読み方は「ていね」で合ってます。札幌市手稲区出身者による、このよき街のたのしみ方|文・つちやりさ

著: つちやりさ
新千歳空港で飛行機を降りて電車に乗り、トンネルを抜けると、車窓から山が見えてきます。「帰ってきたな」と、心が落ち着く瞬間です。
わたしは、北海道札幌市、手稲と書いて「ていね」と読む山の麓にある街で、小学生から高校生までの間を過ごしました。その当時は、地元である手稲になんの思い入れもありませんでした。でも、大学入学と同時に上京し、その後ときどき帰省するようになってから、地元で受けていた恩恵にようやく気付き、少しずつ、愛着まで抱くようになっていきました。手稲は平凡な住宅街ですが、山や海も近く、札幌の中心街へのアクセスも良く、ほどよい立地にある街です。わたしは、手稲のたのしみ方を、帰省するたびに再発見していくことになりました。今日は、わたしの地元のたのしみ方を、いくつか紹介してみたいと思います。

海にも山にも。なにかとアクセスの良い手稲

前田森林公園

まず絶対に外せないのが、家から車を走らせて15分ほどのところにある、前田森林公園です。とても大きな公園で、広さでいうと新宿御苑ほど。いくつも散歩のルートがあるので、わたしの両親なんて、午前中に散歩してから一度帰宅して、また午後に出直して散歩しに行くことがあるくらいです。
両親と歩いていると、植物の名前をたくさん教えてもらいます。彼らのお気に入りのひとつは釣花(
ツリバナ)。寒くなってくると傘をパッと開いて、中から実をつるすようにしておろします。これが開いてくると、もう秋だね、という感じ。もうひとつはカツラの木。秋になると黄色に紅葉して、甘い香りを放ちます。木の下にもぐってその甘い香りを嗅ぐととても良い気分になります。
そして、公園の中央には運河があります。そこで、春にはたくさんの子鴨が生まれ、それがとびきりかわいいのです。わたしの両親たちは、彼らの成長を見守るのをひとつの生きがいにしているほどです。秋には子鴨たちもずいぶん大きくなり、親鴨たちとの見分けがつかないくらいまで成長します。彼らが泳いだり、羽ばたいたり、一生懸命エサを探したりしているのをみていると、なんだかおおらかなきもちになってしまいます。木の実を探すリスや野鳥を探したりするのも、ひとつのたのしみです。

手稲山

それから、手稲といえば!の手稲山! 前田森林公園の写真の奥に写っているのがその手稲山です。12月にもなると、山は真っ白に染まります。「サッポロテイネ」という大きなスキー場がオープンし、全国各地からスキーヤーやスノーボーダーたちが集まります。わたしの家からは車で30分ほどで行けてしまいます。
手稲に住んでいたころはそのありがたみを全くわかっていませんでしたが、東京に出てきてから、スキーは日帰りでなかなか行けるものではないのだと知り、天気が良い日に、よし、今日行こう!という感じで気軽に行けていたことの幸運に、やっと気付けるようになったのでした。
手稲山の上からは、手稲の街だけでなく、札幌の街が一望できます。白く染まった街はとてもきれいです。

小樽市祝津

手稲は山だけでなく、海も遠くないのがいいところです。実は、手稲は札幌の端っこに位置しており、隣の街は美しい運河で有名な小樽です。天気がいい日に、小樽までドライブに行くのもとてもおすすめです。
手稲から小樽へ向かう道中、右側には海が広がっています。海を見ると、わーっと、こころが広がっていくような気がします。わたしが帰省するときによく行くのは、おたる水族館を過ぎたところにある、小樽祝津パノラマ展望台です。手稲からは高速を使って30分ほどの近場。この展望台からは日本海が見えます。そして大きな岩も見えるのですが、そこにときどきトドが現れることもあるんですよ(そういうわけでトド岩と呼ばれています)。夕暮れどきに、ここでぼーっと海を眺めるのは、とても気持ちがいいです。

大通公園

また、山や海が近いだけでなく、札幌の中心街へのアクセスがいいところも、手稲のグッドポイントです。電車で15分も行けばもう街中。そこから少し歩けば大通公園もすぐです。
大通公園は、札幌市民の憩いの場です。ベンチに座って休んだり、噴水に入って遊んだり、芝生に寝転がったり、みんなが思い思いに過ごします。夏はビアガーデン、秋はオータムフェスト、冬は雪まつりなど、季節ごとに様々なイベントが開かれます。
なかでもわたしがおすすめなのは、夏の大通公園。テラス席に座り、青い空を眺めながら、屋台で買った焼きとうもろこしを片手にビールを一杯! 気分は最高です。夏の札幌に来たら、絶対に試してみてほしいです。

北海道大学

札幌市民の憩いの場をもうひとつご紹介します。それは北海道大学です。緑の季節には、わたしは切り株に腰かけて、コーヒーを飲んでみたり本を読んでみたり、北大生ごっこをたのしみます。秋には名物のイチョウ並木が黄色く染まり、それはそれはとてもきれいです。黄葉をたのしみに訪れるたくさんの人々で賑わいます。

金葉祭にて撮影。通常は車道での撮影や飛び出しは禁止されています

羊蹄山

週末には、少し足を延ばしてみるのもおすすめです。たとえばニセコの方へ。道中、高橋牧場でひとやすみ。しぼりたての牛乳で作った新鮮なソフトクリームは絶品。わたしは他のどのソフトクリームよりも、ニセコ高橋牧場のソフトクリームが好きです。もう少し車を走らせると、蝦夷富士と呼ばれている羊蹄山が見えてきます。手稲からは車で1時間半くらいかな。道端で車を止めて羊蹄山をみながら深呼吸。とても深く息が吸えるような気がします。

支笏湖

湖が見たくなったら支笏湖の方へ。車で1時間ちょっと。支笏湖は水質がきれいなことで有名な湖です。夏の暑い時期に行って、カヌーやボートをたのしむのもよし。足元まで湖に浸かりながら、ぼんやりと湖を見つめていると、自然と心もしずまります。湖沿いに位置する丸駒温泉では、湖を眺めながら温泉に浸かることができます。

手稲の名店

八乃木

手稲にはおいしいお店がいくつもあります。まず一つ目はラーメン屋「八乃木」。札幌味噌ラーメンの有名店「すみれ」からのれん分けをしたラーメン屋さんです。あつあつの味噌スープはとても濃厚です。具材は、ひき肉やねぎ、チャーシューにメンマ、もやしとシンプル。すりおろした生姜が、ちょこんとのっていて、溶かすと爽やかな香りがたち、濃厚なコクをたのしむことができます。混んでいることも多いですが、並ぶ価値ありです。札幌には味噌ラーメンのお店がたくさんありますが、なかでもわたしの一押しは八乃木です。
(ここで補足させていただきたいのですが、家からも近い八乃木さんは手稲のお店だとばかり思っていたのですが、今回の執筆にあたり確認したところ、正しくはお隣の西区であることが判明しました……すみません!それでも紹介させてください!)

やま桜

そして、二つ目は、蕎麦屋「やま桜」。細麺のそばが自慢のお店です。いちばんのお気に入りはみぞれぶっかけ。大根おろしとのり、それに野菜天ぷらが4種類。こんなに豪華なのにお値段は900円! 天ぷらは、まいたけや茄子、さつまいもなど。その季節の旬の野菜になることが多い気がします。そばとだし、大根おろしを混ぜて、ズルーッとすすると、おいしさが口いっぱいに広がります。天ぷらは熱々サクサクで、冷たいそばによく合います。

ふじ苑

そして極め付けは焼肉屋「ふじ苑」。お父さんとお兄さんの親子ふたりでやっている焼肉屋さんです。わたしは普段、好んでホルモンを食べないのですが、ここのホルモンは絶品! 他のメニューを注文せずにホルモンだけを食べ続けることもあるほどです。帰省するたびに必ず訪れるお店です。

さて、手稲を紹介するつもりが、結局、手稲を大きく飛び越えていろんなところへ旅をしてしまいました。でもたぶん、手稲の良さは、手稲それ自体の良さを語るだけでは伝えきれず、様々な場所へのアクセスが良いところも含めてお話ししないといけないのだと、書き終えてみて改めて思いました。

魅力の詰まったこの場所が地元であることは、わたしの誇りのひとつです。ぜひ一度、訪れてみていただけたらうれしいです!

著者:つちやりさ

つちやりさ

つちや温水プール主宰。みんながじぶんのままでいられる時間や場所を作れたらいいなあと思いながら活動中。合言葉は「熱くないけどぬるくあたたかく、特別じゃないけどちいさくほっと」。『じぶんにぶくぶくもぐる会』と題した対話の会の開催や、フリーペーパー『まじめ通信』の発行、podcast『ぷかぷかぷかぷかうきうきうきわラヂオ』の配信、zineの製作なども行っている。

編集:ツドイ