リノベーション工事が難しかったり、工事ができても料金や工期がかさんだりすることがあります。
土地の形には、正方形や長方形など家を建てやすい形をしている「整形地」と、三角形や旗竿のような形をしている「不整形地」があります。不整形地は価格が安い傾向にあり、個性的な形状に魅力を感じる人もいますが、リノベーションをするなら知っておくべきデメリットも。
「不整形地の形によっては、リノベーション工事自体が進めにくく、追加料金が発生したり工期が長くなったりすることがあります。例えば、旗竿地と呼ばれる形の土地ではどうしても機械や材料の搬入が難しくなります」(川島さん)
接道状況には、建築物の敷地が道路に2m以上接してなければいけないという法律(建築基準法第43条 接道義務規定 第1項)があります。特に旗竿地の場合は接道部分が狭くなりがちなため、規定を満たしているか事前に確認しましょう。接道している路地の幅が2m未満の場合、古い家を取り壊したあとに新しい建物を建築することができません。また、建築基準法以外に自治体による規定がある場合もあります。合わせて確認しておきましょう。
個性的な形をした「不整形地」では、その形を生かした住環境をつくることも可能です。
また、リノベーション工事のしにくさや接道義務など、注意点のある「旗竿地」。価格の安さや閑静さなど特有の魅力もあります。
不整形地の種類やメリット・デメリットについてもっと詳しく
→不整形地とは? 旗竿地や台形、三角形などの変形敷地のメリットとデメリットについて実例を交えて解説
購入する物件の耐震性能を知っておくことは重要です。日本の物件の耐震性能は、1981年の建築基準法改正前の「旧耐震」、改正後の「新耐震」、2000年の改正後の「2000年基準(現行の耐震基準)」に分かれます。
建築確認日が1981(昭和56)年6月1日より前の物件が該当。震度5程度で倒壊や崩壊が起こらなければ良い。当時の技術と知見に基づいた基準。1978年の宮城県沖地震での被害を受け、耐震基準の見直しが行われた。
建築確認日が1981(昭和56)年6月1日以降の物件が該当。震度5強程度の地震ではほとんど損傷が起こらず、震度6強から震度7程度でも命に危険を及ぼすような倒壊などの被害が生じない。旧耐震基準の不足を補い、より強い地震に耐えうる構造を求めるために設定された。
2000(平成12)年6月1日以降に建築確認申請が行われた建物が該当。新耐震基準をさらに強化し、建築材料の品質基準の見直し、建築構造の多様化、基礎と地盤の強化が重視された。
災害対策のためにも、購入する建物の耐震性能がどのくらいなのかは確認しておきましょう。リノベーションによって耐震性能を高めることも可能です。
現行の耐震基準についてもっと詳しく
→新耐震基準とは? 改正されたのはいつ? 旧耐震基準との違いも解説
住宅ローンには審査があり、年収、年齢、勤続年数、住宅ローン以外の借入状況、土地や建物の担保価値によって借入可能額が決まります。
建物は築年数や管理状況によって担保価値が変動しますが、土地は担保価値が安定しています。中古戸建を購入する場合、築年数や物件の状態が借入可能額に与える影響は、マンションより小さいと言えます。
住宅ローンの審査基準についてもっと詳しく
→住宅ローンの審査基準と落ちる理由・条件は?事前審査・本審査にかかる期間や必要書類など、元銀行員FPがノウハウを徹底解説
屋根や外壁など、内装以外の部分もリノベーションできるのは戸建ならでは。外装のリノベーション方法は、屋根でも外壁でも基本的に3つのパターンに分かれます。
現在の外壁や屋根の上から塗料を塗る方法です。色や質感を変えることができます。
現在の外壁や屋根の上にベースなどを塗り、仕上げ材を貼る方法です。材料を変えるので見た目をガラリと変えることができます。現在の屋根よりも重い材料を使うと、躯体にかかる荷重が大きくなるため、建築確認が必要になることも。
現在の外壁や屋根を取り壊して、新しく張替えたり葺き替えたりする方法です。屋根を葺き替える場合、(2)と同じく荷重が大きくなるため建築確認が必要になることがあります。
「外壁や屋根のリノベーションは、基本的に塗装が一番安く、次に上から貼る工法、最後に張替えや葺き替えと続きます。値段は、使用する塗料や仕上げ材、元の工法、屋根や壁の形などによっても変わります。特に屋根の場合は工事に足場が必要になると費用が高くなります」(川島さん)
色とりどりの植物を使い、こだわりの垣根を作れるのは戸建ならでは。自然のカーテンなら、プライバシーは確保しつつ日光は遮りません。光が差し込むダイニングとキッチンには、ところどことにブルーのアクセントカラーが。
思わず深呼吸したくなるような、開放感のあるLDK。階段下のおもちゃ収納や、家具に馴染むマット、クッションのおかげで、子どもがのびのび遊べる空間と統一感を実現。
コートやベビーカーも収納してある玄関と居住空間の間を壁で仕切り、空間にメリハリを持たせています。
キッチン、ファミリーライブラリー、作業スペースなどをコの字型に囲い、今やりたいことに没頭できる空間に。お互いを尊重しつつ、気配を感じることのできる緩やかなつながりを実現しています。家族の在り方に合わせた家づくりができるのはリノベーションならでは。
中古物件の良さを活かしながら、住む人の好みに合わせて住空間を作り上げるリノベーション。戸建の物件なら、リノベーションの自由度がさらに広がります。気になる方はリノベーション会社に問い合わせ、モデルルームや見学会に参加してみてください。
中古戸建のリノベーションには、新築より価格が安い、良い立地を確保しやすい、リノベーションの範囲やタイミングが自由などの魅力がある
リノベーションを前提として中古戸建を購入するなら、資産価値の落ちにくさ、リノベーションのしやすさ、耐震性などをチェックしよう
外装のリノベーションは、工法によって出来ることや価格が大きく変わる
川島優太さん 設計部 チーフプランナー