中野在住の漫画家が【中野】をぷらぷら案内してみた!

著: 秋鹿えいと 

どうも、漫画家の秋鹿えいとです! 秋の鹿と書いて「あいか」と読みます。

普段はエッセイ漫画を描いていますが、今回初めて文章のエッセイを書いてみることにしました。ちゃんと書けるか今からめっちゃ不安です……。文章でのエッセイは初心者なので、お手柔らかに読んでいただけたら幸いです。

僕が今住んでるのは、東京都中野区。

住みはじめてもう3年、時の流れは速いな〜。

さて、皆さんは「中野」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
「中野ブロードウェイとサブカルと……」もう思い浮かばない?

住む前は僕も、そんな印象を中野に抱いていたけれど……。中野には、もっともっとたくさんの魅力がある!!!

今回は、中野駅を起点にぷらぷら歩きながら3年住んだ僕の思う、中野の好きなところを隅々まで語り尽くしていこうと思う。

それでは、まず「中野駅」から!

中野駅は、1日の平均乗降客数が約30万人と都内でも比較的大きな駅である。中央線、総武線、東京メトロ東西線と3路線が乗り入れていて、しかも総武線、東西線については中野が始発駅なのでほぼ必ず座れるというのがうれしい。

僕は電車で立つことが苦手なので、東京で部屋探しをしてたとき、始発が2路線あるところに惹かれて中野に住むことを決めた、といっても過言ではない。

そして最近、中野駅北口を出て右側に現れた高さ5m、長さ10mほどの巨大な壁画。

今までは灰色で味気なかったのが鮮やかな壁画のおかげで北口が少し華やかになって「良いな〜」と思っている。

中野駅北口を出て目の前にある入口から続くのが「中野サンモール商店街」だ。

長さは224m、100軒以上のお店が連なるアーケード商店街。アーケード続きだから雨の日でも濡れないのが地味にありがたい。

商店街には、銀だこ、リンガーハット、日高屋、マクドナルドといった、そそられる飲食店がたくさんあるなかで、僕のおすすめは「味噌が一番」の味噌ラーメン。味噌のまろやかさがひかるスープが身体中に沁みわたって、中野近辺の1番好きな味噌ラーメンだ。

また、ロッテリアの「コアラのマーチ焼」も好きだ。「コアラのマーチ焼」とは、コアラ型の生地のなかに、チョコレートやカスタードクリームが入ってる回転焼のようなもの。(御座候とか今川焼きとかって言えば伝わるかな?)

なぜかここ、中野サンモール店が日本で最初に「コアラのマーチ焼」を販売した発祥の地であり、東京のロッテリアで唯一「コアラのマーチ焼」を販売している店舗らしい。

ちょっと歪んでるところが可愛い

食べるときにコアラが少しかわいそうに思うけど、美味しすぎて一口食べた途端にそんな気持ちも消えてしまう。

商店街の奥まで進むと現れるのが、多くの人が一度は聞いたことがあるだろう「中野ブロードウェイ」である。

中野で1番の観光名所と言っても差し支えないのではないだろうか。アニメや漫画、フィギュアなどを売ってるお店が多く「サブカルの聖地」だなんて呼ばれている。

中野ブロードウェイにはさっきの商店街より倍以上も多い250超もの店舗があって、しかも広くて複雑な構造をしたその館内は、まるで迷宮のよう。そんなダンジョン・中野ブロードウェイを楽しんでもらうために、僕流の歩き方を詳しく紹介したい!

最初に気をつけて欲しいのは、入口の突風。向かって左側のドア脇から謎の突風が吹いてくる。僕と同じように初めてはきっとびっくりするので先に言っておきたい。

館内に入るとすぐ、右手にあるエスカレーターで上の階へと向かう。

そして、2階へ……と思いきや、到着するのは3階のフロアだ。

初訪問時は、いきなり3階に直行することが謎だったけど、何度か体験していると3階を見て回り、階段で2階に降りてまた回るという方がスムーズだし、階段が混雑しないよう導線を引いてることがわかり、「ナイス設計!」だと判明した。

3階のフロアは「まんだらけ」という名前のお店でにぎわっている。

「まんだらけ」は書籍やグッズ問わず、さまざまなアニメや漫画に関するアイテムを販売しているお店で、館内の至るところにジャンルごとに違う店舗を構えている。一度聞いたら忘れられないこの独特な名前はこの後も何度かエッセイに登場するけれど、すべて違うお店なのである。

3階に到着し、僕はまず左手にある「まんだらけ本店」のショーウィンドウを見るようにしている。昔のアニメグッズや戦隊モノのロボットなどが並べられててつい童心に戻ってしまう。ショーウィンドウの中身は頻繁に入れ替わるので、来るたびに新たな玩具との出会いがあるのが楽しみでもある。

ショーウインドウを通りすぎて、さらに進むと左側にあるのが「明屋書店(はるやしょてん)」。

漫画の新刊がたくさん平積みされてて、最近出た本が一目でわかるのでとても便利。僕の描いた漫画が雑誌に掲載された際に、ここでその雑誌を買って「自分の漫画がほんとうに載ってる……!!!」と感激した思い出の地でもある。

そんな明屋書店を出て、右側にあるのが「タコシェ」だ。

自費出版や同人誌などをメインに、数多く取り扱っている小さな書店だけど、個性的な本が多くて、立ち寄るたびにディスプレイが変わっていて、思わず目に飛び込んできたおもしろそうな本をついつい衝動買いしちゃう。タコシェさんでは、同人誌『中野区中野』をはじめ、僕の本を4種類取り扱ってもらっているので中野に来た際はぜひ訪れてほしい場所だ!

タコシェを出て右に曲がって奥に進むと、ウルトラマンや北斗の拳などのグッズを販売してる「墓場の画廊」がある。

隔週ペースで企画展示をしていて、生原稿を見ることができたり、撮影コーナーなんかもあったりする。知らない作品でも楽しめる工夫がすごい! 勉強をかねて立ち寄るようにしている。

続いて、「墓場の画廊」を出て右手前にあるお店、「ROBOT ROBOT2号店」へと向かう。

大好きな映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主人公のお面をここで買った

スターウォーズやマーベルといった海外作品のフィギュアなどを販売していて、海外のショップに来たような錯覚になる。ここもまたショーウィンドウが楽しいお店だ。

このにぎやかなショーウインドウを横目に、階段で2階に降りる。3階の紹介はこんな感じ。次に行くのは「まんだらけ スペシャル5」。

少し値は張るけれどクオリティの高いおもちゃがたくさん並ぶ店内。なかでも精巧につくられたフィギュアにはいつも心が奪われる。「ライトセーバーのレプリカが欲しいな……。いつかお金が貯まったら、デッドストックのあのフィギュアを買いたい……」。

洋ゲー(いわゆる海外ゲームのこと)の雑貨やTシャツなどを輸入販売してる「Game Station」にも立ち寄る。

洋ゲーファンにはたまらないグッズやゲームが所狭しと売られている。以前、レトロなドット絵がかわいく、心温まるストーリーのロールプレイングゲーム『UNDERTALE』のTシャツをプレゼントで買って、すごく喜んでもらえたといううれしい思い出も記憶には新しい。

4階にある「まんだらけ 変や」もおもしろいお店なので紹介したい。

なんといってもこの店構え。鳥居がたくさん並んだ様は、まるで異世界への入口みたい。店内にはブリキや超合金でつくられたヴィンテージ・アンティークの玩具なども販売されていて、ほんとうに違う世界にきたかのよう。

以前、ここで売られていた忍者ハットリくんのお面を見て「今日は手持ちがないから、出直そう」と翌日に再訪問したら、もう売り切れていた……という苦い思い出がある。なので4階にくるたびに、もう一度忍者ハットリくんのお面が売られてないか確認する癖がついた(笑)。

アニメや漫画だらけなのかと思いきや、実はここ中野ブロードウェイの地下には魚屋、八百屋、肉屋、スーパーなど食料品を売っているお店が多く並んでる。

僕のおすすめは、お肉屋さん「ザックザク宝屋」のお惣菜。

なかでも唐揚げは、店員さんの「揚げたてだよ〜!安いよ〜!」という元気な声かけに釣られてまんまと買ったら、言う通りの揚げたて熱々の最高だったので、あの日からもうとりこになってしまった(熱々の狙い目は、開店直後か夕方ごろに行くこと)。

だけど、中野ブロードウェイの館内は飲食禁止なので、最後の最後に地下に行って、できたてを購入してすぐ移動するようにしている。

その先はというと、中野ブロードウェイの南西に位置する「中野四季の森公園」である。

青々とした芝生がひろがり、樹木もたくさん植えられた緑豊かな広場。だいたいいつもこの公園のベンチで唐揚げを食べている。そうすると必ずと言って良いほど鳩が寄ってくる、絶対にあげられるわけないのに……。

唐揚げを食べた後は、しばらくベンチに腰掛けて、ぼーーーーっとすることが多い。周りを見渡すと、シートを敷いてピクニックをしている人、犬の散歩をしている人、TikTokかな?ダンスの撮影をしている人、漫才の練習をしてるコンビらしき人など、いろいろな活動をする人たちを見つめて「自由っていいな〜」と気を休めている。

そうして、満足した僕は「中野通り」を進む。

中野通り6月上旬の風景、初夏の緑が美しい

中野駅北口から新青梅街道まで続く約2kmの道沿いには、300本もの桜の木が植えられている。今は緑が生い茂る心地よい通りは、「中野通り」は春になると姿を変える。辺り一面、ピンク色の世界になり、ここを初めて通ったときは圧倒された。

満開の桜並木の下を歩くと、まるで桜のトンネルにいるみたい。ずっと見ていても飽きないので、普段家に篭りがちな僕も春になると桜を見に毎日のように外に出てしまう。それぐらいこの中野通りの桜の魅力は強い!

最後に「中野通り」沿いにある、ひときわ目立つ建物。「中野ブロードウェイ」に並ぶ中野名所の一つ「中野サンプラザ」を紹介したい。

もう約50年も前、1973年に建てられたとは思えない三角形のデザインは今でもかっこいい。中には大きな音楽ホールやホテル、レストラン、ボーリング場などさまざまな施設が入ってる。

地下1階に位置するボーリング場。大きいピンが目印

中野駅からそう遠くない場所にある中野サンプラザ。なので夜に駅を利用する際、ここのホールで開催されるライブにきたにぎやかそうな観客たちを見かけていつも少し羨ましく思ったりしていた。

「そんなに音楽を聴かないし、僕には関係ないな〜」と長らく遠巻きに見つめていたけれど、ラッパーのR-指定さんが地元の先輩という縁のあるCreepy Nutsと、昔からなじみのあったウルフルズが、中野サンプラザで対バンライブをすると知り、すぐさまチケットを買った。やっと音楽ホールに行く機会が僕にも巡ってきた!

2月上旬、対バンライブの入場待機列に並んだときの写真

Creepy Nutsのラッパー・R-指定さんとウルフルズのボーカル・トータス松本さんはともに大阪出身。ふたりの大阪愛に溢れたトークを聞いて、大阪生まれ・大阪育ちの僕は、何度も笑顔になった。さらに、「中野サンプラザ」での公演とあって曲中の歌詞にもところどころ「中野」というワードを入れてくれて大興奮した。まるで大阪出身中野在住の僕のためのステージだと錯覚するぐらい入れ込んで楽しめた最高のライブだった!!!

何度か改装工事を経ているとはいえ、1973年に建てられたと思えないほど、きれいだった音楽ホール。斬新な外観のデザインに加え、50年の月日を感じさせない佇まいをしているけれど、中野サンプラザは老朽化により2023年7月に閉館し、2024年に解体工事が入る見通しだという。せっかく、サンプラザの楽しさを知ったもうすぐそこに休業が迫っているだなんて、知ったときはショックだったけど、2029年、5年の充電期間を経た暁には、ホールも広くなり、お店も増えて新しい施設にリニューアルするらしい。

「楽しみだな〜! 遊びまくりたいな〜!」と思ったけれど、2029年になったら僕は34歳だ。

えっ……34歳!?

新しい施設が完成するときには、漠然とまだ僕は20代とばかり思っていたから、ちゃんと計算して34歳という数字が出たときは言葉を失った。

34歳か……。そのとき、僕はなにをしてるんだろう……。

まだ漫画家をやれてるのかな。もしかして、挫折して別の仕事とかしているのかな。もしかして、大阪に帰ってたりするかな。

未来のことは全然わからないけど、ずっと中野に住んでいたいな。

中野に住んで3年しか経ってないけど、そう思うぐらい僕は中野が大好きだ。

中野の好きなところは奇抜な髪型や色をしてたり、キャラ物Tシャツを着たりしても誰からも後ろ指を指されず、さまざまな個性を受け入れてくれる懐の大きいところ。田舎出身の僕はカルチャーショックでした。人の目を気にせずに好きなキャラTシャツを気軽に着て歩ける中野はとっても住みやすいです!

これからも、よろしく中野。

著者:秋鹿えいと

秋鹿えいと

1995年大阪生まれ。漫画家。Twitterでほぼ毎日漫画や映画紹介を投稿しています。また雑誌やWEBメディアでも漫画を連載。KADOKAWA「黒猫のクロ」の電子書籍が好評発売中。Twitter https://twitter.com/aikaeito

 

 

編集:ツドイ